人形を潰す。
 一つ一つ丁寧に。




 正直、この光景は誰にも見せたくない。
 我ながら気味の悪い作業だと自覚している。




 人形を潰す。
 想いを込めて。




 しかし、これは必要なものなのだ。
 出来の悪い出来損ない。その処理。




 人形を潰す。
 呪いを込めて。




 霊夢の所に人形供養に出せばいいんじゃないか、と言われたこともある。
 的外れな意見だ。これだから人間は。
 そんなことをしたら、せっかくの呪詛が浄化されてしまう。
 リサイクルというと陳腐だが、勿体無い。




 人形を潰す。
 泣きながら。
 人形を潰す。
 笑いながら。




 人形とは想いだ。
 想いを潰すにはそれだけ重い想いが要る。
 人形供養などと、それをないがしろにしてはいけない。
 無重力ではだめだ。




 人形を潰す。
 人の形をしたものを潰す。




 潰して溢れる想い(呪い)は、私に還る。
 その想いを以って、新たに想い(人形)を作る。
 循環。
 ぐるぐると回る想いの輪は、その重さを増し続ける。
 膨れ上がったそれは、いずれ何かを生み出す。




 人形を潰す。
 人ではないものを潰す。







 想いが満ちる。
 ああ、今日はいい人形が作れそうだ。

「――こいつはあんまり関係なさそうだけどな」

 邪魔さえ入らなければ、ね。



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