[Back]『IM』
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……接続失敗。
人は誰しも夢を見る。
人は誰しも夢を願う。
彼女と会うのは半年振り。
半年間音沙汰がなかったのが、昨日電話がかかってきてそのまま話が盛り上がった。
それじゃあ、久々に会おうか、と話は進み、互いに予定もなく待ち合わせることになった。
彼女と私の関係はそう浅くもなく、深くもなく、一年ほど親しくしていた程度で、気安いけれど深入りはしていないという微妙なものだった。
ともすれば、このまま彼女と接触することなく人生を終えそうな雰囲気もあった。
連絡があったのは彼女からだから、いかなる気まぐれが私へとラインを繋げたのだろうか。
ともかく私は待ち合わせに遅れないように街へと向かう。
お久しぶり。
お久しぶり、元気だった?
定番のような挨拶。そのまま近くに喫茶店に向かう、とそこで、お昼も近いし食べれるところにしよう、と軽食店に向きを変えた。
パスタを食べながら、近況を聞き合う。
いろいろあるけど、なんとかやってる。
結構きついけど、それなりに。
曖昧なやり取り。淡白なようであるけど、それが私と彼女の普通。
他愛のない会話、雑談。わずかに愚痴をにじませる私と彼女。
コーヒーのお代わりを繰り返す。
段々と間が持たなくなってくる。話題の種が尽きてきたか。
ふう、視線を落としてため息一つ。
ん? 彼女の目がこちらを向く。
別になんでもないよ。ため息に意味なんてない。ため息の意味なんてない。
ふぅん? 彼女の目がこちらを覗き込む。
少し居心地が悪くなる。なんだかむずがゆい気分。
…………。
……恋人できた?
むせる私。にやにや笑う彼女。
いきなりなにを。
ちょっと気になっただけ。
困る。自分がどんな顔してるのかわからない。彼女の顔はわからない。
相変わらず彼女は面白がっている。
あ、貴女こそどうなんですか、うまくやってるんですかっ。
うん。まあ、そこそこ。
反撃はあっさりかわされた。
彼女にはかなわない。
また少し話をする。談話、雑談。
ふと、コーヒーが尽きた。時間が尽きた。
そろそろ出ますか。
ごめん、あたしは行くね。
伝票を持って、彼女は席を立った。
私は席を立たない。立てない。身体が動かない。
ま、待って。
バイバイ。
彼女が視界から消えていく。
私の身体は動かない。感覚すら曖昧になっていく。
視界が白くなっていく。世界が白っぽく消えていく。
彼女が消えていく。私が消えていく。
人は誰しも夢を見る。
夢が叶うとは限らない。
布団の中で目を覚ました。
凄く楽しい夢をみたような。
凄く幸せな夢をみたような。
凄く、悲しい夢をみたような。
そんな切ない気分で目が覚めた。
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……パスワードが違います。
音沙汰が無くなってから半年が経つ。
今でも時々、ひょっこり現れるんじゃないかと思うことがある。
そんなことはもうないだろうと思っているけれど。
ラインを繋げることに意味なんてない。
日常の行為に意味なんてない。
意味なんてない。
意味なんて、無い。