しっかりしろ、タミヤ!

2002年7月、かつての大ヒット商品“ミニ四駆”をR/C(ラジコン)で、というふれ込みの商品が発売になった。
 それが“ラジ四駆”である。発売の3ヶ月ほど前にこの企画を知ったのだが、仕様を見てため息が出た。それはこれまでのミニ四駆ファンをR/Cへと強引に誘導しようとする、下心見え見えの出来そこない企画だったからだ。
 ミニ四駆が遠隔操作できるのなら、結構オモシロイかも知れない。ステアリングがきれて、スピードコントロールも思いのまま。コースに変化をつければ・・・と、誰しも期待してしまう。R/Cを本格的にやっているタミヤなら、当然考えそうなことだからだ。
 ところがこの期待は、詳細を知った時点で見事なまでに打ち砕かれてしまった。木端微塵(こっぱみじん)に。理由は簡単だ。ステアリングコントロールも、スピードコントロールも無し。有るのは押しボタンスイッチが1個だけの超シンプル送信機だからだ。ON/OFFだけの1チャンネル、R/Cとしてはこれ以上無いチープなものだ。
 これでどう楽しめっていうのだろうか。 アンビリーバボー!
 もう21世紀だぜ、こんなの許されるのか? イマドキこの値段でこの機能かぁ?
 これでミニ四駆ブームの再来を本気で狙おうとしてるのだろうか?相変わらずスピード競技一辺倒で工夫の跡が全然無いコースだし、更にユーザー層を完璧に無視した信じられない車種選択なのだ。
 最初に発売されたものが次の3車種である。何でラリー車なんだ? マジかよ、タミヤ!

スバルインプレッサWRC2002 各2,480円
プジョー206WRC
三菱ランサーエボリューションZWRC

 仕入れませんでした。お客様からの問い合わせも殆んどありませんでした。
 そのうち、人知れずカタログから消えていくと思います。多分。


2003年秋。ホビーショー(プラモデル・ラジコン・フェア)開催に先立って、(業者向け)ガイドブックが届いた。
あの、なかなかヒットしない“ダンガンレーサー”の新商品が載っていた。

DR-14 シューティングフォース(完成車) 各980円
(キットは各700円)
DR-17 ダイナトリガー(完成車)
DR-19 スナイパージャック(完成車)

 タミヤはいつから「おもちゃメーカー」になっちまったんだ?
 キットを組み立てて、グレードアップ・パーツを付けて、バランスやセッティングを調整して、壊れたら修理して、そういうことを全部自分でやれるから面白いんじゃないの?「ちゃんと作れるまで走れないんだぞ!」って、完成車を売っちゃったら、そういうこと言えなくなっちゃうじゃないかーっ。
 作れないヤツは、自分で作れるようになるまで遊ぶな。 それでいいじゃないか。
 誰だ!こんなものまで売ろうって考えたヤツは。責任者出て来いっ!
 ・・・その後も完成車の発売は続いています。この商品は、最寄の玩具店でお買い求め下さい。


2003年9〜11月、ロボクラフトシリーズという教材的色彩の濃い組み立てキットを、何と完成品という形態で発売してしまった。何故?

9月 メカ・タイガー完成品(4足歩行タイプ) 各1,480円
(キットは各980円)
10月 メカ・ラビット完成品(両足キック歩行タイプ)
11月 メカ・タートル完成品(クロール歩行タイプ)

 限定品とは言え、実に信じられないことをするものだと呆れた。自分で組み立ててこそ意義のある商品を、どういう訳か完成品にして売るという暴挙に出た。元々小学生を対象にした組み立てキットのシリーズで、誰にでも簡単に組み立てることが出来るはずなのに…。
 普通の感覚を有する親は、決してこんなモノを子供に買い与えたりはしない。
 正常な感覚を有する模型専門店は、間違ってもこんな商品を棚に並べたりはしない。

 たとえそれが限定品であっても。


2004年3月下旬、タミヤカラースプレーの新色が発売になった。5色のうちの4色は次の艦船用である。

TS-66 呉海軍工廠グレイ(日本海軍) 各600円
(えっ?)
TS-67 佐世保海軍工廠グレイ(日本海軍)
TS-68 木甲板色
TS-69 リノリウム甲板色

 発売の意図がわからない。艦船用塗料を缶スプレーで売ろうとする理由が先ず見当たらない。艦船キットの主流である1/700ウォーターライン・シリーズには、あまりにもワイルド過ぎる。吹き付けた瞬間にパーツが吹っ飛び、行方不明になることは必至だ。
 そう言えば、アオシマから1/144戦艦大和が発売されるという。2メートル近いドデカキットだ。
 静岡ホビーショーで試作を見た。誰が買うのだろうか?何処に展示するのだろうか?
 でもこのデカさなら缶スプレーも有りかも知れない。甲板にはHGUCのガンダムを是非立たせよう!

 ドサクサ紛れに値段を吊り上げた。なぜか従来品より20%アップの600円。益々不可思議。
 言うまでもなく、まだ1本も売れてない。オススメの言葉が見当たらない。


2004年4月の新製品案内には目を疑った。4月の案内なのに4月に発売される新製品がQD(組み立て済みのR/Cカー)1点のみで、他は3月中に発売の商品ばかりだった。こんなの4月の新製品案内じゃない!それによく見ると、まともな組み立てキットが皆無。そのかわりに高価な完成品ばかりがズラリ。

1/35 ドイツ重戦車キングタイガー・ヘンシェル砲塔 21,000円  
1/350 日本戦艦 大和 72,000円  
1/24 1938年 CMC カー・キャリアー 24,600円 ダンバリー・ミント/輸入品
1/24 アラ・カート 22,000円 ダンバリー・ミント/輸入品

 4月は売るものが無かった。だから新製品案内を店内の掲示板に貼ることをやめた。


2004年5月の静岡ホビーショーのガイドブックに、マイクロハンマーというツールが紹介されていた。
7月発売で1,300円とあった。説明文には次のように書かれていた。
  「軽量で取り回しが良く、ダンガンレーサーのピニオンギヤー打ち込みや、
  R/Cレースの現場にも手軽に携帯可能な小型ハンマーです。」

 ダンガンユーザーはこんな高価なハンマーは決して買わない。
 ムギュッと押し込めば、ピニオンギヤーの取り付けなんて難なく出来る!


2004年6月には高価なツールが発売されます。ご希望の方は予約を入れてください。
 (当店では)当面は予約しないと買えません。PROを自認する方は必携です。

ヤスリ クラフトヤスリPRO(平・16mm幅) 2,000円
クラフトヤスリPRO(平・10mm幅) 1,500円
面相筆 モデリングブラシPRO面相筆No.1 1,700円
モデリングブラシPRO面相筆No.0 1,600円
モデリングブラシPRO面相筆No.00 1,600円
モデリングブラシPRO面相筆No.000 1,500円

 完成品ばかり売ろうとしてるメーカーが、こういうもの必要有るんだろうか?
 こんな社外品ばかり増やさずに、もっと真面目にキットを作れよ、タミヤ!



e-Tamiya.com という業者向け専門サイトがある(注:一般には開放されていません)。そこには自由に投稿したり
 質問ができる掲示板が設置されていたが、何故か閉鎖されてしまった。タミヤは自ら聴く耳を閉ざしてしまったようだ。

今のタミヤの方向性は、決してユーザーの要望を反映していない。それどころか、ユーザーを完全に無視している。
 どうしてこうもチグハグなことばかりやるのだろうか? 模型メーカーとしての自信と誇りはどうしたのだろう?
 星のマークの下の“First in Quality around the World” の文字が空しく映る。
 今、徐々にユーザー離れが進行しつつある。それを食い止めることは、現在の経営陣にはおそらく無理だ。
 「それは何故か」の答えは、模型専門店にある。自らの足を使って、全国の模型専門店を訪ね歩き、それこそ自力で
 答えを見つけ出してもらいたい。インターネットでアンケートを回収したり、量販店で販売データの数字を集めても全く
 意味が無い。それが出来なければ再生など到底望めないと私は確信している。

[May.29,2004]