07「モーツァルト!」レポ |
2007年11〜12月帝国劇場での「モーツァルト!」再々演。
地方公演がなかったため、東京へ3度遠征しての観劇でした。
ブログにアップしていた毎回の観劇レポを、まとめてみました。
11/24〜25 @帝国劇場 |
|
「モーツァルト!」一家 |
市村正親パパは、年取りましたねー。いや、ご本人が老け込んだかどうかはわからないけど、2幕からのレオポルト・パパは、ずいぶん老け込んだ。2幕で、コロレドに会いに行く場面から、ヴォルフと決裂する場面。もうすっかり老人ですね。この人、それなりにアホな息子がかわいかったんだろうけど、息子が天才だったばっかりに、自分の作品のように思っちゃったんだろうなぁ。どんなアホ息子であろうと、音楽の才能ではなく、ヴォルフ自身を抱き締めてあげてほしかったよぉー・・・。 高橋ナンネールは、老けませんな。こりゃあもう、ビックリなくらい。未だ少女の場面に違和感がないなんて、恐るべし高橋由美子。最初がアマデと一緒にもてはやされて幸せそうなだけに、天才な弟の犠牲になって、どんどん沈んでいくナンネールが悲しい。父の死をヴォルフに知らせに来る場面で、きっついな〜って思うんだけど、当たってしまうナンネールの気持ちもわかる。 井上芳雄ヴォルフの家族への愛は、相変わらず強いです。ずっとパパ大好き。今公演では、『星から降る金』の後の場面がいい。男爵夫人の後を追ってウィーンへ行こうと引っ張るアマデを、押しとどめて、パパとナンネールの願いを聞き入れる演技。ここは前回より、ヴォルフの感情が細かく出てる。ウィーンへ行きたい、でも・・・って気持ちの迷い、そして、アマデの手をほどいて、アマデを両手でなだめるようにする。う〜ん、細かい。 2幕、パパが亡くなった後の『父への悔悟』もいい。再演のときより深くなった。歌の後半、後ずさって、ベッドに足を上げて嘆く仕草もいい。親を亡くしたときって、ほんとにずいぶん過去にぶつかったことまで思い出して、“あのとき言う通りにしてれば違ったかも”とか、思うもんなのよ。うん、ちょっと自分のことまで思い出したよ。 今回の再々演では、井上ヴォルフは、自立して大人になろうとしているヴォルフの心情も、はっきり表現している。混乱〜『星から降る金(リプライズ)』後に、「おとなになった男は、自分の足で歩かなければならない。」のヴォルフのつぶやきに、強い決心を感じさせる。1幕から2幕まで、ヴォルフの変化がよりクリアになってきた。 また長くなるので、このへんで・・・ |
せっかく同日にマチソワしたので、井上芳雄ヴォルフと中川晃教ヴォルフの違いで気づいた部分を書こうかなと。とはいえ、席の良し悪しが全然違ったし、私は完璧に井上ヴォルフヲタ。どーしても井上ヴォルフヲタ発言をしてしまうかも。 M!ヲタでもあるので、中川ヴォルフも観たいけれど、今回は毎回新幹線を使っての遠征なので、あっきーを複数回観るまでには手が回らないのさ。(でもでも、あっきー出演の「OUR HOUSE」も「TOMMY」も「エレンディラ」も観てるんだよねー。あれ?意外と私、あっきーを好きなのかも・・・(゜o゜) 最初に登場する『赤いコート』の最初、ヴォルフガングの「♪ウォ〜、ナンネ〜ル」に驚くナンネール(高橋由美子)の反応が、井上ヴォルフと中川ヴォルフで違う。中川ヴォルフには、ほんとに驚いたふうなナンネール、井上ヴォルフには、“(もうっ、わかってるんだからっ♪)だぁれ?”って、微笑みながら言う。井上ヴォルフのほうが子供っぽいからかな?私が観た井上ヴォルフ版2回とも、ナンネールはこの反応だったんだけど、さて、定番なのか?それとも、その日によるのか?なんとなく、他の場面でもナンネールの反応から見て、井上ヴォルフのほうが甘えっ子らしく、ふにゃふにゃして手がかかるっぽいんだよね。中川ヴォルフのほうが、やんちゃでもシッカリしてる。 居酒屋の場面。自分のことをバカにした物真似をされ、「こンのやろぉぉ〜!」と、つかみかかるヴォルフガング。井上ヴォルフは背がデカイので、ふたりに抱えられても、脇のところでなんだけど、中川ヴォルフはちっこいので、頭の上に持ち上げられてた。中川ヴォルフがかわいく見えてしまったー。 その騒ぎを遮って現れたシカネーダー(吉野圭吾)。井上ヴォルフは、みんなにからかわれてクサクサした気分のままいるところへ、シカネーダーの「芝居の好きな人はいるかな?」と言う声を聞いて、ハッとして、「はい!」って手を上げる。これが私の中で定番だったんだけど、中川ヴォルフは、喧嘩から解放された後、プンプンと上手へ入っていく。そこへ「芝居の好きな人いるかな?」で、「はいっ!」って手を上げながら、また出てくる。一瞬“あっきー、どこ行くねーん”て思った。再演でも、こうだったかなー?? 2幕。ウェーバー一家がヴォルフに借金の手紙を書かせようとする場面。「♪嘘をつくのは嫌だ。利用されるのも。もうしない、やりたくないことは。」とヴォルフが強く断ったあと、コンスタンツェを連れ帰ろうとするセシリアから、「だめだ!」とコンスタンツェを取り返す。その後が違う。中川ヴォルフはコンスタンツェの前に立ちはだかって守ろうとするんだけど、井上ヴォルフは後ろからコンスタンツェを抱き締め、顔を背け、お母さんの後ろに隠れる子供のよう。ウェーバー家に、「♪こいつはおかしい、頭が」「♪アル中」と言われるのも納得な変な様子の井上ヴォルフが、たまりません。 魔笛作曲小屋の場面。温泉帰りのコンスタンツェに、キス現場を見つかり、コンスタンツェ爆発。「帰ってくれ!」と言った後のヴォルフが違う。コンスタンツェが泣きながら、「♪いつまでも才能より愛される妻にはなれない。」「♪あのままのあんたを愛していたかった」と歌っている間も、中川ヴォルフは、コンスタンツェの言葉も耳に入らない感じで、楽譜に向かってペンを走らせていて、コンスタンツェが出て行った後に、ハッと顔を上げる。中川ヴォルフは、もう圧倒的に音楽がコンスタンツェに圧勝してる感じ。井上ヴォルフは、コンスタンツェが泣き歌いしてる間、ずっと背を向け、その言葉を聞いているんだよね。コンスタンツェの気持ちに応えられず、傷つけているのも分かっているって感じで。心のどこかで、コンスタンツェとの人間的な幸せも求めていた井上ヴォルフが、やっぱり私は好きなんだなぁ。 余談ですが、今期の井上ヴォルフは「帰ってくれ!」がめちゃ激しい。コンスタンツェがウザイほどキンキン言うからでしょーか?あ、今期は、ちょっと大人ヴォルフだからかな? 今すぐに思いつく違いだけを並べてみた。もっとありそうだし、思い出せそうなんだけど。 井上ヴォルフと中川ヴォルフは、ビジュアルも素のキャラも全く違うし、作り上げてきたヴォルフガングも全く違う。それも「モーツァルト!」の面白いところなんだな。 |
明日、遠征なので、前回思ったことなど、追い込みで。 昨日書いていた、Wヴォルフガングの違い、追加。 今公演からの演出で、『フィガロの結婚』成功をコンスタンツェとお祝いする場面。燭台の3本のロウソクをヴォルフガングが消すところ。井上ヴォルフは一息でフゥ〜ッと優しく消すんだけど、中川ヴォルフは1本、2本と消して、最後に残った火をコンスタンツェに消させる。どっちもいいな〜と思ったよ。 『チョッピリ・オツムに〜』の途中、ヴォルフガングが女の子とふたりで上手へ走り去る場面では、中川ヴォルフは今までどおり、ふたりで肩組んで走り去るけど、井上ヴォルフは、女の子を肩の上に乗せ、連れさる感じ。勝手なご陽気ヴォルフっぽくて、面白い。 井上ヴォルフのお遊びは、ちょこちょこ他にもあって、『赤いコート』の中で、ナンネールの膝の上に座ってみたり、『このままのあなた』で、胴切りマジックの箱の穴に手を突っ込んで抜けない真似をしてみたり、もろもろ。重い話なぶん、楽しい場面では、しっかり幸せな頃のおバカヴォルフを見せてほしいので、こういうお遊びは大好き。だから、『チョッピリ・オツムに〜』はもちろん、『赤いコート』『並みの男じゃない』や『友だち甲斐』なんかも、すごく好き。 そういや今公演のシカネーダー(吉野圭吾)は、「私が誰だかご存知か?」と言いながら、腰を振ったりもする。そんな楽しいシカネーダーが、『モーツァルト!モーツァルト!』で、ものすごい恐い表情で、ヴォルフを見下ろして歌ってる。25日マチネが上手前方席だったので、シカネーダーが丁度、ヴォルフの後方上部に見えて、ふたりから目が離せなかった。曲の最後の瞬間のシカネーダーの表情なんて、もう・・・涙ものに恐かったよぉ・・・。友達ではあっても、ヴォルフの才能を利用する気持ちもあったのかなぁ。「もっと書けぇ!」って気持ちだったのかなぁ。 hiroコンスタンツェは、・・・ちょっとしんどかったかなぁ。喉の調子が悪いのか、ああいう発声なのか、台詞も歌も声を出すのが搾り出す感じ。もうちょっとスコンと声が出てくれるといいのになぁ。お芝居は、まぁ初舞台らしく慣れてない感じがありありだし、両ヴォルフも上手くなっちゃったし、ちょっと周りと差があって、つらいだろうなぁ、と。 コロ様は、相変わらず髪を振り乱してもだえながら、おトイレを我慢してらっしゃいます。「もうダメだ・・・」などと、つぶやいたり。山口祐一郎さんは、他に『レミゼ』と『マリーアントワネット』でも観たけど、コロレド役がいちばん好き。いちばん合ってると思うんだな。 アルコ伯爵(武岡淳一)は、歌はアレでも花王おさむさんのお間抜けアルコが好きだったので、ちょっとさみしいかな。武岡アルコは、ちょい若くて、意地悪役人風アルコなんだよね。 余談ですが、今公演パンフに載っているウィーンコンサート版の写真、ヴォルフガングをやっているのが、Rasmus Borkowski。ウィーン版『ロミオとジュリエット』で、マキューシオ役だった人。懐かしく写真を見ました。 しかし、その下のミュンヘンコンサート版の写真!右下の写真が、ヴォルフとアマデ?!このヴォルフ、ちょっとメタボってませんか(泣)?コンサート版とはいえ、二重アゴヴォルフなんて、ビジュアル的にありえなーい(泣)・・・ |
12月4日マチネ @帝国劇場 |
ラッキーなことに、今期いちばんの良席。ヴォルフガングは井上芳雄。アマデは、野本ほたるちゃん。 『人は忘れる』 男爵夫人(香寿たつき)の歌声にのって、ピアノを弾きながら現れるヴォルフガング(井上芳雄)の姿が好き。ヴォルフが愛すべき青年であることを感じる、すっごく好きな場面。 『赤いコート』 ヴォルフの「♪うぉ〜、ナンネ〜ル」で、ナンネール(高橋由美子)が普通に「だれっ?」と驚いていた。今期の井上ヴォルフに対するナンネールは、ヴォルフとわかってて聞いてあげるって感じだったので、ちょっと意外。日によって感じるままなのかな? 鏡を間にしたヴォルフとナンネールがポーズをとるのも、かわゆし。 「♪このコート着て」で、座ってるナンネールの顔に向けて、コートの裾をビラッと翻す。この動作が入ったぶん、ナンネールの膝に座るのはなしでした。この曲では、ヴォルフもお姉ちゃんを大好きだし、ナンネールも天真爛漫な弟をそのまんま愛してるのが、びしびし伝わる。 「♪コートを渡せ!」と叱られたヴォルフが、しぶしぶコートを脱いで、でも渡したくなくてコートを抱き締める仕草、好きだなぁ。(これは、あっきーもやってた。)無理矢理、奪ったパパはコートをナンネールの前に投げ捨て、「処分しなさい。」。今期から、「返してきなさい」じゃなく「処分しなさい」になったということは、パパ、捨てろって言ってるんだよねー?後々、借金が日増しに増えていく一家なのに、もったいなーい・・・と、せこい私は思ってしまうのでした。 『何処だ、モーツァルト!』 召使たちが「やってらんないわよ〜」って感じで仕事をサボってるのに、コロレド(山口祐一郎)登場の途端、みんな焦ってジタバタしてる動作が面白くて好き。この曲のヴォルフも好きなんだけど、召使もコミカルで気になるんだよねー。 『私ほどお前を愛するものはいない』 この曲の最後、奥に引っ込むところが、毎回いろんなことするんだけど、今回はパパ(市村正親)が、長身井上ヴォルフの腰を持って抱え上げていた。井上ヴォルフ、「うぁぁ〜っ」てデカイ声だしてたので、不意打ちだったんだろうなぁ。そういや、11/24に観たときは、パパが手で井上ヴォルフと背比べしてた。ここは、パパの数少ないお遊び自由演技タイムなのね。 『マトモな家庭』 帰宅したアロイジアが、階段に座りこんでるコンスタンツェ(hiro)の靴を蹴り飛ばすのが、決して仲よし姉妹ではないって感じでよい。セシリア(阿知波悟美)が娘をひとりずつ、ヴォルフに紹介するところで、ゾフィが「♪おりこうさん」と言われている最中に、ヴォルフの腰にしかと抱きついてるのが面白い。今期から?最後の「♪お人好しの好青年をつかまえられる」の部分、以前はコンスタンツェも一緒に踊ってたはずなんだけど、ここも変わったね。 『残酷な人生』 今期、すごくいいです。再演時は、小芝居のような仕草を入れて歌ってたんだけど、今公演では一切なし。歌と表情だけで、ガンと伝えてくる。 『チョッピリ・オツムに、チョッピリ・ハートに』 だ〜い好き。今公演では、シカネーダ(吉野圭吾)の「♪拍手が好き」は毎回客席に向けて拍手を要求するし、観客もそれに応える。自然、曲でも手拍子が起こる。ヴォルフとのダンスが、ほんとに楽しい!シカネーダの周りを、興味津々でウロチョロし、「♪花形スター総出演」の後に、「♪オレも?」と言ってるヴォルフ、バカっぽくて、かわいいぞ。「♪悲劇の王子」で、悩めるハムレット・ポーズしてるし。今回は、シカネーダーに「どうだい」って話しかけられてもまだ、女性とイチャイチャ。「オペラ」の言葉に反応して、シカネーダーのほうに向き直るけど、シカネーダーに押されて女性のとこに戻ると、ガッと抱えあげ、連れ去る。さっきまで怒って喧嘩してたヴォルフ、超ゴキゲンで去っていく。まさに直情型。 『星から降る金』 ナンネールにかなり長い間、汗をふいてもらってた。男爵夫人のために椅子を取りにいったナンネール、椅子を見つけ、「これこれ」って人差し指を立てるのが、かわゆし。男爵夫人には申し訳ないけど、段上で歌っているのを無視して、モーツァルト一家の芝居を見ちゃう。ナンネールが最初はヴォルフの手を取って励ましている、とか、パパがヴォルフと絶対目を合わさない、とか、無言の心の動きを見る。井上ヴォルフは、再演では天に手を伸ばす仕草もしていたけど、今回は憧れる表情のみ。曲が終わって、一瞬、パパがヴォルフの手を取るかと思ったら、振り払う。出て行こうとするヴォルフを必死に引くアマデ。ナンネールは寝返り(笑)、パパと一緒に引き止める側に。「神様の次に大切なのはパパだって。」と言われたのが、いちばん響いたヴォルフ。もうアマデを押さえるしかない。上半身乗り出して、旅立ちを迫るアマデ。このへんの芝居、好きだ〜。 『神が私に委ねたもの』 コロレド様、何度も言うが、何故そんなギリギリまでオ○ッコを我慢するのか・・・(笑)。「きたきたっ」って・・・。衝立の向こうに行く前から、髪乱れてるし。 『並みの男じゃない』 大好きなのよ、この場面。手拍子するのも好きだよ。なのに、近くに座ってた人、手拍子が大きすぎるってば。限度ってものがあるでしょーが。音楽を聴きたい客もいるんだよーーっ。 『このままのあなた』 今期は、とにかくコンスタンツェにチューを迫り続けるヴォルフ。くっついて座ったり、“好き好き光線”出してます。 『終わりのない音楽』 この日は、この曲がすごく響いた。ナンネールは、ヴォルフが離れていく(自立していく)のを感じてるんだなぁ、と。幸せな過去に戻りたくとも、時間を止められないのもわかってる。パパよりは現実を見ながらも、願ってるんだよね。わかってて願うのは、悲しい。 『僕はウィーンに残る』 初演から好きな場面。初演のとき、この場面でワクワクしたなぁ〜。初演では井上ヴォルフ、白い鬘をかぶらなかったなぁ〜。その白い鬘、この日の井上ヴォルフはコロレドに投げつけるとき、「あんたとの関わりなんて・・・ごめん被るっ!」・・・。おい、台詞ちがうぞ〜。意味はあってるけど。一瞬にして作詞したなら、お見事です。 『影を逃れて』 小箱を返せと無言で迫るアマデに、初めて自分の言うとおりにならない影への恐怖を覚えて、歌いだすヴォルフ。いい表情。05再演時は、「♪響きの襞にふれて」で、自分の身体に手を滑らせたり、アマデの首を絞めようとしたりしたけど、そういう動きは一切排し、ただ、2番では上手に移動するだけ。でも恐れおののいている表情などで、充分伝わる。無言で作曲し続けるアマデ、押しつぶすように見下ろす人々、その中で苦しむヴォルフ。んー、やっぱりすごく好きな場面です。 長くなるので、2幕は別にしまーす。 |
12月4日マチネA @帝国劇場 |
|
先日、『モーツァルト!』で思いっきり生きている井上芳雄くんのヴォルフガングを観ていたら、ふと、「人生って素敵だな。」と思った。みんなに利用されたり、散々苦しむヴォルフガングを知っていても、それでも、ヴォルフガングの生き様を見て、「人生って素敵」と思った。生きているって素敵なことだなって。 アマデの存在も、いろんな見方ができる。 12/4に観たときは、また少し違う見方で、ヴォルフ、アマデ、そして神の存在を感じた。 『奇跡の子』で、小箱を開けたときのアマデ(=ヴォルフガング。ここではまだ完全な一体)の表情に響いた。その小箱に入っていた、きらめくような神の音楽に、アマデ(=ヴォルフガング)は憧れた。感電したように、瞬間に、その音楽の虜になったんだな、と感じた。 二度の『僕こそ音楽』を歌う場面で、誰よりも、“モーツァルト”の音楽を愛したのは、ヴォルフガング自身だったんだと思う。最初に『僕こそ音楽』を歌うときには、本当に素直に無邪気に音楽を愛するヴォルフ。そして何があっても、その音楽を愛して愛していたから、だから、最後の最後まで離れられなかった。 アマデは、ある意味、ヴォルフガングを利用していたとも言える。神からの音楽を、人々の前に現出させるには、ヴォルフガングという人間が必要だった。事実、アマデの姿は、ヴォルフガング以外には見えないし、アマデが書いている楽譜も見えていない。ヴォルフガングが手にして初めて、その楽譜と音楽は、この世界に現れる。ヴォルフガングという人間の熱い血だけが、その音楽を息づかせることができた。 なぜ、アマデという才能は、ヴォルフガングを選んだのか。それは、彼が人一倍、純粋で、邪心がなかったからじゃないかな。権力や金銭にもまみれない、子供のような心を持った人間。神から与えられアマデが作曲する音楽に、ヴォルフガングは素直に感動し、素直に表現した。『魔笛』の成功で、その名声を自分のものだと思ったとき、ヴォルフガングの心には邪心が芽生えた。もはや神の音楽を託すことはできない。だからアマデは離れた。ヴォルフガングもアマデを追わなかった。そして曲が書けなかったとき、ヴォルフガングは知る。自分こそが、誰よりもアマデの音楽を愛していたことを。そしてアマデが差し出す白い羽根ペンに、自分もまた神に愛されていたことを知る。だからこその、あの美しい優しい『僕こそ音楽』なのかな。 ヴォルフガングは、結局、周りの人々だけでなく、アマデにも神にも利用されていたのかと思うと、少し恐くもなるのだけれど、でも、人間てみんな何かしら、与えられたものを背負って生きてるんじゃないのかなぁ。別に運命論者じゃないし、ほぼ無宗教なんだけどね。なんとなく、そうやって、何かを背負いながら一生懸命生きてる人生って、やっぱり素敵だと思うのですよ。 井上ヴォルフは、甘えっ子で、家族関係にも重きを置いているので、つい、そちらに目がいきがちなんだけど、そんなに大切にしたかった家族や手に入れたかった幸せを犠牲にするほど愛したのが、彼自身の音楽だったんだと、12/4の公演で、すごく感じたのね。井上ヴォルフに、音楽への愛を強く感じたのが、新鮮だった。 私の今年の観劇治めは、この『モーツァルト!』の千秋楽。そのとき、どんなふうに感じられるのか、それも楽しみ。 |
千秋楽は終わりましたが… |
帝劇でのM!千秋楽は、5年ぶり。ちょっと懐かしく、初演のものすごい勢いでの遠征を思い出した。そして今回、再々演とはいえ、朝から少し緊張。出演者でもないのに、なんでやねーん・・・とも思うんだけど、でもね、やはり大好きな演目の千秋楽というのは、特別な気持ちなんですよ。 てなわけで、無事、千秋楽も終わりましたが、レポはまだ書けていません。ただ、帰りの新幹線で、メモをちょこちょこ書いていたので、今回は久々に詳細にレポれるかも。 今期の公演は、結局5公演のみ観劇。(「のみ」って言葉、間違ってないか・・・?>自分) 自分の体調が万全ではなかったのに、遠征、遠征だったので、かなりしんどかった。 高橋ナンネールのカーテンコール挨拶を聞いて、5年前と比べれば、自分も体力落ちてるよなぁと、しみじみ思いました。あぁ・・・体力つけよ・・・。 席は、井上ヴォルフ2公演が3列目、1公演4列目、楽は1階中程、中川ヴォルフ2階席。 楽の席が、上手サイドだったものの通路横だったので、視界を遮るものがなくストレスフリー(背の低い私には大事)、しかもわりと表情も見える(ここぞという細かい表情はオペラグラス使ったけど)、なかなか良いお席で、かなりの満足度。 詳細には後日アップしますが、今回も絶妙の表情など、印象的な部分あり。『モーツァルト!モーツァルト!』での井上ヴォルフの表情は、かなりきました。自分が観た中では最高かな。 あー、長くなるので、ちゃんとまた書こう。 ともかく、まぁ、ほんとに、井上芳雄くんは成長したなぁと、しみじみ思いましたよ。自分の5年間はどうだったかなぁと、自省したりなんかして・・・。 さ、次回の再々々演があることを祈りつつ、がんばってレポあげるぞ! |
「モーツァルト!」12/25千秋楽一幕 @帝国劇場 |
|
「モーツァルト!」12/25千秋楽二幕 @帝国劇場 |
|
「モーツァルト!」12/25千秋楽カーテンコール |
|