2002年 「モーツァルト!」 初演 |
2002年の東宝ミュージカル「モーツァルト!」初演時、11/19初見でこのミュージカルに嵌まってしまった私の、
12/29大千秋楽までの1ヶ月余りの日記。感激の大千秋楽&特別カーテンコールのレポもあり。
11月19日 「モーツァルト!」ブラボ〜!ヒュ〜ヒュ〜! |
モーツァルトといえば、映画「アマデウス」のせいで、テンション高すぎて甲高い声で笑っている能天気でヤバイ人ギリギリの天才というイメージだったのが、このミュージカルで一気に覆された。ヴォルフガング・モーツァルトは、明るくて破天荒だけれど、愛を求め続けた孤独な人だったのじゃないかな。ヴォルフは「このままの僕を愛して。」と父に叫び続けるけれど、厳格な父はヴォルフを理解してくれず、神童と呼ばれた幼い頃のように抱きしめてはくれない。父の愛が欲しい、でも自由に生きたい、その間で揺れ続けている。井上芳雄くんの演じるヴォルフは、そんな印象だった。ヴォルフの心の動きは、自分自身が以前に抱えていた感情と、重なる部分もあったから、私はすっかりヴォルフに入れ込んでしまった。井上くんの高音の伸びのある声もブラボーでした。 衣装。これがよかった。ヴォルフは、ドレッド風の髪、Tシャツに穴の開いたジーンズにスニーカーが基本。これに羽織るクラシックなコートが、デニムや革のもの。井上くんは背が高いのでカッコいい。松たかこ演じるコンスタンチェは、ニットあり、デニムジャケットありで、めっちゃかわいい。一方、ヴォルフを我が物にしようと画策するコロレド大司教(山口祐一郎)は、いかにも18世紀。その違いで、自由に生きていこうとする新しい人と、古い風習などに囚われている人を、表現されていたように感じた。 モーツァルトという人物を、ヴォルフガングと、その分身・神童アマデに分けていたのも、面白かった。ずっと作曲をしているのは子供のままのアマデ。ヴォルフとアマデが、共に生き、時には対立し、最後には寄り添って死んでいく。音楽の天才・アマデと、奔放な人間・ヴォルフガング、ふたりでひとりのモーツァルトだったということか。う〜ん、深い。 チケットが、大阪千秋楽の前日分でよかった。これが前半あたりで見ていたら、「もうひとりの中川晃教のヴォルフガングが観たい!」とか、「井上芳雄のヴォルフガングでもう一度観たい!」とか、ぜ〜ったい考えて、リピーターになり、当日券の列に並んでいたに違いない。あ〜、危なかった。だって、チケット高いのよ。12000円だもんね。おそろしや・・・。セーフでした。この日のチケットをとってくれたKさん、ありがと〜!しかも、井上くんの大阪楽を観られて、挨拶付きのカーテンコールだし、よかったです〜。ブラボ〜! |
11月24日 まだまだ「モーツァルト!」 |
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12月1日 モーツァルトあれこれ |
いろんなところに、感動の種が落ちていて、好きなものが増えていく。なんだか、うれしい。ただ、私は感動すると走り出す癖があるので、少々問題なんだけどね・・・(^_^;) |
12月7日 ♪メジャ〜にマイナ〜コードにメロディ〜もぉ〜♪(by『僕こそ音楽』) |
井上くんのヴォルフガングは、天才という運命を背負ってしまっただけの、普通の青年。コロレド大司教や父、天才のアマデ(自分の才能)、運命、いろいろなものにぶつかり、悩み、もがき苦しみながらも、のびやかに力一杯に人生を駆け抜けてゆく。井上君は表情豊かに、感情豊かに、ヴォルフガングを演じてくれた。今日いちばん印象的だった曲『僕こそ音楽』を、冒頭では希望いっぱいに歌い、その同じ歌を、自らの死を目の前にした場面では、切々と歌う。そのヴォルフガングの死の場面を見て感じたのは、モーツァルトの音楽は、彼自身の血を全て絞りだして描いた彼の人生そのものだったということ。最後にアマデに殺されても、ヴォルフガングは満足そうな顔してるんだよね。 井上君は、素顔の写真などを見ると、ものすごく普通の人のようなんだけど、舞台に出ると長身で手足も長く、目を引くような華がある。ヴォルフガングという役のせいかな? 話はそれますが、コロレド役の山口祐一郎さんを見ると、ど〜しても「恋を何年休んでますか」の“いっちゃん”に思えて仕方がない。いっちゃんは売れない役者だったのに、よくがんばったなぁなどと思ってしまって・・・(^_^.)。あれはドラマだっちゅうの。山口さんは声がすごいですね。舞台ではウェーブのかかったヘア(もちろんカツラ)でかっこいいんだけど、パンフの扮装写真はロングストレートヘアで、三国志とかの中国人みたいです。あのカツラ、不評だったんだろうなぁ・・・。 幕間に、調子にのったアホな私は、帝劇売店でアホほどお金を使ってしまいました(T_T)。両ヴォルフガングのライブCDに、パンフ(大阪公演と数ページ違うだけなのに・・・)、楽譜集(何の為か自分でも不明・・・)。ふん!いいんだい!いらなくなったら、ネット |
12月11日 ♪もう〜守ってはもらえないだろう〜♪(by『何故愛せないの?』) |
ここんとこ毎日、通勤時の退屈な徒歩時間(駅から15分近くも歩くのだ)に、「モーツァルト!」のライブをMDで聴いている。自分でも、よく飽きないものだと思うけど、聴けば聴くほど、また観たくなる(←ヤバイって・・・)。まず音楽がドラマティックで好き。“歌を語る”って、こういうことかなと思う。話も、天才が主人公ながら、現実に生きている青年を描いているとこが好き。
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12月28日 それから・・・。 |
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12月29日 「モーツァルト!」大千秋楽・・・アホほど長いです。覚悟を・・・(^_^.) |
帝劇前で、11時半にチケットを受け取る。相手が感じのいい人でよかった。いっぱいお礼を言って、劇場入り。混まないうちにトイレを済ませ、上演中おなかがならないように、腹ごしらえ。席はS席の後方だけど、センターで舞台がよく見える。劇場でオペラグラスも買ったから、表情も見るぞ。ドキドキしながら開演を待った。 今日が最後の公演。ヴォルフガングは井上芳雄君、アマデは内野明音ちゃん。ひとつひとつの場面を目に焼き付けたい。 男爵夫人(久世星佳)のソロ「人は忘れる」の後ろで、ピアノを弾くヴォルフが登場。優しくていい場面だ。そこから、赤いコートを着て姉のナンネール(高橋由美子)とふざけるヴォルフ、無邪気で楽しそうな2人。「僕こそ音楽(ミュージック)」をのびのびと歌うヴォルフ。話の先を知っているだけに、この幸せそうな頃のヴォルフに泣かされる。井上君の歌は、私の観た3回の公演の中では、声がのびやかで、いちばんいい。 シカネーダ(吉野圭吾)登場場面では、シカネーダーが「私が誰だかご存知か?」と尋ねても誰も知らない、となるはずが、千秋楽だけのお遊びで、他のキャスト全員声を揃え「エマヌエル・シカネーダー!」。会場はリピーターがほとんどらしく、笑いと拍手に包まれる。シカネーダーのソロ歌も会場は手拍子。楽しい! 男爵夫人のソロ「星から降る金」はきれいな曲で、この日の久世さんはすごくよかった。初見の時は、ソロが始まった途端に椅子から転げ落ちるかと思ったけどね(^_^.)。千秋楽では、感動的でさえありました。 コロレド大司教(山口祐一郎)が馬車を止めてのトイレシーンは、強烈にオーバーになっていて、会場が笑いの渦に。大阪で観た時は内股でチョコチョコ歩くだけだったのに、内股かつ手で後ろを押さえ、髪を振り乱して苦しみながら、ついたての向こうへ。スッキリして、ついたてから顔を出した時には髪が逆立っていたよ。そんな場面の直後に朗々と歌い上げる山口さん、スゴイです(笑)。 ヴォルフのノリのいいソロ「並みの男じゃない」でも会場は手拍子。ヴォルフのやんちゃな感じが出ている場面だ。 コロレドと決裂する場面のヴォルフも、私は好き。コロレドに言わせると『無礼で傲慢』なんだけどね。若いっ!て感じで、熱い。一庶民であるヴォルフが、才能という武器だけで、領主や貴族に背を向ける。そして、やっと自由になったと思ったものの、自分の影=才能であるアマデからは逃れられない事を知るヴォルフ。一幕最後の曲「影を逃れて」も迫力がある。「♪運命に従うほかないのか」と歌うヴォルフの左腕に、アマデは無表情に羽根ペンを突き立て、ヴォルフの血で譜面を書き続ける。ヴォルフが自分の影から自由になりたい、と歌い、一幕は終わる。 二幕は、一幕よりも、つらい場面が多い。ナンネールは「♪プリンスは出て行った。希望の光は消えた」と歌うし、ヴォルフと心がすれ違う妻・コンスタンチェ(西田ひかる)は「♪ダンスはやめられない。ひとりぼっちで泣くのはいや」と歌い、父(市村正親)に拒絶されたと思ったヴォルフは「♪何故パパが去ったのか、僕にはわからない」と歌う。みんながすれ違っていく。井上君のソロ「何故愛せないの」では、ヴォルフの心の叫びに胸が痛い。涙がポロリ。 唯一楽しい雰囲気なのは「友達甲斐」の曲の最後に、ヴォルフが姉に仕送りするはずのお金を持って、シカネーダー達と遊びに出かけるところ(←あかんやん)。本当に楽しそうに踊るんだよね〜。ヴォルフの楽観的というか享楽的な性格がよくわかる。 コロレドのソロ「神よ、何故許される」の千秋楽バージョンは特に迫力!「♪愚かな男が創り出す!」の部分に怒りをぶちまけ、数秒の静寂の後に「♪音楽の魔術〜」と恍惚として歌う。自分のものにはならないヴォルフに怒りを爆発させつつも、その才能を認めざるをえないコロレドの複雑な心境。山口さんの歌声は、いいな〜。 父が死んだ後のヴォルフが精神的に混乱する面も、進化していた。ひとりでブツブツ言いながら途中で「ハハハ・・・」と笑い出したかと思うと、自分にしか見えないアマデに向かって「お前のせいだ!お前が悪い!悪い!」と叫ぶ。ここでヴォルフを静めるのは、男爵夫人のソロ「星から降る金」リプライズなのだが、ここがまたいい。ヴォルフを包み込むような歌声。久世さんの持つゆったりとした雰囲気がいい。 このあたりから、もうヴォルフは死の結末に向かって一直線。クライマックスの曲「モーツァルト!モーツァルト!」の合唱の中、ひとりでレクイエムを書くヴォルフ。書いては捨て、書いては捨て、どうしても書けない。曲の盛り上がりとともに、ヴォルフの苦しみを思い、涙が浮かぶ。そして、ヴォルフはアマデとともに死んでいく。最後の大合唱「影を逃れて」の迫力の中、幕が降りた。 この日は、千秋楽。通常のカーテンコールの後に、特別カーテンコールがあった。コンスタンチェの父役の松澤さんの司会で、アンサンブル含めて全員の紹介。メインキャストは挨拶もあり。 高橋由美子さんは、首から『小道具』と書いた札を下げて、手には風車を持って登場。悲しいナンネールの役と違いすぎる。役に楽しい場面がひとつもないから、そんなふうにして袖で楽しんでいたとか。挨拶も「ん〜と、え〜っと」と手を前後にブラブラさせながらで、アイドルぽくて、かわいい。いや、ちょっとアホっぽいか(笑)。 久世星佳さんの挨拶は、一緒にもらい泣き。「6年間歌ってなくて、3ヶ月間、舞台に立つことが毎日恐かった。でもずっと立てて良かった。お客様から、いろんな答えをもらった気がする。スタッフ、キャストに支えられた。」てな内容。歌のことをいろいろ言われているのは、自分でもわかっていただろうし、その中で舞台に立ち続け、跳ね返して、最後には素晴らしいソロを聞かせてくれた。涙の挨拶に、会場も涙で大拍手。 西田ひかるさんは、久世さんの後で、もらい泣きしながら登場。2ヶ月公演が済んでから松たかこさんの後を受けての、たったひとりでの初日だっただけに、「最初は孤独でした。」とのこと。やっぱり出来上がったカンパニーに入るのはツライよね。この後、松さんも登場して、挨拶された。 山口祐一郎さんは、袖から片足だけをタララ〜ンと出して、ストリップ風(?)。挨拶も、観客の「最高!」の掛け声に「本当にそう思っているんでしょうか?」と返したりで、ちょっととぼけた感じ。 市村正親さんは、腰に大工道具をぶら下げ、トンカチを持って登場。「今からバラシだぁ。俺は親方だからよぉ。」などと、べらんめぇ親方口調で、終始挨拶。自分の来年の予定を紹介するのも、その口調のまんま。お茶目さんだわ。 アマデの内野明音ちゃん。3人いるアマデ役の中で、私は偶然3回とも明音ちゃんだった。彼女はとっても表情豊かな演技をする。将来は、宝塚の男役になりたいらしく、袖にいる演出の小池さん(宝塚の演出をされている)に、「小池せんせ〜い、よろしくお願いしま〜す!」と呼びかけているのが、かわいかった。残る2人のアマデも登場。「将来もこの仕事を続けますか?」と尋ねられた良くん、「先のことはわかりません。」と冷静なお答え。かわいらしすぎて、会場は笑いと拍手。「尊敬する人は?」の質問に、楓ちゃんは「泉ピン子さん」。(「渡る世間は〜」に出ていたらしい。)ミュージカルのカーテンコールで、この名前を聞くとはね(笑)。 トリは、ヴォルフの井上芳雄くん。頭がボーッとして終わった実感がまだないと言う。松澤さんの紹介したエピソードでは、Wキャストの中川君の初日の幕が降りた時、井上君は真っ直ぐ中川君のとこに駆け寄って、頭狂ったんじゃないかと思うくらい、「よかったね〜!よかったね〜!」と涙流して喜んだらしい。井上君て、ほんとにいい奴なんだなぁ。 挨拶後、松澤さんが「もう誰も出てきません。」と言うので「え?」って感じ。だって前日の中川君の楽では、カーテンコールに井上君が登場して一緒に歌ったと聞いていたから。「影を逃れて」が始まり、井上君が歌う。2番が始まる時、下手から中川ヴォルフ登場!やっぱり!そこから2人で、サビでは全員が舞台に出てきて歌う。歌の最後、ヴォルフだけが違うパートを歌う部分では、中川君は「Woo〜!」という叫びに。心の叫びに聞こえる。井上ヴォルフは歌詞を歌ってくれるので、ふたりのヴォルフの歌が合わさると、ちょっと鳥肌もの。感動〜。実際の公演では、ヴォルフガングが二人なんてあり得ないけどね。決して楽しい歌じゃないけど(どっちかというと苦しい歌かな)、この「影を逃れて」も、ずっと忘れられない曲になりそう。 最後の挨拶で、市村さんが「3ヶ月で14万人(!)のお客様に見ていただきました。これだけ愛されたからには、必ず再演はあるでしょう。」と言ってくれた。何年後になるかはわからないけど、再演されたら絶対絶対また観に行くよ。 結局、カーテンコールは1時間続き、終わったのは4時半前。役者さんの素を見ずに舞台上の感動をそのまま持って帰りたいので、出待ちもせず、真っ直ぐ東京駅に戻る。すぐに新幹線に乗りたかったのに、年末なので、40分後のまで空席がない。帰省ラッシュで混雑した自由席はイヤなので、仕方なく、その指定席を取って、待つことに。往復の交通費を考えると、なんて高い観劇なんだと思うけど、あの感動には変えられない。なんか麻薬みたいなものだね。 ドラマシティで初めて観た時、1曲目から「きたっ!」と感じ、そのままワァ〜ッと感情の波に流されるままに最初の観劇は終わった。2回目は、最前列で役者さんの生の迫力に浸り、それぞれの表情まで、じっくり観た。そして3回目は、曲を覚えたこともあるし、席も後方センターで、舞台全体を落ち着いて観られて、初めて気づいた部分もいくつかあった。3回観て、本当によかったと思う。お財布は、ものすごく貧乏になっちゃったけど・・・(T_T) |