高脂血症と診断されコレステロール低下剤を投与後、総コレステロール値が160未満に下がった人(ただし心臓病の既住症がない人)の死亡危険度が、200〜219となった人の3倍近くになることが、約5万人の6年間の追跡調査で分かった。160〜179も、危険度は倍近かった。
こうした下がり過ぎた人はがんで死亡する割合が高く、解析した山口大大学院医学研究科の松崎益徳教授は「投与後に180末満に下がった人は、投与を中止して検査を行うべきだ」と警告している。
「がん」が死因の4割
コレステロール低下剤は降圧剤などとともに最も広く使われている薬の一つで、年間2000億円以上の売り上げがある。総コレステロール値250以上を高脂血症とする現在の基準に当てはまる人は約2500万人いると推定されている。
調査は全国の医師約6500人が参加し、92〜99年に行われた。総コレステロール値220以上の約5万人にコレステロール低下剤を6年間投与、有効性や安全性を調べた。 心臓病の既住症がない約4万人を追跡した結果、うち約800人が死亡。死因は、がんが約300人・脳血管疾患約100人・心筋梗塞が約50人などだった。
死亡した人と低下剤投与後の総コレステロール値の関係を解析。200〜219の人が死亡する危険度を1とすると、180〜259の間ではほとんど差がなかったが、160〜179は約1・7、160未満は約2・8。
がん死の危険度を同様に計算すると、160〜179は倍近く、160未満は3倍以上に達した。特に総コレステロール値が大幅に下がった人では、調査開姶時にがん患者を対象から除いているのにもかかわらず、がんが死因の約4割も占めた。日本人のがんによる死亡の割合は約3割。
コレストロールの値と病気について、心臓病の危険度は240以上で上昇し、日本動脈硬化学会は240以上を高脂血症とする基準案を示している。しかし、今回の調査でがん死の危険度は240〜259が最小だったため、全死因を合計した死亡危険度が上昇するのは260以上となり、どこから「病気」と判断すべきか議論も出そうだ。
【鯨岡秀紀】 |