鍼灸医学のツボについて

 

 

鍼灸医学の『ツボ』の歴史は、発生以来、実に三千年の伝統を持っています。
中国から日本に伝来したのは、六世紀飛鳥時代で、最盛期を迎えたのは江戸時代でした。

◆人体には、主な『ツボ』が頭の先から足の先まで365ヶ所あります
これは、人体の中を流れる14本の異なる働きからなる経絡(けいらく)からなっております。 
この縦に貫く経絡(気の通路・ネットワーク)上に経穴(けいけつ)、ツボがあるわけです。経絡は、内臓とつながり内臓の弱りは、経絡とツボに現れます。

◆最近の科学では、ツボを刺激することによって、脳内麻酔物質の一つであるエンドルフィンが分泌されると考えられています。
この物質は、精神ストレスに強い効果があると考えられます。このホルモンは快適ホルモンと言われます。
β(ベータ)エンドルフィンができると、ナチュラル・キラー細胞という免疫細胞の働きも活発化します。さらに生体の機能を高める働きがあるノルアドレナリンと言ったホルモンにも作用します。ツボの科学的メカニズムの解明は、まだ始まったばかりです。

1.名称
素問・霊枢→穴・気穴・兪穴・谿隧・谿谷・節の交・孫絡・その他
千金方→孔穴  ※『経穴ハ神気ノ遊行出入スル所也』→九鍼十二原篇

2.数 
総数は365穴とされる。
素問・霊枢→115穴・甲乙経→345穴・千金方→349穴・銅人経→354穴

3.分類
@五行穴→五兪穴・五井穴
井・栄・兪・経・合
木・火・土・金・水
※素問・気穴論→蔵の兪50穴、府の兪72穴
霊枢・本輸篇→陰経(井木・栄火・兪土・経金・合水)・陽経(井金・栄水・兪木・経火・合土)
難経64難→五行穴の原典(完成)

A原穴
霊枢・九鍼十二原篇
肺の原→太淵2・心の原→太陵2 ※心包経の原穴 
肝の原→太衝2・脾の原→太白2・腎の原→太谿2・膏の原→鳩尾1
肓の原→神闕1

◆難経66難
肺・心・肝・脾・腎の原穴は霊枢に同じ
少陰の原→神門2・胆の原→丘墟2・胃の原→衝陽2・三焦の原→陽池2
膀胱の原→京骨2・大腸の原→合谷2・小腸の原→腕骨2

『十二経皆兪オ以ッテ原トナスハ何ゾヤ。
然リ、五蔵ノ兪ハ三焦ノ行ク所、 気ノ留止スル所ナレバナリ。
三焦ノ行ク所ノ兪ヲ原トナスハ何ゾヤ。
然リ、臍下腎間ノ動気ハ人ノ生命ナリ。十二経ノ根本也。故ニ名ズケテ原ト云ウ』

◆難経62難
『府ニ独リ有ルハ何ソヤ・・・・』

B兪穴
兪穴→大杼・背兪・心兪・膈兪・肝兪・脾兪・腎兪
素問・霊枢→背兪

霊枢・背兪篇
『其ノ処ヲ按ジ、応中ニアリテ痛ミ解ス。乃チ其ノ兪也。之ニ灸スルハ可。
之ヲ刺スハ則チ不可也』

C募穴
肝→期門  胆→日月 心→巨闕  小腸→関元 心包→だん中  三焦→石門
脾→章門  胃→中かん  肺→中府  大腸→天枢  腎→京門  膀胱→中極

※募兪穴の応用法
素問・陰陽応象大論
『陽病ハ陰ヲ治シ、陰病ハ陽ヲ治ス』
◇難経67難
『五蔵ノ募ハ皆陰ニアリ、而シテ兪ハ陽ニアルハ何ノ謂ゾヤ。然リ、
陰病ハ陽ニ行キ、陽病ハ陰ニ行ク。故ニ募ハ陰ニ、兪ハ陽ニアラシムルナリ』

D15絡穴
霊枢→経脈篇(絡脈を意味する)
肝の絡→蠡溝 胆の絡→光明 心の絡→通里 小腸の絡→支正
脾の絡→公孫 胃の絡→豊隆 肺の絡→列欠 大腸の絡→偏歴
腎の絡→大鐘 膀胱の絡→飛陽 心包の絡→内関 三焦の絡→外関
任脈の絡→会陰 督脉の絡→長強 脾の大絡→虚里(大包)

難経26難→12経の絡は霊枢に同じ
陽きょう脈の絡→申脈 陰きょう脈の絡→照海  脾の大絡→大包
『経ハ十二アリ、絡ハ十五アリ、余ノ三絡ハ何ノ絡ナリヤ』
陽の絡・陰の絡・脾の大絡也

Eげき穴→甲乙経より始まる経穴也
孔最・水泉・中都・陰げき・地機・げき門・温溜・金門・外丘・養老・梁丘・会宗の12穴也。
※急性病に効果あり
陰経→血に作用する
陽谿→痛みに作用する

F八会穴
難経45難『熱病内ニアル者ハ、其ノ会ノ気穴ヲ取ル也』
中かん→府会 章門→蔵会 膈兪→血会  だん中→気会
大杼→骨会  陽輔→髄会 陽陵泉→筋会 太淵→脈会

G下合穴
霊枢→邪気蔵府病形篇・本輸篇
『府病(熱病)ハ下合穴ヲ取ル也』
『実スルトキハ即チ閉隆(瀉)シ、虚スルトキハ遺溺ス(補)』
胃→三里・大腸→上巨虚 ※肝・腎・中下焦の病症に選穴する・小腸→下巨虚
三焦→委陽・膀胱→委中・胆の府→陽陵泉

H熱兪穴
素問→刺熱篇・気穴論・水熱穴論
※蔵の熱を瀉す経穴也。59穴あり

I水兪穴(腎の兪穴)
素問→骨空論・水熱穴論
※水種、浮腫、水分代謝等水の出入りを制する経穴也。57穴あり

J一般穴

4.経穴の臨床的意義
六部定位脉診等により、蔵府経絡の変動を捉えて難経等の選穴理論に基づいて選穴し、証法一致の手法により脉状、脉証を確実に整えることが出来るものが、最も正しい経穴でありここに経穴の意義がある

5.経穴の取穴方法
@経穴は体質、病歴、病症、その他により変化するものである。
A取穴に際して、圧は決してかけずごく軽く経をなぜる如く取穴する。
(左右の経穴を比較すると良い)
経穴の虚実(気血)反応をよく捉えること
虚→陥下・弛緩・動悸(虚)・お血性鈍麻
実→発赤・緊張・硬結・知覚過敏・キョロ(実)