◆朝日新聞より転載 [患者を生きる・バックナンバー]

      シリーズ  患者を生きる

     <患者を生きる-8> 情報編・・・・

       

うつ病患者の復職


援助プログラム、まだ少なく

 ◆仕事が引き金でうつ病になり休職した場合、どうすればいいのか。

 まず仕事を忘れ、集中して休養し、治療に専念する期間が必要だ。うつ病はすぐには回復せず、波を描くように一進一退を繰り返す。良くなったと思って焦って復職すると、再発することもある。
 再発を防ぎ仕事に戻るための職場復帰援助プログラムが、各地で実施されている=表。

 「患者を生きる 復職へ」で紹介したNTT東日本関東病院(東京都品川区)では、週2回通える程度まで体調が回復した段階で参加でき、3回、4回と増やしていく。障害者が対象の「自立支援医療制度」を使えば、自己負担は1割で、費用は1回300円程度だ。

 同病院では、97年〜03年に参加した73人中、復職したのは45人。このうち34人が就労を継続できているという。
 ただ、希望してすぐに参加できるわけではない。プログラムには定員(25人程度)があり、空きが出るまで待たなければいけない場合も多い。

 独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構が各都道府県に設けている障害者職業センターでも昨年10月から、復職プログラムを始めた。雇用保険被保険者の会社員などが対象になる。参加無料だが、多い場所でも10人前後と規模は小さいのが実情だ。

 NTT東日本関東病院の秋山剛・精神神経科部長は「うつ病で休職している人が増えているのに、復職プログラムを提供できるところがあまりにも少ない」と指摘する。
 近くでプログラムがない場合、どうすればいいのか。秋山部長は「主治医と相談しながら、段階を踏み目標をクリアしていくことが大切」という。

 まず、睡眠のリズムを整え、早寝早起きができるようになることが第1段階だ。次は近所の図書館などに出向き、2時間程度、仕事に関連した本などを読むことを目指す。徐々に4〜5時間まで増やす。体力回復のための軽い運動も心がける。

 「この間、生活記録をつけることが重要」と秋山部長。主治医から「復職可能」の診断書をもらい産業医や上司と相談に入る際、この記録が回復具合の指針となり、スムーズな復職につながる可能性があるという。

 

●記者のひとこと
 ある日突然、乗れていたはずの自転車に乗れなくなった。それでも「こっちまで来い」と言われる。転倒の恐怖から走り出せない――。ある患者は復職を考え始めたときの不安をそう表現した。復職プログラムは自転車に補助輪をつけ、片方ずつ外してあげるような役割だと思う。だが、提供できる施設の数は不十分だ。「自分には無縁の病気」と考える人が減らないかぎり、この状況は変わらないだろう。
                                                                                   (文・武田耕太)