◆朝日新聞より転載 [患者を生きる・バックナンバー]

      シリーズ  患者を生きる

     <患者を生きる-7> 投書編・・・・

       

うつ  飲酒との関連治療の大敵、周囲も一緒に

 


 

 ◆アルコール依存との関係についての質問です。

  回答者は成増厚生病院(東京都板橋区)の新貝(しんがい)憲利院長です。

 総合病院で普段から多くのうつ病の患者さんと接していますが、アルコールに対する依存の度合いが高い人が多いような気がしています。
 お酒がきっかけでうつ病になったり、せっかく退院してもお酒に手を出して再入院になったり、といった例が後を絶ちません。
 うつ病とお酒には深い関係があるように思いますが、専門の医療現場ではどのように診察し、治療に結びつけているのでしょうか。
 また、患者の家族や友人は飲酒に関して、どのように考えればいいのでしょうか。
                                                                  (大阪府 ソーシャルワーカー 46歳)

<解答>
 うつ病患者がストレスのはけ口としてアルコールを乱用することはよくあります。本人の苦しみが酒で救われているように見えることもあるため、周りも飲酒を認めてしまいがちですが、酒は絶対に断たなければなりません。
 酒を飲むと気分が一時的には楽になりますが、酔いがさめると以前に増して不安になり、気分が落ち込みます。そこでまた酒に走り、この繰り返しがうつ病やその再発を引き起こすことがあります。

 治療でもアルコールは大敵です。酒を飲んでいると薬の効きが悪くなったり、病状を更に悪化させたりして、治りにくくなってしまいます。
 アルコール依存があるうつ病患者はまず断酒を徹底します。さらに飲酒による問題は手助けせず、突き放すべきです。深酒による欠勤などはタッチせず本人任せにします。家族の方は尻ぬぐいをやめましょう。一方、うつによる気分の落ち込みを訴えた場合は本人が納得するまで話を聞き、支えてあげて下さい。

 このような対処の仕方により、本人がアルコール問題の治療が必要だと気付き、自らの意思で医療機関を受診するようになれば回復への大きな一歩となります。
 様々な研究から、2年間酒を断つことができれば、再びアルコールに依存する可能性がきわめて低くなることが知られています。ただし、ここまでたどり着けるのは、わずか2割。周囲の人たちも一緒に闘ってあげて下さい。

 

 ◆復職へのステップ 回復度に合わせて

  回答者は「うつ・気分障害協会」代表で保健師の山口律子さんです。

 IT関連企業で働く30代の息子が、うつ病で休職しました。1年後、通院先の精神科医から復職にゴーサインが出たので会社に相談しました。
 会社の復職プログラムを利用しようとしたところ「上司の許可が必要」と言われ、上司に相談すると「復帰は完全に治ってからにしてほしい」と許されませんでした。「迷惑だ」「辞めてくれ」などとも言われたようです。
 よくあることなのでしょうか。職場復帰を果たすために良い方法はありませんか。
                                                                        (横浜市 大学教員 60歳)

<解答>
 主治医から復職可能と判断されても、会社側の産業医・人事担当者から見て「まだ復帰は難しい」と判断されることは珍しくありません。病気は回復していても、職業能力が回復していないと、企業側は安全配慮義務の点から難色を示すことがあります。

 復職の判断基準としては10時間程度(通勤時間プラス勤務時間)の外出ができること、80%程度の職業能力の回復、精神的ストレスに対処できることなどが求められます。半日のリハビリ出勤だからといって半日分の体力で復帰するのではなく、8時間は働けるまで回復してから始めることが大切です。

 会社は、病院やリハビリ施設ではありません。働くための健康管理は、本人・家族が自分たちできちんとできることが前提です。復帰に向けての基礎体力作りや、現在服用している薬が業務に与える影響について知り、眠気や集中力の低下などの症状をきちんとコントロールできることが求められます。

 また、各都道府県にある障害者職業センターなどの職業能力判定や適職判定を受けることで、自分の職業能力の回復度や適性がわかります。復職判定やリハビリ出勤の際に、客観的なデータで会社側と交渉することもできます。

 ご相談のケースでは、産業医や保健師に相談し、上司との仲介役をお願いしてみてはいかがでしょうか。それでもうまくいかない場合は、障害者職業センターや労働局の労働相談をお勧めします。