◆朝日新聞より転載 [患者を生きる・バックナンバー] |
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シリーズ 患者を生きる |
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<患者を生きる-3> 投書編・・・・
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明るい光が差し込む部屋に、パソコンのキーボードをたたく音が何重にも響く。 うつ病で休職中の人を対象にした職場復帰援助プログラム。同病院では97年11月にスタートした。平日の週4日、パソコンの入力作業のほか、グループでの話し合いや軽い運動などのリハビリテーションをし、職場に戻る道筋をつける。参加者は様々な企業の会社員が多い。 体調がおかしくなったのはその3年ぐらい前から。取引先との交渉などの仕事がいくつも重なり始めたころだ。土曜日曜もパソコンを家に持ち帰って仕事をこなした。徹夜はざらで、1週間で6時間しか睡眠をとれないときもあった。朝起きられず、会社を休む日が出てきた。 眠りたいのになぜ? 仕事に支障が出てしまう――。不眠はそんな焦りを生み、その焦りがさらに不眠を呼ぶ。悪循環に陥った。 11月、会社の会議に出る直前、急に味わったことのない緊張感に襲われた。手に汗がにじみ、足の震えが止まらない。パニックになり、トイレに駆け込んだ。何が起きたのかわけが分からなかった。 復帰試み失敗。役立たずと自分責めた 働いていないことがどうしようもなく不安だった。同じころ、初めて子どもが生まれたことで責任も感じていた。 職場の産業医と相談したうえで04年5月、職場に復帰した。だが、焦りばかりが先行し、体調は完全には戻っていなかった。10月ごろから気持ちの落ち込みが出始めて再発。主治医の判断で、11月から2回目の休職に入った。 妻にも申し訳なく、家にいることもつらかった。「離婚したほうがいい」と伝えたが、妻は「そんなつもりはない」と取り合わなかった。 05年5月、職場の産業医に復職の希望を伝えた。だが、一度復職に失敗していることもあり、不安もあった。上司や産業医らと面談し、NTT東日本関東病院の職場復帰援助プログラムに参加するよう指示された。 援助プログラムで生活にリズム プログラムは月〜木の週4日。作業療法士の岡崎渉さんらが指導し、パソコン(月、木)、卓球などの軽スポーツ(火)、グループで話し合う「グループ療法」(水)などがある。さらに宮井さんは、マイナス思考に陥りやすい「考え方の癖」から脱却するための集団認知療法という精神療法にも参加した。 宮井さんの場合は、定員に空きが出た10月にプログラムを開始。週2日のパソコンから始め、今年4月からは週4日通うようになった。 最初は何もできないのに、そのうち立てるようになり、言葉を発するようになる。その姿を見ていると、「なぜか病気も治るような不思議な感覚になる。自分も変わっていけるんじゃないか」と感じる。 6月、主治医と産業医、上司の話し合いで復職の許可が出た。さらに、プログラムの参加状況や主治医の意見書などの資料をもとに、最終的な復職の可否を判断する審査会が社内で開かれ、7月末からの復職が決まった。 「焦らず、ゆっくり行こう」と宮井さんはいう。 (文・武田耕太) |