《参考資料-1》
難経の特質と全体構成について
1.難経について
素問・霊枢・難経は、東洋医学の三大古典医籍である。
難経は、内経の医学理論を基本として一貫して鍼灸医学体系を臨床的に築き上げ、内経医学とは一味違った『難経医学』を構築した基本的な医学全書である。そして、難経は独り鍼灸医学の臨床指導書では無く、漢方医学の基本的な臨床指導書でもある。
このように漢方医学にとって重要な『難経』の註解書は、湯液の聖典とされる『傷寒論』と同じぐらいに多い。また名ある歴代の医人でこの両書に言及しなかった者はいないといって良い程である。この事は、難経が漢方医学の基本的な医書であることの証である。 しかし、原『難経』は残念ながら現存せず後代には伝わらなかったのである。 以下『難経』について少しく考察する。@書かれた目的について
難経本義大鈔(森本玄閑編著)掲浤の序に『内経ハ言簡古淵涵ニシテ未ダ通暁シ易カラズ、故ニ秦越人発シテ81難ヲ為ル。其ノ義ヲ推シ明ラカシムル所以ナリ』
難経本義(滑伯仁著)の自序に『難経ハ、黄帝素問・霊枢ノ旨ニ本ズキテ問答ヲ設ケテ為ス、以テ疑義ヲ釈ス』等より、『難経』は、黄帝内経が説く医学理論を基礎としての臨床研究の指導書として書かれたものである。それに加えて、菽法脉診を初めとした難経医学としての独創的学術、特に医術を発表し広める事が目的として書かれたものと思う。A成立について
『難経』の成立については、『素問・霊枢』の編纂後、『傷寒論』出版の前である前漢後期のBC106 年または190 年の説が有力である。この時期は、日本では弥生時代中期にあたる。
私論としては、斉で活躍した実在の名医、淳于意も『難経』をテキストとして脉診流の鍼医学を修得したものと思う。B著者、編者について
著者については、一般的には秦越人扁鵲と言われている。しかし、難経を扁鵲の著作とするのは現実的には正しく無いのである。内容等より考察しても、決して個人が編纂したものでは無く、「扁鵲学派」と言われる医術集団が難経の真の著者・編者であると考えた方が自然であると思える。C医学理論の基本について
『難経』編纂の医学理論の基本については陰陽五行論が基礎となり構成されている。
特に相剋論と共に相生論を全面的に取り入れているのが特長である。相生論は難経にて初めて臨床医学の中に本格的に応用されたのである。2.難経の特質
難経は単なる『内経医学』の模写ではなく、独自の医学理論を構築し『難経流医学体系』を確立したのである。 以下、難経医学の独自性につき簡単に考察する。@脉診について
中国医学の主流であった『素問』の三部九候脉診、『霊枢』の人迎脉口診等の脉診を全て否定し鍼灸医学に於ける脉診法は寸口脉診を専一にすべき事を提唱した。
第1難に「十二経皆動脈有リ、独リ寸口ヲ取ッテ五蔵六府ノ生死吉凶ヲ決スルノ法トナスナリ」と宣言している。
難経医学の影響力は大きく、その後の中国医学の脉診法は「寸口脉診」が主流となるのである。A菽法脉診の確立
寸口脉診を発展させる為に、難経医学独自の脉診法である「菽法脉診」を臨床的脉診法として確立した。(第5難)
『五難ニ曰ク、脉ニ軽重有リトハ何ノ謂イゾヤ。然ナリ、初メテ脉ヲ持スルニ、三菽ノ重サノ如ク、皮毛ト相得ル者ハ肺ノ部ナリ。六菽ノ重サノ如ク、血脉ト相得ル者ハ心ノ部ナリ。九菽ノ重サノ如ク、肌肉ト相得ル者ハ脾ノ部ナリ。十二菽ノ重サノ如ク、筋ト平ナル者ハ肝ノ部ナリ。之ヲ按ジテ骨ニ至リ、指ヲ挙グレバ来ルコト疾キ者ハ腎ノ部ナリ。故ニ軽重ト曰ウナリ。』B陰陽脉診(浮沈)の確立
脉診に於ける「浮沈」を「陰陽」に発展させて『証』に繋がる脉診法を確立した。
これにより、脉診による病証の把握に発展させる事ができ、臨床的に大きく進展したである。?
『六難ニ曰ク、脉ニ陰盛陽虚、陽盛陰虚有リトハ何ノ謂ゾヤ。然ナリ、之ヲ浮ベテ損小、之ヲ沈メテ実大、故ニ陰盛陽虚ト曰ウ。之ヲ沈メテ損小、之ヲ浮ベテ実大、故ニ陽盛陰虚ト曰ウ。是レ陰陽虚実ノ意ナリ。』C選経、選穴理論と臨床応用の確立
難経医学の主張は「補瀉が最も適応する手段は、「内経」に於けるが如き鍼の刺法にあるのでは無く、経と穴の選定によって目的が達せられるのである」とし、難経全体を通してこの論を展開している。◆選経、選穴論に関する諸難
45難→八会穴論(熱病)
49.69難→正経自病
50難→五邪論(正・虚・実・微・賊)
33.64難→陰陽剛柔選穴論(相剋論)
63.65.68難→五兪穴の性質と病症論
62.66難→原穴論
69.79難→子母補瀉論(相生選穴論)
67難→募兪穴論
73難→井穴の選穴論
70.74難→四時と五行穴の選穴論
75難→相剋選穴論
77難→未病の選穴論(相剋選穴論)D五兪穴剛柔論の独創
五兪穴に五行(木火土金水)の性格を定立した。
霊枢の「本輸篇」に五行穴の記載があるが、原「霊枢」にはその記載は無い。五行穴に木火土金水の性格を定立したのは難経の独創である。
臨床実践においては、陰陽剛柔的な選経選穴理論の独創性を臨床の場にて開発した。
◆陰陽剛柔選穴論に関する諸難
33難→肝と肺の五行的性質と剛柔論
35難→蔵府の剛柔論
40難→蔵と五行の相互関係論
56難→積聚の病機と五行剛柔論
64難→陽経、陰経の五兪穴剛柔論
67難→募兪穴の剛柔論
75難→相剋剛柔論
81難→剛柔論と誤治E69難にて治療原則を定立
難経医学に於ける治療原則の定立である。それは、五兪穴の五行的性格に基づき選経・選穴すべきことである。 特に69難にては子母補瀉法の基本的選経、選穴法を臨床的に確立したのである。F三焦概念の新しい展開
三焦を六府の一つとし「有名而無形」とした。そして、上中下の三焦の部位と機能を確定した。三焦と腎間の動気・原穴との繋がりも定立する。
◆三焦論に関する諸難
31難→三焦論(基礎論)
36難→腎と命門論
38難→五蔵六府の概説と三焦論
62難→原穴論(三焦の生理)
66難→十二原穴論G病症の虚実について
病理の虚と旺気実と邪実によって現れる病症を、脉・症・診の虚実に分けて臨床的虚実の基本を定立する。
◆三虚三実論(48難)
脉の虚実→脉状が濡(虚)脉状が牢(実)
症の虚実→出るものが虚(大便・汗・小便・・)入るものが実(便秘・小便不利・無汗・・)
診の虚実→按圧して気持ち良い(虚)按圧して痛い・不快(実)H五邪傷病の臨床応用
病因(風・暑・飲食労倦・寒・湿)と病変(色・臭・味・声・液)と病症、脉状による五邪(正・実・微・賊・虚)の伝変につき臨床的に整理し確立する。
この五邪傷病の臨床応用は、今後の重要な研究課題である。I八会穴の確立
八会穴は難経の独創的な経穴の性格である。
臨床的応用は、内熱性(陰虚・虚熱病証)の病症に選穴する。八会穴の臨床応用も、今後の研究課題である。(45難)J15絡についての新設
難経医学独自の経穴を開発している。
臨床応用については、今後の研究課題である。(26難)
3.難経の全体構成
全体の構成を大きく6分類に大別する事が一般的である。
@脉学(1〜22難)
A経絡論(23〜29難)
B藏府論(30〜47難)
C疾病論(48〜61難)
D兪穴論(62〜68難)
E鍼法論(69〜81難)
以上の構成分類はあくまでも大別である。難経が論ずる諸項目は全体を通して考えないと正しい理解は得られない。また、たえず臨床を考えての理解が重要である。4.難経の主な註解書
難経研究を正しく進める為の善本の註解書。
◆中国の善本註解書
王 惟一「難経集註」 宗代
滑 伯仁「難経本義」 金元時代
徐霊胎「難経経釈」 清代
◆日本の善本註解書
丹波元胤「難経疏証」 江戸時代
勝万卿 「難経古義」 江戸時代(加藤章)
岡本一抱「難経本義諺解」 江戸時代
森本玄閑「難経本義大鈔」 江戸時代
本間祥白「難経の研究」
小曽戸・浜田「意釈難経」
山下 詢「和訓難経本義」
池田政一「難経ハンドブック」
遠藤了一「難経入門」
◆翻訳本
難経解説(南京中医学院「難経訳釈」) 東洋学術社
難経校釈(南京中医学院)林 克訳 谷口書店
(漢方鍼医会・1995年)
《参考資料-2》
陰気・陽気の覚書1.はじめに
陽気陰気の問題は、実地臨床の場にあって実に重要である。五蔵それぞれの陽気陰気の正しい理解により、病症の正確な把握が出来、それの集積が「証」に繋がるのである。ここに、陽気陰気の関係する項目を覚書きにマトメてみる。2.古典の基本理論
@素問・霊枢
生命活動の基礎となる概念を気・血・津液としている。
〈生成〉
飲食物(水殻)が中焦(胃)の部にて、脾の作用により生成される。
宗気→呼吸の原動力(陽気)
津液→血(栄気→陽気・水→陰気)→陰気
衛気→陽気
カス→大便・小便
※経気→12経脈の内外をめぐる
蔵気→肝気・心気・肺気・脾気・腎気
血→人体の栄養(陰気)
栄気→血を動かす気(血中の陽気)
血→血中の水(血中の陰気)
衛気→活動的な気(陽気)
口中→陽経をめぐる
夜間→陰経をめぐる
A難経
生命活動の基礎となる概念を気・血としている。
陽気→衛気
陰気→営気(血と結合→営血と表現する)
衛気→防御・発散・温煦等の陽的、動的な気也
営気→収斂・循環・柔濡等の陰的、静的な気也
B素問第62『調経論』
『陽虚スレバ則チ外寒シ、陰虚スレバ則チ内熱シ、陽盛ンナレバ則チ外熱シ、陰盛ンナレバ則チ内寒ス』
陽気が不足すれば外が冷えて、悪寒・痛・麻痺等の病症を現す。
陽気が多くなれば外は熱し、発熱・腫物等の病症を現す。
陰気が不足すれば内に熱症状が現れ、便秘・口渇・四肢倦怠感等を現す。
陰気が多くなれば内が冷えて、下痢・原気不足・手足厥冷・冷症等の病症を現す。
C素問・霊枢の基本的表現
陽虚(証)は肺虚也→肺は陽蔵也
陰虚(証)は腎虚也→腎は陰蔵也3.古典の生理学
@証における病症を陽気・陰気の病変にて表現している。
陽気→活動的・熱性の気
?理の開闔(体温調節・温煦)
陽道は実す(陽経)
陽気は盛んになると少気となる性質がある
陰気→消極的・寒性の気
陰気は精を蔵す。
陰道は虚す(陰経)
陰はあらゆる機能の原動力A気血の概念・生埋的作用
1.気
(生埋作用)
栄養作用→人体の栄養
推動作用→活動の推進
温煦作用→臓器組織を温める
防御作用→病邪と闘争
固摂作用→異常発汗や出血・遺精を抑制
気化作用→代謝
(種類)
宗気→陽気 心拍や呼吸の原動力
栄気→血中の陽気 血を動かす気・栄養作用が旺盛な気・関節や組織を利する。
衛気→陽気 体表を温める・体表を防御する・?理の開闔。
※開→陽気が漏れる(汗)
闔→温まる(発熱)
原気→生命活動の原動力 三焦の原気(先天の原気)
2.血
(生理的作用)
全身を栄養し精神活動を支える。
臓器組織を澗す
@生成
脾と心の働きにより、水殻・栄気・津液より生成される。
腎精の化生により生成される。
A運搬
心が中心となり、肺・脾・肝が関与する。
肺→肺気の宣発作用
脾→脾気の統血作用
肝→肝気の疏泄作用
B貯蔵
蔵血作用により肝に貯蔵される。
肝により全身の血液循環量が調節される。
3.津液
難経には津液の概念や水に対する記述は無い。しかし、病理を理解する為には重要な概念である。
(生理的作用)
津液は人体を潤す水液の総称である。
@生成
中焦の部にて脾の作用により、水殻中の水液の精徴より生成される。
脾・胃・小腸・大腸が関与する。
A運搬と排泄
三焦を通路とし脾・肺・腎・三焦が主体となり行われる。
〈脾の作用〉
脾の水液運化作用によって生成・運搬される。
脾の作用により上焦の肺に津液を運ぶ。(昇清作用)
〈肺の作用〉
肺の宣発作用(発散)により、濁気・水液・水殻の精徴・衛気を皮毛や気道に散布する。
※濁気→呼吸により排泄
水液→皮毛を潤す、衛気により汗にて排泄
肺の粛降作用により、清潔な状態にし下焦に輸送する。
〈三焦の作用〉
三焦の作用により全身に運搬・調節される。
〈腎の作用〉
腎の気化作用により、下焦に運ばれ再利用・吸収され、尿として排泄される。4.五蔵の生理作用
五蔵それぞれのもつ、陽気陰気の性質を基本としてその生理作用を理解することが重要となる。このことが臨床的には病症に繋がるからである。
〈肝の生理作用〉
@肝気 陽気→発散の気(春に旺気する気)
※陽気<陰気
陰気→収斂の気(肝血に対して)
A疏泄を主る→気機の運行・消化機能・情志活動を促進する。
B血を蔵する
C肝気は目に通ず
D筋を主る→筋肉・筋膜・腱
※男(陰部)女(子宮)
E肝は酸味を好む
F肝と爪
G怒は肝を傷る〈心の生理作用〉
@心気 陽気→発散の気(夏に旺気する気)
※腸気>陰気
陰気→渋固(鎮静)の気→心熱に対して
A血脈を主る→血運行の中心
B神を蔵する
C心気は舌に通ず(耳)
D心は苦味を好む
E心と毛
F笑は心を傷る〈脾の生理作用〉
@脾気 陽気→陰中の至陰の為陽気は無とされ胃の陽気が代行する。
陰気→緩の気(気血栄衛に対して)
A運化を主る→水殻・水液の運化
B昇清を主る→精微を上焦に運ぶ機能
C続血を主る
D脾気は日(唇)に通ず
E肌肉を主る
F脾は甘味を好む
G脾と乳房
H思慮は脾を傷る
I脾は湿を欲す〈肺の生理作用〉
@肺気 陽気→発散・温煦の気(衛気、栄気)
※陽気>陰気 秋に旺気する気
陰気→収斂の気(陽気に対して)
A宣発・粛降を主る
B気を主る(全身の気)
C百脈を朝じる
D治節を主る→津液・血の調節
E肺気は鼻に通ず
F皮膚を主る
G肺は辛味を好む
H肺と息
I悲愁は肺を傷る
J肺は燥を欲す〈腎の生理作用〉
@腎気 陽気→命門の火(先天の原気・三焦の原気)
※陽気<陰気
陰気→柔濡作用(精気水に対して)
A納気を主る→肺気を摂納する
B水を主る→水液の代謝
C精を蔵す
D腎気は耳に通ず(二陰)
E骨・歯を主る
F腎は鹹味を好む
G腎と髪
H驚恐は腎を傷る
I腎は津液により堅を欲す5.古典の病理学
病理としての陰陽虚実が、素問第62「調経論」に記載されており、これが経絡治療の証の基本であり、そのポイントは陽気陰気の過不足にある。
これをマトメてみると以下のようになる。@陽実証
病理→陽気が陽の部位(陽経・府・陽蔵)に多くなり停滞・充満した状態。熱症・
実症を現す。表が充満し堅くなり圧すと痛い。
A陽虚証
病理→陽気が陽の部位に不足した状態。寒症状を現す。表は麻痺し、肌肉は堅くなり冷える温を好む。
陽気(肺気→衛気、営気)不足の陽虚証
血不足の陽虚証
B陰虚証
病理→@陰の部位の陰気(精気)が不足した状態。
A陰の部位の陰気(水・津液)が不足した状態。
陰(陰経・蔵)の部の陰気が不足して虚熱の病症を現す。
1.心の陰気が不足して心熱が多くなる病症→心の陰虚
2.肺が乾燥して熱する病症→肺の陰虚
3.腎の津液不足による虚熱の病症→腎の陰虚
4.肝の血中の水が不足し血熱の病症→肝の陰虚C陰実証
病理→陰の部位に熱や血が停滞・充満した状態。陰の?血を生ずる。
陰(陰経・蔵)の部の血や熱が停滞・充満し内熱の病症を現す。
※「熱血室に入る」→難経75難の証
臨床的には肝実が中心である。
肝実証→肝の脉状が沈実
※陰盛について(素問の証)
陰の部に寒の性質をもったもの(陰気−津液・水)が旺盛になった状態。
内寒の病症を現す。
6.臨床の場に於ける陽気陰気の考察
実地臨床の場にあっては、陽気陰気の正しい理解が証決定の要である。
陽気の不足が陽虚証となり、陰気の不足が陰虚証となる。これが証の基本であるが、実際の治療にあたっては五蔵それぞれの陽気・陰気の特性がポイントとなる。
経絡治療の臨床は、内経の「気血水概念」を基本として考察する。即ち、気は陽気の代表であり、水は陰気の代表である。問題は血の理解である。難経の気血論に於ては、血は陰に位置付けられている。しかし、内経の気血水論にては、血はその生理的作用より基本的には陽に位置付けられているのである。
以上の事を踏まえて、陽気陰気の問題を臨床的に考察する。@脉診に於ける陽気陰気の実際
1.脉診に於ける基本
陽気は左右の寸口部に配当される
陰気は左右の尺中部に配当される(特には左尺中)
(注)腎の陽気は右尺中にて診る(命門)
2.五蔵に於ける基本
○五蔵の基本脉状(漢方鍼医会学術部)
肺の順脉〈浮脉〉→浮・?・短脉の組み合わさった脉状(胃気含)
3菽、皮毛部にあり、一見弱々しく感じるが羽毛の如く柔らかな脉でやや緊張感がある脉状。
心の順脉〈洪脉〉→浮・大・散脉の組み合わさった脉状(胃気含)
6菽、血脈の部にあり、浮にして大、やや強くうち軟らかく伸びやかな脉状。
脾の順脉〈緩脉〉→和緩の脉状(胃気含)
9菽、中位肌肉の部にあり、大ならず小ならず、ゆったりとした柔らかな脉状。
肝の順脉〈弦脉〉→沈・牢・長脉の組み合わさった脉状(胃気含)
12菽、筋位部にあり、沈脉にしてやや緊張感のある、伸びやかな脉状。
腎の順脉〈沈脉〉→沈・滑(濡・実)の組み合わさった脉状(胃気含)
骨に至る、骨位の部にあり、沈にして弱く感じる脉だがやや浮かせて滑らかな力強さを感じる脉状。
※五蔵の基本脉状は、五蔵それぞれの陽気陰気の気が調和した健康脉である。肺心は陽蔵であり、肝腎は陰蔵である。これが基本となる。
○五蔵の陽気不足の基本脉状
肺の基本脉状 浮脉が基本→虚(寒症→堅脉)
心の基本脉状 浮脉が基本→虚(寒症→堅脉)
肝の基本脉状 沈脉が基本→虚(寒症→堅脉)
腎の基本脉状 沈脉が基本→虚(寒症→堅脉)
脾の基本脉状 沈脉が基本→虚(寒症→堅脉)
○五蔵の陰気不足の基本脉状
肺の基本脉状 沈脉が基本→実、弦(沈ト実・沈滑)
心の基本脉状 沈脉が基本→実(数)
肝の基本脉状 浮脉が基本→大虚(陰気虚が進行→沈堅)
腎の基本脉状 浮脉が基本→大虚(陰気虚が進行→沈堅→弾石)
脾の基本脉状 浮脉が基本→大虚(陰気虚が進行→沈堅)《参考》「古典の学び方」より
◎陰虚証の基本脉状
腎虚陰虚証→全体の脉状が浮大虚
脾虚陰虚証→全体の脉状が浮大虚
肝虚陰虚証→全体の脉状が浮大虚
心肺の陰虚→全体の脉状が沈実
◎陽虚証の基本脉状
肺虚陽虚証→全体の脉状が浮虚又は沈虚
肝虚陽虚証→全体の脉状が沈虚
腎虚陽虚証→全体の脉状が沈虚
脾虚陽虚証→全体の脉状が沈虚A病症の実際
臨床の場に於ける、各証の病症の実際を考察する場合の基本は陰虚(精気の虚)にある。例えれば、陽虚証は単独では決して成立せず、必ず陰虚が内にあり証が成立しているのである。
1.陽気陰気不足の基本病症
◆陽気不足の病症
〈基本病症〉寒症状(冷え)の病症を現す。
〈陽虚諸証〉
肺の陽虚→肺気(衛気・営気)の不足による悪寒、発熱と寒症状が基本病症
脾の陽虚→脾の精気・津液の不足により胃の陽気が不足し胃腸の寒症状と悪寒、発熱の病症
肝の陽虚→肝血の不足による筋の引きつり、厥冷と寒症状
腎の陽虚→腎の津液、精気、陽気(命火)の不足による寒症状
※証→肺虚陽虚証(初期病症)
証→脾虚腎虚証(陽虚の進行→重症)
※腎の陽虚は肺虚より進行する◆陰気不足の病症
〈基本病症〉虚熱(内熱)の病症を現す。
〈陰虚諸証〉
腎の陰虚→腎の津液不足による虚熱病症
脾の陰虚→脾の津液不足による胃熱病症
肝の陰虚→肝の血中の水が不足し血熱の病症
心の陰虚→心の陰気が不足して心熱が多くなる病症
肺の陰虚→肺が乾燥して熱する病症(肺燥証)2.五蔵の陽気陰気不足の病症
◆陽気不足の基本病症
肺虚陽虚証
@太陽経虚証の病症
風邪病症→頭痛、発熱、悪寒、悪風、身体の痛み、汗出
A陽明経虚証の病症
風邪進行→発熱多く悪寒少なくなる。筋肉や関節痛、汗出、口唇が赤鼻乾、目痛、食欲減退
B少陰病の病症
肺気虚が進行し自汗、足冷、小便数 肺気虚が更に進行→無汗、発熱無く悪寒が主となり、原気不足、咽喉が痛む。
C肺気虚証の病症
気欝、原気不足、声に力無く、便秘、食欲不振脾虚陽虚証
@胃腸の寒病症
口中に唾液が溜り易い・食欲なし(食味あり)・身体は冷える小便自利・無汗・口唇は白・倦怠感→胃の中寒
※陽明経に熱→頭痛・手足厥冷
A胃腸は寒えて胸に熱ある病症
腸鳴・ゲップ・下痢・吐き気・腹痛・下痢後重・食欲にムラ・夜間覚醒 口内炎・口角炎・舌炎・食後にすぐ排便
B水の停滞がある病症
小便自利・手足厥冷・吐き気
外邪による発熱→関節の腫痛、変形・息切れ・動悸
C胃腸、胸ともに寒える病症
喘咳・呼吸困難・胸痺・胸痛→温まると改害する
D脾虚腎虚になった病症
腹痛のない下痢・手足厥冷・精力減退・原気不足・めまい
食欲はあるが食べれず
急性→手足厥冷し悪寒・清殻下痢・真寒仮熱肝虚陽虚証
@肝血が不足の病症
月経過多か少・月経痛・不妊症・不感症・夏に無汗・手足厥冷
筋肉引きつれ・コリ・腰痛(寒)・朝の硬直感・シモヤケ・低血圧
貧血・下腹痛・疲労感
A胆経の虚寒病症
決断力の不足・恐れ易い・溜め息→精神的病症
頭痛(偏頭痛)・肩こり(胆経)・イライラ・不眠・めまい
B胃腸の虚寒病症
月経中の下痢・粘液便で腹痛は少ない・常習下痢
食欲不振→無理に食べれば食べれる
C上焦の虚熱病症
動悸・息切れ・咳・不整脈・不眠・頭痛・のぼせ
D下焦の虚寒病症
小便不利・腰、下肢の冷痛・精力不足
Eその他の病症
厥陰病→急性肝虚陽虚証
脱汗・手足厥冷・煩躁→ショック状態腎虚陽虚証
@肺虚陽虚の病症→肺虚陽虚証で治療
足の煩熱より厥冷・小便瀕数・夜間排尿の回数多・小便不利
腹痛の無い下痢・腰、下肢の厥冷感・脚弱・原気不足
夕方に下肢の浮腫(寒)
A少陰病の病症→脾虚腎虚証で治療
肺気虚が進行し自汗、足冷、小便数
肺気虚が更に進行→無汗、発熱無く悪寒が主となり、原気不足・咽喉が痛む。
B脾虚腎虚になった病症→脾虚腎虚証で治療
腹痛のない下痢・手足厥冷。精力減退・原気不足・めまい・食欲はあるが食べられない。
急性→手足厥冷し悪寒・清殻下痢・真寒仮熱・口渇◆陰気不足の基本病症
腎虚陰虚証
@虚熱が多い病症
足の煩熱・多汗→羸痩・顔面→黒(脂)・精力旺盛・口渇・食欲旺盛
小便自利又は不利・動悸・腰痛・易疲労
A精気が虚した病症
賁豚気病・腹痛の無い下痢・食欲有
B虚熱が少ない病症
足の煩熱又は厥冷・小便自利又は不利・腹痛の無い下痢・下焦虚・動悸 口渇(少)
C表に水が停滞した病症
下肢厥冷・腰冷・下肢の浮腫・水気病(肥満型)脾虚陰虚証
@胃腸の虚熱病症
急性→発熱、下痢、腹痛・腹痛下痢・腹満・食欲無・食味無
慢性→易疲労・全身の倦怠感・手足の煩熱(冷)・手足の筋肉痛・下痢・口乾
A肺熱の病症
心中煩躁・不眠・歯茎や鼻出血・動悸・呼吸困難・咳・湿疹
B胆の虚熱病症
黄疽・小便自利・結石症
C膀胱の虚熱病症
口渇・小便不利・浮腫(湿病)肝虚陰虚証
@肝血が不足の病症
睾丸の引きつり・舌不・月経不順・不妊症・筋肉の引きつり・半身不随・麻痺、筋肉硬直
A胆経の虚熱病症
頭痛(偏頭痛)・肩こり(胆経)・イライラ・不眠・めまい・寒熱往来
B心の虚熱病症
動悸・胸痛・上焦の汗・のぼせ・頭痛・鼻づまり
C脾胃の虚熱病症
便秘・食欲旺盛
D膀胱の虚熱病症
口乾・小便自利又は不利・膀胱結石・膀胱炎
Eその他の病症
虚熱多い病症→多汗・筋肉攣・皮膚乾燥・手足煩熱
虚熱少い病症→無汗・浮腫(血症)・関節痛・心下の停水肝虚肺燥証(肺の陰虚証)
@肺の虚熱病症(乾燥)
胸に熱感と圧痛・夜分覚醒・咳・喘息・咽喉のイガイガ感→咳
身体が温まると咳がでる・口渇
Aその他の病症
頭痛・頭重・午後に熱が上がる・※《参考資料》陽虚証、陰虚証の基本病症
@陽虚証(気虚証)
原気不足、虚弱・自汗・小便清長・四肢厥冷・悪寒・皮膚寒症・少気頼言・心悸→動悸・全身倦怠、無力感・遺精・足汗・眩暈→気虚・虚熱→陽虚熱(寒)・陽虚喘・関節不利・崩漏・便血・食欲不振→無
A陰虚証(血虚証)
皮膚枯燥・不眠→眠れない、浅眠・徴熱→倦怠感・口燥咽乾・五心煩熱→手足,心、胸中の煩熱・尿短赤・消痩→自然に痩せてくる・盗汗・肺燥→血痰、咽痛、声がれ・咳血→ツバに血がまじる・午後の潮熱・性欲亢進・遺精・心悸→動悸・眩暈・生理不順→痛、過少・耳鳴、頭眩・便秘・関節痛→動作時痛(老人)・
顔面萎黄
(漢方鍼医会・1995年)
《参考資料-3》
八綱理論の大要
1.はじめに
伝統的鍼灸医学は数千年の人体実験の繰り返しによって形成された医学であり、臨床の場にて反覆応用の経験集積により治療法則等の医学大系が構築されたものである。故に『経験的臨床医学』であると言われる。
その為に「医学」としての科学的実験の証明や理論構築よりも「術」を主とした臨床学術を構築する為の研修に主点がおかれる。
八綱理論は、伝統鍼灸医学の病症診断の基本となる。その大要を臨床の場より考察しまとめる。2.八綱理論とは
八綱理論は、病症・病位・病質(病情)・病勢等を「陰陽」を基本理論として表裏・寒熱・虚実に統括し、病証の本質と病理を考察し『証』に繋げる為の基本理論である。この理論は臨床の場にては、選経・選穴・虚実・補瀉等の決定に重要な意義をもっている。
@病位の深浅(病位)=表証・裏証
A病位の性質(病情)=熱証・寒証
B正邪の盛衰(病勢)=実証・虚証
C八綱を統括(陰陽)陰=裏・寒・虚(実)
陽=表・熱・実(虚)3.八綱理論の運用
八綱理論の臨床運用を「陰陽・表裏・寒熱・虚実」の各綱目につき以下簡単にまとめる。
@陰陽について
陰陽理論は八綱の総綱であり表裏・寒熱・虚実を総括する。
病変の発生は「陰陽失調」となる。
※生理→大過・不及の状態として把握する。
〈臨床運用〉
1.陰証と陽証
陰証=顔面蒼白・寒症で温を好む・四肢厥冷・悪寒・口渇は無い・呼吸が細い・小便清長・大便軟痢か無臭・声低く口は重い・脉状は沈または遅脉が基本。
陽証=顔面紅潮・熱症で寒を好む・手足温かい・熱感・口渇・呼吸が荒い・小便短赤・大便秘結で有臭・声高く多言・脉状は浮または数脉が基本。
2.陰厥と陽厥
現病症の発生経過により「病証の本質」を陰陽診断する事は、臨床の場では最も重要となる診方である。
イ、陽厥(熱厥)
四肢厥冷の陰証を主訴とするも、病症経過や他の病証に「頭痛・口渇・顔面紅潮・脉数」等の陽証を現す場合は『陽厥』と言う。
この様な病証の本質は「陽証」にある。
ロ、陰厥(寒厥)
陽虚陰盛より発症する厥証。身寒無熱・顔面蒼白・皮膚厥冷・精神虚脱し脉状が細弱の病症の後に四肢厥冷があるときは『陰厥』と言う。
この様な病症の本質は「陰証」にある。
3.陰虚と陽虚
陰虚と陽虚の病証診断は『証』の基本となる。その基本病症は以下の様になる。
陰虚=微熱(虚熱)・手足煩熱・午後の潮熱・消痩・口渇・口燥・尿短赤・不眠・肺燥(血痰・咽痛・声がれ)・皮膚枯燥……。脉状は浮虚が基本。
陽虚=原気不足・皮膚寒・四肢厥冷・食欲不振・自汗・悪寒・遺精・小便清長・眩暈・全身浮腫…。脉状は沈虚が基本。
4.真陰と真陽
真陰、真陽の理論は「陽気」「陰気」の基本である。
真陰=腎中の陰気。これが虚する(不足)と陰虚となる。
真陰は腎水。左尺の脉状にて診る。
真陽=腎中の陽気。これが虚する(不足)と陽虚となる。
真陽は命火。右尺の脉状にて診る。
5.亡陰と亡陽
亡陰、亡陽は病症経過における重篤な病状であり、多くの場合は死の転帰をとる。
亡陰=陰が亡くなり、身体の本質は極陽証のみとなる。(陰汗)
亡陽=陽が亡くなり、身体の本質は極陰証のみとなる。(陽汗)A表裏について
表裏の二綱は、主として病変の発生部位を区別する。
1.表病と裏病
表病=皮膚・肌肉・経絡等の表位に現れる病症。病勢は外に向かい発展する特徴がある。病状は悪寒・発熱・頭痛・身体痛・鼻塞・四肢倦怠……。
裏病=蔵府を含む内腔等の裏位に現れる病症。七情・飲食・労倦等によって起こる病症。病勢は内に向かい発展する特徴がある。症状は高熱・頭暈・煩燥・口渇・嘔吐・下痢・便秘・腹痛・腹満・胸痞…。
2.表裏と寒熱の関係
表寒証=頭痛・悪寒・発熱・項強・無汗又は少汗・骨節疼痛……。舌苔は薄白。脉状は浮緊。
表熱証=頭痛・軽い悪寒・高熱・口渇……。脉状は浮数。
裏寒証=悪心嘔吐・下痢・腹痛・四肢厥冷……。舌苔は白潤。脉状は沈遅。
裏熱証=口渇・煩熱・不眠・尿赤……。舌質は紅・舌苔は黄。脉状は洪数。
3.表裏と虚実の関係
表虚証=悪風・自汗・盗汗・倦怠感・無力感……。脉状は浮緩。
表実証=発熱・悪寒・無汗・肌肉や皮膚の激しいほてり……。脉状は浮緊。
裏虚証=頭暈・精神疲労・冷汗・四肢厥冷・食欲減退……。舌苔はうすい白。脉状は沈弱。
裏実証=譫言・発狂・手足に汗・腹脹満・心煩・大便不出…。舌枯は黄色・脉状は沈実。
4.表裏併病
表裏共寒証=表寒証と裏寒証が共に現れる。
表裏共熱証=表熱証と裏熱証が共に現れる。
表裏共虚証=表虚証と裏虚証が共に現れる。
表裏共実証=表実証と裏実証が共に現れる。
5.半表半裏の病証
病変が表裏の間に現れる病証。
主要症状は寒熱往来・胸脇苦満・心煩嘔気・眩暈……脉状は弦細。
6.表裏を経過する病症
表証から裏証に=病症の経過は重い。逆証。
(例)傷寒の場合→発熱・頭項強 張り痛む(表証)
口苦く・胸脇苦満・小便短 赤(裏証)
高熱・口渇・煩燥・譫言(裏証)
裏証から表証に=病症の経過は軽い。順証。
(例)麻診の場合→身熱煩燥・胸脇苦満(裏証) 皮膚に発疹(表証)B寒熱について
寒熱の二綱は疾病の属性を鑑別し、病症に現れる二種の異なった病質を分析する法則である。実質的には、陰陽盛衰の具体的現象を現す。
寒は生体の生活機能が減退した反応である。
熱は生体の生活機能が亢進した反応である。
治法の基本は、寒はこれを熱し熱はこれを寒するのである。
寒熱の二綱は、臨床の場にては三つの大きな意義を有する。
1.寒証と熱証による病質の病証診断。
2.上下による病症の病理診断。
3.寒熱の真仮による病証診断。◆寒証と熱証による病症
寒証・熱証の病質診断のポイントは、口の渇き・二便・四肢・舌苔・脉状等である。以下に基本的病証をあげる。
寒証=口渇せず・仮渇しても飲まない・温湯を好む・四肢厥冷・小便清長・下痢・顔面蒼白…舌苔は白滑。脉状は沈遅。
熱証=口渇する・飲む事を欲する・冷水を好む・潮熱し手足煩燥・小便短赤・大便秘結・顔面紅潮……。舌苔は黄色で荒い。脉状は滑数。◆寒熱の上下による病理診断
寒熱病証の上下により病理等を診断する。
寒熱病証の臨床的意義は上下の診察にある。上熱下寒・上寒下熱・外熱内寒・外寒内熱や上下共寒、熱等の病証による病理診断がその要諦となる。
(寒熱の上下病証)
寒が上にある病証=呑酸・脾の運化 障害による消化不良・上焦の冷えによる吃逆(シャックリ)・温湯を好む。
(注)呑酸(吐酸)は酸っぱい水が胃から咽に上って下がる病証。病理としては、肝気が胃を犯す為に現れる病証。
寒が下にある病証=腹痛のある下痢・仙気(下腹痛)・下肢厥冷。
熱が上にある病証=口渇し水湯を好む・喉痛・顔面紅潮・眼赤・歯痛・頭重痛と脹
熱が下にある病証=便秘・小便黄濁、短赤、疼痛・下肢の腫痛。
(寒熱病証の病理考察)
上熱下寒=上半身に熱、下半身に寒の病証。上部の気血が充溢し下部の気血が不足した病理状態。
上寒下熱=上半身に寒、下半身に熱の病証。上部の気血が不足し下部に充溢した病理状態。
外熱内寒=体表に熱、体内に寒にある病証。(表熱裏寒)体表の気血が充溢し発熱し、体腔内の蔵府は気血が不足して衰弱した病理状態。
外寒内熱=体表に寒、体内に熱のある病証。(表寒裏熱)体表の気血が内蔵に集中して極度に充溢し、為に内部が積熱して四肢厥冷等の病証を惹起する病理状態。◆寒熱の真仮による病証診断
寒熱の真仮を病証診断する意義は、病変の本質を知り正しい治療方針決定の為に重要である。
真熱仮寒=病証の本質は「裏熱」にあるのに、現症として四肢厥冷等表の冷症があるも脉状は数を呈する。そして、以下の内証を現す。
(内証)口渇・悪心・動悸・腹部脹満・小便赤短・便秘等の熱証を現す。(陽厥)
真寒仮熱=病証の本質は「裏寒」にあるのに、現症として外表等に熱や湿疹等の病症を現すも、脉状は微弱・虚数を呈する。そして、以下の内証を現す。
(内証)口渇せず・仮渇しても飲まない・温湯を好む・四肢厥冷・小便清長・下痢等の寒証を現す。(陰厥)
※寒熱真仮の診断ポイント
(脉状)仮熱の脉状は浮数であるが軽按するとなくなるような虚脉を呈し真の熱証ではない。仮寒の脉状は沈遅であるが軽按すると滑で有力の脉状を呈し真の寒証ではない。
(病証)内証を重視する。C虚実について
虚実の二綱は、臨床の場では治療に直接繋がる最も重要な綱目である。
虚実は、表裏・寒熱の綱領でもある。(表虚裏実・表実裏虚・表裏共虚・表裏共実)
そして臨床上二つの意義を有する。1.体質の虚実
虚証=正気不足により生じた病証。病理的には、気血水の不足・衰退等の病証状態を指す。
実証=邪気旺盛により生じた病証。病理的には、気血水の有余・強実等の病証状態を指す。
2.病証の虚実
○虚証の臨床病症
『虚証』の臨床病症は、顔面蒼白か萎黄色・全身倦怠感・精神の不活発・動悸・息切れ・寒症・四肢厥冷・手足煩熱・多汗・盗汗・下痢か軟便・原気不足……。舌苔は少ないか無苔。脉状は虚・無力。
@気虚=気の不足による病証。蔵府の機能低下。
〈病理と病因〉
老化による体力の低下・飲食の不節制・疲労や過労・体質の虚弱。腎労(納気不足)
〈臨床病症〉
体重疲労感・原気不足・不食・多汗・眩暈・息切れと動悸・風邪を引き易い
舌苔は少なく淡白。脉状は虚で無力。
A血虚=血の不足による病証。蔵府経絡が血の栄養、滋潤作用を失調した病証。
〈病理と病因〉
脾胃の虚・肝の機能低下・出血や循環障害。
〈臨床病症〉
皮膚が萎黄色・皮膚乾燥・口唇が荒れる・眩暈・動悸・四肢のシビレ・筋の痙攣・不眠・眼が乾燥…。舌苔は淡白。脉状は沈細で虚。
B水虚=津液不足による病証。
〈病理と病因〉
発汗過多・出血・尿量過多・激しい下痢・熱病・慢性病による津液不足。腎の機能低下・脾胃の虚・三焦の虚。
〈臨床病症〉
口渇・口唇や口内の乾燥・皮膚枯燥・小便不利・便秘……舌質は乾燥。脉状は細数。
C陽虚=気虚の進んだ病証。寒証を生じる。(虚寒)
〈病理と病因〉
寒邪・脾胃、腎の陽気虚。命火の虚(真陽の虚)。肺気の虚。
〈臨床病症〉
気虚の病証に寒証が加わる。四肢厥冷・温を好む・多尿舌苔は淡白。脉状は遅で微弱。
D陰虚=血虚が進行。津液が不足した病証。(虚熱)
〈病理と病因〉
津液不足・肝腎脾の虚。虚熱、身熱病症。
〈臨床病症〉
血虚の諸病症・逆気・胸部の熱感・イラツキ・四肢煩熱・口渇・口燥・盗汗……。舌苔は鏡面。脉状は細数。
E虚熱=陰虚の病証。
F虚寒=陽虚の病証。○実証の臨床病症
『実証』の臨床病症は、発熱・腹部膨満感・腹痛・頭痛・胸苦しさ・便秘・呼吸促迫・煩燥・痰が多い……。舌質は厚い。脉状は実・有力。
@気実=気の機能停滞(気滞)。
〈病理と病因〉
精神的ストレス・外邪や飲食労倦にて発症。
〈臨床病症〉
胸腹部の苦悶感・膨満感・痛みが移動・仙痛……。胃実(胃気気滞)と肝気鬱結(肝気気滞)がある。
※肝気鬱結=精神的症状(イライラ・憂鬱・怒気)
A血実=?血。血の運行障害。出血(内出血)による血滞。
〈病理と病因〉
打撲、出血(内出血)、交通事故等による血滞。五労(五蔵の慢性疲労)により発生し発症する。婦人科の病証。
〈臨床病症〉
皮膚暗紫色・皮膚枯燥・慢性的不動痛・頭痛・肩こり・生理痛・潮熱・口渇・冷えのぼせ・便秘・胸脇痛・動悸・胃痛・血便・下血・崩漏・関節の腫痛・肝障害・健忘症。
B水実=津液の停滞による病証。湿・痰飲・水腫の病証。
〈病理と病因〉
肺脾腎の機能失調より発症。
〈臨床病症〉
咳嗽・胸脇痛・口渇・便秘・四肢厥冷・食欲不振・悪心・嘔吐・全身倦怠感……。
C陽実=気実の病証。
D陰実=血実、水実の病証。
E実熱=熱邪が盛んになるために発症。
〈臨床病症〉
発熱(壮熱)・口渇・多飲・寒冷を好む・腹部膨満・腹痛・尿は濃く少ない・便秘。舌苔は黄。脉状は洪数実滑で有力。
F実寒=寒邪が盛んになりすぎて陽気が滞った病証。
〈臨床病症〉
悪寒・四肢厥冷・腹痛・便秘。痰が多い。脉状は沈伏か弦緊で有力。
(漢方鍼医会・1996年)
《参考資料-4》
表裏に関する資料
1.はじめに
生体内蔵の主要な器官は五蔵六府である。この五蔵は精気を貯蔵する所であり、故に「蔵して瀉さず」であり、六府は受清泌濁の器官であり、故に「瀉して蔵さず」である。それらは互いに分業し互いに組み合わされて生体の正常な生理活動が保たれている。更に、五蔵六府の他に経絡や奇恒の府がある。これらの生理機能に進退等の現象が表れた時に病症が発生する。その病理現象を八綱理論の中の「表裏」と脉状の「浮沈」と関連づけて臨床に応用するのである。
表裏とは病の深浅・病勢の動静・病状の経過や進退等の位置を表す。
表の位置としての病症は気の病位として「外感病」、裏の位置としての病症は血の病位として「形質の病症」と「五蔵六府の病変」とに分類できる。2.気の病位と病症(外感病)
風(木)
空気の流動と激動の現象である。気候が正常である時は「そよ風が人を養う」という悠長な情景を表している。もし気候が変化し大過あるいは不及の現象が発生した時に疾病の要因となる。この「風」が人体を傷る時は『賊風』となり、正気を損なう時は『虚邪』というのである。
生体の病症としては頭痛を中心に発病していくのであり、これが万病の基本となる。
暑(火)
天候が酷暑の現象である。人体はこの激烈な温度環境の変化に一旦不適応となる。この様な状態の時に『暑病』が発生する。
生体の病症の中心は発熱現象である。
湿(土)
空気中に水分が適度に含まれ湿度が高くなった現象である。長夏の季節には雨量が比較的に多く、土地が湿り、物がカビ易くなり生体は脾蔵の運化機能に影響を与える。
生体の病症の中心は飲食・労倦の病証が発生する。
燥(金)
燥と湿は相反する性質を持つ。空気中に含まれている湿度は減少し、その為に乾燥現象が起こったものを「燥」という。
生体にあっては喉の乾きを覚え、病症としては咳嗽を中心に病が発生する。
寒(水)
気温の低下した現象である。この種の低温酷冷の気候は冬季に現れ、生体が寒気を感ずる時は病に至る。
生体にあっては悪寒を中心に病症は発生する。3.血の病位の病症
@形質の病症
風(木) 一時的、或は長期の機能亢進による経絡の破損(陽経・痛)・炎症(陰経)を発症する。
熱(火) 全身の熱が発散されない為に「内熱病症」を発症する。
湿(土) 体内の水分が適量に排泄されない為に寒熱現象を起こし、病症として「浮腫」や関節の諸病症を発症する。
燥(金) 体内の水分不足により寒熱現象を起こし、病症として炎症や機能の異常衰退を発症する。
寒(水) 低温度が生体に影響し各種の生理機能の衰退病症を発症する。
火(火) 五気(蔵気)の異常興奮により病症は更に増悪する。
※六淫の邪気が血の病位に侵襲し各種の病症を発症する基本理論は、四要理論(衛・気・営・血)と三焦弁証理論である。《病症の進行経過について》
表裏理論は病症の位置や部位を現すが、病邪が形質に侵襲した病変の把握は三焦・四要・四傷・病期・病機の諸理論を応用する。A五蔵六府の病変
蔵府の病症分類は表裏・寒熱・虚実等で分析するのではなく、五蔵六府の生理活動と病理反応を基本として、七神(魂・神・意智・魄・精志)を中心として器官と組織に現れた病変を分析し帰納し『証』に繋げるのである。4.三焦弁証と四要理論(衛気営血弁証)について
清の時代に発生し体系された『温病論』より臨床応用される。
《三焦弁証》
温熱性病症の病状経過(軽・重・浅・深)の弁証。
@上焦症状(表の病変)
対象:肺経と心包経・肺臓と心包の温熱病症
肺→気と皮毛 心包→血と神明
症状:悪寒と悪風(軽)・発熱・自汗・頭痛・口渇又は不渇・咳嗽
心包に熱伝→意識障害・うわごと・煩躁
脉状:浮滑数
A中焦症状(裏の病変)
対象:胃経と脾経・胃と脾蔵の温熱病症
胃→燥 脾→湿
症状:胃→高熱・多汗・上気・呼吸促迫・便秘・小便少・口渇
脾→潮熱・頭重・身体重く不食・小便不利
B下焦症状(裏の病変)
対象:腎経と肝経・腎臓と肝臓の温熱病症
腎→陰と津液 肝→血
症状:腎→夜間煩躁・口渇し不飲・咽喉痛・下痢・尿色赤変
肝→寒熱錯綜・心中痛、煩悶・不食し口渇・下痢《四要理論》
外感温熱病症の弁証理論であり、六経弁証の基礎の上に発展した理論である。六経弁証と三焦弁証を補足する。
(衛気営血弁証)
@衛気症状(表証・上焦病の初期)
概念:温熱病の初期
皮毛に邪を受けて「衛気」の機能失調により発症。
肺の病症がよく発症する。
症状:発熱・悪風・悪寒・鼻閉・咳嗽
脉状:浮
A気分症状(裏証・中焦病)
概念:表邪が裏に入り発症。
正気と邪気の激しい抗争を展開し「裏熱証」を発症する。
症状:高熱・口渇・尿色が濃い
脉状:滑数又は洪大
B営分症状(裏証・中・下焦病)
概念:温熱病の極期、あるいは後期に発症。
邪が心包に伝入し発症。心神の病変が出現する。
症状:発熱・不眠・煩躁・意識障害・うわごと・舌質が赤絳(特長)
脉状:細数
C血分症状(裏証・下焦病)
概念:熱邪が血に入り発症。
心・肝の機能失調を発症する(血分の損傷)。
腎の機能失調も発症する
(腎陰の損傷)。
症状:発熱・狂妄・意識障害・うわごと・痙攣・引きつけ
吐血・鼻血・便血・舌質は暗紫色
脉状:細数又は弦数
(漢方鍼医会・1999年)
《参考資料-5》
体表観察と臨床 (漢方鍼医会学術部編)
1.はじめに
漢方鍼医会が進める学術構築の基本は「素問」「霊枢」「難経」にある。我々が臨床研修している「漢方はり治療」の病理診察の目的は蔵府経絡論の基礎ともいえる気血津液の過不足にあり、手法の基本は難経医学における衛気・営気の補瀉法にある。
体表観察の臨床応用も目的は同じであり、気血津液の病理状態を観察していかに衛気、営気の手法に繋ぎきれるかにある。2.目的
気血津液の過不足や機能失調等を観察する事により、病体の病理状態を把握し治療の指標である病証を診断する事にその目的がある。これにより主証が決定され、選穴・手法・予後等の理解に繋がる。3.臨床応用の診察範囲
体表観察にて臨床応用できる診察範囲には以下の六項目がある。
- 顔面の望診(精神・予後を診る)
- 尺膚診(色脉膚の相応を診る→青弦急・赤数熱・黄大緩・白浮?・黒沈滑)
- 下腿診(切経・寒熱・水滞等を診る)
- 胸腹部診(寒熱・?血等を診る)
- 背候診(督脈経・脊際経・兪穴・三焦の変調を診る)
- 前、側頚部診(艶と緊張感・寒熱等を診る)
4.気血津液の具体的触覚と病証
体表観察の基本は「気(陽気)」の触察にあり、病理の基礎は「津液(陰気)」の観察にある。臨床の場にあっては「気血津液」の観察が基本であり、「津液」を基礎として気血との相関性を診察し病証の病理状態を把握する事により、いかに衛気・営気の手法に繋げるかである。気・血・津液の臨床の場における具体的触覚については・・・・・
@気(陽気)⇔ 衛気の観察
具体的には、皮毛・皮膚表面にて艶と働きを診る。
病証:気虚・気滞・気逆・精気の虚・・・・・・
気の触覚:気の状態、つまり艶やはたらき(寒熱・滑?・痛痒…)の異常を診るには、極めて軽く皮毛ないし皮膚表面を診察する。これは概ね衛気の状態に通じる。枯燥して艶がなければ精気の虚とも診る。これは皮膚の状態のみならず全身の精気の状態をも表しているからである。A血(陰気)⇔ 営気の観察
具体的には、肌肉・筋・腱の深さで艶と硬さを診る。
病証:血虚・血?・?血・・・・・・
血の触覚:血の状態、つまり堅さを診るには、肌肉、筋、腱の深さまで手を沈めて診察する。これは概ね営気の状態に通じる。なお、色も血の診察ポイントとして重要である。また血の異常は皮膚や肌肉、腱などの艶にも表れる。B津液(陽気・陰気)⇔ 衛気と営気の観察
具体的には、皮膚面と肌肉の間、骨に至る間にて艶と柔らかさを診る。
脈外(衛気)脈内(営気)にても観察する。
病証:陰虚・湿病・水気・痰飲・血分・水分・・・・・・
津液の触覚:津液の状態、つまり艶や柔らかさを診るには、皮膚面と肌肉のあいだ、或いは骨に至るまでを軽く手を上下(内外)、或いは左右に動かして診察する。これは概ね衛気(三焦の気)の状態にも通じる。なお、色についても重要な診察ポイントである。また、脈内にも血や津液は存在するがこの診察については脉状診が最も優れた診察法である。5.臨床応用と運用
体表観察の臨床応用は「衛気」「営気」の観察が基本となる。血・津液の病理的把握もつまるところ衛気・営気の診察にある。以下の八項目は臨床的に重要である。
@顔面の望診
顔面の全体的望診により「神」を診る。特に眼や印堂部の変化等により精神的疾患と予後を診る。
A尺膚診
難経13難の応用であり、尺膚の色・脉状・尺膚の触覚変化等により相応不相応を診察し病証把握に繋げる。
特に尺膚の変化(急・数・緩・?・滑)を診る事により、病蔵・病経の把握や寒熱の診察・選穴・手法・脉状把握にも応用ができる。《参考》相応の色・脉・尺の表
五主
色
脉状
尺膚の状態
気血津液
肝
筋
青
弦・急
急⇒筋緊張・艶無
血(津液)
心
血脈
赤
浮・大・散
数⇒外感熱病
血(津液)
脾
肌肉
黄
緩・大
緩⇒軟・緊
気血・津液
肺
皮毛
白
浮・?・短
?⇒燥・渋
気(津液)
腎
骨
黒
沈・濡・滑
滑⇒滑・艶無
津液(気)
B下腿診
下腿部、特に膝関節以下の経絡や気血津液の診察にて寒熱・水滞等を観察する。
C胸腹部診
この部では「腹証」を診察し病理との整合性を観察する。
胸部では寒熱・気虚・気逆・水滞等を診る。
腹部では寒熱・痰飲・?血等を診る。
D背候診
後頚部から腰仙臀部に現れる気虚・気滞・水滞・?血等を観察すると共に兪穴の反応も参考にする。
督脈経の観察は特に重要であり、この部には急性熱病の反応が現れやすい。
脊際経には急慢性病症の反応が顕著に現れる。
後頚部の反応は肝・胆経の変動が多いので選経に応用できる。
肩甲間部の反応は肺・肝経の変動が多いので選経に応用できる。
E前、側頚部診
この部には気の変化がよく現れる。
証決定の正否・治療側の決定・ドーゼ等の判定に臨床応用が出来る。
1.汗について
汗は「証」との相関性で観察し応用する。臨床的には
○自汗は気虚・陽虚で気力の減退や精神疲労と診る。
○盗汗は陰虚で手足のほてりや口渇を現わす。
○頭汗は陽実(陰虚)で上焦の邪熱と診る。
また、汗の温・冷や治療中に出る汗も臨床的に意義がある。
2.手足厥冷と煩熱について
手足厥冷や煩熱については必ず観察すべきである。
臨床的には陰虚との相関性に臨床的な意義がある。6.臨床実践の場における体表観察の実際
最後に臨床の場における体表観察の実際につきまとめる。
@訴える病症との整合性を診る。
特に問診との整合性である。たとえば主訴が頭痛だったとする。問診だけでは場所もその程度も病理推察にも必要な情報を正確には収集できない。なぜならば、患者は概ね過大申告や間違った訴えをするものであるから。したがって主訴部の切診を行い訴えとの整合性を診る。これは病理推察、手法、ドーゼ、治療終了、予後判定などの決め手になるので欠く事のできない診察行為である。また、主訴部を切診すれば必ず気血津液の変化が認められるものである。A脉状・脉証との整合性を診る。
脉状ならびに脉証との整合性を診る。たとえば浮実の脉は衛気の停滞、浮虚ならば衛気の虚、沈実ならば営気の停滞、沈虚ならば営気の虚をあらわす。また水滯を診とめて左尺中が浮大虚であれば腎の陰虚証。皮膚が枯燥して血にも津液にも充実感が診とめられず、脉は沈細虚で右関上にこの現象が特に強くあらわれていたならば脾の陽虚証をあらわしている。このようにして、より深く主証や手法に近づけることができるのである。B選穴・手法との整合性を診る。
主証を決定した段階であるが、手法としては衛気にアプローチすべきか営気にアプローチすべきか、或いは両方のどちらからアプローチすべきか、また、選穴はどうするか等も忘れずに考察する。C気血津液の変化を観察しながら臨床を進める。
取穴の段階でも気血津液は必ず変化をし始める。これは主訴部や脉状や手足の経絡の動き、或いは腹部などによって確認することが可能である。実際に鍼を行えばもう少し明確な変化が表れるものである。だから、臨床の実際は気血津液の変化を観察しながら進める事が基本となる。7.結語
体表観察の臨床応用は漢方はり治療独特の診察法であり、臨床に直結したすぐれた方法であると確信する。今後とも臨床研究を続け臨床学術として構築したい。
今後の研究課題としては、気血津液を基礎とした腹証の臨床開発と足三焦経の臨床研究が残されている。
(漢方鍼医会・2001年)
《参考資料-6》
衛気営気の手法について (漢方鍼医会学術部編)
1.はじめに
この衛気・営気の手法は、夏期研を重ねる毎に変化発展を遂げている項目の一つであります。難経に於ける、衛気・営気の補瀉が提言されてから3年が経とうとしています。当初この問題を考え出すと、「精気と言いながらいったい何を補っているのか」「なぜ衛気なのか営気なのか」「瀉法と言いながら一体何に対して何を行っているのであろうか」・・・。
今回、難経の提唱する「有余と不足」を対象にした調整を主眼とし、瀉法でなければ取りきれないものを「霊枢」九鍼十二原編の表すところの邪気実に対する手法と、?血に対する瀉法として刺絡を提案しこの手法を提言します。2.基本刺鍼の重要性
漢方はり治療は、病体の気血津液の変調を調整する事を目的として刺鍼する。その目的を達成するためには、気血津液の何れを対象として刺鍼するのか、はっきりとした目的意識を持たなくてはならない。今回、その目的意識に叶う技術を開発した。
その技術を思いのままに使いこなすには、正しく手に覚え込ませなくてはならない。日々の臨床では応用も必要であるが、ともすれば基本が崩れがちである。研修会を機に刺鍼の基本を再確認すべく下記の項目について研修する3.自然体について
ベッドサイドにおける術者の姿勢は治療全体を左右する。術者はもちろん患者も余計な力が入らない姿勢が望ましい。それが自然体である。
よく「経絡治療はアートだ」と言われるが、日本の「道」と言われるものには「形」がある。それらはみな、その技能を発揮する上でもっとも合理的なよけいな力が入っていない姿勢である。そしてその姿は美しい。治療家の姿もそうあるべきだ。4.押手の構え方(押手の意義)
押手は鍼を目的通りに操作する上で重要な役割をする。漢方はり治療は気を調整する事に重点をおいている。したがって押手はその目的に叶ったものでなければならない。押手は拇指と示指とで作るが、その二本の指を合わせて取穴した穴との接触面に出来る隙間が問題である。隙間は出来るだけ少ない方が良い。受講者それぞれの好ましい押手を指導しなければならない。5.刺手の構え方(刺手の意義)
刺手は鍼を動かす手であり、その目的により構え方は異なる。詳細は「衛気・営気の補瀉手法」に譲るが、刺手は押手と共によけいな力が入らない事が大事である。6.気血津液と手法
気血津液の中で始めに動き出すものは、「気」である。次が「津液」であり、一番動きにくいものが「血」である。
衛気の手法を行い、陽気が補われることによって停滞していた津液が動き出す。営気の手法を行い、血中の津液が動き出すことによって停滞していた血も動き出すのである。7.衛気・営気の手法
@衛気の補法
衛気は体表を防御する気である。体表では肌表を保護し外邪の侵入を防ぎ、?理の開闔に関与して発散や体温調節を主るほか皮毛を潤す。体内では臓腑組織を温煦することによってその活動を活発にする。
つまり衛気とは循環している陽気のことである。これが胃に行くと胃の陽気となり、肺に行くと肺の陽気となる。また、腎に行けば命門の火となるのである。しかしながら、一般的には表において主に働くものを衛気と言う。
目的:この手法は陽気(衛気)を補うことを目的とし、全身の脈外を循る陽気を補う方法であり活動力を増す事になる。結果として停滞している津液が動き出し、更に脈外に漏れ出た血に作用し、ともすれば津液に連動して血が動き出すのである。これが衛気の補法である。
手法:衛気の動きはすばやく、主に皮表にあり漏れやすい陽気である。ゆえに取穴における押手は皮毛に応じる重さにてごく軽くする。手法は、刺手に於いては、鍼をきわめて軽く持ち、角度は30°以下の水平に近い状態でねかせて、皮下(営気)の部に至らない様に決して押し込むことなく、静かに流注に従って鍼を接触させ、衛気が至るのを待って抜鍼し皮毛の重さで鍼孔を閉じる。
ポイント:用鍼は柔らかく細い。押手は軽く、時間は手早く短く、角度は寝かせ、深度は接触(接触以前も有り)。
毫鍼:衛気は動きやすい。手法は接近鍼、それもチョという手さばきで目的は達成出来るものである。
効果:衛気は体表や臓腑組織の潤いをうながす、ゆえに皮毛にその影響を現わし陽気が盛んになる。臓腑の機能も高まるものである。A営気の補法
営気は栄養分の高い気である。経脈を通じて運ばれて全身を栄養し潤すほか、血の組成成分であり津液とともに血を化成する。つまり営気とは、血や津液を循らす血中の陽気のことである。従って経脈の作用は営気の作用と考えてよい。
目的:この手法は、営気(陰気)を補うことを目的とし、血の循り(血中の陽気)を促進させる方法である。従って営気を補う事は、陰にして動きにくい気を促す事により結果的には活動的な衛気の働きを抑制させる。この手法は、瀉的効果を得ることにもなる
手法:血脈もしくは肌肉に応じる重さで押し手を構える。角度で表現するなら60°とやや立てて構え、押手の間に鍼を下ろすが決して衛気を傷つけないように押し込むことなく流注に従って鍼を接触させ、衛気に対する手法よりも入念におこない、営気が至るのを待って、血脈もしくは肌肉の重さで抜鍼する。
用鍼:毫鍼の場合は衛気を傷つけないように、陽気(衛気)の存在する場所(皮毛)より深めに押手を構える。深めと言っても皮膚面を押し下げない程度がよい。
鍼先をおしつけないように接触させ、衛気の手法よりも少し長めに補う。直鍼でもよい。
ポイント:鍼はやや立て(60度程度)、やや入念に行う。鍼の深度は皮膚が凹むほど押しつけてはならない。
効果:血中の津液が補われるために血の循りもよくなり、滞りや血熱等も解消される。邪熱はとれ肌肉の緊張もゆるむ。そして、艶と潤いが出てくる。又、血虚性の陽虚も改善される。この手法は、脾虚肝実証や肺虚肝実証にも対処が出来る。あくまでも補の手技であるが、「溜まったものを外に出し移す、滞りを流す」の目的が達成される手法である。B瀉法
目的:この手法は邪(熱)を瀉すことを目的とし、表や陽の経絡上に実熱が停滞、充満(陽実証)したものを抜き取る方法である。
たとえば病症も脉証も陽実を表していて、穴所及びその経絡上、或いはその周辺に熱実を確認したならば、『霊枢』九鍼十二原編に説かれている瀉法のテクニックにて衛気を瀉すべきである。
手法:邪(熱)は皮下にある。手法は営分に至ることの無いように皮表をごく軽く手早くチョンチョンと行うのも良い。また、衛分にて軽く行い発汗させても目的は達せられる。この手法は、ステンレスの毫鍼やヘラ鍼が一般的である。ざん鍼やへら鍼の手法は先端でたたくように行う。
効果:津液の停滞、充満が解消され、全身の色艶がよくなり内の機能も高まる。C刺絡
この手法は経絡上に滞るものを直接抜き取る事が目的であり、?血性の衰退や実熱等も対象になる。
手法:ステンレス鍼、刺絡鍼等で邪気をぬきとる。又、?血そのものを直接に抜き取る方法もある。
特定経絡の流れを阻害されている場合には井穴刺絡を、局所が阻害されている場合には、皮膚面に停滞している?血そのものからの刺絡を行う。栄気の瀉法とも言い換えられる。
効果:営気(血中の陽気)を補っても目的が充分に達せないとき、停滞するものを直接除去することによって血の流れが良くなるのである。8.補の手(押手づくり)
治療家の手は患者に多大な影響を与えるものである。従って補の押手を作っておくことは大変重要な治療条件である。具体的には「気持ちの良い手」の一言に尽きる。そのポイントを以下に列記する。
- 暖かい手にしておく。
- 汗の少ない手にしておく。
- 母指及び示指以外の指はそろえて気が隙間から漏れないようにして臨む。
- 母指・示指の密着度と押手下面が揃っている事が気を漏らさない事への重要ポイントである。
D 治療家の精神状態の安定が何にもまして必要である。
9.標治法としての営衛の考え方
浅部である衛気(陽気)を巡らせ補う事が補であり、深部である営気(陰気)を巡らせ補うことが瀉である。
陥下や皮膚の枯燥などの衛気の虚に対しては、陽気を巡らせ補う事が補であり、実の反応部には、深部の営気を補う刺鍼により営気(陰気)を補うことになり、浅部の衛気(陽気)の実反応を抑えることが出来る。
深部の営気(陰気)が不足するために陽実が起こる。これは、陰虚のための陽実反応であり、本質的には陰虚であり、現象的には陽実反応であると言うことが理解できると思う。以上の二法を使い分ける事により、五臓の精気の虚である陰気を補い、触覚所見としての補瀉を行う事が肝要かと考る。《参考-1》衛気・営気の手法を難経より
1.難経71難
難経71難に曰く、経に曰う、栄を刺すに衛を傷る事なかれ、衛を刺すに栄を傷る事なかれとは何の謂ぞや。然るなり、陽に鍼する者は鍼を臥してこれを刺す。陰を刺す者は、先ず左手を以って鍼する所の栄兪の処を摂按して、気散って乃ち鍼を内れる。是を栄を刺すに衛を傷ることなかれ、衛を刺すに栄を傷ることなかれと謂うなり。
2.難経76難
難経76難に曰く、何をか補瀉と謂う。当にこれを補うべきの時、何れの所より気を取り、当にこれを瀉すべきの時、何れの所に気を置くや。
然るなり、当に補うべきの時は衛より気を取る。当に瀉すべきの時は栄に気を置く。その陽気不足、陰気有餘は、当に先ずその陽を補い、しかして後にその陰を瀉すべし。陰気不足、陽気有余は当に先ずその陰を補い、しかして後にその陽を瀉すべし。栄衛の通行、此れその要なり。
(1)陽気不足、陰気有餘=衛を補い後に衛気を栄まで引き下げて栄に移しこむ
(2)陰気不足、陽気有余=栄を補い後に栄気を衛まで引き上げて衛に移しこむ《参考-2》衛気営気の証別手法
1.陰虚証―陰気不足、陽気有(虚熱)と診て
@衛の浅い部位に刺鍼して陽気を得てそれを営分に推し入れて陰気を補う営気の補法が基本的手法である。
A虚熱が多い場合は、補った陰気を少し陽分に持ってくる。
B陰気不足による虚熱であるから、原則的には瀉法は必要ない。
2.陽虚証―陰陽共に陽気不足と診て
@衛の浅い部位にて充分陽気を集める衛気の補法が基本的手法である。
A集めた衛気(陽気)を営分にも推し入れて陰の陽気も補う。
※陰虚証は陰気不足の虚熱で陽気がある。しかし、陽虚証は陰陽共に陽気不足があるので確実に陽気を得る事が必要である。
3.陽実証・陽盛証
@外邪性の急性熱証は、肺気虚による表の陽気の停滞・充満と診て、衛気の補法にて肺気(陽気)を補う。そして、表又は陽経から衛気(陽邪)の瀉法を行う。
A内傷性の急性熱証は、脾気虚による胃腸熱の停滞・充満と診て営気の補法を行う。
4.陰実証
@肝実の病理は、肝経・肝臓に熱や血が停滞・充満したと診て営気の補法により停滞・充満を流してやる。
A慢性の肝実は、?血病症も古くなり虚冷となる。営気の補法が基本ではあるが病症によっては置鍼・刺絡・灸頭鍼・点灸も必要となる。
5.陰盛証
@陽虚証が進行・悪化した病証で陰気も停滞する。手法は衛気の補法が基本である。
A病症によっては徹底的な温補が必要となる。
※病症の経過により現代医療の協力が必要となる。《参考-3》
1.手技手法にて更なる成果を手に入れる為に
自然体は特に補瀉手法を行う際は重要であるが、その前に余計な力が抜けた状態を実現する事が何より大切である。腕時計など装飾品は外しておくことが賢明である。
2.押手の重さについて
衛気の補法=皮毛に応じる重さで押し手を構える。
衛気(陽気)を補う手法。「経絡を補う」「気を補う」と表現する時は、概ねこの衛気の手法をさしている。衛気は経脈の外を流れているので極めて浅く、手法が拙劣だとすぐに飛散してしまうので乱雑にならない注意が肝要である。極めて浅いとは皮毛に応ずる重さと表現する方が適当だろう。皮毛に応ずる重さとはたとえば片方の手で反対側の上腕を触った時に、上腕側で触られたことが触知されるようでは既に血脈や肌肉に応ずる重さであり、上腕側では触知されないがちゃんと接触をしているという極めて軽微なものだと理解されたい。気の補法=血脈もしくは肌肉の重さで押手を構える。
営気(陰気)を補う手法。難経では営気を補うことは瀉に直結するかのようにも読み取れるが、陰気を補うことにより経絡の持つ力によって全体のバランスが整うのであって、決して瀉法を施しているわけではないし瀉法の代替え品でもない。「血中の陽気」を補っているのであるから経脈内の気を補うことであり、血脈もしくは肌肉の重さで軽擦し、生きて働いているツボが取穴できたなら血脈もしくは肌肉に応じる重さで押し手を構える。(漢方鍼医会・2001年)
《参考資料-7》
難経刺法論
難経医学が進める「衛気営気の補瀉手法」の参考文献をここにまとめました。臨床研究の資料として活用して頂きたいと思います。
七十難
七十難曰、春夏刺浅、秋冬刺深者、何謂也。
然、春夏者陽気在上、人気亦在上、故当浅取之。秋冬者陽気在下、人気亦在下、
故当深取之。
春夏各致一陰、秋冬各致一陽者、何謂也。
然、春夏温、必致一陰者、初下鍼、沈之至腎肝之部、得気引持之陰也。秋冬寒、必致一陽者、初内鍼、浅而浮之、至心肺之部、得気推内之陽也。是謂春夏必致一陰、秋冬必致一陽。
《和訓》
七十難に曰く、春夏は刺すこと浅く、秋冬は刺すこと深きとは何の謂ぞや。
然り、春夏は陽気、上にあり、人の気も亦た上にあり。ゆえに当に浅くこれを取るべし。秋冬は、陽気、下にあり、人の気も亦た下にあり、ゆえに当に深くこれを取るべし。
春夏は各の一陰、秋冬は各の一陽に到るとは何の謂ぞや。
然り、春夏は温、必ず一陰に到るとは、初めて鍼を下すに、これを沈めて腎肝の部に至り、気を得て引いてこれを陰に持するなり。秋冬は寒、必ず一陽に到るとは、初めて鍼を内るるに、浅くしてこれを浮かべ心肺の部に至り、気を得て推してこれを陽に内るるなり。これ春夏き必ず一陰に到り、秋冬は必ず一陽に到るを謂うなり。
《要点》
四時によって刺鍼手技の方法を分ける法則を論ずる。
四時における陽気のありどころにより鍼手法の根本原則を論ずる。七十一難
七十一難曰、経言、刺營無傷衛、刺衛無傷營、何謂也。
然、鍼陽者、臥鍼而刺之。刺陰者、先以左手摂按所鍼營兪之処、気散乃内鍼。
是謂刺營無傷衛、刺衛無傷營也。
《和訓》
七十一難に曰く、経に言う、営を刺すに衛を傷ること無く、衛を刺すに営を傷ること無かれとは、何の謂ぞや。
然り、陽に鍼するには、鍼を臥せて之を刺し、陰に刺すには、先ず左手を以て鍼する所の営兪の処を摂按し、気が散じて乃ち鍼を内るるなり。是れを営を刺すに衛を傷ることなく、衛を刺すに営を傷ること無かれと謂うなり。
《要点》
営衞の基本的刺法について論ずる。
陽と陰の深浅における基本刺法について論ずる。七十二難
七十二難曰、経言、能知迎随之気、可令調之。調気之方、必在陰陽、何謂也。
然、所謂迎随者、知栄衛之流行、経脈之往来也。随其逆順而取之。故曰迎随。
調気之方、必在陰陽者、知其内外表裏、随其陰陽而調之。故曰調気之方、在在陰陽。
《和訓》
七十二難に曰く、経に言う、能く迎随の気を知れば、之を調えしむべし。調気の方は必ず陰陽に在りとは何の謂ぞや。
然り、所謂迎随とは、栄衛の流行・経脈の往来を知り、其の逆順に随って之を取ることなり、故に迎随と曰う。
調気の方は必ず陰陽に在りとは、其の内外・表裏を知りて、其の陰陽に随って之を調うることなり。故に調気の方は必ず陰陽に在りと曰うなり。
《要点》
迎隨調気の論。
調気の基本は陰陽にあり。七十四難
七十四難曰、経言、春刺井、夏刺營、季夏刺兪、秋刺経、冬刺合者、何謂也。
然、春刺井者、邪在肝。夏刺營者、邪在心。季夏刺兪者、邪在脾。秋刺経者、邪在肺。冬刺合者、邪在腎。其肝心脾肺腎、而繋於春夏秋冬者、何也。
然、五蔵一病輒有五也。仮令肝病色青者肝也、? 臭者肝也、喜酸者肝也、喜呼者肝也、喜泣者肝也。其病衆多、不可尽言也。四時有数、
而並繋於春夏秋冬者也。鍼之要妙在於秋毫者也。
《和訓》
七十四難に曰く、経に言う、春は井を刺し、夏は営を刺し、季夏は兪を刺し、秋は経を刺し、冬は合を刺すとは何ぞや。
然り、春は井を刺すとは邪が肝に在り、夏は栄を刺すとは邪が心に在り、季夏は兪を刺すとは邪が脾に在り、秋は経を刺すとは邪が肺に在り、冬は合を刺すとは邪が腎に在ればなり。其の肝・心・脾・肺・腎の春・夏・秋・冬に繋わる者は何ぞや。
然り、五臓が一たび病むときは、すなはち五つあるなり。仮令ば、肝が病みて色が青きは肝なり、?臭なる者は肝なり、酸を喜む者は肝なり、呼を喜む者は肝なり、泣を喜む者は肝なり。其の病は衆多にして言いて尽くすべからざるなり。四時は数ありて並びて春夏秋冬に繋わる者なり。
針の要妙は秋毫に在る者なり。《要点》
五要穴の四時に対応した手法について論ずる。七十六難
七十六難曰、何謂補瀉。当補之時、何所取気。当瀉之時、何所置気。
然、当補之時、従衛取気。当瀉之時、従營置気。其陽気不足、陰気有余、当先補其陽、而後瀉其陰。陰気不足、陽気有余、当先補其陰、而後瀉其陽。
營衛通行。此其要也。
《和訓》
七十六難に曰く、何をか補瀉と謂うや、之を補うときに当って、何れの所より気を取り、之を瀉するときに当って、何れの所に気を置くや。
然り、之を補う時に当っては、衛より気を取り、之を瀉する時に当っては、営より気を置くなり。其の陽気が不足し陰気が有余なるときは、当に先ず其の陽を補って後に其の陰を瀉すべきなり。陰気が不足し陽気が有余なるときは、当に先ず其の陰を補って後に其の陽を瀉すべし。営衛は通行す。此れ其の要なり。
《要点》
営衛の補瀉原則論について論ずる。
先補後瀉の原則論について論ずる。
陽気不足・陰気有餘と陰気不足・陽気有餘の補瀉法について論ずる。七十八難
七十八難曰、鍼有補瀉、何謂也。
然、補瀉之法、非必呼吸出内鍼也。知為鍼也、信其左。不知為鍼者、信其右。当刺之時、先以左手、厭按所鍼營兪之処、弾而努之、爪而下之。
其気之来如動脈之状、順鍼而刺之。得気困推而内之。是謂補。動而伸之、是謂瀉。不得気乃与男外、女内。不得気、是謂十死不治也。
《和訓》
七十八難に曰く、鍼に補瀉ありとは何の謂ぞや。
然り、補瀉の法は、必ずしも呼吸出内の鍼に非ざるなり。鍼を為すことを知る者は其の左を信じ、鍼を為すことを知らざる者は其の右を信ずるなり。
当に之を刺す時は、先ず左手を以て鍼する所の営兪の処を厭按し、弾いて之を努まし、爪して之に下す。
其の気の来たること動脈の状の如くにして鍼を順にして之を刺し、気を得て推して之を内る、是れを補と謂う。動じて之を伸ぶるを是れ瀉と謂う。
気を得ざれば乃ち男は外に、女は内に与う。気を得ざれば是れ十死して治せずと謂うなり。
《要点》
押手と補瀉法を論ずる。
押手の重要性を論ずる。七十九難
七十九難曰、経言、迎而奪之、安得無居虚。随而済之、安得無実。虚之与実、若得若失、実之与虚、若有若無。何謂也。
然、迎而奪之者、瀉素子也。随而済之者寝補素母也。仮令心病瀉手心主兪、是謂迎而奪之者也。補手心主井、是謂随而済之者也。所謂実之与虚者、牢濡之意也。
気来実牢者為得。濡虚者為失。故曰若得若失也。
《和訓》
七十九難に曰く、経に言う、迎えて之を奪えば、安んぞ虚なきを得んや。随いて之を救はば、安んぞ実なきを得んや。之を虚することと実することとは、得るが若く失うが若し。実することと虚することとは、有るが若く無きが若しとは、何の謂ぞや。
然り、迎えて之を奪うとは、其の子を瀉することなり。随いて之を済うとは、其の母を補うことなり。仮令ば心が病みたるとき、手の心主の兪を瀉するは是れを奪うと謂うなり。手の心主の井を補するは是れを随いて之を済うと謂う者なり。
所謂、之を実することと虚することとは、牢濡の意なり。気が来ること実なる者は得たりと為し、濡虚なる者は失えりと為す。故に得るが若く、失うが若しと曰うなり。
《要点》
迎隨補瀉論を論ずる。八十難
八十難曰、経言、有見如入、有見如出者、何謂也。
然、所謂有見如入者、謂左手見気来至乃内鍼、鍼入見気尽乃出鍼。是謂有見如入、有見如出也。
《和訓》
八十難に曰く、経に言う、見るることありて入るが如く、見るることありて出すが如しとは、何の謂ぞや。
然り、所謂、見るることありて入るが如しとは、左手に気の来り至るを見て、乃ち鍼を内れ、鍼が入りて気が尽くるを見て乃ち鍼を出すことを謂う。
是を見るることありて入るが如く、見るることありて出すが如しと謂うなり。
《要点》
虚実と刺法論を論ずる。(漢方鍼医会・2000年)
《参考資料8》
気血津液の臨床病証
1.気の臨床病証
気の臨床病証は気虚・気滞・気逆に分類できる。(気虚)
気(蔵気・陽気・陰気)の不足病証で原気虚弱を現す。
原因は先天の原気不足・後天の気が生成不足・心身の過労・・・・・
病証:原気不足・全身的な虚弱病証
心身の倦怠感・精神の萎縮
手足の無力感・盗汗・自汗・めまい・・・・・・
外邪を受けやすくなる・治病力の低下
皮膚の冷感・寒がり・風邪に罹患しやすい
津液不足の病症を発症する(陰虚・虚熱病証)
多汗・多尿・出血・遺精等の病症
その他
※蔵気の気虚病証
肺気虚→呼吸器系の諸病証・少気・短気・・・・
皮膚厥冷、湿疹、枯燥・風邪症状・・・・
心気虚→精神の失調病証・血脈の病証(動悸・不安感・胸苦)・・・
脾胃気虚→四肢倦怠感・消化器系病証・食欲不振・・・
腎気虚→精力減退・排尿異常・体力の減退・・・
(気滞)
営衛二気の機能停滞により経気の鬱滞を呈し胸部や腹部の鬱滞病症を現す。
原因は寒湿等の外邪・飲食の不摂生・ストレス・気虚・・・
病証(各蔵府の気滞)
肺気滞→胸痛・咳嗽・胸苦・・・・
胃気滞→上腹部膨満感・食欲不振・噫気・呑酸・悪心・嘔吐・・・・
脾気滞→腹部膨満感・腹痛・腹鳴・裏急後重・・・・
肝気滞→精神的病症・鬱・怒り・胸脇部や腹部の張り・・・・・(気逆)
蔵府の気が上逆した為に逆気病症を現す。
原因は外邪・飲食の不摂生・ストレス・気虚・・・
病証(各蔵府の気逆)
肝気逆→上昇の気が順。過剰になると発病(頭痛・めまい・眼の充血・鼻血)
肺気逆→下降の気が順。上逆すると気血津液の停滞を発する(胸悶・咳嗽・痰)
胃気逆→ 〃 上逆すると発病(嘔吐・シャックリ・胃部膨満)2.血の臨床病証
血の臨床病証は血虚と血の運行失調と?血に分類できる。(血虚)
血虚は血の生成不足と消耗により発症する。
原因は栄養不足・脾胃の機能低下・腎陽の虚・大病・手術等・・・
病証:身体全体の機能失調を発症する。
気虚の病症も現す。
全身の倦怠感・四肢無力感・運動機能の低下・めまい・・・
四肢の厥冷・不眠・性欲減退・健忘・・・(血の運行失調)
血の運行失調は心・肺・脾胃・肝等の諸機能の失調により発症する。
臨床病証として血滞・血熱・?血に分類できる。
血滞→全身的な厥冷病症・?血病証を発症する。
血熱→発熱・口渇・便秘・吐血・鼻血・血便・血尿等の出血病症を発症する。
(?血)
この病証も血の運行失調のために発症するものであるが別項目とする。
臨床病証として必ず腹証に?血を認める。(肺積・臍部の?血)
病証:発熱と疼痛を伴う病症・婦人科の諸病症等々・・・・
交通事故の後遺症・捻挫・打撲・・・・
慢性に移行した諸病症・四肢の厥冷病症・・・・
手術後遺症・精神、神経病症・・・・3.津液の臨床病証
津液の臨床病証には津液不足(陰虚・虚熱病証)と津液の代謝・運行の失調に分類できる。
(津液不足)
津液不足は陰虚・虚熱病症を発症する。(脾胃・腎・三焦・肝)
原因は飲食の不摂生・脾胃の機能低下・過労や発熱による排泄過多・・・・
病証:口渇・皮膚枯燥・消痩・労倦・下肢厥冷・便秘・上気病症・・・・(代謝、運行の失調)
病証を湿病・水気病・痰飲病・血分病・水分病に分類できる。
原因は肺・脾胃・腎・膀胱・三焦の生理作用の異常により発症する。
湿病→脾虚による肌肉や関節の病症(腫痛・厥冷・変形・水腫)
水気病→腎虚、肺虚により皮内に水滞を発症する。(腫痛・虚寒)
痰飲病→脾胃の陽気虚により胃腸に余分な水が停滞し発症する。
人体の局所に余分な水が停滞する病証も痰飲病とする。
血分病→?血に水滞が絡んだ病症。
水分病→水滞(水腫)に?血が絡んだ病症。
血寒病→津液の津(陽気)が不足し虚冷病症を現す。
※女性のむ生理時。大出血…
(漢方鍼医会・2000年)
《参考資料-9》
鍼灸臨床における病証資料
1.虚証
「元陽虚極、真陰不足」腎の虚損の証 。腎気の虚、三焦の原気の衰。
脉−浮虚(基本也−陰虚・沈虚も有−陽虚)無力・細@陰虚→陰分不足・津液の虧損(気血栄衛)・陰の三陰の虚(肝腎脾)
腎中の真陰虚弱・陰虚内熱・血虚・原気不足
(病症)
微熱・手足心熱・午後の潮熱・消痩・盗汗・喘息・口燥咽乾・尿短赤・頭痛
・不眠・肺燥(血痰・咽痛・声がれ)・性欲亢進・咳血・遺精・五心煩熱・
皮膚枯燥
脉−浮虚? 細数? 無力
病証−虚労・労倦・血虚・虚燥《病証》
虚労→腎の虚損が原因。腎虚也(典型)。
気虚・血虚が進んだ病証であり五蔵の虚の総称。
(病症)
倦怠感・腰痛・夜の諸症(盗汗咳痛他)・消痩・手足厥冷・逆気・口渇・
精力減退
脉−浮虚遅(数)
証−腎虚が基本(脾虚・肺虚)労倦→虚労と同義(その一部)、腎気虚損が原因
労傷(脾土を傷る)・内熱
(病症)
眼の疾患・睡眠障害・節、筋の病症・体重・倦怠感(肝)・四肢怠惰(脾)
脉−浮虚遅?
証−脾虚・肝虚・腎虚血虚→栄血の虚(血分の虧損)・失血過多・思慮過度・貧血証・津液不足、障害
※気虚より血虚をなす、血虚より血実をなす。肝包脾の虚。
(病症)
顔面萎黄(貧血)・眩暈・心悸・四肢冷・頭重・不眠・不妊・手足の痺・腰痛、重
・生理不順(痛、過少)・自汗・耳鳴・耳聾・頭眩・頭痛・血虚発熱・関節の動痛(老人)・便秘・腹痛・皮膚枯燥
脉−浮虚(堅)?
証−肝虚 ・腎虚・ 心、包虚虚燥→腎気虚損の為に起こる腎の消喝(燥症)。下焦の津液が虚熱で燥喝される病証。
(病症)
手足厥冷・目赤・口中瘡・肩背(肩甲間部)強脹・小便不利・便秘・皮膚枯燥
脉−浮虚数
証−肺虚・腎虚・脾虚A陽虚→陽気不足・津液代謝(気化作用)衰退の証・陽虚外寒・腎中の真陽虚(腎陽、命火の虚)・気虚・血虚
(病症)
全身倦怠・皮膚寒症・食欲不振・少気頼言・悪寒・自汗・小便清長・四肢冷
・遺精・足汗・眩暈・全身浮腫・頭痛・陽虚喘・陽虚発熱(虚熱)・腰痛
脉−沈虚、大、微細?
病証−気虚・血虚(一部有、脉は沈虚)気虚→陽虚→肺、腎、三焦の虚・陽気の虚・衛気の衰・原気の虚・気虚外寒
※気虚は肺虚也・気虚は血虚をなす。
(病症)
元気虚弱・蔵府の虚損・頭眩・耳鳴・心悸・自汗・倦怠無力・眩暈・
気虚熱(虚熱)・四肢冷・頭痛・気喘・関節不利・腹痛・崩漏・気虚不摂
・自汗・遺精・泄瀉・遺尿・崩漏・便血
脉−沈虚(細、無力)→浮虚??
証−肺虚 ・腎虚・脾虚B気欝→肝気鬱結・気機鬱結・ストレス・気血の失調より生ずる病症
(病症)
胸悶脇痛・イライラ怒り易い・食欲不振・月経不調・気欝眩暈・手足厥冷
※肝虚鬱結(気欝)→浮虚堅
脉−沈虚遅 .C血欝→怒り・打撲・多食により生ずる病症・肝病証より生ずる(血虚)
(病症)
胸脇刺痛・四肢無力・便血・多食症・皮膚枯燥・口燥
脉−沈虚遅 .2.実証
「邪気盛」の証(陽実)。実(内実)は人体内の機能障害(気血の欝結、水飲、停痰、食積)血虚(陰虚)より、血欝・食欝・?血となり「実証」となる(食積、血積)。
※実の原因は血欝(?血)。実は邪気実也(風寒熱湿燥)。
脉−実(浮沈・遅数)
病証→陰実・傷寒・気実
※陽実⇒風熱(労風)にて考察@陰実→陰分の停滞(血実・?血・血欝・食積)
(病症)
寒症・積・傷寒・水毒 ・中、下焦の病症
脉−沈実 (?)
証−肝実(肺虚)・ 脾実(肝虚)・陰虚火動(命虚心実)⇒重症
病証−血実・?血・血積・食積・積聚・実積《病証》
血実→血欝、?血 、蓄血による証(陰実)
(病症)
寒、熱(滕理)・潮熱・盗汗(肌肉)・身痛・筋攣・胸脇の刺痛・倦忘(上焦)
・胃?部の刺痛・黒便(中焦)・小腹裏急・腹満・小便自利(下焦)
脉−沈実(遅)?
証−肝実・脾実(肝虚)??血→血が体内に停滞している病証(血実)
原因−打撲・閉経・寒による気滞(二次的)
気機の阻滞・経脈の阻害・?熱が結す・蓄血して発狂(一次的)
(病症)
面色黒・皮膚青紫・皮膚枯燥・局部の刺痛(按を嫌う)・紫色の血腫・
小腹硬満・胸脇の脹痛・閉経・大便黒色・健忘・発狂
脉−沈実又は虚(虚数)
証−肝実・脾実(肝虚)血積→気逆・血欝により凝結して積をなす。又は打撲捻挫等により?血が内蓄して発
する病証。
(病症)
顔面は萎黄色で面部に蟹爪の皺様ものが現れる・腹中、胸肋に塊有り移動しない
・常時疼痛し便秘・黒便(胃癌)
脉−沈実(数)?
証−脾実(肝虚・腎虚)食積→脾胃の運化作用失調により食物が積滞しめぐらない病証。
(病症)
大便秘結し少食・胸、?満悶又は堅硬・痞塊あり不快(胃癌)
脉−沈実(数)?
証−脾実(肝虚・腎虚)積聚→腹内に結塊が有り、脹痛を伴う病証。
積−積塊が明らかに有り痛・脹が強い? 病症は固定し不動(陰気)。
聚−積塊が不明確 、一時的に脹があり痛みに定まった場所が無い(陽気)。
※難経55難
脉−沈実?
証−脾実・肝実・肺虚(肝実)実積→ ?血・血積の一部で腹中に蓄積された動かない血による病証(血の道症の難症)
(病症)
腹中に積塊があり痛、脹を伴う・病症は固定的・寒(冷)症状がある
脉−沈実遅
※実積・湿欝病証(人迎気口脉共に沈実遅の脉状は妊娠脉也)
証−脾実・肝実(虚)A傷寒→下焦の病証(寒邪)。痛冷を現す・外感熱病の総称
(病症)
悪寒・発熱・無汗・頭痛・身痛・関節部冷痛・腹満・四肢厥冷
脉−沈実(実熱→数)
証−肝実(肺虚)B気実→陽気、形気(気血營衛)の充実。滕理密也(正実)。
※病実としての気実は古典医学には原則として無し。
肺実(陽気)腎実陰気)は臨床の場にては相対的にあるのみ(経脈の実)
脉−浮実3.湿証
陰邪。湿は陰(水)也。飲食物の過不及等による中・下焦の病症。水気の停滞。
湿邪→天湿(天候・營衛を傷)・地湿(自然環境・肌肉筋骨を傷)・飲食(食物・中焦を傷⇒人湿)・ 脾(土)と親和性がある
(病症)
四肢四関の病症(痛・脹・腫)・中下焦の病症・分泌物、排泄物の障害・体重節痛・腹脹・水気の停滞(痰飲)・浮腫(陽気虚により)・病症が不動性
外湿→体重腰痛、重・四肢困倦・関節、肌肉の疼痛・不移動痛
内湿→食欲不振・胸悶不快・小便不利・大便溏泄
上焦→頭重・眼黄・鼻塞・身重
中焦→痞悶してゆるまず
下焦→足首に腫脹を生ず(浮腫)
経絡→夕方に発熱・骨節疼痛・腰痛・四肢痿弱
肌肉→腫満し肌肉軟弱
皮膚→頑麻? 肺→喘満? 肝→癲癇? 腎→陰汗? 府→泄瀉・小便黄赤
蔵→意識昏迷
脉−沈虚?? ※沈虚遅→湿冷(湿症)⇒?を帯びる
病証−湿症(水毒)・湿欝・寒湿・湿燥・湿熱・湿冷?《病証》?
湿症→中焦の病症(飲食)・水毒(水気の停滞)により生ずる病証。
(病症)
体重節痛・腹脹
※病症が余り移動しない
脉−沈虚遅?湿欝→湿邪の停滞により気滞(気欝)となり発症・中焦に生ずる病証。
(病症)
全身の疼痛・身重・頭重・倦怠嗜臥
脉−沈実遅寒湿→停滞した湿邪(水分)が原因で発症・中焦に生ずる病証。
(病症)
全身の疼痛・身重・頭重・倦怠嗜臥
脉−沈実遅(虚)湿燥→湿邪による虚熱(湿熱・内熱)の為に生ずる病証。
(病症)
咽喉の焦乾喝・便秘・皮膚枯燥・四肢無力・身熱(身重)
脉−沈虚数?湿熱→湿邪と熱邪が合して生じる病証
(病症)
発熱(微熱)・頭重痛・身重痛・腹満し少食・小便少黄赤・湿熱下痢
帯下・脇痛・眩暈・痺痛・腰背冷痛・便血・腰痛
脉−沈虚数 .湿冷→湿邪に冷邪が入って生ずる病証。
(病症)
体重節痛・下肢冷・下痢・下肢浮腫・中焦の病証
脉−沈虚遅?4.燥証
久しい内熱の為に津液の枯渇が生じ発現する病証也
燥邪は津液を傷り易い。内傷性が基本であるが外傷性も有る。しかし「燥邪」の
みにては主病証にならない(病理の基本)。
※燥邪は慢性的病症に移行しやすい(虚熱・身熱)・ 肺(金)と親和性がある。
(病症)
咽鼻焦乾(内熱)・便尿結閉(虚熱)・皮膚枯燥・痒有り(燥熱)・津液(精血)枯渇・
四肢冷、腫
脉−虚数(浮沈)
病証−虚燥 ・労燥・気燥・血燥・風燥・表燥・湿燥・痰燥《病証》
虚燥→腎気虚損の為に起こる腎の消喝(燥症)・下焦の津液が虚熱により燥喝され
る為に起こる病証(内傷)。
(病症)
手足厥冷・目赤・口中瘡・肩背強張・小便不利・便秘・皮膚枯燥
脉−浮虚数労燥→腎気虚損の為に起こる腎の消喝(燥症)。
下焦の津液が虚熱により燥喝される為に起こる病証(内傷)。
(病症)
目赤・口渇(乾)
脉−浮虚数?気燥→内熱の為に津液枯渇し生じる病証(内傷)。
(病症)
口乾・口中瘡・頭重・泄瀉・逆気・少気・皮膚枯燥
脉−沈虚数??血燥→内熱の為に津液枯渇し生じる病証(内傷)。
(病症)
口乾・痰・大便秘結・肌肉枯燥・痔(熱)
脉−浮虚数??風燥→津液枯渇の病証(外傷)・陰虚による風燥の邪により生ずる病証。
(病症)
上部病症(頭痛・微熱・悪寒・鼻塞・鼻炎(花粉症)・唇燥)・皮膚乾渋
脉−浮虚数表燥→津液枯渇の病証(外傷)・陰虚による表燥の邪により生ずる病証。
(病症)
目渋る・口渇・皮膚枯燥・鼻炎
脉−浮虚数湿燥→湿邪による虚熱(湿熱・内熱)の為に生ずる病証(外傷)。
(病症)
咽喉の焦乾喝・便秘・皮膚枯燥・四肢無力・身熱(体重)
脉−沈虚数??痰燥→津液枯渇の病証(外傷)
(病症)
咽乾・乾痰・逆気・皮膚枯燥
脉−沈虚数?5.風証
陽邪。外感疾病の先導、身体の上部に現れる病証(頚凝・頭痛・発熱)筋の諸病症
で発病経過が早い。
肝(木)と親和性がある
(病症)
悪風・悪寒・発熱・麻痺・不仁(変化しやすい)
脉−浮実?
病証−風熱・風寒・風燥・虚風・風湿《病証》
風熱→風邪の熱により生ずる病証。
(病症)
発熱重く悪寒少ない・口渇・上部の病症
脉−浮実数風寒→風寒の邪により生ずる病証。
(病症)
悪寒が主、発熱は軽い・身体寒、痛症状有(頭痛・身痛)・鼻塞流涕
上部、下部の病症
脉−浮実遅風燥→風燥の邪により生ずる病証。
(病症)
上部・皮膚の病症(頭痛・微熱・悪寒・鼻塞・唇燥・皮膚乾渋)
脉−浮虚数
※鼻炎(花粉症)→陽虚が基本(風燥)虚風→陰虚(腎・肝・脾・三焦の虚)による風証(症)→内風
虚邪賊風・病症発現は微也・陰虚、血虚により内に風証を生ずること
津液虧損・血虚・筋不用・肝陰不足・腎陰不足や肝腎の虧損により腎水が肝木を養えず為に現れる病証。
(病症)
眩暈・倦怠・震え・手足の痺れ・頭重・口眼咼斜
脉−浮虚風湿→風と湿邪に侵される病証
(病症)
頭痛・腰背痛、重・腰部倦怠感・腰部不快感
肌表→身体疼痛・転側不能
関節→牽引性痛・不活動
腫→顔面[風]・下肢[湿]の腫痛
脉→浮虚6.寒証
陰邪(陽気を傷り易い)。 寒の実・陰実。 気血の停滞(中・下焦)下半身の病症(痛み有)。
腎(水)と親和性がある。
(病症)
悪寒・発熱・頭痛・身痛・骨節疼痛・腹痛泄瀉
脉−沈実?
病証−傷寒・虚寒・寒湿《病証》
傷寒→下焦の病症(寒邪)で痛・冷を現す。外感熱病の総称。
※寒邪が経絡を傷る
(病症)
悪寒・発熱・無汗・頭痛・身痛・関節部の冷痛・腹泄・四肢厥冷
脉−沈実?
※傷寒実熱−傷寒による発熱(沈実数)虚寒→陽分の冷(寒)。陰虚が基本(腎気・三焦の虚)・陽の機能停滞より生ずる病証。
(病症)
カゼの諸症(喉痺・咽痛・頭痛(偏)・鼻塞・咳嗽・鼻水・涕)
脉−浮虚遅(陰虚が基本)?寒湿→停滞した湿邪(水分)により生ずる病証。? 中・下焦の病症(寒症)。
(病症)
全身の疼痛・体重節痛・頭重・倦怠感・嗜臥
脉−沈実遅?7.熱証
陽邪。中熱、中暑の病証(実)→陽経・府を傷る。臨床の場では機能過剰というイメ−ジ(寒と反対)。病症は陽性で活発である。
心(火)と親和性がある。
※五蔵の熱証
肝−筋熱(四肢満悶便秘・転筋・筋痿)
心−血脈熱(煩心心痛 ・掌中熱)
脾−肌肉熱(怠惰嗜臥・四肢重・実熱、虚熱あり)
肺−皮毛熱(喘咳洒浙寒熱)
腎−骨熱(陰虚火動)
脉−数(浮沈虚実) .
病証−風熱・燥熱・傷寒実熱・積熱・?熱《病証》
風熱→風邪の熱(上部)病証。
(病症)
発熱重・悪寒少・口渇
脉−浮実数燥熱→表燥(風燥)と同じ
(病症)
皮膚の病症(頭痛・微熱・悪寒・鼻塞・唇燥・皮膚枯燥)
脉−浮虚数傷寒実熱→傷寒熱病
(病症)
下焦の寒極による熱病症(傷寒による熱病)
※インフルエンザ(急性カゼ)
脉−沈実数?積熱→陽虚(血虚)が原因となり?血(実)となる。
(病症)
腹部に蓄積された血(邪熱)・腹中の内熱(陰熱)
脉−沈実数
?熱→?血の熱。内に欝積した熱(虚熱)。
脉−沈実数??8.労証
「労謂腎労也? 腎脈従腎上貫肝鬲入肺中? 故腎労風生」(素問)
腎気不足で虚損の証。
※「労」は虚労の簡称(病証)「脉大ヲ労トナシ極虚モ労トナス」
「労スレバ気耗ス(精気損耗・腎虚)」
脉−浮虚(大).
病証−虚労・労倦・労風・腎労・労熱・神労《病証》
虚労→腎虚也(典型的)。腎の虚損が原因。下焦の虚。
※気虚・血虚が進んだ病症。
虚損労傷(虚労)−五蔵の虚の総称。
(病症)
腰痛・倦怠・欠伸・疲労感(善臥)・午後の発熱(微熱)・
夜の諸症(盗汗・咳・痛・目が醒める他)・食思不振・体重・怠惰・冷症・手足厥冷
・口渇・小便不利・動悸・精力減退・遺精・逆気・腰背脹(筋急)・腹脹
脉−浮虚遅??
証−腎虚が基本(脾虚・肺虚)労倦→虚損(腎虚他)で労(働)し過ぎた為に発症する病証。
※労倦は虚労の一部也(労傷)
「労倦スレバ内熱ヲ現ス」(素問)
労倦は内傷病証也? 七情・起居の不摂生。
疲労(労倦)は脾気(土)を傷る。
(病症)
眼の疾患・睡眠障害・節、筋の病症・四肢怠惰・体重倦怠感・心煩不安
脉−浮虚遅??
証−脾虚・肝虚・腎虚・腎脾虚(心包虚)労風→腎労也(腎・肝の虚)。「腎の虚損」の極による栄血の実。
心の旺気実(水剋火)そして心労(神労)となる。
※「老風」と同義で老人に多い病証。
上焦の病症が主也。
(病症)
遺精・盗汗・動悸・下肢痿弱・腰痛不立・小便不利・微熱(潮熱)
脉−浮実(遅)?
証−肝虚・腎虚・脾虚腎労→腎気不足也(虚労病)→腎虚腎労が進行すれば心(火)の旺実・神労(心労)になり労風となる(実)。
(病症)
遺精・盗汗・腰痛し下肢痿弱で不立・小便不利(黄赤)・茎中痛(瘡)
脉−浮虚(実)遅??神労→心血虚損により発症する病証(心労と同義)。
(病症)
心煩して不眠・心悸し驚きやすい・盗汗・夢遺・口舌に瘡を生ず・便秘
脉−浮実遅?労熱→虚労発熱の病証(虚熱)。
肺の熱が肝に移った病症(肺炎)−肺虚肝実???
※慢性の消耗性疾病中に現れる虚熱病証。
(病症)
不眠・眩暈・腰背痛・悲愁不楽
脉−浮実数?
証−肺虚・腎虚9.冷証
元陽の気。三焦の原気の衰(虚労腎虚)によって気血水の循行が停滞した病証。
※冷−気血の停滞也。体内に寒がある病証。?
脉−虚遅(浮沈).?
病証−虚冷《病証》
虚冷→肺虚・腎虚の病症の時に寒冷の気に傷られ生ずる病証。
(病症)
呼吸は粗く遅い・上気(肺・腎虚)し喘して無力(労嗽)。
※労嗽−虚労咳嗽と同義。
脉−浮虚遅
※人迎脈は実也? 虚脉の場合は虚労也
証−肺虚肝実・脾虚肝実(腎虚)
≪参考資料≫人迎気口脉診の脉証と病証
気口(内傷→虚実冷燥脉状
人迎(外感→風熱寒湿)
陰虚⇒虚労・血虚・虚燥・労燥
・血燥浮虚
虚風(内風)
風湿虚燥・労燥・血燥・労倦
数
風燥・表燥・湿燥・痰燥
虚労
虚冷(人迎脉は実脉)遅
虚寒
労証⇒労風・腎労・神労・労熱
血熱浮実
風証⇒風熱・風寒(風燥・虚風)
労熱・血熱
数
風熱
労風・腎労・神労
遅
風寒
陽虚⇒気虚(血虚)・気燥(血燥)
気鬱・血欝沈虚
湿証⇒湿症・湿燥・湿熱・湿冷
(湿欝・寒湿)気燥(血燥)
数
湿熱・湿燥・痰燥・燥熱
気鬱・血欝(気血停滞→冷)
遅
湿症・虚寒・湿冷
陰実⇒血実・?血・血積・食積
積聚・実積・?熱・積熱沈実
寒証⇒傷寒・寒湿(虚寒)
?熱・積熱
数
傷寒実熱・積熱・?熱
?血・血実・食積・実積
遅
湿欝・寒湿
(漢方鍼医会・2004年)
《参考資料10》
経穴についての資料
1.名称
素問・霊枢→穴・気穴・兪穴・谿隧・谿谷・節の交・孫絡・その他
千金方→孔穴 ※『経穴ハ神気ノ遊行出入スル所也』→九鍼十二原篇
2.数 365穴とされる。 素問・霊枢→115穴 甲乙経 →345穴 千金方 →349穴 銅人経 →354穴
3.分類
@五行穴→五兪穴・五井穴 井・栄・兪・経・合 木・火・土・金・水
※素問・気穴論→蔵の兪50穴、府の兪72穴 霊枢・本輸篇→陰経(井木・栄火・兪土・経金・合水)
陽経(井金・栄水・兪木・経火・合土)
難経64難→五行穴の原典(完成)
A十二原穴
○霊枢・九鍼十二原篇 肺の原→太淵2 心の原→太陵2 ※心包経の原穴 肝の原→太衝2 脾の原→太白2 腎の原→太谿2 膏の原→鳩尾1 肓の原→神闕1
○難経66難
肺・心・肝・脾・腎の原穴は霊枢に同じ
少陰の原→神門2 胆の原→丘墟2 胃の原→衝陽2 三焦の原→陽池2 膀胱の原→京骨2 大腸の原→合谷2 小腸の原→腕骨2
『十二経皆兪オ以ッテ原トナスハ何ゾヤ。
然リ、五蔵ノ兪ハ三焦ノ行ク所? 気ノ留止スル所ナレバナリ。三焦ノ行ク所ノ兪ヲ原トナスハ何ゾヤ。
然リ、臍下腎間ノ動気ハ人ノ生命ナリ。十二経ノ根本也。故ニ名ズケテ原ト云ウ』
○難経62難??『府ニ独リ有ルハ何ソヤ・・・・』
B募兪穴??兪穴→大杼・背兪・心兪・膈兪・肝兪・脾兪・腎兪 素問・霊枢→背兪霊枢・背兪篇 『其ノ処ヲ按ジ、応中ニアリテ痛ミ解ス。乃チ其ノ兪也。之ニ灸スルハ可。 之ヲ刺スハ則チ不可也』
C募穴
肝→期門?? 胆→日月 心→巨闕 小腸→関元 心包→?中 三焦→石門 脾→章門 胃→中?? 肺→中府 大腸→天枢 腎→京門 膀胱→中極
※募兪穴の応用法?????素問・陰陽応象大論
『陽病ハ陰ヲ治シ、陰病ハ陽ヲ治ス』
難経67難? 『五蔵ノ募ハ皆陰ニアリ、而シテ兪ハ陽ニアルハ何ノ謂ゾヤ。然リ、
陰病ハ陽ニ行キ、陽病ハ陰ニ行ク。故ニ募ハ陰ニ、兪ハ陽ニアラシムルナリ』
D15絡穴
○霊枢→経脈篇(絡脈を意味する)
肝の絡→蠡溝 胆の絡→光明 心の絡→通里 小腸の絡→支正 脾の絡→公孫 胃の絡→豊隆 肺の絡→列欠 大腸の絡→偏歴腎の絡→大鐘 膀胱の絡→飛陽 心包の絡→内関 三焦の絡→外関 任脈の絡→会陰 督脉の絡→長強 脾の大絡→虚里(大包)
○難経26難→12経の絡は霊枢に同じ陽?脈の絡→申脈 陰?脈の絡→照海 脾の大絡→大包
『経ハ十二アリ、絡ハ十五アリ、余ノ三絡ハ何ノ絡ナリヤ』
陽の絡・陰の絡・脾の大絡也
E?穴→甲乙経より始まる経穴也孔最・水泉・中都・陰?・地機・?門・温溜・金門・外丘・養老・梁丘・会宗の
12穴也。※急性病に効果あり
陰経→血に作用する 陽谿→痛みに作用する
F八会穴難経45難『熱病内ニアル者ハ、其ノ会ノ気穴ヲ取ル也』
中?→府会 章門→蔵会 膈兪→血会 ?中→気会 大杼→骨会 陽輔→髄会 陽陵泉→筋会 太淵→脈会
G下合穴??? 霊枢→邪気蔵府病形篇・本輸篇『府病(熱病)ハ下合穴ヲ取ル也』
『実スルトキハ即チ閉隆(瀉)シ、虚スルトキハ遺溺ス(補)』
胃→三里 大腸→上巨虚 ※肝・腎・中下焦の病症に選穴する 小腸→下巨虚 ?三焦→委陽 膀胱→委中 胆の府→陽陵泉
H熱兪穴
素問→刺熱篇・気穴論・水熱穴論
※蔵の熱を瀉す経穴也。59穴あり
I水兪穴(腎の兪穴)素問→骨空論・水熱穴論
※水種、浮腫、水分代謝等水の出入りを制する経穴也。57穴ありJ一般穴
4.経穴の臨床的意義
六部定位脉診等により、蔵府経絡の変動を捉えて、難経等の選穴理論に基づいて選 穴し、証法一致の手法により脉状、脉証を確実に整えることが出来るものが、最も正しい経穴であり、ここに経穴の意義がある。
5.経穴の取穴方法
@経穴は体質、病歴、病症、その他により変化するものである。
A取穴に際して、圧は決してかけず、ごく軽く経をなぜる如く取穴する。(左右の経穴を比較すると良い)
B経穴の虚実(気血)反応をよく捉えること虚→陥下・弛緩・動悸(虚)・?血性鈍麻 実→発赤・緊張・硬結・知覚過敏・キョロ(実)
(経絡鍼療誌・1990年)
《参考資料11》
鍼灸医学の参考図書案内(2004.5.15)
鍼灸医学は、臨床現場でその効果を発揮しなければ無意味である。鍼灸関係の学術書もそれが目的とならねば意味がないものと考える。
ここに掲載した参考図書もその目的達成の為にあるものと考えていただきたい。単なる学理論の弄びにのみ用いられる事のないようにして頂きたいものだ。最も重要な事は、自らの治療に対する基本的な考え方を持ってこれ等の参考資料を活用される事にあると考えるが・・T 絶対に読んでおきたい本
1.鍼灸医学(臨床)の基礎
『鍼灸真髄』代田文誌 医道の日本社『わかりやすい経絡治療』福島弘道 東洋はり医学会
『誰にもわかる経絡治療講話』(本間祥白、医道の日本社)『鍼灸治療の真髄』岡部素道 積文堂
『漢方鍼医基礎講座』漢方鍼医会編 漢方鍼医会
『脉診を語る』東洋はり医会教育部 東洋はり医会
『伝統医学の学び方』長沢元夫 積文堂
『東洋医学入門』大塚恭男 日本評論社『お灸で病気を治した話1〜10』深谷伊三郎 刊々堂
『お灸療法の実際』深谷伊三郎 自然社
『東洋医学でこんなによくなる』谷美智士 毎日新聞社『漢方医術復興の理論』竹山晋一郎 積文堂
『東洋医学の鍼』小川晴道 エンタプライズ
『三千年の知恵 中国医学のひみつ』小高修司 講談社ブルーバックス
『鍼とツボの科学』神川喜代男 講談社ブルーバックス
『やさしい中医学入門』関口善太 東洋学術出版
『私の治療室から 経絡治療治験集』小里勝之『東洋医学概論』西沢道允
『臓腑経絡からみた薬方と鍼灸』池田政一 漢方陰陽会
『大地 中国医学の現状と問題点』三浦於菟 緑書房『中国医学はいかにつくられたか』山田慶兒 岩波新書
『昭和鍼灸の歳月』上地栄 積文堂『古典の学び方』池田政一 医道の日本社
◆これらの本は鍼灸医学の基礎編であり、初心者向けにわかりやすく書かれてあり全体像を捉えるには適している。
2.東洋医学 〜論説篇〜
『中国古代医学思想の研究』森田伝一郎 雄山閣
『漢方治療百話 全8巻』矢数道明 医道の日本社
『鍼灸古典入門』丸山敏秋 思文閣『鍼灸医学と古典の研究』丸山昌郎 創元社
『気−流れる身体』石田秀実 平河出版『島田隆司著作集 全2巻』島田隆司 日本内径医学会
『仏教医学入門(上・下)』川田洋一 レグルス文庫
『中国医学の誕生』加納喜光 東京大学出版
『道教と不老長寿の医学』吉元昭治 平河出版
『中国医学の気』廬玉起 谷口書店
『夜鳴く鳥』山田慶児 東京大学出版
『中国医学は現代医学を覆すか』林一 朝日新聞社
『道教と気功−中国養生思想史』李遠国 人文書院『中国医学思想史』石田秀実 東京大学出版
『柳谷素霊選集 全3巻』 積文堂
◆東洋医学は最近やっと学術的研究が始まったばかりである。書籍の絶対数が少ないた
め玉石混淆であることもやむを得ない。これらはすべて必読の書と考えて良い。3.『黄帝内経』と『難経』等の古典解説書
『難経の研究』本間祥白 医道の日本社
『素問医学の世界』藤木俊郎 績文堂
『針灸医学と古典の研究』丸山昌郎 創元社
『霊枢・難経ハンドブック』池田政一 医道の日本社
『難経本義大鈔 全3巻』森本昌敬斉玄閑 漢方鍼医会『黄帝内経概論』龍伯堅 東洋学術出版
『難経入門』遠藤了一 オリエント出版
『難経解説』南京中医学院医経教研組 東洋学術出版
『蔵象学説の理論と運用』宮脇浩 創医会
『黄帝内経と古代中国医学』丸山敏秋 東京美術『現代語訳黄帝内経素問(上中下)』南京中医学院医経教研組 東洋学術出版
『現代語訳黄帝内経霊枢(上下)』南京中医薬大学 東洋学術出版『素問・霊枢』日本経絡学会
『素問・霊枢』宮沢正順 明徳出版『素問・霊枢の栞』丸山昌郎 日本内径医学会
『校勘和訓・黄帝鍼経 全12巻』丸山昌郎
『校勘和訓・黄帝素問 全10巻』丸山昌郎
◆この分野は決定版と呼ぶべきものは未だ出ていない。翻訳本は東洋学術のものが比較
的質が高いようだ。
4.いわゆる「古典」の復刻本・翻訳本・解説本『鍼灸重宝記』小野文恵 医道の日本社
『脉法手引草』山延年 医道の日本社
『名家灸選釈義』深谷伊三郎 干々堂新社
『脉経(T〜W)』池田政一 谷口書店
『校釈諸病源候論』牟田光一郎 緑書房
『万病回春解説』松田邦夫 創元社『杉山流三部書』杉山和一 東洋はり医学会
『中医学と瀕湖脈学』河合重孝[等] 谷口書店
『蔵珍要編』池田政一 谷口書店『難経校釈』林克 谷口書店
『素問・霊枢・難経』復刻版 日本内径医学会編
『意釈・医経解惑論』小曽戸丈夫 築地書館
『意釈・黄帝内経素問』小曽戸丈夫 築地書館
『意釈・黄帝内経霊枢』小曽戸丈夫 築地書館
『中国医典質疑録』牟田光一郎 緑書房『傷寒論解説』大塚敬節 創元社
『啓廸集 全2巻』矢数道明 思文閣出版◆一読しておくと大いに参考になるはずである。なぜなら、これらの原書そのものは非常
に優れているからである。
5.「鍼灸」と「診断」の基礎知識
『鍼灸学原論』木下晴都 医道の日本社
『経絡治療学原論2巻』福島弘道 東洋はり医学会
『図解鍼灸医学入門』蠣崎要、池田政一 医道の日本社
『脉状診の研究』井上雅文 緑書房『鍼灸経絡治療』岡部素道 積文堂
『日本鍼灸医学 基礎編・臨床編』経絡治療学会編
『脈診入門−六部定位脈診法』山下詢 医歯薬出版
『経絡治療のすすめ』首藤傳明 医道の日本社
『鍼灸学序説』高島文一 思文閣出版
『運気論入門』程紹恩 谷口書店『中医八綱解説』根本幸夫訳 自然社
『中医体質学入門』木下繁太郎 谷口書店
『脈診・その手法と古典的背景』船木寛伴 谷口書店
『針灸学[基礎編]』天津中医学院 東洋学術出版
『経絡治療鍼灸臨床入門』小野文恵 医道の日本社『伝統鍼灸治療法』池田政一 医道の日本社
◆これらの本はそれなりの存在価値を認めざるを得ないが、読者はしっかりとした基本知
識と治療学術を持って読まれる事が大切である。6.「経絡」と「経穴」
『鍼灸治療基礎学』代田文誌 医道の日本社
『図解針灸実用経穴学』本間祥白 医道の日本社『要穴臨床取穴法』漢方鍼医会編 漢方鍼医会
『臨床経絡経穴図解』山下詢 医歯薬出版
『経絡十講』杉充胤 医道の日本社
『針灸奇穴辞典』木田洋[等] 風林書房
『標準経穴学』日本経穴委員会 医歯薬出版
『針灸経穴名の解釈と意義』川口準子 近代文芸社
『取穴入門』入江靖二 緑書房
『経穴学の古代体系』桑原陽二 績文堂
『穴性学ハンドブック』伴尚志 谷口書店
『臨床経穴学』浅川要 東洋学術出版社◆複数の経穴書を見比べてみれば一目瞭然だが、経穴の位置や主治証は皆それぞれに
違いがある。これらの本から、学識や技術・経験の違いを味わっていかなければ、生きた経穴を使いこなすことはできない。臨床の場で理解する事を勧める。
7.「中国医学の古典」読解のための必須アイテム
『漢文入門』小川環樹[等] 岩波全書
『漢字語源辞典』藤堂明保 学燈社
『医古文基礎』宮川浩也他 東洋学術出版
『中国語学新辞典』中国語学研究会 光生館
『簡明基礎中国語』伊地智善継 東方書店
『日本の漢語』佐藤喜代治 角川小辞典
『説文入門』頼惟勤 大修館書店
『支那史学史−1』内藤湖南 平凡社東洋文庫◆正統鍼灸医学を実践するには原書を読むしかない。しか、しその殆どは漢文で書かれ
ている。先人は漢字という情報集積媒体を駆使して、膨大な資料を残してくれている。現
代の我々はこれを暗号解読のつもりで読み解いてゆくだけでよい。これらはその暗号解読
のための工具書である。
8.一般教養書『漢字の起源』藤堂明保 徳間書店
『五行思想と礼記月令の研究』島邦男 汲古書店
『混沌の海へ』山田慶児 筑摩書房『内観の法』富士川游 谷口書店
『気の研究』黒田源次 東京美術『東洋医学の哲学』桜沢如一 日本CI協会
『気−論語からニューサイエンスまで』丸山敏秋 東京美術
『中国の名句・名言』村上哲見 講談社現代新書
『陰陽五行学説−その発生と展開−』根本幸夫他 薬業時報社
『医聖 医能医学者列伝』 福昌堂
『ターニング・ポイント』F・カプラ 工作舎
『ユング心理学入門』C・S・ホール[等] 清水弘文堂
『ナチュラル・マインド』A・ワイル 日本教文社『医者と患者と病院と』砂原茂一 岩波新書
『人はなぜ治るのか』A・ワイル 日本教文社『漢方薬入門』難波恒雄 保育社カラーブックス
『気が癒す』荒俣宏[等] 集英社
『無双原理・易』桜沢如一 日本IC協会
『腸は考える』藤田恒夫 岩波新書
『人間臨終図巻 全3巻』山田風太郎 徳間書店
『万葉の旅 全3巻』犬養孝 平凡社文庫
『中国医学はいかにつくられたか』山田慶児 岩波新書
◆東洋医学を理解するため、その源である中国哲学の諸相を知る目的で選んだ。
9.医学史と東洋医学
『中国医学古典と日本』小曽戸洋 塙書房
『日本漢方典籍辞典』小曽戸洋 大修館書店
『漢方の歴史』小曽戸洋 大修館書店
『日本医学史』富士川游 形成社
『医学の歴史』小川鼎三 中公新書
『中国漢方の歴史』張明澄 久保書店
『世界伝統医学大全』津谷喜一郎 平凡社
『モンゴル医学史』ソロングト・バ・ジグムト 農文協◆医学史・疾病史の知識は不可欠の要素となる。言い換えれば、医学史を理解しない鍼
灸師のままでは古典を理解できないのである。
U.読んでおきたい雑誌
月刊「医道の日本」医道の日本社月刊『経絡鍼療』東洋はり医学会
月刊「東洋医学」緑書房季刊「内経」日本内経医学会
季刊「伝統鍼灸」日本伝統鍼灸学会
季刊「日本伝統経絡学会誌」日本経絡学会
季刊「TAO鍼灸療法」源草社
季刊「漢方鍼医」漢方鍼医会
季刊「経絡治療」経絡治療学会
季刊「中医臨床」東洋学術出版
季刊「鍼灸OSAKA」大阪鍼灸専門学校
月刊「しにか」大修館書店
復刻版「東邦医学」全8巻付1巻 出版科学総合研究所
V.持っておきたい辞書
『大漢和辞典』(全15巻)諸橋轍次 大修館書店
『新字源』角川書店
『中日大辞典』大修館書店
『中国神話伝説大事典』大修館書店
『漢方用語大辞典』創医会 遼原
『図説東洋医学用語編』学研
『標註訂正康煕字典』講談社