東洋医学からみた生理

東洋医学からみた生理について

生理は、腎気の主導のもと肝気によって血流が調整され、 脾気によって気血が作られ、余力である奇経の衝・任脈が充満してそのエネルギーが子宮に注ぎ入るということです。
腎気、肝気、脾気、衝・任脈という臓腑や経絡が、全体としての調和により順調な生理につながるわけであり、その結果により妊娠となるのです。

経前期:月経が始まる前の高温期
子宮を養っている衝脈と任脈の気血が盛んになり充実し溢れそうな状態になっている ときです。
行経期:月経の時期
経前期に、充分充実した子宮から経血として血液が溢れてきます。正常な状態では、やや濃い血液が塊をともなわずに降りてきます。最初の3日ほどは濃くて量も豊富であり5日から7日で終わります。
経後期:月経が始まったときから数えて7日目から14日目の排卵の期間
月経によって、子宮から気血があふれ出た為に子宮を養う衝脈任脈も空虚になる。この空っぽの状態から新たに女性の身体は気血を充実させて排卵に備える。
経間期:排卵期
月経により気血共に虚した子宮がその力を回復し、気血が盛んになり陰を生じて排卵し、取り残された陽気が全身に散じて高温期へと変化する。気血の充実した時期に女性の体は排卵し、もし男性と交わっていれば精子と合体し新しい生命が誕生するわけです。

生理の状態
周期について
早い→身体に熱があったり気虚がある
遅い→血虚や冷えがある
期間について
長い→気虚や熱
短い→血虚や冷え
経血量について
少い→血虚や冷え
多い→気虚や虚熱
経血の色について
鮮、紅紫→熱・実
暗紅→冷え
淡紅→虚
暗痰ですすけた水→虚寒の状態
経血の質について
粘稠→熱、実の状態
清稀→虚寒の状態
血塊→お血の状態

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月経前症候群(PMS)
月経の2日から10日前に、憂鬱になったり頭痛、イライラしたりする症状。
西洋医学的には『体液貯留説』や『ビタミン欠乏説』『ホルモン分泌異常説』などが挙げられています。

◇東洋医学的考察
月経後14日目ごろに排卵があります。陰(卵子)を生じたため残された陽が全身をめぐり高温期になる時期です。そして衝脈任脈では子宮を養い着床にそなえる準備をする大切な時期です。

生理タイプの東洋医学的考察
1.イライラしがちで緊張感が強いタイプの方
肝気が欝滞しやすいタイプです。
肝経は、横隔膜を貫き脇肋に分布し乳頭や少腹・生殖器を循ぐる。肝気が暢びやかでなくなるとその分布する経脈が滞り欝滞する。その為に、月経前に乳房の脹痛や脇肋が脹ったりする。
さらに肝気が欝滞し熱がでると、逆気し頭暈や頭痛を発症し眠れないといった状態になる。肝気が胃腸を犯すと、腹痛、下痢、嘔吐などといったさまざまな症状を呈することになる。
2.胃腸の状態が悪いタイプの方
日常的に胃腸の状態が悪い人。
胃腸は食物を消化し体中に運ぶ。故に、胃腸の力がおちると消化や吸収力が悪くなる。
その為に、水の捌きがわるくなり湿濁を生じたり、水のような下痢や全身のむくみを発症する。
3.腎気が弱いタイプの方
高温期は腎の陽気が亢進する時期です。この時期に腎の陽気が虚すと脾の陽気を温めることができなくなる。その為に脾気が虚して下痢になったりむくみを発症する。
また、腎の陰気が虚した場合は逆気となり頭暈・頭痛しイライラして不眠になる。また口内炎もよくできる。

◆基礎体温の東洋医学的考察
基礎体温表にては、安定した低温期と0.3度以上の高温期が12日以上継続している時が、生殖機能が安定した状態であるとされています。
東洋医学的に考察すると、腎気の主導のもと肝気によって血流が調整され、脾気により気血の生化が施されて衝脈任脈が充実している状態である。
基礎体温表で、全体が低い・二相制にならない・低温期が長い・高温期が短かく安定しない・高温期が高すぎるなどにつき、東洋医学的に考察してみる。

1.体温が全体として低い
女性の身体は、陽気の温煦作用により保たれている。
全体の体温が低いという事は、陽気の温煦作用が弱い場合が考えられる。これは腎気、脾気とも大きくかかわる部分であり、両者の器の小ささがうかがえる。
脾腎の陽気を補い、生命力強化の治療が必要となる。
2.低温期が長い
生理のあとの低温期は子宮の気血を回復させる段階である。
この時期は、腎気の支えと衝脈任脈により胞宮(子宮)の充実を図る治療が必要となる。
3.二相制にならない。排卵がない
低温期、高温期のはっきりしない体温表は、陽気が弱くて排卵をみなかったために充分な高温期にならない場合が考えられる。
排卵を助ける為に、陽気の充実をはかる治療を行う。
4.高温期が短く、突発的に高いときがある
腎気が弱いと、途中で高温期が下がってくる。 また逆に体温が上がりすぎる場合もある。
これは腎気が弱いために肝気がおさまることができず、肝気の不必要な暴発を招き月経前のイライラや胸が脹る、便秘、疲労感などを発症する。これ等は逆気の病症である。腎気や肝気を補う治療が中心となる。
5.月経周期が長い
2,3ヶ月に1度などという月経周期になる場合は、腎気、肝気、脾気を調整し、衝脈任脈の気血充実を図ることになる。
妊娠は、しっかりとした排卵、充実した高温期があることが重要であり、生理が毎月なくても妊娠は可能です。

 

<参考資料>ホルモン分泌と生理周期
生理周期とは、生理が始まった日から次の生理の前日までをさす。
生理周期の正常範囲は25〜38日とされる。しかし、個人差が大きくストレスなどで変動する。

1.卵胞期
脳の視床下部からGnRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)が分泌される。
GnRHの分泌により、脳下垂体からFSH(卵胞刺激ホルモン)とLH(黄体形成ホルモン)が分泌される。FSHの分泌により卵巣内で複数の卵胞が育つ。(最終的に排卵に至るのは選ばれた1つの卵胞。残りは閉鎖卵胞となり体に吸収される)
この時期に排卵誘発剤で卵巣刺激を行うと、閉鎖卵胞にならずに卵胞を育てることができる。
卵巣では、卵胞が育つにつれE2(卵胞ホルモン=エストロゲン)が分泌される。子宮では→E2の分泌により子宮内膜が厚くなる。
2.排卵期
卵胞が成熟してくるとE2は急増する。
増えたE2により脳下垂体が刺激されLHを分泌する。これをLHサージといい、LHサージが起こってから約24〜36時間後に排卵する。
卵巣では、卵胞から卵子が飛び出て排卵する。排卵を予測するために、血液中や尿中のLHの濃度を調べる。(血液検査、尿検査、排卵チェッカーなど)
おりものが増えてくるのを自分で確かめるのもよい。採卵時はこの頃にスプレキュアなど点鼻薬やHCGという注射を使う。
3.黄体期
排卵した卵胞は黄体へと変わり、P4(黄体ホルモン=プロゲステロン)を主に分泌する。P4の体温上昇作用で高温相になる。黄体の寿命は約14日間。
黄体は、妊娠が成立すれば引続きP4を分泌し続け高温相が続く。16日以上高温が続けば妊娠の可能性がある。
妊娠しなければ、黄体は退行しホルモンの分泌が減少しやがて生理となる。
高温期が10日以内だと黄体機能不全の疑いがある。血液検査でP4の値を測ったほうがよい。
黄体期は、卵巣ではP4を分泌する。子宮ではP4が子宮内膜を厚くやわかくフカフカにさせ着床に適した状態となる。
4.月経期
妊娠が成立しなければ黄体は約14日で退化する。
そしてP4も減少することにより、維持されていた子宮内膜が剥がれ落ち排出される。これが生理である。そしてまた次の生理周期になる。