<脉診による鍼灸治療法>  

 「研究・論考・資料・文献集」

A5判 本文314ページ   定価3,000円(送料込)

本書は、脉状診の臨床実践「脉診による鍼灸治療法」に掲載できなかった、研究・論考・臨床資料・参考文献等をまとめたもので構成されている。 特に、「臨床資料」「参考文献集」は臨床現場にて活用していただきたいと思います。

内容は、第一章「研究」・第二章」「講演」・第三焦「論考」・第四章「臨床資料」・第五章「参考文献」の五章にまとめてあります。

                                               2011年12月31日 

 

自 序

昭和14年に、岡部素道・井上恵理・竹山晋一郎氏たちが経絡治療を創った。それから60年以上経過し、学術理論の枠組みに色々な欠陥が在ることが明らかになってきた。その一番の欠陥が、「証」という考え方に統一されていなかったことで、その「証」について鍼灸学会にて種々討論された。その討論の中で様々な問題が出てきた。まず脉診に関しては、基本である祖脉を『類経』の六祖脉にするのか、滑しょくを加えた8祖脉にするのかが統一されていない事。腹診法にも統一が無い事。証についても、病証と病症についての問題に回答が出ていない事・・・・・・。等々が問題となったのである。

病理は簡単にいえば「証」である。病気の成り立ちや内容のことである。その証の中には「脉証」も入る。この様に、今ベッド上で呻吟している患者がどうしてこういう病証を呈するに至ったのか、それを解き明かすのが病理である。
そして病理を見極める為には、病証から考える方法もあるが、脉状診から脉証を捉えて、そこから考えていく事も重要ではないかということである。
脉証とは、祖脉の30脉状(『脉経』の24脉、『診家正眼』の28脉に大小2脉を加えたもの)を「浮沈・虚実・遅数・滑しょく」の八祖脈に帰類して、この組み合わせに四時・五蔵の正脉や菽法を考え合わせたものである。
本治法・標治法という言葉も古典文献には出てこない、これは、経絡治療初期に作られた用語である。臨床現場では、脉証を基本として選経選穴し、営衛の手法で病証に対処するのである。また、捻挫・打撲等の急性症の場合は、局所の病証を捉えて適切な処置をする。それが「本」になるわけであるから、元来「本」と「標」は区別する必要はないのではないか。ただ、病気の根本原因を為す「精気の虚」を補うことが「本」である、ということは確かではある。

2011年12月31日

目  次

<第一章>研 究

〇陽気を賦活する陽経からの選経選穴 
【1】表裏の臨床研究 
1.はじめに  2.気の病位と病証(外感病)
3.血の病位と病証
@形質の病証     A三焦理論     B四要理論  
C病証の進行経過について     D五臓六府の病変
4.まとめ
【2】寒熱の臨床研究 
1.はじめに   2.寒熱の病理考察   3.寒熱の重要点
4.湿邪について    5.熱邪と燥邪について   6.臨床応用 
7.手足けつ冷   8.寒証・熱証    9.寒熱と経絡・蔵府の関係
10.まとめ
【3】八綱理論の臨床研究 
1.はじめに    2.八綱について   3.寒熱の重要点
4.表裏の重要点    5.虚実の意義    6.陰証と陽証  
7.陰虚と陽虚    8.表裏について追加    9.寒証と熱証
10.食欲について    11.不眠症について
【4】病証考察・ 虚証について
1.はじめに    2.虚証について    3.陰虚について  
4.陰虚の病証     5.陽虚について  6.湿症について 
【5】陽気・陰気の臨床研究
1.はじめに   2.古典の基本理論    3.古典の生理学
4.蔵の生理作用     5.古典の病理学  
6.臨床の場における陽気陰気の考察
【6】臨床実践と用鍼
はじめに
1. 初めての体験   2.毫鍼の修練について   3.神戸の鍼について
4.小里先生の鍼管と鍼の修練について    5.九鍼について
6.質問
【7】基本証の病理・脉証・腹証・病症について
はじめに
1.基本証について    2.病理と病証
<陰虚証> @腎虚陰虚証  A脾虚陰虚証  B肝虚陰虚証  
C肝虚肺燥証
<陽虚証> @肺虚陽虚証  A脾虚陽虚証  B肝虚陽虚証  
C腎虚陽虚証
<陽実証> @肺虚陽実証  A脾虚陽実証
<陰実証> @肺虚肝実証  A脾虚肝実証
最後に・・・臨床研究について
【8】円鍼の臨床  
1. はじめに   2. 古典の考察   3. 実地臨床と円鍼
4.円鍼の手技手法について    5. 円鍼の適応病症    6. まとめ
【9】三人一組による経絡治療修得方法  
1.はじめに   2.脉診の位置づけと実技研修について
3.研修法の実際−経絡治療の客観性と再現性
◆コラム 「鍼灸師の医学の主張」 

<第二章>講 演
【1】漢方はり治療の治療体系について 
1.はじめに   2.大阪の地と緒方洪庵の「敵塾」   3.緒方洪庵の偉さ
4.漢方はり治療の治療体系における骨子   5.漢方はり治療と精気   
6.精気神論と腎・心・脾胃と精気    7.陽気・陰気と病気の本質     
8.心腎と三焦    9.陽虚・陰実・陽実の臨床応用
10.津液(水)の調整と寒熱の臨床   11.陰虚について
12.漢方はり治療と虚実について 
13.漢方はり治療における虚実の理解      14.扶氏医戒之略
2漢方はり治療とは 
はじめに 伝統鍼灸医学の流れ
1. 「漢方鍼医会基礎講座」の序文より    2.病理の重要性について
3. 精気の虚と陰虚の重要性    4.脉状、脉証と祖脉について
5. 衛・営・血・津液の病理について <参考資料>証の基本病証
◆コラム 「てき儻不羇ということ」 

<第三章>論 考
【1】臨床虚実論の考察 
1.はじめに    2.虚実の定義    3.精気の虚   4.病理の虚  
5.病理の実     6.病症の虚実 
【2】古典鍼灸の医学概論  
1.古典の生理学    2. 古典の基本理論   3. 陽気、陰気について
4.五臓の生理、病理について    5.五臓の陽気・陰気と生理
6.各証の病理について    7.他臓と協調する五臓の生理、病理
【3】素問第62篇「調経論」の考察 
1. 精気の虚について    2. 陰虚の重要性
3. 調経論について
【4】気血の指頭感覚  

<第四章>臨床資料
【1】八綱理論の大要 
1.はじめに     2.八綱理論とは    3.八綱理論の運用
【2】表裏に関する資料 
1.はじめに    2.気の病位と病症(外感病)    3.血の病位と病症
4.三焦弁証と四要理論  
【3】鍼灸臨床における病証資料 
1.虚証    2.実証    3.湿証    4.燥証   5.風証   6.寒証    
7.熱証    8.労証    9.冷証
<参考資料>人迎気口脉診の脉証と病証
【4】選穴の基本文献  
1.はじめに   2. 「難経」の選経選穴論にむ関する諸難について
3. 穴性論に関する諸難と選穴の関係
4.陰陽剛柔選穴論に関する諸難について    5. 「難経」医学の選穴原理について
6. 経脈と経穴の法則性について    7. 五ゆ穴病証について
8. 素問における五味論の文献     9.五味論の選穴応用について
【5】湿について
【6】基本病証の文献資料  
1.虚証について      2. 実証について     3.風証について
4.労証について
<参考資料-1>労倦・虚労・神(心)労について
5.燥証・熱証について
<参考資料-2>痰飲病・水気病・湿病について
6.寒証・冷証について    7. 湿証について

<第五章>参考文献
【1】体表観察と臨床 (漢方鍼医会学術部編)
1.はじめに   2.目的  ?3.臨床応用の診察範囲
4.気血津液の具体的触覚と病証     5.臨床応用と運用
6.臨床実践の場における体表観察の実際     7.結語
【2】衛気営気と手法(漢方鍼医会学術部編) 
1. はじめに     2.営衛とは   3.営衛と手法との関係
4.難経医学における営衛の手法   5. 営衛の手法の具体的手順
6.営衛の手法の一応用例     7. その他    8.終わりに
【3】漢方腹診について(漢方鍼医会学術部編)
1.腹診法の理論      2.腹診の具体的方法
3.腹診の部位
【4】鍼灸病証学について (井上雅文) 
1. 病証学とは何か
2. 病証学の基本概念
@陰陽 A虚実 B寒熱 C表裏 D気血 E臓府  F三焦  G病因
3. 病因と病証の機序    4. 陰虚・陽虚
<参考>病証と脉証
【5】啓迪集弁引  曲直瀬道三編「切紙」より
【6】扶氏医戒之略 (緒方洪庵)  
【7】治病には必ず本を求めよ (張介賓註「類経」より) 
【8】三焦、心包論と鍼灸臨床 (池田政一) 
○はじめに     1.古典医学の考察(命火と気血営衛の生成)
2.証と三焦との臨床的関係     3.経絡と五臓の生理、心熱の病症
4.脉診法とは、脉状診について    5.寒熱と三焦、陽気の治療
6.水気の治療について     7.三焦の原気(原穴・土穴)の選穴
8.三焦経の選穴について
【9】経絡治療と難経医学 (八木素萌)
〇はじめに       1.鍼灸における証について
2.六部定位比較脉診と脉状診      3.虚実と補瀉
4.『難経』謎解きの旅         5.『難経」の位置付け
6.『難経』の読解と臨床       〇終わりに

◆あとがき