★★肥満は糖尿病へのパスポート
日本人に圧倒的に多い2型糖尿病の発病の危険性を高める因子はいろいろ解明されてきましたが、なかでも遺伝的な素因、加齢、肥満などが大きくかかわっていると考えられています。
◆遺伝的な素因
糖尿病には、遺伝的素因(図2)が深くかかわっています。両親ともに2型糖尿病の場合には子供がなる確率は50%にのぼり、片親の場合は25%の確率で糖尿病になるといわれています。
◆加齢
年をとるとどうしても細胞の老化が進みます。その結果、膵臓も働きが衰えてインスリンの分泌量が減少したり、機能が低下することがあります。また、体全体の機能が低下することも、2型糖尿病になりやすい素地をつくると考えられています。
◆肥満
生活習慣の中でも特に肥満と糖尿病の関係が深いことがわかっており、肥満の人はそうでない人に比べて糖尿病になる確率が5倍も高いという報告もあります。第2回で紹介したBMI(体格指数)が25以上の人が肥満と判定されます。
肥満に加えて問題になるのが体脂肪です。BMIが同じ25以上でも、スポーツ選手のように体脂肪率がそれほど高くない人と、中年以降に多い体脂肪率の高い肥満の人では、後者の方が糖尿病になる危険性は高いといえます。
◆過食、運動不足
過食や栄養バランスの偏った食事、そして運動不足は肥満の原因となるとともに、体脂肪率を上げることになります。食べすぎはもちろんですが、脂っこい料理や甘いもの、アルコールのとりすぎ、逆に食物繊維の豊富な野菜やきのこ類、海藻類の不足なども肥満を招きます。
また、運動不足で消費エネルギーが落ちると、当然肥満しやすくなります。しかも、余分なブドウ糖の一部は皮下脂肪として蓄えられますから、体脂肪率が上昇します。
◆ストレス
ビジネスパーソンが避けて通れないストレスも、糖尿病発病の因子になると考えられています。
このように、2型糖尿病の発病にはさまざまな因子がかかわっています。特に、親が糖尿病である人の場合は、肥満や過食、運動不足、強いストレスなどが加わると糖尿病になりやすいので、食生活などの生活習慣を見直して、糖尿病の危険因子になりそうな点を改善していくようにしたいものです。もちろん、遺伝的な素因を受け継いでいない人でも、加齢、肥満や過食などの良くない生活習慣を続けていると、糖尿病を発病する危険性が高まりますので、規則正しい生活を心がけるようにしましょう。監修/安藤幸夫(聖路加レジデンスクリニック院長)