治療の目的は「生命力を強化し体質改善をめざした治療」であります。
決して、肩こり、神経痛、リウマチなどというような個々の病症を対象とした治療ではありません。
生命力が強化されますと、肌は滑らかに美しくなり、ふとりすぎは痩せ、痩せすぎは健康にふとる。高血圧は下がり低血圧は上る。老化は防止され、虚弱体質は無病健康となる、という全身的な総合治療であります。従って、神経痛、肩こりなどはもちろん、すべて生活上の障害は自然に取り除かれるのであります。
すなわち、常にはり灸治療をしている方は、ガンや生活習慣病のような病気に悩まされることもなく、風邪にも罹りにくくなりいつもにこにこと天寿を全うすることができるのであります。
このように、はり灸治療は健康法、養生法として実に優れた力を持っておりますが、そればかりではなく、急病、劇症の場合には救急療法として鎮痛、解熱、せき止め、下痢止めにも効果があります。
「議論よりも実行」であります。病気の方には、効くという真実こそが価値あるのですから、ただ話を聞いたり、持ち合わせた自分の知識でお考えになられるだけではわかりません。まずあなたの身体で感じとることをお勧め致します。
難病痼疾から救われたい人。入院や手術、あるいは薬害を避けたい方。わけのわからぬ病気でお困りの方々は、是非一度健康相談のおつもりで、お気軽にご来院下さい。
心地よい治療
現今は、東洋医学へのリバイバルなどとて、巷には、針治療をはじめいろいろな治療法の看板が溢れております。特に、はり治療の多くは、刺激理念とか血液循環を治療の基礎と考えておりますから、非常に痛く熱いのであります。また、そのような治療家は、はりは痛く、お灸は熱くなければ効かないと思っておりますから、ますます刺激の強いはりや灸を用いることになります。
また、中国針は刺激理念を根本的な治療理念と考えますので、そのテレビ放映では、目をおおいたくなるような太い長いはりを用いております。従って、優れたはり灸治療までが、ただその名前を聞くだけで恐れられ、嫌われるのであります。
しかし、我が漢方鍼医会では、三千年におよぶ、はり灸の原典を今様に解説し、脉診により体質別、個人別にしかるべきツボをとらえて、そこに金・銀のはりを施しますので、決して痛くも熱くもありません。そのためには充分に修錬された指先感覚が必要でありますが、我々はそのための研究学会を創立し、日夜研鑽努力を積み重ねております。
従って、刺激理念による中国バリや現代医学を基盤とした針治療とは、まったく違います。かくて、その治療が正しいツボに的中しますと、眠気をもよおすように心地よいので、子供でさえもにこにこしております。「百聞は一見に如かず」でありますから、どうぞ恐れずこわがらず安心してお出で下さい。
どんな病気に効くでしょうか
「先生、糖尿病は治るでしょうか」「高血圧にはどうでしょう」「熱のあるときに、はりをしても良いでしょうか」などとよく尋ねられますが、それだけではすべて「いいですよ」とお答えするよりほかはありません。
しかし、実際には「脉を診、身体に触れないと言えない」というのが本当であります。その理由を申し上げましょう。例えば、医者からは「ガンだ、不治の病だ」などと見離された方でも、脉を診ますと意外に生命力が強いので助かる人もありますし、それとは反対に、本人は風邪ひきか疲れくらいに思って来院されても「命絶」という証で治療不可能な方もあります。
また、「私の身体には、はりは合うでしょうか」などと聞かれますが、本院の治療は生命力、生き抜く力の強化でありますから、生まれつきはりが合うとか合わないとかはないわけで、治療家が、その人の体質に合わせるものであります。つまり、合わせることの上手な治療家が名医で下手な人がやぶ医となるのであります。
従って、あきらめに「ちょっとはりでもしてみようか」などと、しぶしぶ来院された方がわずか数回の治療で永年の病苦か解放され、「こんなことなら、あんなに怖がらずにもっと早く来れば良かった」などと喜びの声を聞くことがしばしばあります。
はり灸はどうして効くのでしょうか
現代は医学知識が普及し、昔のような伝染病や細菌性の病は少なくなりました。しかし、そのかわりに生活習慣病・癌腫・血液病・ノイローゼ・アレルギー・医原病など、その他わけのわからない難病が多くなり、口の悪い人は「博士や病院が増えると、それに比例し難病も多くなる」などと非難しています。事実、この文化時代に不治の病を嘆く人々が巷にあふれています。
これらの方々は、医者からは特異体質だ、アレルギーだなどとつきはなされ宿命とあきらめているようですが、今の医学では、特異体質やアレルギーは治りません。従って、医者が医療過誤や過失治療をしても、特異体質となれば罪にはならないのであります。
このような次第でありますから、医者が手こずる患者には必要以上に特異体質やアレルギー、本態性などという言葉が使われるのであります。しかし、我が国には偉大な祖先の文化遺産「はり灸治療」があります。これによって生命力を強化し体質改善を図るならば、いかなる難病痼疾も恐れることはありません。
はり灸の歴史とその将来
今行われている医学は、約二世紀前にウイルヒョーという学者が顕微鏡によって細胞を観察し、有名な「細胞病理学説」を発表し、一時はそれがすべてであるかの如く支配的でありました。
従って、今までの医学ではその病原を追求し、冒された細胞を神経刺激や血液循環によって回復せしめ、あるいはその病巣を切り取ったり、取り替えるという、いわゆる時計修繕医学ができあがっているのであります。
東洋医学は五千年前の夏・殷・周時代に始まり、口から口へ、手から手へと伝えられ、今から二千年前に「素問」「霊枢」および「難経」という古典医書に書き残され、その後、仁術として東洋民族とともに発展してきたのであります。
我が国には、紀元六百年頃の飛鳥・奈良朝時代に仏教とともに伝わり、平安、鎌倉、江戸時代を経て、優れた学者を生みつつ今日に伝えられているのであります。その治療法は、時計修繕医学とは根本的に異なり、経絡という生命統制のメカニズムを整えるポイント「ツボ」にはり灸を施して、生体の気の働きを活性化して生き抜く力、病を治す力、すなわち生命力を強化するという理念に立つ治療法であります。
従って、その治療法は神経刺激でも血液循環でもありません。東洋医学独特の「真気・生気を整える」という理念に立つ治療法であります。
このような優れた東洋医学の生命観は、我が国ばかりでなく、欧米各国においても進歩的な医学者によって支持され、東洋医学へのリバイバルは一種のブームになって世界に広がりつつあります。かくて、我が国の治療医学は、脉診流のはり治療によって大きく生まれ変わろうとしているのであります。 どうぞ、難病痼疾に悩む方々も宿命とあきらめることなく、希望に燃えてご来院下さい。
最後に申し上げたいことは、このはり灸ブームに便乗し、病苦に悩む方々に粗雑なはりをしたり、怪しげな治療等によりご迷惑をかけたり、あるいは家伝と称して百年一日の如く古めかしい治療を行っている者もありますが誠に遺憾であります。