スマホ・パソコン症候群

いわゆる、ICT眼症(VDT症候群)について

ICT眼症(VDT症候群)とは

 ITとは「Information Technology:情報技術」という語句の略語で、最近のテレビゲームとかパソコンなどを含むさまざまな情報機器あるいはその技術を意味します。そしてICT眼症とは、「IT機器を長時間あるいは不適切に使用することによって生じる目の病気、およびその状態が誘引となって発症する全身症状」をいいます。

VDT症候群(ブイ・ディー・ティーしょうこうぐん、英語:Visual Display Terminal Syndrome)とは、コンピュータのディスプレイなど表示機器(総称して Visual Display Terminal、VDT と呼ばれる)を使用した作業(VDT作業ともいう)を長時間続けたことにより、目や体、心に支障をきたす病気のことである。別名テクノストレス眼症、ICT眼症とも呼ばれます。

 IT機器が普及するようになって、事務用のパソコン画面を見ながら長時間の仕事をする職種に、「目が疲れる」とか「目が乾く」、「頭痛がする」などの眼症状に加えて、全身的な症状を訴える人が増えています。これらの症状は「VDT(Visual Display Terminal)症候群」とか、「テクノストレス眼症」と呼ばれ、肉体的な症状だけでなく、最近では精神的ストレスも問題視されています。

 また最近は、IT機器の画面も、画像の大きさ、色彩、文字などの形や表示の仕方、経済性などの目的別に、液晶やプラズマ、有機電界発光、発光ダイオード、蛍光表示管など多くのものがあります。さらに、コンピュータ画面や携帯電話から発生する電磁波のからだへの影響も考慮しなければなりません。これらのVDTによって引き起こされる、いろいろな目および全身の症状(過労)が「ICT眼症」です。
問題は、このIT機器を大人だけでなく子どもも盛んに使うようになり、大人と同じようなICT眼症を訴える子どもが増えているのではないかと危惧(きぐ)されることです。
 「テレビの見過ぎ」や「パソコンゲームのし過ぎ」で目が悪くならないか、目が疲れないか、学校の成績に影響するのではないかなど、本人よりもご両親の心配は非常に大きくなっています。

ICT眼症の症状
 ICT眼症の症状は目の疲れ、つまり眼精疲労です。
「像がぼやけて見にくい」、「ものが二重に見えて困る」、「目のまわりが痛い」、「目が重い」、「こめかみが痛い」、「目があけられない」、「頭が重い」、「吐き気がする」などの症状は、すべてこの眼精疲労によるものです。
 目が乾く「ドライアイ」という症状もよく見られます。これは画面を見ているときに瞬きの回数が減り、目の表面にある角膜が涙で潤わなくなるために起こる症状です。目の乾燥感とともに痛みも伴います。白い結膜が血走って(充血して)いるのも特徴です。

眼の過労による諸症状
 視覚性病症

 ピントが合わせにくい、複視がでる、まぶしい、ちらつく、うるむ、乾燥感、充血、熱感など複数の不快感の訴え
 筋肉性病症
 固視持続困難、眼・周囲の鈍い痛み、瞬目過多、肩・頚部・腕・腰部のこり・痛み・しびれ感
 関連性病症
 頭痛、目まい、悪心、嘔吐、習慣性便秘、下痢、月経不順、食欲不振、三叉神経痛、眉間・額のしわ形成
 機能的病症
 心身症、神経症、不定愁訴

心配される子供への影響

       


  ドライアイの原因となる瞬きの回数が少なくなる。その為に目が充血して、乾燥による角膜障害が発症します。
また長時間、同じ姿勢、距離で画面を見ることによって首や眼筋の緊張が生じて、身体的緊張にまでつながります。これが長期間続くと自律神経の失調まで引き起こします。

 最も悪い事は、他人とのコミュニケーション不足が精神的・知的発達に大きな影響を与えることです。

ICT眼症の検査(ICT眼症と診断するための検査)
 1.近見(30cm)視力
 近くを見るときの視力が重要です。左右の目で視力差や遠視があると、疲労の原因になります。
 2.メガネの度数とメガネによる視力
 メガネの度数が合っていない。顔が成長して左右の瞳孔の間隔が広くなっているのに、メガネが古いため、メガネのわくやレンズの中心がずれている 。左右のレンズの屈折度の差が大きい。これらは疲労の原因になります。
 3.前眼部検査(スリット検査)
 結膜や角膜、虹彩および水晶体など、目の前部に異常(特に炎症)があると、本当の病気とICT眼症との区別が必要です。また、涙液の状態もIT眼症では 変化します。
 ◇眼圧
 「目のにぶい痛み」が、眼圧が関与する真の緑内障によるものか、ICT眼症によるものかの、区別が必要です。
 ◇眼底検査
 眼内の組織や視神経に異常があると、視力低下だけでなく、それによる両眼視機能の異常をもたらします。ICT眼症との区別が必要です。
 ◇眼位検査
 両眼の視線が見ている物に集中せず、一方の視線がずれた状態を斜視といいます。原因は、生まれつきや外傷、眼球を動かし維持する眼筋自体の障害、神経支配異常などさまざまです。斜視があると、物が二つに見える複視を生じたり、両眼視機能が維持できず距離感や立体感に乏しいためIT眼症にな りやすいといえます。
 ◇眼球運動検査
 両方の目を動かす筋肉(外眼筋)の動きのバランスに、異常がないか調べます。特に近くの物を見る眼球運動(ふくそう運動)と、近くから遠くを見る眼 球運動(開散運動)の不足が、ICT眼症では関係します。両眼が左右平行に動く眼球運動(共同運動)にわずかなアンバランスがあると、やはりICT眼症にな る率が高くなります。
 ◇瞳孔対光反射検査
 瞳孔は目に入る光の量に応じて、あるいはピントを合わせるときの精神的および身体的変化によって、大きく(散瞳)なったり小さく(縮瞳)なったりし ます。IT眼症では、このバランスがくずれます。また強い光刺激で縮瞳(対光反射)するのは、網膜や視神経の機能を表しますが、ICT眼症では、やはり 不安定になることがあります。
 ◇調節機能検査
 調節とは、物を見るときに正確なピント合わせをする機能で、脳の多くの部位が複雑に関係しています。そのため、長時間物を見続けたり、動きの激 しい物を追い続けたり、像がボケている物を見続けたり、あるいはコントラストの弱い物を見分けようとしたり、暗い部屋での作業をしたりすると、 反射的に無理やりピントを合わせるため、脳に負担がかかってしまいます。この場合のICT眼症では、自律神経の失調を含めた、全身症状も伴うことに なります。

どうすれば良くなるの?

 ICT眼症と診断がついた時点で最良の治療は、原因を断つこと、つまりIT機器の画面から遠ざかることです。
小児ほど、親がうまく対処すれば原因を取り除くことができるでしょう。しかし成人なるほど、親よりも本人の自覚がなければ原因を完全に断つことは非常に困難です。

<参考>ICT眼症予防の訓練
 輻湊(ふくそう)訓練
 輻湊とは「寄り目」のことです。訓練には、キャラクターペンの人形などを、眼前約50cmから近づけ、両目でしっかり見るようにします。見る目標物 は、鼻のようにはっきりしたポイントを選びましょう。図のように、両目が等しく内に「寄る」ことが重要です。

 調節訓練
 眼筋の緊張が続くと、上手にリラックスすることができなくなります。これを改善する訓練として、一日に2回程度、眼筋をほぐす調節訓練を行いま しょう。
 具体的には5m以上の遠方にある目標物を決めて、約3分間、両目で見続けます。ぼんやりと眺めるような心持で行うと良いでしょう。

ICT眼症(VDT症候群)の治療と鍼灸治療

 現代医学には、目の疲れをやわらげ、目にうるおいを与える点眼薬や、身体や目の緊張をほぐす飲み薬による治療が行われます。液晶モニターが発する光「ブルーライト」から目を保護することを目的としたパソコン専用メガネもあります。

鍼灸治療は非常に効果があります。
 東洋医学では、眼の諸病症は「肝腎の病証」とされています。鍼灸による全身調整により「気の流れ」を調和させ、肝腎を中心とした治療を行います。特に、後頭部や後頚部、肩背部のコリや緊張を緩めます。時には、後頭部などより「?血」を排除する治療も行います。
 局所的には、眼精疲労に対して眼周囲の緊張を緩める諸治療も行います。
 ICT眼症の身体的特徴は、東洋的病理における「冷え病証」により上下のバランスが大きく不調和になっていることであります。具体的には、下半身や手指、腹部の緊張や冷えを発症することであり、この調和治療がポイントとなります。

<資料>公益社団法人 日本眼科医会

<参考資料>
パソコンとコンタクトレンズ
パソコンに長く向かっていると、まばたきが少なくなり涙が減ってドライアイになりやすい。コンタクトは角膜を覆う涙にのっているので、長時間入れた状態ではベストコンデションを保てません。
コンタクトを入れてパソコンに向かうときは、まばたきを意識して行い、人工涙液を併用します。それでもだめならメガネに変えよう。コンタクトを使わない場合も人工涙液を併用したほうが良い。

目のホットパックでドライアイのケアを
目が疲れて乾いているときは、目の上に蒸しタオルをのせて休憩しょう。温めると目のまわりの血行がよくなり、涙の蒸発を防ぐ油の分泌もよくなり楽になります。蒸しタオルは水を軽くしぼって電子レンジで加熱すると簡単にできます。

オフィスで増えているドライアイ
近年オフィスのOA 化がすすみ、それにともなって「ドライアイ」に悩む人が急増しています。ドライアイは老化や全身の病気でも起こりますが、増加の理由として、パソコンなどのVDT 作業が増えたこともあげられます。
目の疲れにくわえて、ショボショボ感、目の乾き、ゴロゴロ感、充血、まばたきが増える、などです。
これは、目の表面をおおっている涙の量が少なくなったり、涙の流れが悪くなったりするために発症します。

◆涙は三層からなる
目を保護するために、涙は油層、涙液層、ムチン層からできている

涙の働き
目の表面をうるおして、角膜や結膜(目の表面の粘膜)に水分や栄養を補給し、保護する働きがあります。
悲しいときやうれしいときや目にゴミが入ったときなどにたくさんの涙がでます。しかしふだんは、まばたきのたびに少しの涙がでて効率的に目の表面を保護しています。

目の使いすぎでドライアイになる
パソコンで作業をするときは、じっと画面をみつめる時間が長くなります。そうすると、まばたきの回数が減って涙が目の表面から蒸発しやすくなり、目が乾いてドライアイになります。
また、角膜をケアしている涙の成分が不足するのも目には良くありません。
ドライアイのタイプによっては、寒いところや風のあるところなど、環境によっては涙がポロポロでるようになります。これは目が乾いて涙の膜の保護作用が減ると、少しの刺激でも涙がたくさんでるからです。
ドライアイは乾燥した場所では症状が悪化し、湿気が多いと症状が軽くなります。

ドライアイの治療法
治療の基本は、目薬で目の表面の粘膜を潤すことです。
さらに、目の表面に油の膜をつくりすべりをよくするため、また夜間の乾燥予防に眼軟膏が処方されることもあります。
涙の蒸発を抑えるために、ドライアイメガネを使用したり、涙の排出量を減らし目の表面に涙をためるために、涙の排水口である涙点を涙点プラグで閉じる治療もあります。

ドライアイメガネ
保護用カバーを手持ちの眼鏡にかけ、ぬらしたスポンジをはさんで、目のまわりの湿度を高める方法が有効です