グレン手術が成功した割には、その後の進展が見られなかった。
逆に、見た目には弱っているようにさえ見えた。
呼吸器は外せない、ミルクが吸収しない、おしっこが少ない、胸水が多くてドレインがとれない。
問題点が山積みだった。
予定外のカテーテルまで入ってしまった。
でも、良い話はなかなか聞けない。
唯一の救いは、痩せっぽちの顔で、思いっきりの笑顔を作ってくれることだった。
この時期に憶えた、ペロペロキャンディーをなめる姿と、機嫌の良い時の笑顔。
疲れや不安を一瞬だけ忘れさせてくれた。
7月に入ったある日。
高熱が出ているのに、手足が異常に冷たい。
4月の感染の時のあの辛さが頭をよぎった。
まさか、大丈夫だよね・・・。
そう思った二日後には、もう手遅れの状態だった。
やっと主治医の先生に診てもらえた時には、すでに菌の塊ができていた。
何度目かの奇跡を祈った。
慶人も菌と必死で戦っていた。
でも、それに勝つだけの体力と心臓の力が足りなかった・・・。
最後の一週間、慶人はパパとママに素晴らしいプレゼントをくれた。
あんなに長い間、3人が一緒にいたのは初めてだった。
慶人が誕生してからの7カ月半を振り返る時間をくれた。
一生忘れることのない、3人だけの大切な時間だった。
最期のとき、パパもママも慶人の手を握っていた。
これからも、ずっとずっと一緒だよ。
けいと、良くがんばったね、えらかったよ・・・。
けいと、ありがとう・・・。
|