それまでの時間をどうやって慶人と過ごそうか・・・。 呼吸器や点滴のチューブはたくさんついているし、 脈が落ちる心配もあるので無茶なことはできない。 色々考えて2つの事をさせてもらった。 先生も看護婦さんも快く承諾してくださった。 4月に敗血症になってからは、母乳ではなく高カロリーの特種ミルクをもらっていた。 ママは毎日、搾乳しては捨てるという空しい作業の繰り返しだった。 絞り立ての母乳を慶人の体の中に入れてあげたかった。 一日のミルクの回数のうち半分だけ母乳を使ってもらえた。 今まではベッドの上で体を拭いて、頭の下に敷物をしいてシャンプーをしてもらっていた。 たまに手足をお湯につけてあげるととても気持ちよさそうだった。 どうしてもお湯につけてあげたかった。 呼吸器を管理する先生の手、点滴のチューブをまとめたり慶人を支える看護婦さんの手、 おまけにカメラ部隊、ビデオ部隊までついての大イベントになった。 体を動かされて嫌なはずなのに、お湯の中に入った慶人はトロ~ンとしていた。 あんなに気持ちよさそうにうっとりした顔を見たのは初めてだった。 手術室に見送った瞬間、「最後かも・・・」と思い、ママは立てなくなった。
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