あおけいと けいとの入院

     

翌日の午後から楽しみにしていた授乳指導だった。
お昼を食べ終わると、看護婦さんに
「先生からお話があるので、ちょっと来てくれる?」と呼ばれた。
何かあったのか?緊張して新生児室に入ると先生が保育器の前に立っていた。
「この子は、血液中の酸素の量が少ないんだよ。」とあっさりと言う。
顔色やミルクの飲み、おしっこも異常はないけど、
この検査だけおかしいと言われた。
「念のため、総合病院で検査してもらいましょう。」
パパを会社から呼び、救急車で近隣の総合病院へ連れていってもらった。
看護婦さんに抱っこされて、気持ちよさそうに寝ている慶人に向かって
「早く帰っておいでね。」と言って見送った。
この時はすぐに帰って来ると思っていた。
そして、動揺していたのもあって、
自分で抱っこしないままだった。
体に何もついていない慶人を見るのは、この時が最後だった・・・。

周りは幸せそうな笑い声、赤ちゃんの泣き声、
おっぱいをあげているお母さん。
みんな、キラキラしていた。
でも、信じていた。
何ごともなくすぐに帰って来る事を信じていた。
こんなに強く神様にお願いしたのは生まれて初めてだった。

夕方、パパからの電話。
「ジュニア・・・心臓が・・・悪いんだって・・・。」
言葉になっていなかった。
この日のうちに、東京の心臓専門の病院に運ばれた。

「心臓病」といっても良くわからなかった。
すぐ治るのか?
手術が必要なのか?
命は助かるのか?
いろんな事が頭をよぎった。
まだ、現実を認める事ができなかった。
この日、パパはそのまま家に帰ってしまった。
なんで来てくれないんだろうってとても不安だった。
後で考えると「左心低形成症候群」という
重度の心臓病を宣告されて、どうやって
私に伝えてたらよいか、悩んだんだろう。
出産翌日の心身ともに不安定になっている
ママへの配慮だったんだろう。
    

      

  

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