補修作業の流れ(図はハードワックスやシェラックなど、溶かして充填するものを想定していますが、 → TOP
どの充填剤でも基本的な流れに変わりはありません。現役の補修業の方も参考に出来るよう、幾分詳しく説明してあります) ラピタ記事参照
傷口を整える 充填して補修する部分の状況を整えます。平滑な表面に対して傷の有る部分は多少のでこぼこ、ケバが出来て いる事が多いので、彫刻刀やスクレーパー(木工用平のみ)等で突起部分が無いように余計な部分を削って整 えます。 凹みの部分に表面仕上げされた、ツルツルの短板(クリアーの着いた表面材)が残っていると、充填材の固着を 悪くするので切除します(ソフトワックス使用の場合を除く。ソフトワックスには独特の粘着性があるので切除不要)。 充填部分周辺(部材の表面色)が濃い色で、傷部分が明るい生の木色の場合は下から明るい色が透けてこない ように、フェルト・タッチアップ・ペン等で傷周辺を着色します(部材が明るい色の場合は不要です)。 |
|
充填作業(ハードワックス、シェラック) 熱による可塑性(plasticity)充填材の場合、電気・ガスなどを熱源とした”こて”を用いて溶かして傷口へ充填しま す。この際、適正な色合いに近付けるため、同種の充填剤の中の異なった色と溶かしあったり、溶けた充填剤にカ ラーインクを数滴たらして色合いを調整して充填したり工夫して充填します。 色の混合作業は傷自体の中で行うよりは、ドイツ・スクレーパー(切削用鋼板)等をパレット代わりにして行うと便利 です。 充填の度合いは部材の水平面より少し盛り上がっている、位にします。凹んでしまってはやり直しになりま す。(初めての方は充填剤に有る出来合いの色で、最も近いと思われる色を選んで充填するのが無難です)。 充填後、数秒から1分程度で硬化が始まります。 |
|
平滑化1.(切削) ハードワックスの場合;完全に硬化する時点の、すこし前を狙って(まだ、ソフトワックス位の感触が残っている) ブラスチック製のワックス・コーボルト(ワックス充填用へら)を充填面の表面を加圧しながら滑らせる様な感じで、 往復して滑らせるように動かし、手早く平滑化して行くのが凸凹の少ない平面を作るコツです。 シェラックの場合;充分硬化した後、スクレーパ(平のみ)を用いて切削していきます。この際、充填部分の手前 から、こそげ取るようにすると、力がかかりすぎて充填剤そのものを根こそぎ剥離させる恐れがありますから、手前 から見て、奥のハシの部分から、少しずつ切削して最後に手前から全体に渡って、スクレーパーを滑らせるようにし た方が、綺麗に切削出来ます。 |
|
平滑化2.(コレクトゥア・アンレーザー;液状やすりの使用) 一通りの切削が済んだら、ドイツ・スクレーパー(切削鋼板)の長手面を部材に付けて、手前に引きつけるような 感じで部材・充填面も上を滑らせて周囲にはみ出した余分な充填剤を除去すると共に、充填面の一層の平滑化を 計ります(ドイツスクレーパーの完璧な直線が大変有用です)。部材に対して直角な角度より、手前に45度倒した 状態の方が、充填部に直線による傷を付け難いよです。 最後にトリコット(綿布)をフェルトブロックに巻いたものにコレクトゥア・アンレーザーを付けて、まだ、残っている周 囲の余分な充填剤を除去します。この作業で、充填部周囲がすっきりします(あまりごしごしやると平滑な充填部が 凹む事があります)。 |
|
着色(木目を描く) カラーパレットの固形顔料から筆にNCベンジンを含ませて少しずつ色をとり、適切な色合いをパレット上で調合し て充填部分に中間色と、木目を描いて行きます。(練習の段階では、平滑化が済んだら直接描き入れますが、顔 料を用いる前にマットスプレーを充填面に塗布(必ず30センチ程の距離を置いて、じっとりと、ならないように軽く) して置いた方が、マット粒子に顔料が絡んで、色が乗りやすくなります。 また、NCベンジンで溶いた顔料は、濃厚に用いるより、ベンジン成分の多い薄め、かつ、筆を良く絞ってじっとり とならないように、少量ずつ色を乗せて、少しずつ色を重ねあげて行くと、重い色合いによる失敗を防げる場合が 多いようです。やり直しはNCベンジンによる「ふき取り」で可能です。 |
|
仕上げ(スプレー塗布) 着色が済んだら、表面の光沢に合わせて、仕上げスプレー(マット;つや消し、グランツ;光沢)を塗布します。 塗布作業は必ず30センチ程度の距離を塗布される面から置いて充分にかつ、手早く行ってください。 床面などで、スリッパなどとの摩擦が多く予測される部分には一旦塗布して乾燥してから(冬季・梅雨時を除いて 2,3分から5分くらいで乾きます。再度作業を繰り返して、クリアの層を厚くして、あまり早期に「色が剥げた」と言う 事が起きないように留意します(補修は擦過に対する耐久性の点では限度のあるものですが、可能な努力を)。 2,3回の塗布が完了したら、必要に応じてスチールウールで表面研磨して、光沢の調整を行います。補修面 (スプレー塗布面)と既存の部材の境界もスチールウールで目立たなく出来ます。(多湿による白濁時使用中止) |
→TOP