2003.7.12 村治 奏一ギターリサイタル
 一昨年、奏一君のデビューリサイタルを聴いて、それ以来ということになるが、今回はCDデビューということでそのCDからの曲が多いが、バッハのシャコンヌを含むBWV1004全曲というのは、かなり意欲的である。東京国際で優勝したのもシャコンヌであり、思い入れも強いのだろう。

 今回、2つのポンセにも注目していた。ソナタ第3番はさすがに最初とあって、ちょっと波に乗り切れないかなという所もあったが、もちろんほとんどミスという物は無い。主題、変奏と終曲も好演ではあるが感動というほどではなかった。実のところ、前半で一番良かったのはヴィラ=ロボスだったと思う。エチュード1番のあのミスの無い推進力には脱帽である。CDも聴いたがライブの方が数段良いと感じた。またバリオスは得意曲なのだろう、安心して聴ける。ワルツ第3番を本当にワルツっぽく弾くのは結構大変なのであるが、小気味良かった。

 後半はパルティータ全曲のみ。出だしからハウザーの低音が唸る様。素晴らしい演奏である。しかしハプニングが起こった。なんとクーラントを弾き始めてすぐに「バチン」とした音と共に弦が切れたのである(あとからの情報では6弦らしいが)。クラシックギター演奏のライブで弦が切れるのは前代未聞であろう。奏一君も一瞬あっけに取られたような表情だった。すぐ楽屋に消えたが、幸い師の鈴木大介氏のギターの弦を使用した様で、後の演奏で音の狂いとか特に気にならなかった。もっとも弾いてる方は大変だったのかもしれないが。
 組曲の中ではシャコンヌも良かったが、私はジーグを一番に推したい。あの難曲を流れる様に表情/メリハリをつけて完璧に弾き切った。素晴らしい。

 アンコールはバリオスの君の面影、ワルツ第4番、そして昨年同様にカヴァティーナで締めくくった。
 今回はCDデビューなので、さっそくCDを買い求め、帰りの新幹線を気にしながらも素早く並び、サインをもらって来た。「良い演奏をありがとう」と声をかけてきた。本当に今後が楽しみなギタリストである。

                                          2003.07.13
ポンセ       ソナタ第3番
ヴィラ=ロボス  エチュード第1番、第4番、プレリュード第5番
バリオス      ワルツ第3番、我が母へ
ポンセ       主題、変奏と終曲

         (休憩)

バッハ       無伴奏パルティータ第2番 BWV1004