上棟式(たてまえ)のおはなし
昔から家を建てることには大変な努力をしました。屋敷林で育った木を切り、何年も乾燥させ、鋸で引いて柱や板を作り、屋根に葺く茅や麦藁も何年もかかって蓄えておきました。それでも足りない材料は、親戚や知り合いの人たちが持ち寄って、お互いに助けあって作ったのです。
このように苦労して家を作ったので、その家が地震で倒れたり、台風で倒れたり、火事で燃えないことを願って、さまざまな祈願をしたのです。最初に土地の神様を鎮めるために「地鎮祭」を行い、次に、家の骨格が出来上がると「上棟式」をして大工さんの労をねぎらったのです。
今回行われる上棟式(たてまえ)は、昔行われていたやり方を再現して、昔の人たちの苦労を思い起こし、この文化遺産を大切に守ってほしいと願い、市民の方々のご協力を得て行われます。
曳綱(ひきづな) 屋根のてっぺんは棟木で支えられています。その棟木をあげて初め て家の形が出来上がります。集まった人がみんなで力を合わせて綱で曳きあげます。
槌打ち(つちうち) 上に据えられた棟木を固定するために、小槌で叩いてとめます。
幣串取付け(へいぐしとりつけ) 幣串には柱と同じ太さのものが使われます。家を 支える柱が丈夫で、長持ちするように、その上部にお祝いの扇と5色の布を下げ、女性の7つ道具、鏡と櫛、お化粧の白粉、紅、髪を結うためのかもじ、こうがい、縫い物に使う針を入れた袋を取付けます。なぜこのようなものを付けたのか、各地におもしろい伝承が伝わっていますが、家を支える女性の労をねぎらうためのものであったのでしょう。
破魔矢取付け(はまやとりつけ) 弓を家の表鬼門と裏鬼門の方向に向け、それぞれ天と地の方向に矢を向けます。これは家の邪気をはらい、魔除けのために取付けられます。
四方清め(しほうきよめ) 家を建てる施主と棟梁、鳶頭の3人で、建物の四方に塩、米、お酒をまいて清めます。
四方餅(しほうもち) 建物の四方に供えられていた餅を、施主が大工や鳶などの職人に感謝をこめて下に落として渡します。
鏡開き(かがみびらき) 屋根にお供えしてあった酒樽を開けて、施主と棟梁、鳶職とで乾杯をして、労をねぎらいます。
もちまき 上棟式が無事に終わったことを祝い、集まってくれた近所の人たちにも福を分かちあうために、もちまきが行われます。昔は餅と一緒に小銭もまかれたので、上棟式は子どもたちにとっても大きな楽しみでした。
棟梁送り(とうりょうおくり) 最後に幣串を棟から下におろして、それを先頭に捧げ持って、施主と棟梁、鳶職たちは列をつくって棟梁の家まで送り、手締めをして棟梁送りは終わりました。
(古民家復元ワークショップ 稲葉) |