ミレット
思い出し日記

プロローグ

事の起こりは、昨年の「ミュージカル・ハイジ」だった。
マナカナの元気なハイジをたったの一度だけ観劇したのがそもそもの病気の始まり。
「もう一度観たい」、そんな想いが日ごとにつのり、ついうっかりと書き込みをしてしまった・・・スマイル掲示板に。

「来年、もし“ミレット”が実現するなら、すべての公演を制覇します!」
と、約束してしまったのだ。

そこは、まじめな ふりいく。一旦口にした言葉は、契約にちかいと感じる性分。しかも、本当に実現してしまったのだ、今年「ミレット」が。
いやはや、多少なりとも“実現”の可能性は低いと踏んでいたところも、あったにはあった。しかし、神様は見ていたのだ。

「言葉は選べ。軽々しく約束などして、マナカナを傷つけてはいけないよ」 とね。

そんなわけで今年『全国10ヶ所14公演の制覇に、まじめに挑戦することになってしまったのです、ハイ。

で、7月のうちにインターネットを利用してチケットを購入。
“東京グローブ座”4日間5公演と、“いたみホール”、“知立市文化会館”、“グリーンホール相模大野”と、“チケットぴあ”で買えたのはそれだけだった。

座席は、“東京グローブ座”では二階席下手。しかも、4日間5公演をほとんど2ヶ所の座席番号の席を行ったり来たりと、これこそ本当の“指定席”に当たってしまったのです(笑)。
“いたみホール”では5列目、知立市文化会館はM列、そして、“グリーンホール相模大野”で、初めて一番前の席に座ることになったのです。

さあ、いよいよ開幕の日が迫ってきます。
グローブ座から歩いて15分、新宿のホテルを3泊、こちらもインターネットで予約を入れました。


8月4日(土)「ミレット」開幕

東京駅に降り立ったのは午後5時ちょうど。
前に来たのはいつだったのか、ずいぶん昔になる。もう、思い出せないくらい。数時間前まで、気温35度の大阪にいたせいもあり、30度の気温は自然のクーラーに浸っているような感じだ。

「おっといけない。ホテルのチェックインは、5時と知らせておいたのだ」

“のぞみ”なら2時間半と計算していたせいで、“ひかり”に乗ったため、計画から30分の遅刻。とにかく山手線、内回りでも外回りでもいい、乗るんだ!
降りる駅は中央線の大久保。新宿で乗りかえてひと駅。
ホテルへは、地図で下調べをしておいたけど、やっぱり人に聞かなければすんなりと辿り着けなかった。

大阪、京都などのように碁盤の目のようになっていない街路の東京は、道なりに進んで行くと、とんでもない所に行きかねない。ガラスを叩き割って出来た、ひび割れの道を行くようなものだ、東京は。

5時50分、目的のホテルに到着。

ホテルは普通と違い、カウンターが正面玄関になく、地下にあるホテルだった。なんでも、日本で最初のキーレスホテルだそうな。
最初に好きな暗証番号を自分で決め、ドアの横にあるボタンを操作して、部屋に入るようになっている。 出かける時も自由、キーをカウンターに預ける必要もないわけだ。
そうか、それで地下にカウンターを持っていったわけだ。 そのかわり、宿泊料金は前払い。領収書もすぐにもらった。
「帰りは勝手に帰ってね」って感じでしょうか。まことに現代的なホテルでありました。

お茶を1杯いただいたところで、初日「ミレット」の開場時間になった。
出かけよう。

東京グローブ座は、こじんまりとした趣のある会場だった。
入り口には、イチロー選手等からの花束も飾られてあり、開幕にふさわしい雰囲気が漂っていた。いつもそうだったが、ふりいくは開場前から並ぶことはしない。開演前にそっと来て、舞台が終わるとスッと姿を消した。

マナカナのお出迎えをするわけでもなく、お見送りをするわけでもない。冷た〜い観客に徹していたのだ。でも、気持ちは熱かったよ!(笑)

2階席下手に鎮座、腕組みをして一呼吸。
・・・始まるのだ、まぼろしの舞台が。

開演のブザーが鳴ったが、しばらく間があいた。舞台両側のピアノの前に、それぞれ人が座った。正確には、ふりいくの位置からは、下手に座ったピアノ奏者の姿は見えなかった。結局、14公演全て、ふりいくには1台のピアノしか見えなかったことになる。

照明が落ちてゆき、やがて真っ暗になった。

舞台下手から中央に、白い影がスーッと進んできて、腰をおろした。

ピアノが鳴る。

甘い声がしっとりと、会場に響き渡った。
あの声、茉奈ちゃんの声です。

♪「はじまるよ 大冒険が〜 誰もがそう言うの〜」


8月5日(日)焼肉とラーメン

今日は「カナミレット」の初日。
開演時間は、午後2時となっている。
しかし問題は、その時間まで待機する場所がないのだ。

ホテルには“チェックイン時間”と“チェックアウト時間”があり、 たとえ連泊でも、その間の時間は表へ放り出される。

9時半。
あてもなく、時間つぶしの旅に出ました。
目的地までは、およそ4時間。交通手段は“足”です(笑)

テクテクテクテク、テクテクテクテク、テクテクテクテク。

あてもなく2時間近くも歩くと、さすがに疲れた。
喫茶店で休憩をと思ったのだが、その喫茶店が見つからない。
探し回った挙句、“コーヒーショップ”という看板を見つけ、とにかく飛び込んだ。

しかし、誰も注文を聞きに来ない。
店員さんに聞いてみた。

「ここは、ひょっとして“セルフサービス”ですか?」

「ハイ、そうです」と返事。

「じゃぁ、冷コ・・・いや、アイスコーヒーをひとつ」

やっと見つけたコーヒーショップ。
しかし、東京では純喫茶は壊滅状態だった。


150円のアイスコーヒで、15分ほど休憩をとり、店を出た。


またまた歩く。
テクテクテクテク、テクテクテクテク、テクテクテクテク。

お昼。
和食の店はないかと、物色しながら歩く。

ラーメン、ラーメン、ラーメン。
焼肉、ラーメン、ラーメン、焼肉。

焼肉、ラーメン、ラーメン。

こんどは、和食の店がない。
やたらに多いのは、ラーメン屋と焼肉屋さんだ。

ラーメン、焼肉、ラーメン。
焼肉、ラーメン、ラーメン、トンカツ屋。


あった!
しかし、新宿は韓国と中国の領土と化していた。

食後、またまたまた、歩く。

延べ3時間以上は歩いただろうか、普段履きなれない靴を履いてきたせいもあり、 両足の先が少し痛い。どうやら、足に“マメ”ができた感じがする。

午後1時40分。
すこし足をひきずりながら、目的地、グローブ座「カナミレット」に辿り着いた。

2時7分。
照明が落ち、ピアノが鳴った。

舞台中央、スポットライトを浴び、明るく弾む声が会場に響いた。

「カナミレット」の開幕です。



8月6日(月)マメに勉強

3日目。きょうはマナカナそれぞれの「ミレット」がある日。
14公演通して、唯一ふたりが同じ日に公演する日なのです。

とりあえず昼の部の公演、「マナミレット」の始まる午後2時まで時間をつぶそうと ホテルを出た。
しかし、15分もすると足の痛みに耐えられなくなり、
ふと靴を見ると右足小指のあるあたりから血がにじんでいる。
たまたま近くに、作業服やスニーカーを売っている店を見つけ、代わりの靴
を買った。

この日も、午後2時を視野にいれつつ、距離と時間の計算をしながら東京見物。 でも、なにを見たかほとんど記憶に残っていない。
足の痛さと時間配分ばかりに気をとられ、目に入るものはただの背景と化していた。

そうか、「ミレット」を鑑賞するにしても同じ事かも。
他に考え事があったり、体調が悪かったりすると、それだけで観客としては失格。 一本の舞台は、役者と観客の真剣勝負であり、双方互角に戦える力があってこそ 最高の舞台が完成する。

と、そんなことも学習しつつ歩き続ける。

12時。
今日も昼食の献立に迷ってしまった。
飲食店のバラエティーが少ないため、好みの物を食べさせてくれるお店をさがすのは 骨が折れる。

一軒の“本格派中華料理店”があったので、そこに決めた。
グローブ座に近い所だったし、店に入ったのは1時過ぎぐらいだったから、じゅうぶん間に合うと思っていた。

しかし・・・
注文してからが長かった。待てども待てども、出てこない。


この事に関しては、大阪は特別なのかもしれない。
同じ関西圏にありながら、神戸でも、京都でも、和歌山でも、食事を注文してから出て来るまでが全体として遅い。

『大阪人のいらち』は有名だが、
注文すると、“カップ麺”のように素早く出る。そう出来なければ、この食い倒れの街では生き残る事がむずかしいのだ。もちろん、味に関してもうるさい事この上ない。

30分ほど待って、ようやく“エサ”が運ばれてきた。しかし、もう時間が無かったので、あわてて その“処理”を済ませ、店を飛び出した。
(このあたり、表現にかなりの“毒(味?)”を含んでいます^^)

グローブ座まで競歩状態。

例の2階席、“ふりいくの指定席”に着いた時には、他の観客はほとんど席についていた。 開演ブザーは鳴っていなかったものの、遅刻寸前だった。

2時7分、開演。

この日の「マナミレット」は、ほとんど完璧だった。
他の役者さんも、日ごとに工夫をしているのか、少しずつ演じ方を変えているようにも見える。
それらも含め、東京グローブ座公演、一番の出来だったと思う。

もちろん、ふりいくとしては、今日の“学習”の成果を踏まえつつ観たせいもある。 役者と ふりいくの真剣勝負。互角に戦えた一戦だったのかも知れない。

4時半に「マナミレット」が終わり、歩いて15分のホテルに戻った。 夜の部、7時の「カナミレット」まで2時間の休憩。

「カナミレット」は、躍動感あふれる“タンゴ”のミレット。
「マナミレット」は、情緒あふれる“ワルツ”のミレット。

きょうは、2種類の名曲を堪能しました。


8月7日(火)マナ、グローブに落下

“東京グローブ座”最終公演。

今日、「マナミレット」がロープから落下しました。いやいや、低い位置のロープだったし、ミレットも「出来たぁ〜!」って叫んでましたから、ケガはなかったようです(笑)

舞台は一発勝負!ほんと、コワイですネ。

タバク青年の、“剣を使ったジャグリング”もたいへんですけど、ロープ上のミレットはもっとハラハラします。特に、高い位置のロープでの練習は、下で見るより怖かったのではないでしょうか。
(もちろん、ロープと言っても、ロープに見せかけた幅のせまい上昇舞台)

「マナミレット」唯一の失敗。でも、低い位置のロープで良かったなと、本当にそう思いました。

東京最終公演が終わったのは、午後4時半。ホテルに預けていた荷物を受け取り、まっすぐ大阪に帰りました。


8月8日(水)ローカル公演

明日から地方公演のスタートですが、まだチケットの手配が出来ていない会場があります。明日の公演場所、滋賀県“わたむきホール虹”と、12日の能勢町“浄瑠璃シアター”へは、下見がてらにチケットの購入に出かけることにしました。

琵琶湖の東、のどかな田園風景の中、間違えようの無い豪華なホールが建っていました。 滋賀県日野町は、ベリーニの福井さんが生まれ育った所でもあり、今回のパンフレットでも、彼が主役級の扱いであります。

受付のおじさんに聞いたところ、席はまだまだ余裕がありますとのこと。
全席自由席だし、わざわざ来る必要もなかったのかも。

ホールの中にちょっとした喫茶レストランがあり、そこで昼食。
もう、ミレットの舞台装置は来ているらしく、それらしい職人さんたちが何人かいました。
ふと、炊事場のカウンターの上を見ると、ぎっしりとサイン色紙で埋め尽くされています。

明日には、マナカナの色紙も並ぶのかな!?

能勢町“浄瑠璃シアター”も、“わたむきホール”に負けず劣らずの立地条件にありました。う〜ん、多少・・・こちらの方がひらけているかも?

会場事務所でチケットを注文。
希望の席を手配してくれるとのことで、座席図を見せてもらいました。こちらも半分より後ろの席はまるまる空いており、少し驚いていると。

「これから、頑張ろうと思っていたところです」と苦笑い。
(もっと早く頑張ってください!と、心の声^^)

ともかく、運良く2列目に1席と、5,6列目に2,3席空いている場所があり、2列目中央の席を購入。

いや〜ぁ、わざわざ来た甲斐がありました。
正解です!


8月9日(木)わたむきホール虹

開場時間の午後6時ちょうどに“わたむきホール”の駐車場に着きました。 今までになく早い到着。しかし、会場内の長蛇の列はすでに始まっており、最後尾に並ぶ事になりました。それでも、場内では席を選ぶ余裕は十分にあり、わりと前方の席を確保。

6時37分。いつもと同じ、ブザー7分後に開演。

順番から行くと、今日は「カナミレット」のはずですが、東京公演最終日に続いて「マナミレット」です。

今回、はじめての1階席。前に座った人の頭がじゃまになったりして、少々観づらい観劇となりました。しかし、迫力はありました。熱演によって汗が飛び散るのがモロに見えたり、出演者たちの肉声と、マイクを通しての声が両方聞こえてきたりして、今まで聞き取りにくかったセリフも、この日の舞台によって理解する事が出来ました。

7時50分。
ミレットをめぐって、ガトー婦人とベリーニの歌の葛藤により、
前半を終了。


8時5分。
綱渡りの練習をする、ミレットとベリーニの場面で後半が始まる。

8時55分。
エンディングとアンコールを一回。今回は、ベリーニの福井さんが地元出身ということで、いつもより一歩前に立ち、全員から拍手を贈られる。

9時。
舞台は終わった。 もう時計を見なくても、舞台進行で時間が分かるようになってしまいました。

「ミレット」は、ふりいくの血となり、肉となったのです。


8月11日(土)いたみホール

きょうはお盆ということで、昼前にお坊さんが到着。

母が死んで〜年、父が死んで〜年になりますが、特に感慨に耽ることもなく、毎夏の行事として進行。


3分でお経をあげ、2分でお茶を飲み干すと、お坊さんは“お布施”を手に次の現場・・・いや、次の家庭に向かって行きはりました。

う〜ん、効率的!


“いたみホール”は家から車で1時間。すこし早い目に着いたので、地下駐車場に車を預けると1階ホールまで上がり、表へ出た。

「ミレット」の会場としては、初めて“都会”といえる場所だ。
(東京グローブ座にしても、劇場の場所としては閑静なところにある)

それにしても暑い!少し歩くだけで汗がびっしょり。
しかし、ここでは冷たいものを求めて店をさがすのは簡単。5分も歩くと、1軒の喫茶店があった。

“冷コー”でしばらく油売り(笑)。

午後2時40分。
開場時間は過ぎているのに、まだ中に入れてもらえない。きょうはいつになく子供が多いし、何かトラブルでもあったのか?

開演時間近くなって、ダーッと入りはじめた。
さてさて、席は?


前から5列目なのだが、舞台上手の、それもかなり端に近い所だった。
となりに小学生ぐらいの小さな女の子がひとりで座ったが、前の席に大きな大人がズラッと座っていたため、見えにくいのか背伸びをしている。

ハッとした。
自分の後ろの人は大丈夫なのだろうか?


椅子に浅く座り直し、後ろの人の迷惑にならないようにと試みる。しかし、前の席との間隔がせまく、ひざ頭が当たってしまう。

ひざを大きくひろげ、不自然な形で腰をずらした。

少々ざわつき気味の中、3時に開演ブザーが鳴った。

「カナミレット」は、きょうも元気。

ふりいくは、ひざとオシリが痛かった・・・。



8月12日(日)浄瑠璃シアター

きょうの“浄瑠璃シアター”「マナミレット」は午後3時開演。

2時間半もあれば、能勢町までは楽勝だと思って家を出た。 しかし しかし しかし、今はお盆なのだ!そして日曜日。以前、海水浴に行く時には何度か通っていた道でもあり、油断がそれに付加していた。

歩くより遅い大渋滞にひっかかってしまい、おまけに道を間違えた。
“カーナビ”に詳細地図がなく、曲がる道のタイミングを外してしまったのだ。
パラパラと小雨も降り出した中、気持ちだけがあせった。

なんとか3時ごろに現地到着。だのに、また行き過ぎてしまった。
何のために下見をしたのだ!

会場に着いたのは3時5分頃、なんとか開演には間に合った。
えっ?・・・な、なぬ?
いつもと違って、もう始まっているではないか。

人影もまばらなロビーに、劇場内の歌声が流れていた。

こんな時には入場のタイミングがあるらしく、係りの人に扉の前で少し待たされた。舞台から聞こえるのは、“ガトーホテル”の住人たちがミレットを讃える歌。

♪「落ちこんだ時 苦しい時も あの子の顔さえ見りゃ ほがらかに〜」
♪「ミレ〜ット! ミレ〜ット! ミレ〜ット!」

歌が終わったところで“い列”へ GO!
(あいうえお順、すなわち2列目)


「ふ〜っ、やれやれ。とにかく辿り着いた」


ガトー婦人の宿に、謎の綱渡り師ベリーニがやってきた。
ミレットの大冒険が始まる。

ふりいくの冒険は、今終わったところです(笑)


8月19日(日)知立市文化会館

一週間の中休みの後、今日は愛知県での「カナミレット」です。

マナカナは、明日からもうひとつの舞台「ハイジ」公演がスタートということで、この日の「ミレット」を終わると、「ハイジ」公演終了まで「ミレット」はお休みとなります。


大阪から名古屋まで、200キロ少々。 車で行くか新幹線にするかで迷ったあげく、車で、しかも前日から出かける事にした。

ホテルは、新幹線の“三河安城”駅前のホテルを2泊。“知立市文化会館”までは車で15分の距離です。


午後3時開演。
“知立市文化会館・かきつばたホール”1階M列は、会場のほぼ真ん中の席でした。

オープニングの「カナミレット」の歌が始まる所で、いつになく“拍手”が沸き起こった。

さすが「ふたりっ子」高視聴率地区。
中部地区は、まだまだ“マナカナ”を愛してます。


8月31日(金)チケットは制覇

チケットの手配済みは、“相模大野公演”だけになってしまった。

“知立公演”から一週間がすぎ、これから先の仕事にも支障がなさそうなので、残りの“茨城、北海道”と続く公演のすべてに行くことを、この頃に決めた。

“相模大野”でホテルを1泊と、水戸駅前のホテルを1泊、インターネットで予約。チケットは“コミュニティーセンター常北”に電話を入れると、端の方で空いている席があるとの事で、その席を確保。代金は会場で引き換えということにしてくれました。

交通手段についても悩みの種でしたが、こちらもJRの水戸駅前から、専用送迎バスが出るとのことでそちらも解決。遠方客のことも、ちゃんと考えられていました。

残りは北海道公演、すべて自由席です。
ホテルの選択は後回しにして、まずチケットの手配にかかる。

“朝日町サンライズホール”に電話を入れると、まず“サンライズホール友の会”に入会しないと電話注文出来ないとの返事がきた。
ん?・・・入会?大阪の人間が、北海道の公共ホールの友の会に?

「あの〜っ、大阪なんですけど・・・入会できるのですか?」

「はい、大丈夫ですよ!」と、元気な返事が帰って来た。

「じゃぁ・・・入会という事で、お願いします」

てなわけで、入会金もなく、会費もなく、ふりいくは“朝日町サンライズホール友の会”の会員になったのです。でも・・・イイのでしょうかネ(笑)

“陸別町公演”は電話注文も特に前提条件もなく、チケットは“朝日町公演”と同じく、現地交換で良いとのことでした。

最終公演地、“美幌町町民会館”は先に現金を送ってくれと言われた。
会場によって、対応に微妙なちがいがあるんですね。


現金入金確認後、チケットは会場に送っておくという事で、当日、名前を言って受け取る事となった。


これで、「ミレット・全公演制覇」が現実のものとなってきた。


9月1日(土)グリーンホール相模大野

危うく遅れそうになった。
いえ、会場にではなく、新大阪で新幹線に乗り遅れそうになったのです。

いつも「ミレット」の遠征には、樹脂製の手提げカバンを持って行くのですが、この日、新幹線の座席に座って気が付いたのです。

「あれっ?・・・カバンがない!」

最初にまちがえて座った別の車両に置き忘れたのだと思い、急いでそこに行ってみると、やっぱりなかった。

「切符売り場だ!」

めったに走らない今日この頃、ふりいくは走った。
ホームを降り、階段をスタコラ駆け下りると、改札の人にひと言断って切符売り場まで走った。

「あぁ〜、もし無かったらどうしよう。 ホテルの地図も、ミレットのチケットも入っているのに・・・」

切符売り場のカウンターの上が目に入った時、ふりいくのカバンが見えた!

「あった!」

カバンを掴むとすぐさま引き返し、発車寸前の新幹線に飛び乗ったのです。

「ハァ〜っ、し・あ・わ・せ」(笑)

午後3時開演“グリーンホール相模大野”。
順番から行くと、きょうは「マナミレット」のはずですが、ここでも“マナカナ”の入れ替えをし、「カナミレット」が新たなスタートになっていました。ということは、公演回数も5回づつと、同じになったという事です。

新幹線は小田原で降り、小田急線に乗りかえ、相模大野に着いたのは午後1時40分。 少し遅い目の昼食をとり、会場に向かった。

初めての最前列。
そして、後半傷心のミレットが立つ、真正面の位置でもあった。

ベリーニが伝説の綱渡り師だということを知ったミレットは、その事をベリーニに確かめる。彼は自分の秘密をミレットに打ち明けた。
ある時、突然おそわれた恐怖心にとらわれ、高い所での綱渡りが出来なくなっていたのだ。 ミレットがベリーニの助けになれるかもと言ったことで、彼の誇りが傷ついた。

「子供に何が出来る!
 そんな生意気な娘だから、父親もここを逃げ出したのだ!」


恩師と慕うベリーニの言葉に、ミレットも傷ついた。 顔から生気が消え、明るく元気なミレットは、もうそこにはいなくなっていた。

まるで、魂を抜かれた人形のように、ふりいくの前に立ちつくす“カナミレット”。

頭頂部から当てられる、スポットライト。
“彫刻”のような美しさと、“レンブラント”の絵を見るような、光と影の絶妙なバランス。うっとりするような気品が、そこには漂っていた。

「ミレット」では、忘れられない“絵”の1枚となりました。


9月2日(日)風の美少女

小田急線で相模大野から新宿に向かう電車に乗り、ホームとは反対側の扉の前に立った。空いている席が無いわけでもないのに、いつもこんな風に扉の前に立ち、ぼんやりと流れる景色を見ていることが多い。

そこに緑の風景があるわけでもなく、“さわやかな風”がそよいでいるわけでもない。灰色の工場や茶色のマンション、濁った河と、ちょっと重く感じる空気、そんなものが流れ去るだけ。と、文学的思考をめぐらしていると、とある駅に止まった時に、その“さわやかな風”が一人の少女と共に吹き込んできた。

彼女は、スキップでもするような感じで ふりいくの前を横切ると、くるりと半回転し、扉に寄りかかって微笑んだ。続いて、もう一人の女性が彼女の前に立った。

そのスキップの少女には“オーラ”なるものを感じた。

“前田姉妹”の妹、“前田亜季”さんではないのか?正直そう思ってしまったのです。 小柄で清楚、長いまつげの横顔をさりげなく見ていると、本当に良く似ている。 最近にない“トキメキ”を感じる美少女だ。
(横顔しか見ていないけど、そう確信)


黒のジーンズにデイバッグ、艶やかな黒髪をひとつに束ね、後ろにながしている。 彼女は、もう一人の女性と何か楽しそうに話を始めた。

しばらくして、「ハイジはねぇ」とか、「クララがどうした」とか、そんな会話が聞こえてきた。

えっ?やっぱり芸能界関係の女の子なのかな?そう思って少し耳を傾けていると、この夏の舞台「ハイジ」についての話をしているみたいだった。

やがて、彼女が背中のデイバッグから“ポケットアルバム”を取り出すと、連れの女性に見せ始めた。ここぞとばかりに、ふりいくも野次馬根性を発揮。その連れの女性の肩越しに、少しだけ覗かせてもらった。

修学旅行での集合写真のような1枚。
楽屋なのか・・・?・・・あっ!


なんと、マナカナがピースサインをして微笑んでいる写真だ。

スキップの少女は、「マナカナ・ハイジ」の共演者だったのです。
なるほど、“オーラ”が出るのは、当然といえば当然だ。

彼女達も新宿で降り、“さわやかな風”を運んできたスキップの少女も、雑踏の中に消えて行った。

ふりいくは、常磐線で水戸へ。


コミュニティーセンター常北

先にホテルのチェックインを済ませ、水戸駅前から送迎バスに乗った。 午後3時45分出発、片道およそ40分の距離。

/5時開演だとすると、終わるのは7時半。帰りも送迎バスに乗るとして・・・ 8時半ごろに、水戸駅前に帰ってこれるかなぁ〜/

行きのバスの中でこんなことを考えていました。 というのも、今日のホテルは夕食付きだそうで、その営業時間が午後9時までなのです。予約も入れてきたし、その時間までに帰らないと・・・と、「マナミレット」の事より、“めし”の事の方が気になっていた ふりいくです(笑)。

会場は、今までにない大勢の子供たち、親子連れであふれかえっていました。 ミレットのポスターも、この公演だけデザインが違っていたし、しかも“マナカナ” のサイン入りで販売もされていた。

4時45分に入場。
予約した席は、かなり後方の一番端の席だった。子供が多いせいか、会場は落ち着き無く、 終始ザワついている。 となりに座った親子連れのお母さんがパンフレットを見ながらつぶやいた。

「あら?マナカナって、あの双子ちゃん達が出ているんだ。
じゃ〜、このミュージカルは、本当はすごい舞台なんだわ」


と、どういういきさつでこのミュージカルを見ることになったのか、 気になる“ひと言”を発しました。

7時25分に「マナミレット」は無事に終わった。

笑うべきところでは声を出して笑い、演技がうまくいったところでは素直に手をたたく。子供たちが多数を占めた会場のせいなのか、舞台と観客が一体化した、本土最後の公演となりました。


泣き出す子。終りばかりを時間待ちする子。アンコール前にさっさと帰った客。そんなことがなかったら満点の観客でした。

会場出口では、ひとりひとりの子供たちに“ゴム風船”が配られていた。 その“子供たち”と“風船”をかきわけ、帰りの送迎バスには、一番で乗り込んだ。

“めし”・・・間に合うやろか?(笑)


おまけ

“動物園の檻の中”に入ったような状態だった。


なんとか9時前にホテルのレストランに入ることが出来たのだが、 他にお客さんはひとりもいない。

「まだ、食事は大丈夫ですか?」と聞いたら。

「ええ、大丈夫ですよ。ごゆっくりどうぞ」 とウェイターさん。

窓際の席に、ひとりでポツンと座ったのだが、どうにも落ち着かない。 照明は薄暗いのだが、表はもっと暗く、時々通り過ぎる人たちがチラッとこちらに視線を送る。“エサ”を前にした動物は、きっとこんな気分なのだろう。

「お食事には“ごはん”か“パン”が付いているのですが、どちらになさいますか?」 とウェイターさんが聞いてきた。

「じゃ〜“ごはん”をお願いします」

檻の外をぼんやりと眺めながら、今日の「マナミレット」の余韻を味わう・・・つもりだったが、窓越しの観客と飼育係の視線を一手に集め、それどころではない。

そんな緊張感に包まれた中、まず“おかず”が運ばれてきた。しかし、“ごはん”はまだ来ない。しばらく“ごはん”待ちをしていたが、なかなか出てきそうにないので“おかず”を少しずつ突っつきながら時間をかせいだ。

結局、“おかず”をほとんど平らげてしまったところへ、ウェイターさんがやって来た。
少しばかり、怒りを交えた言葉で言ってしまった。

ごはんは、もういらないです!

すると、「はぁ、そうですか」と怪訝な顔をしながら、少し残っていた“おかず”のお皿を下げると、別の器を目の前に置いた。そこには、新たな料理が盛り付けられていたのだ。

額からひと筋、汗がツーっと降りてきた。そっとハンカチを取り出し、それを拭き取る。
は〜っ、料理がコースになっていたとは気が付かなかった。前菜に“ごはん”が付かないのもあたりまえなのだ。

貧しい食事が身についた ふりいく。それからは何を食べたかさっぱり憶えていない。
次々と運ばれる料理に、とんでもない事をしでかさないように注意を払い、緊張感いっぱいの夕食はなんとか無事に終わった。

「ごちそうさまでした・・・」

しかし、味わえなかった食事には不満が残った。

“デザート”は、北海道まで持ち越し。



北海道編