ベトナムの持続可能な発展のための教育(ESD)を目指す大学構想

 神田 嘉延


■日越共生大学(仮称)ベトナムの地方・農村での中核的な市街地に建設計画

ベトナム風景

ベトナム側の賛同者は下記の通りです。

フアン.ミン.ハクさん 元教育養成省大臣
チャン.バン.ニュさん 教育養成省副大臣
チャン.コク.トアンさん  政府官房教育担当
ダン.ウン.バンさん 国家教育委員会員
フアン.ズ.ケさん 政府官房文化担当
ゲン.ビク.ダット 投資計画省副大臣
チュ.バン.ダットさん ナムデイン省長
チャン.ミン.オアンさん ナムデイン省副省長
ゲン.バン.トアンさん ナムデイン省教育副局長
フアン.コク.カインさん ナムデイン省投資計画局長
レ.ミン.トウさん ハノイ医科大学教授
ホア.フー.トウさん 自然科学大学教授
ゲン.スアン.バオ.タムさん 環境省副局長
ゴ.スアン.ビンさん 日本研究所所長
ホ.ホアン.ホアさん 日本研究所員
カオ.ドク.ハイさん 文化大学教授
ゴ.フイ.ズさん 政府環境分析センター長
ゲン.フク.カインさん ハノイ貿易大学副学長
フアン.ダンさん 文化研究家
チン.フイ.ホア さん 翻訳家
フアン.バン.トアさん 会社社長
グェン チュン クェさん ハノイ農業大学教授
ファム、クー、ロイ  
リ、チョン、チエン  
ド、チー、チュン  
グェン、カック、ツン
ベトナム側設立準備事務局  ベトナム日本語日本文化センター関係者
グェン、チュン、ヒー  
ファーム、クアン、フン
元 ・鹿児島大学大学院生

肩書きは2007年で現在はかわっています。

設立目的
地域の自立発展と人類の夢を目指す大学

 地域の自立発展ということで実践的に教育と研究をする総合大学をめざす。研究と教育を実際のフィールドに求める。この大学は、フィールド教育を大切にする。フィールド教育をとおして、専門的な科学を教えることと同時に、広い知識と市民道徳形成をめざす。この大学は、国際的な比較文化の視点をもって、人類の未来を探求する場とする。
 この大学は、現代における人類的課題である平和共存と主権在民、民族・地域自立の人間発展保障、文化的生存権、環境保全の持続可能な社会の課題に対して、正面から科学的に探求する。
 この大学は、ベトナムという立地の条件を大切にし、人類的課題をベトナムという経済発展段階、歴史的文化、資源や自然条件という特殊性を生かした創造性ある教育と研究をする。この際に、経済の自立発展のための起業の精神を重視する。そして、様々な困難を乗り越え、自立発展、環境保全の持続社会を探求しているベトナムということから世界に発信できる大学を創造する。この大学は、日本の民間の発展途上国への国際的な支援活動として、ベトナムばかりではなく、広く国際友好という視点から位置づける。日本とベトナムの共生関係を基礎にして、人類的な夢をめざす智の拠点とする。
 日本とベトナムは、歴史的に儒教文化圏など共通の文化をもっている。ベトナムは、明治後期にトンズー運動として、アジアで植民地にならなかった日本から学ぶ運動があった。これらの歴史を重視しながら、東アジアから人類共通の普遍的な課題を探求していく。

東アジアの地域伝統文化を大切に

 東アジアの地域伝統的な文化を人類の未来の持続可能な社会づくりと結びつけながら探求する大学とする。大学が地域社会と結びつきながら、そのモデルを探求し、自立と持続可能な社会のための教育を実践的に展開する。
 この大学は人類の夢を描き、未来をつくる科学の創造と人間形成の場とする。高校卒業者にとって、誰でも学べ、夢をもてる大学をめざす。日本の青年にとっても、ベトナムの青年にとって、そして、韓国、中国、朝鮮民主主義共和国の青年にとっても、さらに、多くの文化圏に暮らす青年にとって、魅力がもてるように、また、親にとって自分の子どもを積極的に入学させたい大学とする。

教育機会均等重視

教育の機会均等から貧しい学生でも学べる大学とするために、奨学金制度を充実させる。この奨学金は、自立という精神のもとに、長い期間にわたって返還するような制度とし、当面は、ベトナム人の場合は、ベトナム人による寄付金によって奨学金の運用をする。このために、奨学金の財団を設置する。
 この大学の設備投資は、青年学生の授業料に依存しない。大学の施設設備は、寄付と事業収入によってまかなう。教師の給料は、学生の授業料と社会人研修や出版などの事業活動をとおして、捻出していく。大学に寄付をした人についての社会的貢献の名誉を長く讃えていく方法を開発していく。

大学経営の公開と民主主義的運営

 大学の公益性の原則から学生の授業料収入や事業収入などから利益を追求しない。一切の配当制度をとらない。このためには、年度の会計予算を明確にし、大学会計を公開し、第3者による公平な会計の審査機関を設置する。
 国際的な友好大学としての性格から語学教育を重視する。日本語教育では、一級資格取得を目標にする。そこでは、語学だけのトレーニングだけでなく、日本歴史、日本文化、日本思想、日本経済、日本文学など比較社会経済文化の視点を重視し、様々な分野の同時通訳ができるような教育をする。さらに、ベトナムの地で教育を実施するということから、ベトナムについての基本的な文化、歴史、思想を人類史的に普遍化させた教養を大学共通教育として学習させる。とくに、この大学で学ぶ外国人については、特別に重視する。
 国際化による文化的摩擦を解消するために、相互の民族間の文化理解によって、平和と友好、平等互恵のための語学教育を展開する。この際に、先進国と発展途上国の関係の南北問題を大切にする開発教育を積極的に位置づける。開発教育と異文化理解の拠点としての大学教育を重視する。
 先進国からの発展途上国の経済進出における企業の経済モラルとして、文化尊重、共存共栄の社会人研修を展開する。先進国の進出企業に対して、積極的に寄付を募り、その社会的貢献を公表する。
 寄付にあたっては、個別の分野としてではなく、大学全体として公平な運営ができるようにする。寄付金は、大学運営にとって、重要な財政源になるので、定期的、長期的、または、短期的なことなど、その工夫を行い、大学の教育・研究・社会貢献の成果を常に情報提供するための宣伝体制をつくりあげる。
 大学は、基本理念のもとに教育、研究、社会的貢献を一体的にとらえ、研究者養成や大学の後継者養成を意識的に行う。大学の基本的な理念と経営指針を立て、5年ごとに具体的な中期計画をたてる。計画による結果について、自己評価ができる制度を教職員と学生でつくり、卒業生も参加してもらう。結果責任と教職員が切磋琢磨できるような制度をつくる。 常に開かれた形で、優秀な教授を招くためには、教育や教育条件を充実させ、ベトナムという条件から人類的な夢がもてるようなカリキュラムや特色ある研究施設設備をつくり、特定の研究分野では世界をリードできるようにする。

図書館の充実と参加型学習の重視

 人類の知的遺産を大切にするために、図書館を大学の施設設備の中心とする。青年学生の自治の教育を大切にするために、授業の方法もゼミナールや参加型学習を積極的工夫して展開する。大学の理念が共有でき、個々が自由に能力が発揮できるような教職員の集団性を大切にする。
 以上の基本的な構想に基づいて、下記のような行動計画から出発するものである。


当面の具体的な行動プラン
日本学教育センターの事業

 大学の構想をもちながら当面は、第1に日本学の教育センターの事業を行う。日本語・日本文化の塾をハノイ市やホーチミン市など可能な地域でつくっていく。大学設立の準備をはじめる。将来的には、通信教育の大学の教室として機能できる。日本語・日本文化の塾は、日本語の資格試験2級と1級をめざす塾として、塾の指導方針は、日本の経済、日本の歴史、日本の文学、日本の教育などを題材にして教えていく。単なる語学塾にしない。日本の文化を広く学べるようにする。塾は、日本語を学びたいという受講生の学習要求の内容を基礎にする。この日本学教育センターは、日本の研究者がベトナムの大学、教育機関、研究機関で講義、講演できるように日本側とベトナム側のネットワークをつくる。ベトナムでは私立大学との連携活動を複数の機関とする。特定の大学に固定しないように、日本学教育センターの自立性を大切にする。

経営自立のための直接的教育部門以外の事業(教育と関連させながら)

 第2に直接の青年を対象とする教育部門ではない事業部門を設ける。ベトナムに駐在している日本人に対するベトナム語やベトナム文化の学習を塾として行い、ベトナム人と日本人の交流の輪を促進していく場とする。日系企業を対象にコンサルタント、通訳・翻訳、企業研修のサポートをする。ベトナムの駐在の日本人がベトナム語・ベトナム文化を身につけることによって、より楽しく暮らせるような場を提供する。ベトナム駐在の日本人の子どもの教育についても相談できるようにする。
 日本人観光客に対して、ベトナム人の生活や文化を少しでも知ってもらうために、ホームスティの斡旋をする。この場合に、日本語の会話が少しできる家庭で、日本との交流や日本語を学んでいる人の家庭を対象とする。ベトナムの暮らしから文化を知ってもらうために、ベトナム版のグリーンツーリズムを実施する。ベトナムの農村における竹細工や漆など伝統的手工芸地域、健康になるハスなどの加工など漢方の生産地、健康のリズム生活をできるように斡旋する。受け入れ地域の農家の青年などに簡単な日本語教育を実施する。
 これらの具体的な活動をとおして、塾の実績をつくりながら日越共生大学の宣伝を常にして、協力者の人的な蓄積をつくっていく。


日越共生大学のカリキュラム構想
当面は地域発展学部として出発

国際的な視野から地域循環型の地域発展をめざす人材を養成。副専門として日本語、ベトナム語など外国語の通訳の人材養成をする。さらに、青年層を対象とした教育だけではなく、生涯学習を重視する立場から社会人の教育を積極的に展開する。大学の授業科目は、原則的に社会人に授業公開し、また、社会人のための独自の公開講座を企画する。社会人のための公開講座は、企業研修、学習型グリーンツーリズム、地域おこしのリーダー養成、文化講座、日本語やベトナム語などの講座を開く。
 大学として地域循環型のモデル地域づくりをつくるために学生教育と同時に、地域循環型の地域発展研究センターをつくる。学園を地域循環型経営の実習としても活用。


総計124単位  
授業形態 すべての講義にセットになった演習を実施で4単位、講義人数の多い場合の演習は、10名程度で分散する。
補助教員をつける。単位をとった優秀な学生から。
語学演習・ゼミナール 10名程度のクラスで  
124単位のうち教養科目・60単位
専門基礎合計 20単位
地域環境学 4単位
教育学・人間発達論 4単位
地域発展論 4単位
専門基礎から2単位の実習を選択
一般教養 40単位
国際関係論 4単位
哲学思想・ベトナム思想 4単位
東アジア文化論 4単位
法律論  4単位
世界史 4単位
健康・体育 4単位
科学・技術論 4単位
芸術演習・実習 4単位
コンピュター演習・実習 4単位
英語 4単位  
124単位のうち専門科目・64単位 語学専門教育 36単位(教養英語4単位を含めて40単位)   
ベトナム人日本語教育 一学年8単位*4学年、1年週3回
日本人はベトナム語  1学年8単位*4学年 1年週3回
その他外国語も同様に、当面は日本語とベトナム語   専門を4つのコースにわける28単位・卒業論文も含む   
日本語通訳・翻訳コース
 日本に関する持続可能な社会発展の課題研究をもたせながらの教育  
経営コース
 実践的に地域の中小企業、農業や伝統的な地場産業を基盤にした経営の教育、経営哲学・経営倫理、
 産業民主主義論
地域環境コース
 環境保全型の地域産業の発展をめざしての実践的な教育、地域自然エネルギー、環境共生型農業、
 地域循環の土壌改良学  
地域人材コース