現在我々が一般にミコ、ミコサンなどと呼んでいるのは、神社でみかける白い上衣に緋袴をはいた、若く清々しさに満ちあふれた、美しい女性である。ミコには「巫女」という字があてられている。「巫女は神に仕へる、最高な女性である」という、折口信夫氏の言い方が端的にミコの本質を表している。古くは神饌を供し、神楽を舞うなど直接神に奉仕し、神を招き、神意を伝えるなどshamanとしての役割を果たしていた。古くは『魏志』倭人伝にみられる、邪馬臺国の女王卑弥呼がミコであったことが窺える。

　前述したとおり、ミコには普通「巫女」という字があてられており、「神子」という字をあてる場合もある。また巫女にはカンナギと訓があてられていたことが、『和漢三才図絵』などの資料から窺える。カンナギは女性だけではなく、男性もその職をなしたようである。女性の場合を「巫」といい、男性の場合を「覡」といった。覡をオトコミコと呼ぶ場合もあったようである。男女のミコを併せて「巫覡」と称した。カンナギの語源は神を和ませるという意味の「神和ぎ」、神を招請するという意味の「神招き」ともいわれている。 ミコには神社に属するミコと、口寄せなどを行うミコとにわかれる。柳田国男氏の『巫女考』に於ける分類であるが、現在においてもこの分類に従われている。前者をミコ、後者をイチコなどともいうが、地方によって呼び方が変わるため、当コンテンツでは神社巫女と口寄せ巫女という形で区別したい。

歴史的にみても、やはり朝廷や神社の女性祠職と、民間の村落に定住もしくは漂白する呪術者や祈祷師としてのミコとに分類される。神祇官の官職にも「御巫」という女性の職制がみられる。 漂白する遊行者としてのミコは歴史的に全国各地でみられ、口寄せや祈祷を行っていた。東北のイタコ、南島のユタなども民間のミコとして分類でき、これらのミコの活動は民間信仰や口承文藝などに深く関わり、多大な影響を与えたものと思われる。

　今日でも、イタコ、ユタ、ノロなどの口寄せを行う女性が活動をしており、また神道系新興宗教である天理教や大本教の教祖も口寄せなどを行ったミコであったようである。