春名「お兄ちゃ〜ん。ご飯食べよ〜。」
教室中に春名の声が響いたのはそのときだった。
第3章
「・・・・お、遅かったか・・・。」
俺はガックリと床にひざをついた。
淳一「あきらめな・・・祐貴。」
俺の肩に手を置きながら悟りきった表情で淳一が呟く。
春名「・・・何やってるの?お兄ちゃん・・・?」
いつの間にやら、俺の目の前に妹の春名がピンクの包みを持って立っていた。
祐貴「・・・何でもない・・・」
立ち上がりながら言う。
春名「お兄ちゃん、何か元気ないね。」
春名が上目遣いに俺の顔を覗き込んでくる。
・・・か、かわいい・・・ってナニ考えてるんだ!?俺!!
春名「どうかした?」
祐貴「い、いやなんでもない。」
瞳「ユウ、その子は・・・・?」
隣にきた瞳が聞いてくる。
祐貴「ああ、俺の妹だ。」
春名「お兄ちゃん、その女の人は?」
春名が聞いてくる。
なんとなく不機嫌なのは俺の気のせいか?
淳一「ああ、今日転校して来た神楽瞳さんだ。」
俺の代わりに瞳を紹介する淳一。
瞳「神楽瞳です。よろしくね。」
春名「どうも、相沢春名です。」
自己紹介をする二人。
瞳「妹さん・・・その割にはあまり似てないわね。」
瞳は春名を見ながらそんな事を言う。
祐貴「ああ、春名は母さん似だからな・・・」
瞳「じゃあ、ユウはお父さん似なの?」
淳一「言動も外見も似てるよな。」
・・・余計なことを言うな・・・。
春名「お父さん似って言うと、お兄ちゃん機嫌悪くなるよね。」
瞳「え、そうなの?」
祐貴「まぁ、そんなことは置いといてさっさと飯にしようぜ。」
時間を見れば、昼休みも半分を過ぎている。
淳一「そうだな。教室で食べるか。」
今から食堂に行っても間に合いそうにない。
春名「そうだね〜。」
瞳「そうね。」
意見が一致したので、窓際の席を移動させてそこで食事をすることにした。
食事中
瞳「ねぇ、春名ちゃん?」
春名「はい?」
食後のお茶を飲みながら瞳が春名に話し掛ける。何時の間にか二人ともすっかり仲良くなっている。
瞳「ユウの誕生日っていつ?」
・・・何で春名に聞くんだ・・・?
春名「たしか、8月15日だったような・・。」
・・・・お前も兄弟の誕生日覚えとけよな・・・
淳一「春名ちゃん、違うよ。祐貴の誕生日は8月14日だよ。」
祐貴「何でお前が知ってんだ?」
淳一「なんでって、俺と一日違いだろ。」
祐貴「・・・忘れてた。」
春名「お兄ちゃん物忘れ激しいから・・・・。」
ため息を吐きながら言う。
・・・俺ってそんなに忘れやすかったか?
淳一「ああ」
春名「うん」
瞳「ふ〜ん」
祐貴「・・・・・」
また声に出ていたようだ・・・。
祐貴「しかし、何で誕生日なんて聞くんだ?」
疑問に思って聞く。
瞳「だって、さっきユウに聞いても教えてくれなかったもの。それで春名ちゃんに聞いたの。」
淳一「なるほど」
お前が納得してどーする。
春名「他にお兄ちゃんの事について知りたいことあります?」
余計なこと言うんじゃない!!
瞳「・・・・女の子のタイプとか」
なぜか真剣な顔をして聞いてくる。
春名も真剣な顔をして考えている
・・・・なんでこんなに真剣なんだ・・・
淳一に助けを求めようと見ると、ニヤニヤしながら俺を見ている。
春名「すいません。お兄ちゃんの好みは私も判らないんです〜。」
春名が困ったように言う。
・・・まぁ、好みとかあんまり考えたことないしな。
しかし、瞳はあきらめていなかった様だ。
瞳「北川君、ユウの好み判る?」
淳一に聞いてるし・・・ってマズイ!!
淳一「ああ、知ってるぜ。」
祐貴「やめろ!!あの事は絶対に話すな!!」
淳一の口をふさぐ。
淳一「モガモガ〜」
瞳「好みそんな知られたくないの?」
淳一の口を塞いでいるのを見て、驚いたように言う。
・・・他人の口からばらされるのは嫌だな。
春名「う〜、お兄ちゃんの好み知りたいよ〜。」
お前が知ってどうする・・・・・。
瞳「他人に言われたくないなら自分で言ってちょうだい♪」
嵌められたようだ・・・・。
祐貴「わかったよ、言えばいいんだろ・・・」
こうして、俺は自分の好みを言わされることとなった。
次回に続く