

長野式治療法
長野式治療法は、大分県の鍼灸師、故、長野潔先生が公開された治療法で、「長野式治療法は、扁桃に始まり扁桃に終わる。」と、先生が仰るとおり。免疫機能である扁桃を治療することによって、難病を治療することが出来るという治療が中心となっている、大変優れた治療法であります。
そして私が所属している、「長野式読書会」で報告した症例をここに参考のため紹介いたします。
変形性頚椎症、頸部椎間板症、脊柱管狭窄症という症候名で、10年間苦しんだ首の痛みと手のしびれが改善した例。
患者:I.T.68歳 女性
主訴:上を向くと首の後ろに突き刺すような痛みが走る。夜も痛みで眠れない。
随伴症状:平成4年から左の母指がしびれ始め、やがて両母指ともしびれる。 今は1〜3指両背側にしびれ、右前腕に水が流れるよう。いつも後頭部痛がある。副訴:変形性膝関節症、腰部変形性脊椎症。
現病歴:最低血圧がやや高い。(100位)
所見:首〜肩甲間部に強い凝り。C6,C7 L5に圧痛。左大巨に圧痛。両天ゆうに圧痛。
脈:沈、緊、数
強度の凝りによる血流不全の為の痛みとしびれであると思う。
治療:平成15年1月21日
首の後ろの凝りをとるために、兪府、陰陵泉。 扁桃処置に手三里。 お血処置、中封、尺沢。
膝痛に脾経の気水穴治療。C6,C7に点灸、L5に皮内鍼。
肩外兪、膏肓、屈伸、志室
1月22日
「久しぶりに痛みを感じずに寝る事が出来た。」と喜んでいた。
前回と同処置と委中、飛陽、崑崙 頭部お血処置
頭部お血処置の後、「頭痛が消えていく。」と言う。
1月27日
二日続けたので疲労したという。首の痛み無し。後頭部痛無し。手のしびれも消失。側頭部の軽い痛みと完骨あたりに凝りを感じる。 膝は治療を終えて帰る時は、治ったかと思うほど具合が良いのだが、しばらくすると又痛み出すという。内側に圧痛があるので点灸にする。他は同じ。
考察:治療は現在も週2日で継続中であるが、首の痛み、手のしびれは全く無い。本人は骨が原因といわれて、治らないものと悲観していたが1回の治療で変化が見えたので治療の意欲が湧いてきたという。
骨はあくまでも受動的運動器官なので、骨折以外に骨が原因になる事はほとんど無いと思うという事。事故でもないし、怪我でもないのなら、 頚椎の損傷は考えにくい事等を話して、安心してもらった。
治療も頸肩部の凝りを目標にした治療で効果があげられた。痛みやしびれの初期はたんなる凝りであったとおもう。
症例1 (拘縮が強く難治だった五十肩)
患者名 K.H. 56歳 女性 主婦
(主訴)左肩関節痛
(随伴症状)アレルギー性鼻炎
GOT.GPT.高い。(脂肪肝といわれ、食事療法中)
(現病歴)2003年2月に右肩が痛んだがすぐに治った。気をつけていたが左 も痛み始めた、もう半年ぐらいになるがなかなか治らないので来院した。
(所見)脈、緊,数。体格は肥満。
左腕を前方挙上すると、肩?から臑兪、三角筋の後部にかけて痛む。肩甲骨が外側に出てくるので、肩関節部に拘縮がある。(長野先生はVTRの中で、「骨頭と被球が癒着しておる。」と言われていました。)
圧痛: 左大巨、左帯脉、左右扁桃、右季肋部、
左天宗、左臑兪に硬結。肩背部に凝り。
(治療)平成15年12月21日(1回目)
左大巨の圧痛に、中封、尺沢、(?血処置)大巨圧痛消失。 左帯脉に刺入雀啄。前方挙上が楽になる。
左少海に刺入雀啄。臑兪、天宗あたりが楽になる。
屈伸3点、T11、L1、にV刺鍼。
痛みは驚くほど無くなったが、拘縮が強い為に手を挙げようとすると引き連れる。
12月22日(2回目)
臑兪、天宗、天宗の下あたりの固い部分に雀啄。他は前回とほぼ 同じ治療で終わる。
その後1週間おきに4回治療するが、その後来なくなってしまった。痛みはなくなったので当初の目標は達したが、拘縮がある程度取れないと、痛みが戻る可能性は高いと思う。しかし、患者が納得するだけの拘縮に対する治療の決め手が無い。残念である。
症例2 (拘縮がなく非常に治りやすかった五十肩)
患者名、T.E. 女 52歳 パートタイマー
(主訴)右肩の痛み
(随伴症状)頚〜肩の凝り。花粉症。
(現病歴)1年前からなんとなく重だるかったがこの数ヶ月痛みがひどくなって来院。時期的に花粉症もひどく、大きなマスクをしてきた。
(所見)脈:虚.遅。体格は長身、痩せ。前方挙上が痛む。後ろにも全く回らない。肩前部に強圧痛。他に圧痛は、右魚際、左右大巨、右帯脉、右天宗。
(治療)平成16年2月23日 1回目
左中封、尺沢と右陰陵泉で左右の大巨の圧痛消失。右尺沢、経渠で肩前部の圧痛消失。右帯脉で前方挙上痛消失。右少海で天宗の圧痛消失。治療中に腕を回しながら。「ああ、もっと早く来るんだった。」とのつぶやきが印象的でした。花粉症にネーブルに皮内鍼で「鼻の具合も良い。」とのこと。三角筋の後縁が少し気になるだけでほとんど良いと言う。
2月24日 2回目
前回とほぼ同じ治療ですっかり良いと、花粉症の具合もよく、昨日のマスクは家に忘れてきたと言う。これで明日から仕事にもどれると喜んでいた。
この2回の治療で治癒してしまった。その後一度、ネーブルの皮内鍼を張り替えに来院するが、肩に痛みは無いとの事であった。
(考察)五十肩は腰痛や膝関節痛と同じぐらいに取り扱いの多い疾患であり、鍼灸が非常に有効な疾患であると思う。しかしながら、症例1のように肩関節に拘縮が起きていると、その拘縮を取るのがなかなか大変である。症例2のように拘縮の起きていないものは、比較的治療は容易である。症例2は患部に治療を施さずに完治できた数少ない症例であり、長野式を勉強してよかったと思う事例であります。
以前外科の医師による講演を聞いたときに、四十肩は運動不足による痛みなので、より使用頻度の少ない(利き腕ではない)左肩に出る。対して五十肩は、肩関節に多少の変性が起きてきているのに関わらず使いすぎによって起きるものであるから利き腕である右に出る事が多いという話であった。当時はなるほどと聞いたものだったが、その後臨床を重ねるとそうでもないと思うようになった。右ばかりでなく左の五十肩も多かったのである。そして、一時は左の五十肩が治癒すると、決まって糖尿病の治療もしてくれと言う注文が多かったのである。膵炎の痛みや糖尿病は左側の筋スパズムを引き起こし、これが左の肩関節痛を引き起こすのだろうと考えたのであります。特に右側が多いということもないようであります。 長野先生は著書の中で「運動器疾患の慢性化は、血糖値の変動が著しく関与している・・・・・・すなわち糖尿性神経痛や筋肉痛があるごとく、血糖値の亢進や低下は糖代謝を阻害する因子であり・・・・・高齢者においてはアルコール飲用如何に関わらず軽度の糖尿症と認められており・・・」 と書かれていらっしゃいます。この事から考えると、高齢者の五十肩は、左のほうが多いのではないかとも思えてきます。まあ右でも左でも、高齢者の慢性化した運動器疾患には、TH11(脊中穴)のV刺鍼が必要であるということです。
右腕の痛みとふるえが止まった例。
【氏名】H.M. 女性 49歳 バイオリン奏者
【主訴】右前腕痛
【随伴症状】右側頭部痛、右腕のふるえ(10年前から、肘を屈曲させて手のひらを 胸の前で上に向くようにひねる《肘関節回外?》とふるえる。)
両肩の凝り。
【所見】脈状:細、緊、数 中肉中背
圧痛:左右天?、右帯脉、左大巨、左右の天柱、風池。
肩背部は全体に凝って、頚筋〜脊柱起立筋も緊張感が強い。 手先、足先は常に冷える。
【現病歴】3日前に突然、筋肉の硬直と激痛がおこった、原因は分からないという。痛みの場所は、右前腕の背側、伸筋群である。仕事柄手を酷使するのは仕方が無いが自分で強くもんだそうで、青く内出血しているのが痛々しい。大分疲れているようで、休みがほとんど取れない状態であるという。数日後にコンサートがあるので何とかして痛みをとりたいという。
【治療】 平15年6月30日
照海、兪府―20分留鍼
左中封、尺沢―左大巨の圧痛が軽減する。
曲泉、陰谷、陰陵泉に留鍼。―首の凝りが緩む。
左丘墟に留鍼、左上四?に雀啄中、頭痛軽減、右腕の痛み消失。
伏臥位になって委中、飛陽、崑崙、屈伸に留鍼。Th11,12,13の椎間にV刺鍼。
主訴である右手の痛みは取れたが、ふるえは全く改善されなかった。陽谷、小海、 臑兪、天宗に切皮程度の留鍼をして手をひねって見ると「ふるえない。」と言 う。「今はふるえるきがしない。」という。治療を終えて帰り際にもう一度手 をひねってもらうと、今度はまたふるえる。
【考察】 過労と腕の使いすぎで痛みが起きたが、筋緊張緩和処置で痛みはあっ けなく消えた、他の症状は更年期とも重なって1回ですっきりとは行かなか ったがかなり軽減されたようである。 治療すればふるえも取れると思うから、時間を作って治療に来なさいと言ったがそれきりになった。患者としては主訴が取れればそれでいいのかもしれないが、もう少し治療してみたかった。 一時的にふるえが止まった治療は、経絡テストといわれるものであるが、時として劇的に効く事がある。今は、たまに補助的に使っている。
20年来の母指、示指の運動麻痺、痛み、痺れが治った例。
【患者】 名前 I.H 男 72歳 無職
初診年月日 2003年5月1日
【主訴】右母指、示指の麻痺、痺れ、痛み。
【病名】病院では頸部骨折との診断をうける。
【随伴症状】頸部痛、右肩前部の運動痛。足がだるい。夜 足がつる。
【現病歴】昭和61年3月、寝ている時に、奥さんに、右手を引っ張られた。以来、首と腕が痛み出し、母指と示指が動かせなくなった。大学病院を回るが,2軒で頸部骨折と診断され、第5,第6頚椎が癒着している為に治らないと診断される。3軒目では、手術しか方法は無いが,半身不随になる可能性があると言われ,断念。4軒目で、神経ブロックと牽引と赤外線治療をうけて多少楽になるが,ほとんど快方には向かわなかった。以来,時々マッサージを受ける程度で今日まで来た。 昨年1月、電話中に意識が朦朧となり,倒れそうになり入院。心筋梗塞といわれたが,入院中に腎臓の方が悪いのでといわれ、そちらの治療にまわされる。
【所見】脈 心臓肥大を思わせる、硬くて大きな西洋医学的に言うなら,大脈?しかし不整脈は無い。
肓兪に圧痛、巨闕に圧痛、右帯脉に圧痛、右肩前部に圧痛、右魚際に圧痛、C5,C6間圧痛、L3,L4間圧痛、脊柱起立筋の緊張著明。肩背部に凝り。 頸部はうしろが肥厚した感じ。
【治療】1回目 5月1日
照海、兪府に留鍼。肓兪の圧痛消失。
右尺沢、右経渠、雀啄留鍼。魚際と肺経の肩前部の圧痛消失。
右内陰、右陰陵泉、右帯脉、留鍼。
C5,6間V刺、Th11V刺、L3,4,5間V刺、屈伸穴留鍼。
照海、腎兪、に点灸7壮。
首の痛み軽減、肩前部の圧痛、運動痛消失。腕を回しながら、「これで夜寝られそうだ。」と喜んでいた。右手の母指、示指の麻痺と足のだるさは残る。
2回目 5月2日
前回の治療に、足のだるさと腓腹筋の転筋のために、失眠穴に点灸。 帯脉穴雀啄中に右手の母指、示指が動き始める。本人は「信じられない。」と言って指を見つめていた。
3回目 5月10日
前回の治療から、足が軽くなって、腓腹筋の転筋もなくなり、夜もよく眠れるようになった。指の動きも更に良くなって、物がつかめるようになる。痺れもほとんどない。
【転帰】主訴である右手母指、示指の麻痺、痺れ、痛みは約1か月経つ今日も悪化する事がない。治癒したものと思う。
【考察】患者の奥さんの治療をしていて、相談を受けて始めた治療である。20年も前に麻痺が発症、経過したものが動き出したのである。腕や指に萎縮も無く、栄養状態はいたって良かった。これを見て痛みや痺れは何とかなるのではないかと言って治療を勧めたのだが、3回の治療で動きだすまでになるとは思わなかった。寝てばかりいた生活が、今は郷土の資料を尋ねる散歩を楽しみに元気である。
現在の灸治療
中カン、巨闕、手三里、足三里、照海、
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