紙谷 芳彦

Yoshihiko Kamitani
La Villa 今津計画 2 
「基本的な考え方」
1 一つの共同住宅が街を変える。
計画予定地の今津は、阪急電鉄と阪神電鉄が隣接する場所で、両社が合併した際に最も注目を集めた地域です。しかし、阪急今津線の乗降客数は増加したものの、街自体に大きな変化は起こっていない。それに比べ、阪神御影には大型商業施設を併設した超高層複合施設・クラスカができたことによって、街のイメージが一変した。周辺にお洒落な店舗やレストランができ、若者が住みたい街に変貌した。今津には、その様な計画も用地もないが、大阪や神戸へのアクセスの良さ、利便性の良さは、阪神御影に勝るとも劣らない。ここに若者のニーズを掴んだお洒落な共同住宅が一つ、また一つとできることによって、徐々にまちが変わっていく、今津にはそんな緩やかな開発が相応しい。
2 組合方式による共同住宅づくり
この低金利時代、住まいに賃料を払い続けるより、自己所有したいと思っている若者は多い。そうは言っても新築マンションは決して安くない。中古マンションは仕様的に満足できないし、転売性に不安もある。本当にいい住宅を求めている人が集まって、組合をつくり、共同住宅づくりを進めるコーポラティブ方式によって、自分好みの住宅を相場より安く手に入れることが可能である。しかし、それには時間も手間も掛かるし、リスクもないわけでもない。誰にでもお勧めできるものではないし、投資目的の人には不向きである。しかし、そうやってみんなで作った共同住宅には、愛着も沸くし、共同住宅づくりを通じて、コミュニティが醸成されるといった副産物もある。
3 小規模だからできる個性的な共同住宅
小規模共同住宅には、大型マンションのような広い共用部や豊かな外構などは望めないが、小規模だからできる個性的な共同住宅づくり。今回の計画で言えば、戸建て感覚の住戸プラン、内部化された共用部・ペントハウス、屋上を利用した共同菜園・B.B.Qスペースなどである。更に、環境共生的な要素(自然エネルギーの利用、地下水や雨水の利用、緑化など)や、地域共生的な要素(景観配慮、防災拠点としての備え、収穫祭などのイベント)も、組合員と検討したい。
4 質実剛健で健康な共同住宅
耐火性、断熱性、遮音性、メンテナンス性など共同住宅としての基本性能、設計の自由度の高さなどから、鉄筋コンクリート構造を選択した。当然、躯体のイニシャルコストは高くなるが、シンプルな構造、低層化、EVなし、外装の大部分を打放し仕上げとすることなどで、イニシャルコスト、ランニングコストの低減を実現している。専有部は、天井の高さ、多面採光、通風換気など、住宅としての性能の高さに重点を置く、また、設備などの点検やメンテナンス、更新が容易にできることに重点を置き、資産価値低減が少なく、質実剛健で健康な共同住宅を目指している。
塔屋平面図・屋根伏図
平面図
立面図