† ニュータイプ 2023年12月号〜2025年7月号に関する考察 †
NewType 2023 Dec - 2025 Jul
 

■ 2023年12月号


■ 扉ページはクリスティン (2023年12月号p55)

扉ページはエンペラーズ・ハイランダー(あるいは皇后)の衣装に身を包んだクリスティン。
以前発表されていたモノと色彩が異なり、漆黒に染められている。おそらくレーダー9世の漆黒の皇帝衣と対を成す衣装である。
彼と彼女が未来において漆黒を身に纏う理由・・・それはおそらく先帝ダイ・グを悼む意思の表れ、喪に服す意味を込めているのではないだろうか。
(2023.12.10)


■ ナカカラ離宮に集う人々 (p56)

劇中初登場のナカカラ離宮。ダイ・グの要望により迎賓館として置かれた離宮とのこと。
寿命をすり減らしたダイ・グが最後の時を迎える場所として選んだことで、元老院メンバーや配下の主要騎士が集っている模様。
ナカカラ攻防戦の際に援軍として派遣されたジャンシー・ガラーはそのまま居残りとなったようだが、一緒に出発したブラウマ・イクは本国に戻ったようだ。ただ、彼女がこの場にいない理由はおそらく本国で起きている事象=ジークの即位に対応しているため。

離宮の周りがやたら広いのは、他国の要人が(大型のスキッパーや宇宙船で)訪問することを想定しているためか・・・それとも非常時に軍船が集まることを想定しているのか。あるいはその両方かも。

イアンのセリフに拠ると、氷グループに続き萌葱グループも解散となった模様。ナイアスは略式軍事裁判でも死刑が判決されたようだ。皇帝ダイ・グを亡き者にしようとした元老院の差し金であることは明らか。
なんだけど・・・7月号で言及されていたのは元老院即決裁判。今回は略式軍法会議となるため、裁判を招集している組織が異なる。軍法会議は通常、犯罪を起こした兵士の上級士官が招集することで開かれる。ナイアスは元老院の直属で動いていることもあり、その上官イコール元老院という可能性もあるが、元老院は軍組織ではないため軍法会議を開くのは越権であるはず。普通に考えれば、フィルモア騎士団の組織図上、帝国騎士長官のアビエン・ヒートサイ、帝国騎士長官補佐のブラウマ・イクが招集することになる。
となると、元老院のやり方に気付くであろうこのふたりが、ブラフとして「死刑判決」を周知しておきながら、彼女を裏で保護している可能性も見えてくる・・・かな。
と云っても、言葉を変えているだけで同じ裁判を指している可能性もあるか。
(2023.12.10)


■ ダイ・グとクリスを慕う騎士たち (p60)

ダイ・グに近づけないクリスを心配してブルーノとニオが動く。
ダイ・グがクリスを救ったのは「彼女を愛しているから」。でも、彼自身はその言葉を口にしていない。だからニオも「その耳飾りをもっているのがあなただから」という言及に留める。アルカナ騎士であると同時に皇帝侍従長である彼女は、皇帝の意を汲んで直接的な言葉をちゃんと避けている。この気配り・奥ゆかしさがニオの凄さだと思う。

元老院の指示に従いつつも、クリスに詫びを入れるバルバロッサ騎士。騎士団の枠を超えて尊敬の念を寄せられている状況が窺える。このエピソードのタイトルから判るとおり、今回の主題はエンペラーズ・ハイランダーの誕生である。故に、クリスが名実ともに騎士の筆頭として認められるハイランダーであることが丁寧に描かれる。
(2023.12.10)


■ 竜がもたらす干天の慈雨 (63)

アドー王の執権を提案する元老院の茶番は無視して、気になるのは「蒼い血をもつアドー王」という部分。
「蒼い血」はその名称からブラウ・フィルモア王家の直系や傍系に引き継がれ血筋と考えられるが、設定上、バルバロッサ王家にブラウ・フィルモア王家の血が入るタイミングはワイプ・ボルガ・レーダーと璃里(リリ)=ブラウ・フィルモア女王の婚姻に拠るものとなるはず。アドー王はバシル・バルバロッサの甥に当たるため、その血が混じることにはならないが・・・それ以前にバルバロッサ王家とブラウ・フィルモア王家の縁故が存在したのだろうか。

侯爵位を断り、ダイ・グに付くことを宣言するミヤザ。侯爵位は五爵位の第二位。通常は自治区を与えられる身分であり、平民出身のミヤザから見れば貴族の仲間入りという破格のチャンスである。これを断る漢気よ。

そして雨が降り注ぐ中で円卓の騎士団が登場する。おそらくは即位を宣言すべくジークが遣わした騎士団ということだろう。あるいはこの騎士の集団に護衛される形でジークも来ているのかも知れない。
雲を呼び雨を降らすは竜の権能。強すぎる太陽は国を焦がす。故に竜は雨を以て国を潤す。双頭竜たるジークの目覚めはフィルモアにとっての干天慈雨ということ。だから彼らは雨と共にやってきた。カッコよすぎる。イクさんも混じっているのかな。
(2023.12.10)

 

■ 2024年1月号


■ 扉ページはZ.A.P.(アンクル・クレーンなし) (2024年1月号p56)

扉絵はアンクル・クレーンを取り外した状態のZ.A.P.。スッキリしててカッコイイ。
側頭部のテールコードが「X」なので、設定どおりであれば、コーラス・ハグーダ戦で使用されたウラッツェン・ジィの搭乗騎。おそらく、デザインズ7で「コーラス・ハグーダ戦当時の仕様」ということで掲載されるのではないだろうか。後にヨッヘンマ・ピストーチがジュノー侵攻戦で使用する騎体である。
(2023.12.10)


■ フィルモア騎士の行進 (p59)

円卓の騎士に次いでフィルモア帝国の各騎士が登場。
儀仗騎士は儀礼・式典などに参加する国家元首や高官に付く護衛騎士のこと。アラン・リー・ファウトゥは成長後にこの儀仗騎士となる。

三大王家騎士団は、フィルモア三大王家の各王家に付く近衛騎士団のこと。ブラウ・フィルモア王家付きのブラウ近衛騎士団(双頭竜騎士団)、ボルガ・レーダー王家付きのレーダー王家近衛騎士団(青百合騎士団)、バルバロッサ王家付きのバルバロッサ騎士団(黒鷲調停騎士団)を指す。このうち、新設定で騎士団長の名前が公開されているのは、劇中で登場しているブラウ近衛騎士団長のメリー・マーカスのみ。旧設定では、レーダー王家近衛騎士団の団長がバルファ・レスト、バルバロッサ騎士団の団長はギャリー・アドモンとされていた。

そして、またしても何も知らないブルーノ・カンツィアンさん。合流している青グループは本国に残してきた第4中隊とのこと。

クリスを手招いた円卓の騎士は、センセーが「メガ盛りアタマで中身バレバレ」と書いているので、おそらくジークママのリリ・ニーゼル。
円卓の騎士と儀仗騎士の間に入るように指示されているので、クリスは全騎士団の統括者ハイランダーとしての立ち位置に呼び込まれたことになる。

円卓の騎士は11名。間にフードを被っているヒトがいるようにも見えるが、不明瞭なので判らない。
11名の内訳は・・・たぶんセンセーは全部設定してあるはず。
茄里と璃里(ジークママ)は確定として、たぶんブラウマ・イクもいるはず。ほかは判らない。
設定から察するに、騎士ではない人物もいると思われる。

劇中のアドー王の解説に拠ると、円卓の騎士は本来、元老の一部の者が皇帝に上奏した上で、三大王家の承認と元老院の4分の3以上の賛成が無くては召喚できないらしい。
ジークの即位のために多少強引な手続きが採られたとして、三大王家の承認なしでここまで進むとは思えない。なので、三大王家の筆頭当主が裏で協力していると思われる。
つまり、ブラウ・フィルモア王家筆頭の璃里・ニーゼル、ボルガ・レーダー王家筆頭のジェイン・ボルガ女王、バルバロッサ王家筆頭のバシル・バルバロッサといった面々である。
茄里は三大王家の血を引く「三色の娘」であるが、たぶんジェイン・ボルガ女王の名代としての役割を負っているのではないだろうか。
そうなると、バシルの名代も居て欲しいことになるが・・・あるいは本人がいる可能性もある。

茄里の目が一瞬だけ痙攣しているのは、ダイ・グや兄ジークと共通する疾患。
彼女が立っているコマでカーテンに描かれているのは双頭竜の紋章とダス・ラント正式紋章から引き継いだ四方矢尻十字。ドナウ帝国の正統後継者という意味合いをもつはず。

という訳で、ジークが表舞台に出る準備が整った模様。次回に期待。
(2023.12.10)

 

■ 2024年2月号


■ 扉ページはデザイン展の告知 (2024年2月号p55)

扉ページはデザイン展の告知+ノーマルのエスト。なぜここにエストが?と云われれば・・・空きスペースを埋めるため+がんばれエストちゃんからの乱入+永野センセーはたぶん、エストを描かない期間が続くと発作的に描きたくなってしまう性分なのだろう。
デザインズ7の解説にある「マリエ」とはファッション用語でウェディングドレスのこと。とくに、婦人服のコレクションで最後を飾るウエディングドレスを指す。仏語で「花嫁衣裳」を意味するロープ・ド・マリエ(Robe de Mari'ee)が語源。
本編中でウェディングドレスを着ることになるのはおそらくクリスティンと思われるが・・・デザインズ7の最後を飾るのであれば、ここはやはりパルスェットに花を持たせてあげたい気分。

デザイン展は正直めちゃくちゃ行きたいです。けど、北海道から交通費・宿泊費込みで行くと、関東近辺に住んでる方が10回行けるぐらいの費用が簡単にすっ飛びます。
ファンであればそれぐらいへーきへーきという方も多いと思いますが、うちはそこまで余裕がないので諦めます。
なので、行ける方はガンガン行って、デザイン展を盛り上げていただければと思います。図録はたぶんネット販売ぐらいしてくれるはず。

それにしても、サービス名が変わった後も未来永劫にX(旧Twitter)と表記(英語圏でもTwitter/Xと表記)されるのだから、イーロン・マスクってアホなことに拘ってるなーと思いますね。もうTwitterでいいじゃん。
(2024.01.14)


■ ジーク登場 (p56)

円卓の騎士の間に隠れていたジークが登場する。
皇帝と円卓の騎士を合わせて12人という構成。アーサー王物語における円卓の騎士は作品によって人数が異なるが、一般にアーサー王を含めて12人とするパターンが多い。
フィルモア帝国の円卓の騎士も、その構成人数に準えているようだ。

先月号の考察で、今回の即位に関して三大王家の筆頭当主が裏で協力しているのではないかと予測していた訳だが・・・協力どころか家督を全て譲渡したらしい。
つまりジークは、ブラウ・フィルモア王家当主+ボルガ・レーダー王家当主+バルバロッサ王家当主の座に就いており、その財産・事業と全ての権利を自由に扱える立場になったと。
アドー王やティルバー女王がおそらく王家当主から持たされている(名代としての)議決権も全てジークに移ったことで、彼らが本来もつ議決権はごくわずかに留まり、この地に来ている元老院メンバーの議決権は2割未満となったようだ。
議決権うんぬんの話は帝国法にちゃんと載っているらしいので、ジークが口にしていた「旧帝国の亡霊」、ワイプ皇子が語っていたフィルモア帝国を完全専制君主制度に緊急移行する仕組みというのは、「皇子」「皇女」が欲した場合に全家督を譲渡する盟約のようなものであったと想像できる。ただ、アドー王は「専制君主を強制発動する時」と口にしているので、そのような仕組みが存在すること自体はちゃんと知り得ていたようだ。

バシルがポーラ・ボルガ・レーダーを手籠めにしたことが結局裏目に出たと云うべきか・・・あるいは、例え皇子であっても実際にそのようなことを求める暴挙に出る訳がないとタカを括っていたのか。実際、ジークはダイ・グの星団放送を聞いた上でフンフトの呼びかけが無ければ立ち上がらなかった訳で・・・この状況を生み出したのって実はダイ・グなんですよね。そういう意味では、元老院がダイ・グを軽く見ていたことが全ての遠因とも云える。
まあ、バシルあたりはダイ・グの星団放送を聞いた時点でこのようなことも想定していたのではないだろうか。
(2024.01.14)


■ ドナウという名前 (p60)

フィルモア王家、レーダー王家、バルバロッサ王家の全ての家督を掌握した人物が名乗る名前が「ドナウ・ガァ・ダス・ラント」となるようだ。
えーと・・・フィルモア帝国が東西分裂を起こす以前の統合帝国が「ダス・ラント連合帝国」であるが、この帝国の王家名は明かされていない。
んで、東西分裂後のフィルモア・イースト=ドナウ帝国を治めていたのがドナウ王家、フィルモア・ウエスト=太陽王国を治めていたのがジー・ボルガ・フィルモア太陽王家である。
ここを起点に考えていく。

ドナウ帝国最後の皇帝=トリハロンの実兄がドナウ・ガァ・ブラウ。トリハロンとブラウの父君はドナウ・ガァ・アルカナス・ブラウで、この人物はアルカナス帝家の出自とされる。
(デザインズ4では最後の皇帝としてドナウ・ガァ・ニーゼルという名前も掲載されているが、この部分は設定が混乱しているので無視)
んで、ドナウ・ガァ・ブラウの(おそらく)息子ゾンダー・フィルモアが、ジー・ボルガ・プリンシパル・レーダースと婚姻を結んだことで、現在のフィルモア帝国が誕生。
ドナウ・ガァ・ブラウ⇒ゾンダー・フィルモア+プリンシパル・レーダースと繋いだ血筋が、現在のブラウ・フィルモア王家である。
つまり、ドナウ王家の直系が、統合フィルモア帝国の成立時に「ドナウ」の名を捨てたことが窺える。

んで、ジー・ボルガ・プリンシパル・レーダースを嫁に出した後もボルガ本家は継続していた訳で、こちらが現在のボルガ・レーダー王家。
バルバロッサ王家はドナウ王家の傍系から発した王家であり、デザインズ4記載の家系図でもドナウ帝国成立後に分かれている。

ただ今回、三王家の血筋がひとりに集約されたことで「ドナウ」と「ダス・ラント」の名を名乗っているので・・・
ダス・ラント帝国の王家名がもともと「ドナウ」であり、バルバロッサ王家の発生は分裂以前のダス・ラント時代であったと仮定するべきであろう。
であれば、三王家の統一=ダス・ラントの源流に立ち返ったとみなすことが可能となり、「ドナウ・ガァ・ダス・ラント」を名乗ることにも納得できる。

ジークの衣装にシュペルター・マークに近いS字があるが・・・これの意味するところは不明。
ただ、ドナウ帝国時代のルドルフ・サヤステがシュペール太閤と呼ばれていたこと、超帝國剣聖騎士団の別名がザ・シュペルターズであること、ダス・ラント帝国が超帝國皇分家の血筋から起きたことを考えると、超帝國時代に存在した「シュペルター」という名称が、一方では何らかの変遷を受けてフィルモア帝国内の領地や称号名に、一方では超帝國剣聖の子であるカイエンに、それぞれ引き継がれた状況も考えられなくはない。

ナイトマスターの紋章を付けているのは、幼少時にダイ・グと共にカイエンから認められたため。左腕を斬られた代償に得た紋章である。
背中の紋章は四方矢尻なのでこれはドナウ帝国の紋章。
こういう衣装って戴冠が決まってから制作するのが普通なので、ジークがフィルモアに帰還した後でお針子が必死に縫い上げたものと考えられる。

p62の枠外のコメントが少し雑で判りにくい。「ジークは旧帝国皇帝名をもつので、太皇太后である慧茄からの敬称も"陛下"となる」と修正すればいいかな。
たぶん、通常の皇帝であれば「様」とかになるはず。
(2024.01.14)


■ ジークがもつ異能 (p66)

再会したジークとダイ・グの会話から、@ジークが夢で会っていた少女の正体がマグダルであること、A星団放送の際にちゃあの目の前にいたのはジークであったこと、B陽貴(カラット)がデルタ・ベルンに向かったのはジークと会うためであったこと、が判る。
時系列をまとめると、星団放送の後で陽貴がジークに接触⇒おそらく茄里がフェイツ公国に来てジークと合流⇒ヨーン敗北のニュース報道⇒ジークがちゃあを誘ってヨーンに引き合わせ(イースト・ハスハ訪問)⇒フィルモアに一度帰還して三王家と交渉⇒円卓の騎士を伴ってナカカラを訪問、という流れになる。かなり忙しい。

フンフトの説明に拠ると、ジークの中にサイレン皇子の人格が宿っている訳ではなく、三色の血をもつジークと相対した者が彼に対して畏怖の念をもった場合に「サイレン皇子の姿」となって現れてしまうようだ。とは云え、ジークママが見た皇子は「過去の対話内容を思い起こさせるような言動」をとっているので、単なる幻影・幻聴とするには無理がある。
この現象は、ジーク自身に弱いスコーパー能力がある、と仮定すると何となく説明ができる。

ジークが夢の中で出会っていた少女はマグダル。マグダルの思念は全てのヒトに伝播する訳ではないため、強力な思念に対してジークの能力がパッシブに働くことで限定的にそれを受信したものと考えられる。
一方、能力を持たない一般人がジークと相対する場合はその能力がアクティブに切り替わり、それを介して畏怖する気持ちがサイレン皇子の姿となって発信されてしまうのだろう。逆上していたジークママに対して理性的な言葉を掛ける姿は、彼女の無意識の部分ではなくジークの意識による影響と考えた方がスッキリする。
ドナウ王家が双頭竜=2つの頭をもつ竜を紋章としていたのも、それ以前の太古の皇帝に似たような能力があったことを示唆しているのかも知れない。失われていたその能力が、三色の血を持つに至ったジークに発現したと考えれば納得もできる。

という訳で、ジークが15巻で口にしていた「目の美しい少女」の正体はマグダルであることが判明。そのジークがマグダルという存在を認識した時、カーマントーへの出征が始まることになるのだろう。
んで、もうひとりの「美しい声の女性」は夢の中で「ラブを」と叫んでいるので、すえぞうをこのように呼ぶ人物=ベリンということになるはず。このタイミングで登場した「ベリンがトリハロンに預けた言葉」がどう繋がっていくのか・・・次回に期待。
(2024.01.15)

 

■ 2024年3月号


■ ベリンがトリハロンに贈った言葉 (2024年3月号p56)

詩女ベリンが皇子トリハロンに贈った言葉をジークが読み上げる。ベリンの言葉「あなたの国に蒔いてください」は「花の咲く場所を作ってください」と解釈できそう。その言葉を受けたトリハロンは帝国の東西統一を成し、ダイ・グは(その言葉を聞くまでもなく)星団放送を通して種を蒔いた。だから次はジークの番ということ。皇帝として即位した後にジークが携わることになる、カーマントーへの出征やマグダルとの超法規協定も「花の咲く場所を作るため」と考えると一貫性が見えてくる。

また、ベリンがリチウム公に花の種を渡したのも、たぶん根底は一緒である。リチウム公から始まったファティマの製作と、その子孫によるファティマの強化・進化を通して、最終的にフォーチュンに花の種が蒔かれることになる。おそらく、マキシ=蒔子もまた種を蒔く者として設定された存在であり、その名のとおりタイカに種を持ち込むことになるのだろう(物理的に持ち込むのではなく、その意思を継いで広げるという意味で)。
だから、フォーチュンに生まれ、タイカに向かうことになる天照の娘の名は花蓮=カレンという名前になるのだろう。種の蒔かれた世界に咲く花。名付け親がバランシェという設定もあることから、リチウム公に渡された種の意味がちゃんと引き継がれているのかも知れない。まあ、嘩憐という表記もあるからナンとも言えんけど。

ジークが手紙と一緒に持ってきたケース(双頭竜の紋章が描かれたケース)に入っているのはたぶん「花の種」。おそらくはクリスがミノグシアに蒔くことになる花の種である。今月号はコミック13巻でクリスが得た預言の成就であり、ここを読み直すと詩女が何を云っていたのか判るようになっている。クリスをこれまで見守って来たのはトライトンやブルーノたちアルカナ騎士たち。しかし、彼女を本当の意味で助け、この後の未来で守ることになるのはジークと円卓の騎士ということになるだろうか。
(2024.02.28)


■ 円卓の騎士が顔を明かす (p57)

ジークと共に現れた円卓の騎士が、それぞれの素性を明かす。彼の行動を暴挙と考えるヒトたちに向けた牽制と、元老院の悪だくみトリオに向けた威嚇の意味もあろう。顔を表したのは、レーダー8世、ブラウ・フィルモア(ジークママ)、ジェイン・ボルガ、バシル・バルバロッサ、ジルメア王、ブラウマ・イク、ナイアス・ブリュンヒルデ、茄里、アラン・リー、イゾルデ・サヤステ、アイオ・レーンという面々。

レーダー9世の治世後の騎士団配置は2023年9月月号に示されていたとおり。
円卓の騎士を最上位組織に置き、クバルカンの筆頭騎士が配下に加わる状況となる。ジャスタカークの配置は読めないが、おそらくダス・ラント陣営で問題ないはず。枢軸のジャスタカークと中立(と言いつつ枢軸に有利な振る舞いをしていた)クバルカンがダス・ラント陣営に入ったことで、バッハトマに付く勢力が削られたことが判る。この布陣から察するに、3075年のハスハント解放戦に参加していたミューズとナイアスは、ダス・ラント陣営としての参加だったことになる。

うーん・・・こうなるとクバルカンを客人として迎えていたメヨーヨにも影響が出そう。できれば、ちゃあがもっかいクラーケンベールにボケかまして枢軸から引き剝がすくらいのエピソードが欲しいところ。

今回のエピソードで判明したのは、「円卓の騎士は新皇帝の選出時に選ばれる」ということ。
本来は元老院の議決によって選ばれるようだが、今回に限ればジークが単独で元老院の議決権を有している状態なので、彼個人の意思で円卓の騎士が選ばれたようだ。
(2024.02.28)


■ バシルが見る初代皇帝 (p65)

バシル・バルバロッサが見る初代皇帝の姿は、フィルモア帝国が統合する以前の皇子トリハロンとしての姿。
彼が畏怖の念を抱く初代皇帝の姿は「若い」という点がポイント。つまり、帝国の統合によって構築されたシステムの運用・継続を望んだ頃の姿ではなく、まだ若く、がむしゃらで、その思いだけで突き進んでいた頃の姿である。目の前のいるジークの意見を否定しつつ、若さ故の勢いで事を成し遂げようとする皇子を理想の姿として認めている訳ですね。また、この描写から察するに、バシルがバルバロッサ家当主としてもつ矜持の中に、「我が王家は初代皇帝が即位する以前から仕え、その志を同じくしていた」という思い・誇りが含まれていることが窺える。

帝国を守る堅牢なシステム(それでいて良きも悪きも呑み込むシステム)の重要性を理解しつつも、どこかで若さと善意による改革を願っているとも見えるこのシーン・・・バシルさんも紛う方なき漢ということ。泣けるじゃねぇか。
(2024.02.28)

 

■ 2024年4月号


■ ミヤザの思惑 (2024年4月号p57)

ジャンシー・ガラーとの会話でミヤザのこれまでの動向と真意が明かされる。ダイ・グが貴族の因習に捕らわれない若い皇帝であったからこそ、民間出身の身でありながら共に歩んでいくことができる相手と見込み、辛辣な態度を取りながらもその意思を汲んで行動していたようだ。
クリスの扱いについてもイクの方は気付いていたようだが・・・読者視点で見るとさすがにちょっとミスリードが過ぎてると思う。コミック12巻p201では「潰す」と明言していたり、コミック13巻p152ではクリスの境遇を面白がっていたりする訳で(このシーンはモノローグなので貴族の姿勢に合わせる必要がない)。ミヤザの立ち位置が変わったのって大体コミック16巻辺りよね。
(2024.05.23)


■ 引き継がれる思い (p58)

ジークのナカカラ訪問の真意を確認するダイ・グ。これに対しジークは、トリハロンの理念とダイ・グの想いを引き継ぐことと答える。そのような意思を持っていることをダイ・グが見抜けないはずがないので、このふたりの会話は「任せていいいよね」「任されました」という確認である。その確認をもって、ダイ・グはクリスの今後とフィルモア・ゴルゲットの扱いをジークに託す。ジークのセリフを読む限り、このゴルゲットは皇帝自身が身に付ける装飾品であり、例え皇帝の配偶者・近親者であっても預けることができない代物のようだ。これをダイ・グの「遺志」として彼女に渡すということは、彼女を「皇帝の遺志を引き継ぐハイランダー」とすること同義である。つまりは、クリスをエンペラーズ・ハイランダーとすることが、「詔」として伝えられたという見方ができる。ジークの指名ではあるが、ダイ・グの指名でもあった・・・という部分がポイント。

このあとのダイ・グのセリフにあるように、彼自身はクリスを「守ってあげられた」とは考えていない。彼が考えていた「守る」というのは、ナカカラ防衛戦でクリスを戦死させないことではなくて、もっとずっと大きなこと・・・おそらくは彼女を取り巻く全ての憂いを払うことだったのではないかと思う。それがもう叶わないと考えているからこそ、彼女を託す相手としてジークを選び、さらにはジークの隣にいられるようにエンペラーズ・ハイランダーという立場を残そうとしたのかも知れない。

あと、この「詔」の受け渡しを、ダイ・グの部屋に現れた「円卓の騎士」が立会人として見届けた形になるが・・・レーダー8世は「前皇帝」であると同時に「クリスの養父」でもある訳で、想い人の遺志を継いでこれから帝国の重責を背負うことになる養女に対して、そこそこ複雑な心境を持っていたとしても不思議ではない。と云うか・・・振り返ってみると、バーバリュース、ブルーノ、レーダー8世、ダイ・グと、それぞれがそれぞれの立場でクリスを守ろうとして最後まで守り切れなかったという見方もできる。彼らが必死に動いた結果として、クリスがより過酷な時代のうねりに投げ込まれていくことを考えると・・・彼女がエンペラーズ・ハイランダーになることは決して幸せな結末とは云えないし、おそらくダイ・グ自身もそう考えるはず。でも、「そうせざるを得なかった」というのがクリスを主人公とするドラマの芯であろう。まさに大河ドラマである。
(2024.05.23)

 

■ 2024年5月号


■ ダイ・グの死 (2024年5月号p59)

クリスに抱きしめられながら息を引きとるダイ・グ。慧茄は息子に次いで孫を失う形になる訳で、その悲哀の大きさは察して余りある。天照が口にしているところの「とある目的をもたされたタイマー」が何を意味しているのかは判然としないが、もし彼にもうひとつの「寿命」につながる何かがあるのであれば、いつかの再登場に期待したいところである。
カイエンを最後に抱いたのはムグミカ。ダイ・グを最後に抱いたのはクリスティン。彼らはふたりともその命が尽きることを承知の上で、最後の最後まで彼女たちを守ろうとしていた訳で…これもまた師弟の絆という見方もできるだろうか。天照を始めとする全能神には絶対に作れないドラマである。
(2024.05.23)


■ エンペラーズ・ハイランダー (p63)

ジークの戴冠と同時に、彼の指名を受けてエンペラーズ・ハイランダーとなるクリスティン。その身に纏うものは、初代皇帝のガット・ブロウ、慧茄がダイ・グの配偶者となる女性のために用意していた后冠、そしてダイ・グの遺志を象徴するフィルモア・ゴルゲット。これまでに明かされている設定を合わせると、皇帝笏と七宝の指輪はこの後でジークが引継ぎ、初代皇帝が残した遺物が全て揃うことになる。古き因習を全て捨て去り、初代皇帝の理想とした国家が発足したこの瞬間より、星団侵攻の影が伸びてくる時代へと向かうことになる。

DE7に掲載されたとおり、クリスと円卓の騎士を頂点とするフィルモアの軍事力は、星団でもほぼトップクラスの布陣となる、これを苦も無く駆逐可能なZ.A.P.がいかに規格外の存在であるかは想像に難くない。そういう意味では、多くのGTMが繰り広げる華々しい戦乱の時代が終わり、これから一方的に全てのGTMが破壊されるだけの時代に突入していくことになる。メカが出てくるマンガとしては盛り上げにくい感じになるのではと心配になるが・・・センセーが物語を牽引するだけの魅力をZ.A.P.に込めていることは明白。

永野センセーの解説に拠ると、ジークが「レーダー9世」を名乗るのは、三王家のバランス取りのためらしい。という訳で、このホームページではかなり以前からジークによるレーダー王家への婿入りを推して来たので・・・なんかホントにすみません。ごめんなさい。いやね、だったら「誰もが驚く人物を妻とする」というジークの設定はどこいっちゃうのって話なんだけどね。まあ、これからの展開を見守りましょう。

クリスは「エラニュース」の名を引き継いだようだが・・・DE7の解説に拠ると、この名はエラルド・フィルモア王家の名字とのこと。そうなるとクリスティンがエラルド・フィルモア王家に嫁ぐか養子に入ったことになってしまう。もしダイ・グの后となった扱いであれば、フィルモア帝国は死後婚を認めている国家ということになってしまうし・・・少し微妙。なので、旧来の皇帝名としておくのが正解と思われる。
まあ、ダイ・グとの間にこれだけの思い出を残したクリスが別の男性と添い遂げる未来は全く想像できないので、この後の時代で登場する「エラニュース」の名を継ぐ人物というのはおそらく養子ということになるだろうか。

最終ページで描かれている未来は、映画GTMの最期に描かれた、クリスと町が共に聖宮ラーンを訪問したシーンである。ダイ・グの願ったナカカラとの懸け橋は、やがてミノグシア全土に影響するラーンとの懸け橋につながり、星団暦3159年にフィルモアとミノグシアの間で超法規協定が結ばれることになる。レーダー9世、クリスティン、町、エストを出迎えるのは、マグダル、デプレ、マキシの3名とのこと。そこに至るまでに必要なエピソードは残りわずか。そのエピソードが次月より始まる。
(2024.06.03)

 

■ 2024年6月号


■ ヨーンの鍛錬 (2004年6月号p55)

今月号はとくに考察するポイントなし。

ミラージュ騎士団の正式なメンバーとなったヨーンはフロート・テンプルで鍛錬を積んでいる模様。
(おそらくクセが強い)GTMモルフォを乗りこなすため、実戦に出る以前にミラージュGTMへの搭乗と模擬訓練が義務付けられたようだ。
見開きページは角川書店刊「重戦機エルガイム2」に掲載されたイラストに重なるセルフオマージュ。ヨーンがHMガスト・テンプルに相当する騎体に搭乗するシーンがこういった形で実現したのは嬉しい限り。
サイロドームが開いて水蒸気が発生するのは、ドームの内部が低温状態になっているからか、気圧が極端に低いからか。あるいはその両方。

パンクな兄ちゃんだったウラッツェンを始めとしてミラージュの面々がずんどこ登場。今回出ているメンバーの大半は3159年の大侵攻に参加しないはずなので、彼らの出番も残りわずかである。
ピレットがめちゃカワだったり、バシクが意外といろいろ考えていたり、キャラが出揃う回はやっぱり盛り上がる。

フロート・テンプルの増改築によって先端にあったパトラクシェ・モニュメント(=星団法制定時の記念モニュメント)も様変わりしている模様。コミック5巻p71と比べると随分イジっていることが判る。
ブラフォードが目通りと云っているように、既に顔合わせをしているアイシャやキュキィは未登場。騎士団のトップ4たるメンバーはそれぞれ忙しく動いているのかも知れない。

桜子のセリフを読む限り、ヨーンは今現在においてもちゃあの正体(=天照家内親王)を知り得ていない模様。彼女がシャルデファーを訪問した際は心神を喪失していた上、直接には面会していないので仕方がないと云えばそうかも知れないが・・・誰がどのようにしてダークチェリーパイを届けたのかヨーンの中では掘り下げられていないのだろうか。あるいは、ヨーンが「これって誰が届けてくれたんですか」とか云って、アイシャが「あー・・・最近雇った桜子ってヤツが預かってきた・・・のかな?」とか「見舞いに来たジーク君が」とか云って誤魔化したのかも知れない。王朝から出奔した扱いとは云え、彼女のことは天照王朝においてもトップシークレット扱いなのかも。
(2024.06.23)

 

■ 2024年7月号


■ 女子高生ミラージュの面々 (2024年7月号p55)

女子高生ミラージュの解説。デザインズ7の記載内容から大きく変わっていないが、メナーが内宮大学とルミナス学園の大学部の両方に在籍しているという設定は初出。もちろん、ルミナスの在籍はちゃあの護衛が目的であろう。

内宮高等学校を訪問したヨーンが「高校ですよね?」と聞いている。
幼少時に学校を飛び出したヨーンに常識がない可能性もあるが・・・留年を繰り返したことで高校生とは思えない面々が揃っていることをそのまま口に出してしまった訳で・・・初手で女性陣にケンカ売ってるようなもん。という訳で、キンキー、じゃーじゃー、パナールによる特訓がはじまる。ヨーンが手玉に取られてしまうのは、気迫の問題もあるが、そもそも剣の扱いに慣れていないという部分も大きいかも。早くバケて欲しい。
(2024.06.29)


■ マウザーと姫様と差し入れ (p62)

ユーゴ・マウザーがラキシスに献上した各種アイテムのうち、土地権利書とパテントは書類の譲渡イコール権利の譲渡とはならない書類である。実際に譲渡する場合はそれぞれの公的機関に対して面倒な手続きが必要になる・・・が、んなもんはミラージュ勢に掛かれば容易に書き換えもできるだろう。ラキシスのことだから甘味欲しさに適当に売りさばく可能性すらある。
預金通帳をよく見ると、みずほ、住友、UFJとあり、日本の3大メガバンクであるところのみずほ銀行、三井住友銀行、三菱UFJ銀行の3行を利用していることが判る。あと、かなり頑張ってみると「目黒信」という文字も見えるので目黒信用金庫もあるようだ。目黒区に本店を置く信用金庫なので、永野センセーのスタジオ・会社がこの信用金庫を利用しているのかも知れない。ATM手数料がゼロ円の信用金庫らしい。

マウザーがミラージュに持ち込んだGTMは12騎。シーゾス戦で使用したGTMを持ち込んでいるはずなので、12騎の内訳はおそらくボルドックス・ジェームが6騎、ユーレイが3騎、マーク2が1騎、デモールが1騎もしくは2騎。デモールが1騎の場合は、明かされていないもう1騎のGTMが存在していることになる。設定上、マウザーが所有しているGTMとしてX-13カンポデルテンシェロとゲートシオン・マーク2・ナンバー7に当たるグラウオーナがある。後者はこの後で作るGTMかも知れないが。

ツバンツヒが用意してくれた料理のうち、万願寺と京なすたいたんとちりめん山椒は京料理。永野センセーの地元愛が炸裂しとる。これだけの料理をいちどに作るのはかなり手間が掛かるため、たぶん内宮高等学校の調理クラブの面々が手伝ってくれたものと考えられる。だし巻きは天照が対面で褒めてくれた料理なので、たぶんツバンツヒ自らの手料理ではないだろうか。
(2024.06.29)


■ リアル死刑のお達し (p66)

ヨーンがミラージュ女子軍の婿候補とならないのは(=手出しを禁じられているのは)、おそらく「ちゃあの想い人」であるため。天照もアイシャもちゃあを悲しませたくないという気遣いが見え隠れする・・・というのと、たぶん天照はその想い人を将来的にどうするかも考えているはず。デコースの討伐を勅命として下したのも、「討って終わり」ではないから。

5月号の考察で、ダイ・グを始めとするフィルモアの面々がクリスを憂いから救おうとして救いきれなかったこと、そのオチとして時代の流れに放り込まれる立ち位置についてしまったことをとりまとめたが、これと同じ思考で天照はちゃあという人物を見ているのだろう。その笑顔を曇らせないための一手が、ヨーンのスカウトと勅命ということ。
つまり、「クリスにとってのジーク」と「ちゃあにとってのヨーン」がトラフィックス上で対比構造になっている訳ですね。ジークとヨーンが鏡写しのように描かれているのも、このための伏線と云える。だから、DE7で永野センセーが語っていたとおり、トラフィックスの最期とプロムナードの最期は重なることになる。それはつまり、ヨーンとちゃあが迎えるオチということ。この後のエピソードできっとちゃあの出番が増えるはず。わー盛り上がってきた。

恋・ダウドが元の姿に戻るのは、たぶん未来のラキシスと同じく「見える相手には見えてしまう」感覚ではないだろうか。マウザーとツバンツヒは異界でのラキシスの活躍を覚えていない。一方、恋・ダウドはわずかながらも覚えている模様(p64)。急成長した状態で異界に立ち入ったことで、時間を超える何らかの残滓が身体に残っているのかも知れない。

ヨーンの対存在となるジークの描写も入ってきたところで今月号は終了。
国を変えるにはまず法からって考えるジークが大人過ぎてコワイ。
(2024.06.29)

 

■ 2024年8月号


■ 表紙はバンシーカ (2024年8月号p55)

表紙はメロウラ改めバンシーカのキャラシート。以前のデザインと比べると色変更しただけでなく左腕のフライヤーが小型化されている。
映画登場時はウルトラマリン、劇中登場時はラベンダー、公式サイトではアイスブルー、今回でブルーグレーと通算で3回目のお色直し・・・個人的にはアイスブルーが一番好み。
キングタイガーとかF-16戦闘機についてのアレコレは辞書ページの更新時にまとめます。
バイパーって「宇宙空母ギャラクティカ」に登場する宇宙戦闘機が元ネタなのね。
(2024.08.19)


■ ケジメの付け方 (p58)

引退しようとするアイシャの言動を無視して話を進める天照。
今回、いつになく天照が手厳しいように見えるが・・・デコースが生きているのも、ボスやんが蘇ったのも、すべて天照とA.K.D.のやらかしが原因な訳で。コミック1巻から続く因縁を終わらせたいのは天照も同じはず。たぶん天照は無理・無謀を押し付けている訳ではない。ある意味で、関係者全員でケジメをつけさせようとしているのだろう。騎士としての振る舞いを蔑ろにしてきたヨーンには重責を負わせる。甘やかしてきたアイシャも連座。そして天照自身もヒトの大義をわざわざ振りかざして争いに参加する姿勢を見せる。ヒトの視点に立つこと自体が彼自身の矜持を投げ打つことと同義であるにも関わらず、である。これも天照なりのケジメの付け方なのかも知れない。
だからこそアイシャの背中を押したりもする…ヨーンを失いたくないならば、妹の笑顔を守りたいならば、引退を考える暇があるならば、ヨーンをちゃんと鍛えて仕上げろって言っているのでは。

と云う訳でバッハトマへの宣戦布告と同時に、ミラージュ騎士団、王朝近衛軍(=おそらくゴーズ騎士団)、A.K.D.第1軍団の派遣が開始される。ポケットマネーで動かせるミラージュだけでなく、わざわざ税金が掛かる軍組織を動かしてヨーン(とアイシャ)にプレッシャーを与えている点がかなり意地悪。まあ、天照の代理として決闘に向かうことより、何万人もの軍人が共に戦場に向かうという事実の方が、「戦の全権代理人」としての重責をしっかり自覚できると云うモノだろう。この辺、コミック8巻のイアンの言動とか思い出すと、かなりよく練られていると思う。ヨーンは「騎士とは何ぞや」という基本中の基本を無視して激アマな環境で育ってきたので、その半生のしっぺ返しを手痛く食らっている訳ですね。ほんと教育って大事。

もう一点。天照がここまで大きく動いた背景には、ジークの動きに応じている部分もあると思われる。フィルモアが大きく動いて魔導大戦の状況が変わるかも知れないのに、A.K.D.が何も動かない訳にもいかない(ましてやベラ戦では非公式の参戦である)。戦後にのこのこ出てくるだけでは対等に話せるテーブルに着く資格もない訳で、天照は既に戦後の動きを考慮して先手を打っているのだろう。ここで動く「誠実さ」を以てして、3159年のミノグシア・フィルモア両国の超法規協定の立会人になるのではないだろうか。
(2024.08.19)


■ 1ヶ月のタイムラグに注意 (p62)

アイシャと天照の会話から宣戦布告まで1ヶ月の間を置いていることに注意。
この間に、アイシャ、ヨーン、ブラフォード、キュキィ、バイズビス、ウラッツェンはカステポーに移動している。たぶんヨーンの訓練も継続して行われていたはずだし、彼らの駆るGTMの調整も進められていたはず。彼らが「聞いていなかった」のは、戦線布告することではなく、決闘の形をとって参戦すること。ヨーンを戦場に出すことは決定していたので、たぶん指示待ちで待機していたのだろう。

ヨーンのTシャツに描かれている「Ru.Ru.Ru.n Pow〜!!」と「SABAKI NO TUE」という文字列は「ドラゴンクエストX」に登場するNPC「バシっ娘バンリィ」(とその姉妹シンリィ、ルンリィ、ランリィ)、そして彼女がバシルーラを唱える際のセリフ「プラシー バーシー ルルルンポゥ 世界の果てまで ひとっとビュン!」が元ネタ。
これを踏まえてキュキィのセリフを見ると「ダーリン、夫婦でプラシーバーシー(瞬間移動)コンボでレディゴー」と云っていることが判る。GTMでテレポートして乗り込めばいいんじゃね?と提案している訳ですね。なので、ブラフォードが「やめなさい」とたしなめていると。
(2024.08.19)

 

■ 2024年9月号


■ 皇帝旗艦について (2024年8月号p55)

扉絵の解説により、ベル・クレール型戦艦の1番艦ベル・クレールはA.K.D.軍(宇宙軍)およびミラージュ騎士団の旗艦、2番艦のアライメントは天照家・天照王朝の皇帝旗艦に位置付けられた。内装も含めて同型艦という設定もあるため、天照は必ずアライメントに搭乗する訳ではなく、外交や軍事行動に応じて適宜乗り換えているようだ。
今回、天照が使用している椅子があまりにも簡易でびっくりしてしまうが、これは作戦室の椅子を使用しているため、皇帝が座る椅子は他にあるはず。
(2024.08.31)


■ ミラージュ女子高生の出陣 (p56)

天照の宣戦布告を受けてミラージュ全軍に出撃命令が下る。右翼と左翼のメンバーが一部入れ替わりつつも、劇中でミラージュ全軍が動くのは連載史上初めて。と云うか、おそらく劇中でも結成以来初めての正式な軍事行動である。女子軍の敬礼ポーズがバラバラでワロタ。

ちゃあの護衛役たるメナーが陛下と一緒にいて、ツバンツヒが三徹で突貫工事してて、天照が軽装で登場した=つまり、直前までメナーもしくはちゃあが搭乗するGTMを調整していたということか。アゲハは既に登場しているので、ワンチャンで未発表のGTMが乱入してくるかも。
いや・・・ログナーはたぶん紫雲(ブリンガーB2)で戦場に降りるだろうし、斑鳩は旧設定にあったアイアン・グロッケンで参戦するかもだし、今回も怒涛のデザイン祭になるのではないかと予想。アイシャも大人しく既登場のミラージュGTMに乗るとは思えん。
(2024.08.31)


■ A.K.D.軍とミラージュの配置 (p60)

参戦した各軍とミラージュ各員の配置が明かされる。
ゴーズ=近衛軍が18個師団でGTM240騎、第1軍団が24個師団でGTM稼働数不明。ミラージュはたぶん右翼大隊+左翼大隊で1個師団扱い。ミラージュ勢はスバースとノウランに向かうのでハスハント共和国の西側に降下して左翼は西へ、右翼は東へ向かって首都ベイジの手前で決闘するようだ。

p64のマップを見ると方角がよく判らなくなるが・・・ノウラン郊外のアブザ市に向かうために、ステートバルロ・カイダとアーリィ・ブラストはノウラン「東部」の工場街に降り立った。したがって、アブザ市はノウランの東側に位置することになる。この点を踏まえると、p64の1コマ目に示された配置図は南北が逆転していると捉えた方が判り易い。スキーン隊と連合軍(アライアンス)のフロントラインに対して右上側にノウラン、バッハトマ軍の左下側に下がっていけばベイジがあるはず。

へそ出しコーデは昔からあるけど、今年のファッショントレンドで一気に流行っている感じですよねー。ブラストは厚底スニーカーだしちゃんと令和のファッションになってる。

アライメントの横にビトローバが並んでいる。おそらく先月号で領事館に来ていたメンバーは、このビトローバで先行してミノグシアに降り立っていたものと考えられる。作戦室でブリーフィングを進めるために全員が上空に上がってアライメントとランデブーした訳ですね。
先月号でジークが「流れる血を減らすその解答のひとつ」と云っていたけれど、実際に「決闘」の形式をとることでミラージュとA.K.D.軍は何のトラブルもなくボォス上空まで移動して来て最前線に降下することができる訳で、その意味ではホントに余計な戦闘を回避してここに至っていることになる。
(2024.08.31)


■ 決闘に臨むヨーン (p64)

決闘・・・と云うより一騎討ちの準備がちゃくちゃくと進む。
ちょっと調べてみた感じでは実際の戦場で一騎討ちが行われた事例は古代や中世の時代に限られており(その多くは伝記・伝承の話)、近世、近代、現代においては行われることが無かった模様。その理由は単純明快で、古代・中世の戦争では兵の技量がそのまま戦力に直結しており、一騎討ちの結果だけで大軍同士の戦闘の結果も粗方予想ができたから。近世以降は銃器の登場によって兵器の性能が重視されるようになり、戦術も高度・複雑化して一兵卒の技量だけで軍の戦力を測るものでは無くなった。当然の如く一騎討ちの文化も廃れた訳だが・・・その意味では、騎士とGTMが最大戦力となるジョーカー世界において、一騎討ちという文化が残っていても不思議ではない。この世界では、騎士の技量がそのまま軍の戦力に直結している部分がある。

天照とログナーだけがその手順を知っているというのであれば、星団史上でも2000年代初期までこの形式が残っていたことになる訳だが・・・決闘の前後は敵がどう動くのか判らないとも云っているので、手順どおり進むかどうかも怪しい状況。この一騎討ちの後で停戦が成立する訳ではなく、魔導大戦の終結はハスハント解放戦まで引っ張ることになることが判明しているため、今回はあくまでも「天照の代理の騎士が黒騎士を討てるか否か」の一点を両軍が見守る戦いとなるようだ。普通に考えてバッハトマ軍に利は無いが、デコースがノッてくると踏んだ天照の作戦勝ちであろう。

アイシャの叱咤激励が入ったところで今月号は終了。
ヨーンの気合の入り方がいまひとつな感じ。
(2024.08.31)

 

■ 2024年10月号


■ メナーとオーバーハイム (2024年10月号p55)

扉絵はメナーとオーバーハイム。ふたりともDE7掲載のデザインから微妙に変わっている。
オーバーハイムは(お披露目ではなく)天照から直接メナーに与えられたらしい。永野センセーの解説にはないが、ダイオードの帰還と合わせるだけでなく、アトラス(S.S.L.)が目覚めたタイミングにも合わせているのかも知れない。魔導大戦に参加させるか否かの判断は関係なく、おそらく姉妹の活動時間をなるべく合わせようとしているのだろう。
(2024.09.23)


■ A.K.D.本国の動き (p56)

天照とミラージュ騎士全員が出撃したことでやおら警戒が高まる浮遊城。
家老職の面々とクリサリス公が現実的な対応を整える中、ラキシスら一行が非現実的な対応を進めようと気合を入れる。
まあ、JOKERが気合を入れるってことは何も起きないということ。今回は天照の力が制限されている訳でもないので、何が起きても問題ない。と云うか、今まさに残されたメンバーが問題を起こしそうな勢いである。

センチュリオにミラージュ・ナンバーの40番台を付けるということは、ミラージュの騎士ナンバーが30番台まで伸びることを知っているということ。フラウ・ゴリリダルリハは未来のラキシスの記憶を共有しているのだろう。現在明かされている設定ではタワーが最終の36番となる予定。
ダルちゃんの言動を見ていて思うのが…ラキシス外伝ってマグナパレスとの寂しい二人旅かと思っていたけど、いつ飛び出てくるかわからない酔っ払い同然のしもべ30体を引率するハチャメチャ旅歩きみたいなイメージなんか?ということ。JOKERとスイレイはラキシスの旅に同行しないことは判っているものの、どうせ彼女の下に集う「しもべ」は同じようなノリだろう。マグナパレスが大人しい性格(?)に見えてしまうのも、周りにヤンチャなヤツしかいないからかも知れない。
(2024.09.23)


■ A.K.D.宇宙軍各艦 (p58)

p58の1コマ目。アライメントの右上に描かれている戦艦はおそらくU-21型戦艦(コミック7巻に登場したのがU-17型戦艦)。キリフィッシュは旧設定から大きく変わっていない。たぶん各艦の大きさが比べられるように1コマに収めたのだろう。フリゲート艦であってもGTMの輸送は可能(旧設定では全長170m)なため、たぶんこの中にモルフォが搭載されている。

ログナーと桜子の会話を読む限り、マーク2はログナーの搭乗騎(=雷丸その五)となってから改装を施したらしい。騎体色は黒色に(と云うかたぶんダークパープルのはず)、フライヤーはダブルシールドに、騎体各部の装甲も一部変更したようだ。マーク2は衛星軌道上から垂直に降下したとしても大丈夫なことはコミック14巻で検証済。一方、ヨーンが敗退したとしてほかのミラージュ騎士が到着するのは後方10km地点から。大軍との戦闘前に瞬間移動はできないため、最悪の場合、上空から降下する雷丸が単騎で敵軍の相手をすることになる。ログナーであれば問題ないが、モルフォを守りながらとなるとちょっと面倒。イエッタが気にしているのはまさにその点であろう。
と云うか、桜子とログナーはもう夫婦でいい。

ダブルシールドは旧設定におけるダブルベイルの機能を引き継いでいるのか、3枚のシールドが重なったデザインになっている模様。おそらく、各シールドが自在に組み変わる仕様になっており、必要に応じて騎体を覆うように展開することも可能なのだろう。
ウラッツェンとかブラフォードの騎士服が新デザインだったり、ブリンガー各騎が別色だったり、この辺のキャラシートが見たいですねー。
しっかし、アイシャがそのまんまグリッド・ブリンガーで出撃したり、ログナーのGTM紫雲が未登場になりそうで、この辺は少し残念。
(2024.09.23)


■ ハイクル・コリーナ (p63)

ダイ・グの星間放送の際に出ていたハイクル・コリーナという名が改めて天照の口から説明される。
ミラージュ騎士として既に登用されており、魔導大戦において第三者の位置にある国家との橋渡しを命じられていたようだ。
コードネームは「キッド」。リキッド・オーシャンの別名として「キッド・オーシャン」という呼び名が既に公開されているため、両者は同一の人物ということになるだろうか。
この人物、血縁からして既にモリモリの設定なので、どういう立ち回りで動くことになるのか非常に気になる。
DE7にハイクル・コリーナのデザインが収録されていなかったってことは、おそらく永野センセーが隠し玉として用意しているキャラクターということになり、魔導大戦の終了後にクローズアップされる位置にいるはず。・・・となると、アダマス・ダスニカ勢の登場に合わせて本編に絡むのかなーと。
(2024.09.23)

謎のGTMが出て来たところで今月号は終了。

 

■ 2024年11月号


■ アイシャとルン (2024年11月号p55)

扉絵の解説で、右翼の隊長はアイシャ、副長はルンと紹介されている。右翼大隊のリーダーとしてログナーを置いている資料や、右翼・左翼共に4番を固定のリーダーナンバーとしている資料があるため、アイシャの任官はログナーの死亡から完全復帰に至るまでの期間限定の預かりかも知れない。
ちゃあのもつ「恐るべき力」はたぶん「笑顔」なんだけど、この辺は逆に今後のエピソードで明確にしなくてもよいと思う。この「恐るべき力」の正体が明かされなくても、彼女の騎士の力はおそらくこれまで以上に発現するだろうし、最後にはコーダンテ家(延いては天照家)に相応しい当主になるのではないだろうか。
ヨーンの一騎打ちの後、アイシャが全ての権利を剥奪されるのは真実なんだろうけど、妹を、天照家を守らんとする騎士との縁を紡いだことに対する「お役目御苦労」の意味合いがあるのだと思いたい。
(2024.10.31)


■ GTMアグニム登場 (p56)

先月の最後に登場した謎のGTMはアグニムだったことが判明。
正確な意味でバッハトマ軍の傘下ではない(=バッハトマ軍の動向に縛られない)立場にあることを逆手にとって、後方支援に回ろうとしていたミラージュ勢を待ち伏せしていたらしい。
もしミラージュ勢がバッハトマ軍に対して一騎打ちのルールを無視した横紙破りであることを突き付けても、おそらく第三者のメヨーヨが何をやろうと知ったこっちゃないと突き返されるだろう。とは云え、この関係性がさらに逆手に働いて今月号最後のどんでん返しにつながることになる。メヨーヨは最初から戦闘自体が目的で介入していることが描かれているので、全てここに至るまでの伏線であったと考えるべきか。
京は17番目、アンドロメーダは19番目だから、お姉さま呼びはちょっと違う。
(2024.10.31)


■ メナーの目が開かれる (p58)

糸目キャラのメナーの目が大きく開かれる(p58とp65)。開くと意外にまつ毛が長くて彼女も天照家の血筋を引いていることが判る。
あと、メナー騎のマーキングがルミナスと同じ花びらっぽいのがイイ。この辺もちゃあの護衛であることを示しているのだろう。

んで、ツバンツヒが徹夜で作っていたものが「旗竿ランス」であることが判明する。このランス、リブート7巻の時点で発表されていたので、10年以上前から既にシナリオが組まれていたことになる。9月号のツバンツヒのセリフが新規GTMの登場につながる前振りでは無かったのは残念。天照がこの情報をメナーに教えていた背景には「なんでねぎうどん?って話になったら説明よろしくー」という意図があったものと考えられる。

アイシャが「いっつもアタシ」とボヤいているのは、劇中で試験騎・試験兵器の初使用者が全てアイシャになっているため(設定上はアイシャが使用する前に試験が行われているはずではあるが)。思いつくだけでも、試作騎EL(グリッドの1号騎)、試作騎EN(ハイファの1号騎)、ホーミング・ブーメラン、フルトリム(フォクスライヒバイテ)、アクティブ・ウェポン・リアクターの初使用はアイシャである。ちなみに、ケン玉フレイルだけはグリーン・ネイパーが戦場に持ち込んでいる(未使用)。
(2024.10.31)


■ メヨーヨとの講和 (p61)

ハスハ名物ねぎうどんの「のぼり」を見たクラーケンベールが全軍停止を指示。講和の際にアイシャが想い人の姉であることに気づき、そのままバッハトマ軍からの寝返りを決意する。最後のページの擬音は「ズゴオオ」ではなくて「ズコー」だと思う(ホメ言葉)。
クラーケンベールとの口約束について、ちゃあはメナーに口止めしていたはずであるが、おそらく「ギューピーさん買ったらお小遣い足りなくなっちゃってブラックカード使っちゃいました」とか律儀に報告したのだろう。んで、天照からメナーに「ギューピーさんって何?」という聞き取りがあって、今回の「対メヨーヨ兵器」の開発につながったものと思われる。

さて、アイシャがヨーンに渡した剣は友の証として後にジークへ渡されることが判明している。今回のエピソードでは別の剣がクラーケンベールに渡ったことから、ちゃあを守らんとするふたりの皇帝それぞれに姉の愛剣が渡された格好になる。血の色の剣が和平の象徴として振舞うというのが如何にもFSSらしい。アイシャが妹を守らんとする意思は剣の形を持ってジークとクラーケンベールへ、騎士としての矜持と振る舞いはヨーンに受け継がれたと解釈することもできるだろうか。ほかにも、ナルミとの関係⇒ミノグシアとの連携、セイレイとマロリーとの関係⇒コーラスとの連携、と多くのツテを紡いできた結果を見てもアイシャが天照に尽くした部分は大きく、やはり「お役目御苦労」と云い切れるレベルである。
これを以てクラーケンベールのミラージュ入りが確定。これまでに明かされていたとおり、彼はミラージュ騎士の右翼6番預かり(自由参加)となる。

もうひとつ。
クラーケンベールが預けた剣はおそらくこの後で天照家の管理になる。似たような感じで天照はコーラス王家の宝剣を所持しており、こちらは後にコーラス26世に渡されることになる。
となると・・・この大帝の剣もそのうち後世において誰かに渡されることになるかも。反抗天照軍の誰かであれば面白い。
(2024.10.31)

 

■ 2024年12月号


■ ボォスの今後 (2024年12月号p55)

扉絵はクラーケンベールとアンドロメーダ。魔導大戦終結後のボォスの動乱について解説あり。

これまでに明かされている設定と読み合わせると・・・ハツーダン統一戦争の後で発足するのがハツーダン連合、カステポー統合戦争の後に発足するのがカステポー・ハツーダン連合=統一カステポー連合、ということになりそう。
つまり、ハツーダン連合の構成国はメヨーヨ朝廷、ガマッシャーン共和国、旧バッハトマ魔法帝国の構成国(シーブル国、ウースー国、ユーコン経済連合)、ハプハミトン共和国、オーロス共和国等になるはず。
統一カステポー連合は、上記に加えてコーネラ帝国、メンシオ王国、メヨーヨ南方のバルミドー共和国、ムースンク共和国、カステポー周辺の諸国・自治区・自由都市が加わるものと考えられる。カステポーはセントリーが支配する領域となるため、この地域で大規模な戦闘が起きたとは考えにくい。よって、ナン大陸の外周部で小規模な戦闘を繰り返したか、セントリーの転生期間に合わせて一気呵成に制圧を進めたのかも知れない。

クラーケンベールは今後のエピソードでクリスティンともつながりを持つことになる模様。ミノグシア大陸の東端にフィルモア帝国領のパントラがあるため、ここを基点にフィルモア-コーネラ-メヨーヨ-ガマッシャーンのつながりができるのかも知れない。

んでもって、統一カステポー連合の大統領の座はツァ・ベール2世ことジノン・グライア・アイデルマ5世に引き継がれるらしい。魔導大戦でその名を馳せたナルミ・アイデルマの縁者であることが伺える。コーネラ帝国の皇帝でもあるとのことで、「5世」という世数は帝国の5代目皇帝であることを示しているのだろう。
クラーケンベールがハツーダンとカステポーを統一するのであれば、やはり先月号でアイシャの手に渡った「大帝の剣」はコーラスの宝剣と同じぐらい意味のあるアイテムになるはず。
(2024.11.24)


■ 栗の食べ過ぎに注意 (p58)

珍しく天照の説明セリフで旗竿ランス開発の経緯が語られる。まあ、「対峙を避けられるかも」というレベルのアイテムが、「援軍・共闘までいっちゃいました」という結果につながったので、天照にとっても予想の斜め上だったのかも知れない。永野センセーが先月号で解説していた「恐るべき力」はやはり「微笑み」であった模様。

栗の食べ過ぎは便秘の原因になるので、2kg太ったツバンツヒには胃腸薬をプレゼントしたい。栗を食べるときの目安は1日8-10個だそうです。
丹波とはかつての丹波国(京都・兵庫・大阪の一部を占めていた令制国)もしくは現在の兵庫県丹波市・丹波篠山市を含む丹波地方のこと。同地域に産する栗は丹波栗と呼ばれる大粒の栗で、古事記、万葉集、日本書紀においてその名が記されていることでも有名。柔らかく甘みが強いとされる。丹波栗の中にいくつか有名な品種があり、焼き栗を販売しているメーカーも数多い。
(2024.11.24)


■ ルミナスで待っているヒト (p59)

ヨーンの「わかんないっ」が桜子の「わかってんの?」のアンサーだとしたら、ちょっと微妙なセリフ回しのような気もするけど・・・桜子の立場から「ルミナス学園に待ってるヒトがいる」って伝えるのはホントに青春全開な感じ。騎士の務めを果たして一人前になったヨーンがルミナスに迎えに行くシーンとか欲しい。「愛と青春の旅だち」とか思い出すのは古い世代か。

ヨーンに最初に剣を教えたのはエスト。だから、ヨーンの戦い方は黒騎士をトレースした模倣になっている。で、幼少時に左手を斬って見逃し、再戦でトドメを指さなかったデコースは、ヨーンにとって真剣勝負をした唯一の相手になる訳で、傍から見たら師も同然という事実を突きつけるログナー。
10月号では「貴様が負けて死のうがどうでもいい」と云っていたのに、今回の桜子の言動にアテられてヨーンを叱咤激励している訳ですね。当然、「ルミナス学園に待ってるヒトがいる」という点を汲めば、ヨーンの生還は「天照家にとっての最良の結果」な訳で、先達の騎士且つ天照家に仕える者として背中を押す意味もあったと思うけど。
ここでエストを「黒騎士の権化」と評しているのが実にイイ。歴代の黒騎士の技を見る中で破格の強さをもつに至ったファティマ・エストを指して、人々が思い描く黒騎士の記憶を映した化身であり、当代の黒騎士とは異なるもうひとりの黒騎士であることをログナーは伝えている。ヨーンが倒すべき「黒騎士」はデコースではなくエストという意味合いが含まれているはず。
デコースに次いでログナーもツバ飛ばしている辺りがアレよね。これも激励の裏返しなのか。

あとね。深読みするならば、エストはヨーンにとっての「黒き死」の象徴な訳で、彼女を倒すことは「生を掴むこと」と同義なんだよね。
デコースの「お前にゃ似合ってねぇ」も逆に返すと、「黒を払う聖なる銀」ではなくて、「死の象徴たる黒」こそがお前だろう?というツッコミにも見える訳で。暗に黒騎士の弟子であることを詰っているようにも見える。このシーンはいくらでも好きに深読みしていいと思う。ヨーンの騎士服が黒いのも、ある意味でデコースの一部を継いだ証なんだよね。
黒に塗れてきたこと、既にその身に黒を取り込んでいること、それら全てを背負い、死を乗り越えて生に向かうヨーンの戦いが始まる。

暴風三王女が出揃った(ここもホントに重要なシーンのはずだけど)ところで今月号は終了。
(2024.11.24)

 

■ 2025年1月号


■ ベルミとメラリア (2025年1月号p55)

扉絵はベルミ・クローゼとメラリア・ムックル・ダンチヒ。
メラリアの血縁が明かされたことでウモス国における彼女の立ち位置が明確になった。要は次期国家元首となるべく育てられている女性騎士である。
ただ彼女は、この後で独自の路線に進みキーヤ大陸のヘ・リー聖域に渡るらしい。たぶんマキシやデプレが成人する時期に絡んでくるキャラクターになるのだろう。
今月号で本編に登場。
(2025.02.16)


■ ヴィルマーと蘭丸 (p57)

ヴィルマーと蘭丸が揃って登場。
彼女らふたりが操作している制御卓に「ECM system」と描いてある。ECMとは「Electronic Counter Measures」の略語で「電子対抗手段」のこと。戦場・戦域で電磁波妨害を行うシステムを指す。おそらく、ヨーンとデコースの一騎討ちの状況は立会人のカメラでよってのみ放映される体制が採られ、それ以外の撮影や通信を監視するために青銅騎士団が動いているのだろう。
ちなみに、端末に刻印されている「RAMSA」は音響機器メーカーである。松下電器産業株式会社が1979年に立ち上げた業務用音響機器ブランドRAMSA(ラムサ)が元ネタ。RAMSAは「Research for Advanced Music Sound and Acoustics」の略語である。
(2025.02.16)


■ ローテ騎士団の登場 (p58)

決闘の立会人としてローテ騎士団が登場。
コミック15巻のシーゾス戦に登場したルーン騎士団は4騎編成の6個小隊。今回の立会人であるローテ騎士団も4騎編成。カーディナルスはおそらくシュバルム(ロッテ編成2個で1小隊とする戦術)を基本戦術にしていることが判る。ちなみに、フィルモアはロッテ(2騎編成)、AP騎士団はケッテ(3騎編成)であるが、こういった編成は時代や戦術によって変わっていく。
ルーンとローテのルッセンフリードは騎体色とアーム・フライヤーの形状が若干違うだけでほぼ同型の模様。

んでもって、MK4マッハ・シャルトマが登場。
見る限り、MK4はMK3と比べてモーフィング装甲が少ないことから、MK3より軽いことが想像できる。また、モーフィング装甲が少ないために背面の排熱パーツを大きくしており、排熱効率を上げることでMK3より継戦能力を高めているものと思われる。モーフィング装甲と巨大な排熱パーツでどちらが軽いかという議論になるが、単純に考えて後継モデルは継承元の欠点を改良するため、おそらくはMK4の方が軽いはずである。
ノンナのMK4が[赤い貴婦人]だから、イゾルデの搭乗騎は[白の婦人]だと思っていたのだが・・・まあ、ローテ騎士団と一緒に登場したから赤い方が見映えがいいのか。

イゾルデは敢えて円卓の騎士の制服を着込むことで、フィルモア帝国との新たな繋がりをアピールしているものと考えられる。
政治的な背景を含めて考えれば、ギーレル国に駐屯していた(ナオス国を属国に置いた)クバルカンは、フィルモアと手を組むことで立ち位置を中立寄りにしている=これ以上の干渉をするつもりがないことを印象付けているのだろう。
劇中でベルミが口にしているとおり、枢軸側(クバルカンは中立の立場をとった経済的侵略)でもそろそろ「頃合い」のタイミングを測っている状況であることが伺える。

10月号の天照のセリフに拠れば、立会人といなるクバルカンとの橋渡し役としてハイクル・コリナーが動いていたことになる。
ハイクル・コリナー=キッド=リキッド・オーシャンであれば、彼はフィルモア帝国ハスラー家の出自ということになるため、クバルカンとの交渉役も問題ない、ということになるだろうか。
(2025.02.16)


■ 記憶を呼び覚ましているエスト (p63)

ラストのコマで「この日・・・この時を・・・」と考えることができるのは、ヨーンの記憶を保持しているバーシャだけ。つまり、エストにバーシャの記憶が流れ込んでることが読み取れる。

この状態はおそらくデコースが真に望んでいた状態である。
2023年7月号の感想で書いたように、他者から恨みを買う行動を重ねるデコースは、因縁に絡むトラブルや戦闘を楽しむ人物と云える。その彼の視点から見て、記憶をリセットするエストは因縁を切り離す「つまらない」人生を歩んでいるように見えていたはずである。だからこそ、ヨーンとデコースの因縁について考え始めたエストに対して、「気になるのはやっぱりそこか」と敢えて答えに触れない煽りヒントを与えていた訳で・・・。デコースにとっては他者との因縁こそが人生を彩るためのスパイスである。あるいは、「エスト・・・人生は面白いほうがいいだろう?」というセリフは、記憶を消してしまうエストへの皮肉も内包していたのかも知れない。

んで今回、バーシャの記憶を得たエストは過去の因縁とつながったことになるため、デコースの美学に沿ったパートナーになったとも云える。そこに至ったエスト自身もまた「面白い」としか捉えられない笑顔をしているようにも見える。今のエストはデコースが望んでいたアゲアゲの状態だし、真の意味で「デコースのパートナー」になったと言えるのではないだろうか。要するに史上最強の黒騎士である。
ある意味、今月号で初めてエストは「黒き死の女神」=「黒騎士の女神」になり得た、という解釈でもいいと思う。ヨーンとデコースのドラマがあったからこそ、その深み・淀みに至れた…みたいな感じなのかなと。
(2025.02.19)

 

■ 2025年2月号


■ 休載 (2025年2月号p55)

2月号は休載だけど・・・永野センセーの描き下ろしたエストも見れるし、ヘビメタ映画の話も出てくるし、見逃すのは勿体ない内容になっている。
単語は全部辞書ページに反映します。
(2025.02.16)

 

■ 2025年3月号


■ 装甲の話 (2025年3月号p55)

GTMの装甲を説明するのに戦車の装甲からスタートするのが如何にも永野センセー。
軟鉄・鋼鉄から始まってGTMの装甲まで。面倒な単語がいっぱい出てくるので4月号の感想投稿時に辞書ページを更新します。

ラキシスが着ているのはネクタイのS字から察するにドイツ国防軍女子補助員の制服と思われる。帽子のラインが白なので兵科は歩兵。
当時の女子補助員に尉官や佐官といった階級は存在しないが、今回のラキシスを見る限り曹長(または上級曹長)の肩章と二級鉄十字章(39年章=黒白赤のリボン)が付いてる(資料によって、曹長・上級曹長と呼ぶ場合と、下級曹長・曹長と呼ぶ場合があるので、どっちが正解は不明。要するに星2つの肩章である)。
終戦間近にわざわざラキシスをドイツ軍の軍人と認めて曹長にしたり、勲章を授与している暇はない訳で・・・地球に出現した直後に赤軍相手に無双してしまい、助けられたGD師団の残存兵が自分の肩章・勲章をプレゼントしたのではないだろうか。
調べてみるとベルリンの戦いの終盤でティーガー戦車1台を先頭に脱出を試みたグループがあったとされており、FSSにおいてはこのグループにラキシスが同行していたものと考えられる。

ドイツ国防軍女子補助員が身に付けていた紋章は上記のとおりS字に見えるが、これは稲妻の形を取っているために当時の国内では稲妻娘(ブリッツメーデル)と呼ばれていた。ショウメ(ブリッツの幼生)を同行させているラキシスが、ドイツで稲妻娘と呼ばれた女子補助員の制服を着ているのは中々に面白い符号である。

装甲の解説にある摩擦接合あるいは溶着接合はFSS独自の用語なので注意。溶接方法として一般的なアーク溶接は宇宙空間で使用できないため、通常は電子ビーム溶接やスポット溶接が必要となるが、これらは大きな面同士の接合には不向きである。この解法としてジョーカー星団で培われた技術が摩擦接合ということになるだろう。
(2025.02.16)


■ 正規の騎士剣技 (p61)

という訳で本編。
かつてブラフォードは自身の剣を指して「無頼の型」と称したが、イゾルデに拠ればそのような剣の型も正規の騎士剣技に組み込まれているという。
ただ、こういった考え方は劇中すべてに共通した設定ではなく、各国・各騎士団で考え方が異なるという捉え方でも問題ないと思う。現にデコースは破天荒な動きでミラージュ騎士を翻弄した訳だし、全ての剣技が大騎士団に吸収されるということもないだろう。柔軟な考えをもつ騎士であれば、新たな剣技を生み出すこともあるだろうし。

あと、デコースがヨーンと出会ったときのことを思い出して「面白い付き合い」と評している辺り、1月号の感想で書いた内容で大体トレースできていると思う。
デコース、ヨーン、エストの三者で紡いできた因縁に対し、デコースは心底面白いと思っているのだろう。
規則ではなく因縁に縛られ、下卑た態度を取りつつも部下には慕われ、思うままにヒトにチョッカイを出してはド突き合いを楽しんできた人物。天界・神界と交わることもない、まさに下界・欲界で生きるヒトそのままの生き方。コミック1巻で紹介されているとおり、ホントに天照とは対極にいる存在なんだと気付く。
んでもって、こんな風にヒトとの戦いを重ね、その関係性を「面白い」と言える人物は、きっと星団侵攻後の歴史では現れないんじゃないかと。天照による星団侵攻が開始されれば、ヒトが自由に生きて戦う時代が終わる。その意味で、デコースは最後の自由騎士みたいな要素を持たされている気がする。
ダッカスの動きもイキイキしてる。永野センセー、たぶんこれを描きたいがために今までの戦闘シーンを控えめに抑えていたのかなーってくらい。いまやってるエピソードはコミック1巻から登場している彼のためだけの花道な訳・・・この瞬間の主人公は間違いなくデコースなんだよな。これ1-2か月は楽しみたい。
(2025.02.19)


■ ミラージュ騎士20番(p67)

ヨーンの騎士服にある「T」の文字は、Z.A.P.のテールコードに合わせた「20番」の意味。
ドイツ語のツバイ(2)あるいはツバンツヒ(20)なら「Z」とするのが正解であるが、設定上で「T」としているので仕方ない。
(2025.02.16)

 

■ 2025年4月号


■ 第7話予告 (2025年4月号p59)

扉絵はバシクによる第7話の予告。タイトルは「星の無い世界」。英題が「フル・フラジャイル」。
フル(full)は「最大の」とか「いっぱいの」という意味。フラジャイル(fragile)は「脆い」とか「弱々しい」という意味。時期的には魔導大戦終結から天照の大侵攻が始まるまでの期間・・・星団内の情勢が極めて不安定な時代ということになる。

イエッタと体高200kmを超えるネイドンデーバン数式生命体が登場するらしい。普通に考えて、素子姫イエッタと伝承紀の巨大統制兵器カラミティ・ゴーダース・フーバークを指しているような気もするが・・・果たしてどういった登場となるか。

ミルクワーシュは旧設定におけるトラン連邦の首都。新設定ではノーフォートに置き換わっているものの、トラン国内の都市ということになるはず。
JOKER3100の設定がまだイキているのであれば、メガエラ、スパルタ、エストが登場することになるが・・・この辺は判らない。天照とビュラードがトランで会話するはず。
あと、E型ミラージュがエンツート・ブリンガーからエンパイア・ブリンガーに変更されとる。

予告されている内容と今月号の内容から察するに、ダスニカ・アダマスの改造ファティマの技術とヘ・リー聖域には何らかのつながりがあり、トランもまたその聖域について無視できない間柄になる模様。さらに、ヘ・リー聖域はアズデビュート紀とのつながりがあるらしい。コミック18巻で登場している「ゾ・ルゴウカ」もおそらくはこの辺の話につながるはず。
(2025.03.16)


■ 騎士ネリス (p60)

シアン夫人の元を訪れている謎の騎士。彼女との会話から名前がネリスであること、純血の血を受け継ぐ人物でおそらくはルース家の縁者であることが想像できる。p62の欄外の解説ではトランのナイトマスターとのこと。
顔が似ている「あの方」とはつまりバスコの血に連なるネリス・バスコ・スバース(ビザンチン家に嫁いだスバースの長女)だろう。

よく判らないのが、騎士の血が出ない「下家」をウゴード、血が出る「正家」をアラドと呼んでいる点であろう。ウゴードはミッション・ルースの祖父でアラド・バスコ・スバースの長男に当たる。つまりアラドが正家でミッションもその家系であれば、間に挟まるウゴードも正家でなければならない(ただしウゴードと娘のスジャータは騎士ではない)。アラドの次男がディモス、長女がティティンシャで、ティティンシャの血筋からラシャ(ボルサの母)、慧茄、クリュ(オルカオンの母)が生まれている。いずれも多くは騎士家である。
ウゴードの家系で騎士の血が出なかった一族がいるのかも知れないが、これまでに公開されている情報ではとくに記述がない。という訳で、ミッション・ルースの家系が新たに変更される可能性がある。

ビュラードの依頼を受けてネリスが派遣されていた土地はダスニカのようだが、トランにとって重要なのはダスニカとつながりをもつカラミティのあの「領域」つまりはヘ・リー聖域であるという。
トランから遠く離れた土地とどのような関連性があるかは不明であるが、少なくともシアンさんはそのつながりを理解している模様。シアンさんの関係者でノーティガの友人となると・・・アニー・ポロンになるだろうか。同国出身のAFガーランドであるため、シアン夫人と面識があっても不思議ではない。
ネリスが派遣されていた理由のひとつに、ナオ・リンドーがビュラードに接触したこと(コミック18巻p114)も影響していると思われる。ダスニカの動きに注意を払うように連絡していたはずである。

あと、クラトーマがこの場にいる経緯が不明。慧茄が彼女を連れていたのは単独でナカカラに入り、ダイ・グの状況を窺うことが目的であったはず。ダイ・グが死去した現在は騎士として動くことも無くなり、クラトーマを手放したと考えるべきか。
(2025.03.16)


■ デコースとヘ・リー聖域 (p61)

突然明かされるデコースの過去話。バーバリュースとデコースが戦ったダラッカの内戦についてはコミック10巻でスパンタウゼンが語っている。
町の今回のセリフを信じるならば、デコースはこの時点でヘ・リー聖域とつながりを持っていたことになるし、町もまたデコースと戦う以前にヘ・リー聖域のGTMの特徴を把握していたことになる。バランシェが何らかの情報を掴んで娘たちと共有していたのかも知れないが。ヘ・リー聖域はアズデビュート紀の技術を引き継いでいるらしいが、この時代はGTMが存在していないため、AD世紀以降に両者の技術が融合したと考えればよいだろうか。
アズデビュート紀のエピソードはDE7に詳しいが、これまでに明かされている設定ではヘ・リー聖域との関連性は明かされていない。
敢えて云うならば、ラキシスはウィル星団暦7281年にアズデビュート・モンソロン大帝と遭遇している(巻末の星団年表)。ヘ・リー聖域に残るロスト・テクノロジーは、意外と未来のラキシスが遺していった置き土産が影響している可能性もある。

アイアイン・ドライゼはDE4が初出。このヒトも名前の由来は銃器関係。プロイセンの銃工として知られるJohann Nicolaus von Dreyse(ヨハン・ニコラウス・フォン・ドライゼ)から。実用化された世界初のボルトアクション小銃Prussian Model 1841(別名Dreyse Zundnadelgewehr:ドライゼ小銃)の開発者である。

アアーボ・ランタノイドは今回が初出。
彼女の弟子が15人いるのであれば、名前はランタノイド族の各元素となるはず。すなわち、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)である。うん。まず名前が覚えられない。
4000年代の改造騎士・・・ということは未来のゴッズ騎士団とも関わりをもつことになる。これあれだな。ゴーズドクターのジョージョが15人のうちの誰かになるのでは。ジョージョ・イッテルビウムとかそんな名前。

メル・ズームの魔導人形の設定がここで登場。んービューティ・ペールが出自が超帝國由来なのか、聖域由来なのかで、見えてくる関係性が違ってくるなー。
デコースがヘ・リー聖域のGTMを使用していたのであれば、おそらく提供者はビューティ・ペールで、彼女はかなり以前からデコースをモニターしていたことになるかも知れない。そのつながりがあったからバッハトマに誘われた・・・みたいな感じだろうか。
ちなみに、「星のない街路」は冷戦下ベルリンでの切ない恋物語を描く北杜夫の小説。永野センセーは以前、NTの扉絵で北杜夫の名前を出している(TOJ2巻p67)。
わー新キャラ・新設定がモリモリ〜。
(2025.03.16)


■ フェイント? (p66)

ヨーンの動きにモルフォがエラーを起こしてフェイントのような挙動を示したらしい。
これ、何が起きているのか読者もよく判らない。まあ、来月号当たりでしっかり描写されるので、「バシクの首リボンかわえぇー」とか適当に読んでおこう。

セイル・ロコモーション(最初に発表された際の名称はセイリング・ロコモーション)は映画GTMの初期設定で発表されていた単語。ボツ設定じゃなかったのね。初出はNT2006年5月号である。確かに古い。重力を遮断して自重を軽くしている、との設定であったが、今回のセリフで同じ電荷をもつ素粒子間の斥力で浮かせている、という説明が成された。
先月号の解説と合わせるとエストの考えていることが判る。セイル・ロコモーションで自重を軽くしているのはダッカスもモルフォも一緒。GTMの関節が赤熱化するぐらい高熱を発すると、素粒子の活性が不安定になり、関節の電磁クラッチが滑りやすくなる。これに伴う運動低下を防ぐために放射冷却をするのと、おそらくは物理制御クラッチへの切り替えが必要で、この切り替えの際にスキができてしまうのだろう。エストはこれを狙っていて、バシクもそれに気づいている訳ですね。
こういうのがあるから連載時の扉絵解説がめちゃ重要+めちゃ役立つのよね。

セイル・ロコモーションを説明しているシーン。A.K.D.では初めて少年兵と見習い騎士が登場。
見習い騎士の方はGODSのエンブレムを身に付けている。
ついでにツバンツヒが船団を預かった際に後ろにいるメンバーは、右から宇宙軍兵曹長、宇宙軍少佐、地上軍(たぶん少佐)、宇宙軍士官候補生である。肩章からギリギリ判別できる。ルンが地上に降りていて、天照が下船してしまうため、船団を預かったツバンツヒは艦隊総司令(艦隊指揮官)=提督になってしまう。女子高生提督って・・・艦これかな。
(2025.03.16)

ヨーンが反撃の気付きを得たところで今月号は終了。
ジークママまた脱いでる。んでもってコミック15巻と違う下着なんじゃよ(ヨーンもTシャツじゃなくてタンクトップ)。毎回半裸で指導してたんか。

 

■ 2025年5月号


■ ヨーンの覚醒  (2025年5月号56)

設定モリモリの先月と打って変わって今月はドラマがモリモリ。

過去の戦いを思い出したヨーンが覚醒し、ジークママから伝授された剣技のリミックスを披露する。
先行入力とは、格闘ゲームの攻防などで先行入力受付時間中に技のコマンドを入力しておくこと。前のモーションが終わった瞬間に入力した技が発動するため、主に敵の攻撃を潰すためのカウンターに使用される。
GTMに先行入力受付時間が設定されている訳ではないので、技の発動から敵騎接触までの「間」を認識し、技の出の速さ・遅さをシフトして別の技を重ねることを先行入力と呼んでいるのだろう。

つまり、先月号でモルフォが一瞬だけ動きを止めたのは、剣技の先行入力(間合いに入る前に繰り出されたヨーンの動き)に戸惑って停止してしまったということだろう。
この状態が続くとマズイと感じたバシクが、おそらくは「迷わなくていいよ」という認識をモルフォに与えたのではないだろうか。
で、今月号ではバシクのサポートによって先行入力が成功して、ヨーンの思ったとおりの挙動を騎体が示した・・・ということかなと。
剣技を教えたジークママからすれば、彼女が届かなかった境地への到達を意味している訳で、師匠冥利に尽きるというもの。

ジークママが口にしている位相反転技(フェイシズ・ドライブ)という名称からも、何となくどういった技なのかが見えてくる。
音楽用語における位相とは、音波の一周期における山と谷の位置を表す量で、この一周期をズラす(遅れさせる)ことでディレイが発生する。位角を180度ズラすと逆相となるが、これかおそらく位相反転である。
剣技に置き換えると、技の出を意図的にズラして間合いを誤認させる技法がディレイ。今回のヨーンは技の出をズラすだけでなく、その技の速度に緩急をつけてデコースが初手を躱した後の立ち位置と重なった瞬間にブツかるように無手を放っていた訳ですね。躱した後で攻撃に転じようとしたデコースの技を潰す形になるので、最後のつばめ返しがカウンターとして作用すると。
んで、今回は最後のつばめ返しが本命になったが、それぞれの技の出と速度の緩急で本命の攻撃と攻撃ポイントを如何様にも変幻できる点をジークママは称賛し、デコースもまたかつての攻防と立ち位置が逆転するほどの練り上げに感動したと。たぶん、ヨーンがこの瞬間に辿り着いた奥義と呼んで差し支えないはず。
(2025.04.12)


■ マドラの云うところの「人間」 (p59)

マキシとデプレに「人間」の真剣さを説くマドラ。
これ裏を返すと、超帝國剣聖とその子たる者は「人間」ではないと説いているのと一緒。血縁では無いが珍しく母親のような視点で接しているのが面白い。
今まさに死闘を演じているのが旦那でもあるんだけどね。

まあ、マドラはデコースとの斬り合いで「人間」の真剣さを知った(コミック10巻p197)という見方もできる訳で。
そのデコースが逆の立場に立っているのを見て笑みが漏れているのかも知れない。
デコースが敗れて死んだとしても、たぶんその生きざまを見届けて笑顔でいるのがマドラ。
(2025.04.12)


■ 満足してしまうデコース (61)

ヨーンの剣技に魅せられたデコースが「置き土産」と称して最高の技で応えようとする。
ログナーが12月号で話していたとおり、ヨーンの魅せた技に「満足」してしまったのだろう。
たぶん、デコースって完全に技量が拮抗する相手と出会ったことがないんじゃないかな。そういった存在に出会えたことを心底喜んでる。

次。長期戦を狙うセオリーを無視して勝負を掛けるデコースの振る舞いにエストは焦っている。
一方、勝負に出ることを見抜いたパルテノはそれを「生きざま」と呼んでいる。
この対比がもうね。

あと最後までヨーンの動きをサポートしようとするバシク(p56)と焦るエスト(p62)も見事な対比。
この瞬間、エストはデコースの意思とのズレが生じており、ヨーンは黒騎士の権化たるエストに勝ってしまっている訳ですね。
すごいわぁ。このドラマ・・・伝わって欲しい。

んでもって、ダッカスって剣の両手持ちが映えるように鎧武者チックなデザインだったのか!と気づく。
かっけーひたすらかっけー。漫画の描き手がデザイナー本人だからこそ提供できるこの構図・拍子・演出よ。
いやね!剣を両手持ちするロボットは他にもいるのよ。でも両手持ちの瞬間がドラマになるロボットはいなかったでしょ!という話。
デコースがこれまでに見せて来た二刀流からのスイッチ。絵面から伝わる本気。ダッカスの両手持ちに身震いしちゃう。

おそらく、デコースの方も今回出した「連弾五月雨打ち」は今まで実戦で使ったことがなくて・・・コミック1巻でソープに敗退したことを受け、リベンジを想定して編み出した秘剣中の秘剣という扱いなのではないだろうか。ソープの代理としてヨーンが現れ、まさに代理として認めるに足る騎士だと知った・・・みたいな感じなのかなと。
「置き土産」という言葉がとてつもなく重い。遥か未来において天照に挑むモノがいるかも知れない。そのモノにつながる技をヨーンに託すって云ってるようなもんだもん。

一騎討ちに決着が付いたところで今月号は終了。
たぶん、ヨーンはバックラッシュで左腕壊していると思う。
デコースぅ・・・最後まで光の神に挑んだ漢よ(涙)
(2025.04.12)

 

■ 2025年6月号


■ 年代表記の変更 (2025年6月号p55)
冒頭で永野センセーからお詫びとお知らせあり。
ヨーンがデコースに敗北したのは3070年で変更なし。
ダイ・グの崩御が3071年。
ジークの戴冠(とクリスのエンペラーズ・ハイランダー就任)が3072年。
ヨーンのリハビリとデコースとの再戦が3073年に変更となる。
魔導大戦の終戦が3075年となるため、残るエピソードは2年分ということに。
(2025.05.24)


■ エストの真実 (p59)

デコースが語る真実。
「これはエストとボクちゃんの戦いだったんだ」・・・つまり、デコースにとっては「エストが記憶を保持していることに対してシラを切るか認めてしまうかの戦い」であったと。
討つべき騎士として現れたヨーンに対して喜びを感じるようであれば「シラを切る」ことにはならない訳で・・・ダッカスの動きがキレッキレであった(3月号p60)時点でデコースは勝ちを実感していたことになる。
一方で、一騎討ちでヨーンを殺してしまえばエストが壊れる可能性も見えていた。デコースがエストに真実を突き付けるためには、互いに死なないギリギリのラインを攻める必要があったということか。
ただそれでも、最後の最後には騎士としての力を出し切る方向に舵を取らざるを得なかった。ヨーンが自身と同等のレベルに到達したことに歓喜を隠せなかったのだろう。
エストとの勝負を捨ててヨーンとの勝負に挑んだ・・・その上で負けてしまい「口を割らざるを得ない状態」になったからこそ「くそ・・・まだ・・・生きてる」という愚痴も出てしまう。
でもヨーンが目の前に来たからには真実を伝えなければならず「数分・・・もたせろ」とも云う。この戦いがエストとの勝負であったことを話し、エストに真実を突き付けるために。
死の間際にごちゃごちゃ語る(おそらくデコース自身が恥と感じる)行為を通してでも、ちゃんと責任を果たそうとしている訳ですね。ホントに立派。

言葉遊びになるけど「シラを切る」は「白を切る」とも書く訳で、文字通りエストは「白を切る黒騎士」であったというオチ。その行動を断ち切ったのがデコースである。

エストが記憶を保持していることをデコースは見抜いていた・・・この視点で見るとコミック18巻の会話の解釈も変わってくる。
エストの記憶消去をヨーンに伝えている(p173)のは、ヨーンを絶望させるための「嘘」と云うより「意地悪」+真実に気付いていることをエストに隠すための「フリ」。
「気になるのはやっぱりそこか」というセリフ(p174)は「ヨーンにトドメを指さなかった理由」をエストが考え始めた点に掛かっているのではなく、「ヨーンとの再戦(再会)の可能性」をエストが考え始めたことに掛かっている、と解釈すべき。
自己崩壊を回避するために記憶を保持し、表面上は記憶を失くしたフリをする・・・騎士を裏切り続ける自分という存在に苛まれるエストに対して、デコースは「そこは悩む部分ではなくて愉しむところ」と諭すべく「面白い方がいいだろう」と云っている。記憶を保持したまま騎士を裏切り続けてきたエストと、手負いの騎士を生き永らえさせて恨みを買ってきたデコースは、他者との因縁を生み続けてきた点で似たような存在と云える。であれば、「苦しむな愉しめ」と伝えることがデコースの役割だったということだろう。

だからこそ、彼の最後のセリフは「面白かった」で無ければならない。
「ボクちゃんがどんなすげえ騎士だったか」憶えていてくれる、というのはおそらく強さや剣技の話ではない。
同じような生き方をしてきて最後の一瞬まで因縁を愉しんだ騎士としての姿、その生き様、その矜持を、お前は憶えておいてくれる・・・と解釈した方がいい。
自分だけでなく騎士それぞれにそういった生き様があることを、さらには、エスト自身もまたそういった生き様を刻んでいけることを伝えるべく、放浪の旅に出るなと命令したのだろう。

ともあれ、これにて「バーシャ」という存在がオモテに出てくることは無くなるはず。やっぱりデコースの役割はエストから「バーシャ」という存在を消し去ることだったと。これもまた「トラフィックス」の終着点のひとつということになる。
ただ、エストは自身の中にある「バーシャ」という存在を認めている(p67)ので、シークモードを破壊したのではなく、ファンタム・プログラムの最終工程にある記憶・情報消去の部分を破壊したと考えるべきだろう。彼女が今後の人生でシーク・モードを封印するのは、デコースの「最後の命令」を受けてのものであって欲しい。

あと細かいところだけど、コミック15巻p23でバーシャが「エストだったときの記憶」をさらっと話していて、これ設定ミスかなぁとか思ってたんだけど・・・記憶消去が行われていないことの前フリでもあった訳ね。これで辻褄が合っちゃう。
(2025.05.17)


■ 弔うということ (p64)

デコースの遺言に従ってこの場で弔うログナー。
騎士であれば地面に大穴を開けるぐらいは朝飯前だろうに、わざわざスコップとツルハシで穴を掘るということ・・・たぶん、弔いの行為は太古の時代から変わらない。戦士に敬意を払うべく手づから埋葬することを、ログナーはこれまで何度も行ってきたのではないだろうか。
このシーン、ソープも一緒に手伝っていて地味にいい。5代目黒騎士グラード・シドミアンをエストが埋葬するシーンにもつながる。
(2025.05.17)


■ モルフォの不具合の原因 (p65)

モルフォが4月号で一瞬だけ停止した原因は、ヨーンの位相反転技(フェイシズ・ドライブ)による影響ではなく、彼自身に起因する別の問題がある模様。
この辺は来月号以降で説明が入るはず。このまんまGTMには乗れない⇒永久欠番という流れになりそうで心配。
と云うか、ダッカスの両手持ちの攻撃を片手で防いだのに、ヨーンの左腕が無事なのが不思議。バシクが関節をロックした際にヨーンの左腕の接続を切ったということか。

ローテ騎士団がちゃんとV字編隊を組んでいたり、戦場に降りたソープが最初に労う対象がモルフォだったり、バシクがソープに対して「ますたー」と呼んだり、ヨーンを認めたエストがデコースを「ワイズメル様」と呼んだり、この辺はたぶん解説不要なのでスルー。
(2025.05.17)

 

■ 2025年7月号


■ 愛の告白 (2025年7月号p63)

エストのセリフから察するに、ファティマは愛を口にすることを禁じられているらしい。まあ、特別そのような解説がなくとも彼女らの立ち位置を考えればスジの通る設定である。
おそらくダムゲート・プログラムの規定違反になるだろうし、愛を告げることは兵器としての自身の否定=ファティマの存在意義の否定と同義である。だからこそ、それを語ることは彼女らにとって「重過ぎる」行為となり得る。エストが震えているのもその影響と思われるが・・・震えながら告白するって完全にヒロインムーブ的なアレだと思う。いじらしいとかそういう方向のやつ。

今まで劇中で「愛している」と明確に語ったのはクローソーのみ(コミック3巻p148)。それもモノローグの体裁をとった告白である。
この言葉を相手に対して直接伝えられるのは、おそらくFSS劇中でもごくわずかなキャラクターだけに許された行為ということになるだろう。エストだけかも知れない。
クローソーとも並ぶ禁忌の行為を成し遂げたエストの精神性は・・・ある意味でダムゲート・プログラムをも凌駕していると云えるのではないか。
それにしてもエストが告白する瞬間の2コマだけバーシャになるのエモ過ぎる。もはやズルいレベル。尊いわぁ推せるわぁ。

あと、この愛の告白によってエストはFSSにおける「メインヒロインのひとり」としての座を確立したと云える。簡単に云えばラキシスとタメを張れるヒロインである。
天照という神と共に「永遠」を歩むため、自らの身体を作り変え、その胸に飛び込んでいったのがラキシス。
自らその存在を消し去る覚悟を決め、その最後の最後の「刹那」にただ愛の言葉を紡いだのがバーシャ。
この対比。そこに至る瞬間に数多の女性を飛び越えた点が共通している。
永野センセーがエストを可愛がる理由はまさにこの点ではないだろうか。エストは恋愛に関してラキシスの対極に位置するヒロインということである。
まあ、放浪して数多の騎士に仕えることとか、数多くのGTMに搭乗することとか、この辺の対比要素も挙げていったらいろいろ出てくるかも。

にしても・・・エストの魔性を振り切ったヨーンであれば、彼女を娶ることはないと踏んでいたのですが、「黒騎士であって黒騎士ではない」中庸の立ち位置についた模様。
ただまあ、エストがA.K.D.に所属するのはごく短い期間との設定もあるし、ヨーンは主の益となるか否かで判断しているので、彼女のマスターという立ち位置に拘ることはないだろう。天照の判断ひとつで左右される関係性ということになるが、デザインズ7の解説にあるとおり、天照はデトネーターの開発に協力させた後にエストをポイ捨てするらしい。
おそらくそれは事実の一側面であって、星団侵攻が始まるこの後の時代においてエストを留まらせておく必要性はない・・・むしろより多くの騎士を「覚えておいてもらう」ために、在野の立ち位置をキープしてもらう意図があったのではないだろうか。・・・いや、天照のことだから後で「失敗した〜」とか平気で云うかもだけど。

天照のセリフに拠ると、ヨーンは脊髄に障害を抱えているらしい。モルフォの怪しい挙動もこの辺に紐づいた話になるだろうか。
まあ、来月号でまた戦場に向かうのであれば、この辺も話もクローズアップされるだろう。
(2025.06.12)


■ コーダンテ家より除籍となるアイシャ (p67)

ヨーンに絡む一連の騒動に関して責を問われる立場にあると感じていたアイシャであったが、天照はむしろその功績を称えたのか「従帝」に登用し、これまで彼女が抱えていた全責務からの解放を宣言する。要するに、天照王朝において完全に自身と同じ立場に就けというお達しである。

アイシャはたぶん「天照に対する愛情」と「王家の責務」が乗った天秤がどちらに傾くかの賭けをヨーンに乗せていた(コミック12巻p133)。なんだけど・・・その余波で妹と王朝に迷惑を掛けてしまったことを悔いているために、賭けの勝ち負けについてはおそらくほとんど頭から抜け落ちた状態になっている。
しかし実のところ、彼女は「ヨーンが黒騎士を降したこと」で賭けに勝ったことになるので、彼女の中では「天照に対する愛情」を引っ込める道理が無くなっていることになる。コーダンテ家から除籍されれば自由な立場で天照を想い続けることが可能な立ち位置に行けたのに、従帝という立場につながれてもはや飼い殺しされる状態になったとも云える。誰よりも天照に近い位置にいながら、その恋心をおいそれとオモテに出せない状況に投げ込まれた訳ですね。
天照が口にしている「かわいがる」は、彼女が本当に望んでいた「かわいがられる」とは真逆のモノ。ヒトの感情が判らない天照に「オトメゴコロ」なぞ判ろうはずもない。賭けを根本からひっくり返された彼女はキレていい。感情がジェットコースターになるのも仕方ない。

アイシャに与えられた新たな名前(家名)は紅袍(バーミリオン)。
中国で最も希少なお茶とされる福建省武夷山の大紅袍(ダァホンバオ)が名前の元ネタになっている。
なんでもこの茶のもとになる天然木がわずか4本しか存在しないそうで、難病に苦しんでいた皇后がこの茶を飲んだことで回復し、大臣だけが羽織ることが可能な赤い衣(紅袍)を茶樹にかけたことが名前の由来になったらしい(諸説あり)。一般に流通しているのはこの原木から採られた茶ではなく(樹齢350年ぐらいで保護されている模様)、枝木から栽培された茶樹もしくは周辺地域から採れる武夷岩茶に同じ名前を付けているようだ。

アイシャのこの昇格をしばらくナイショにするのは、たぶん妹ワスチャのコーダンテ家当主継承についていろいろ準備が必要なため。王朝各王家にネゴを取ったり、正体に気付いてないヨーンに教えてあげたり、何よりも本人にお姫様としての立ち位置を納得してもらう必要がある。たぶんダージリンの名をもらうのもその時になるだろう。
(2025.06.12)


■ 白を纏う黒き死の女神 (p70)

待機中のダッカスのエンジン音がたぶん高くなってる。修理と同時に天照がチューニングしたのだろう。騎体色も変更したらしく、色味の詳細は欄外のセンセーの解説にある。
こうやってアチコチ性能の引き上げに協力するから、後年の星団侵攻で厄介なGTMが増えていくことになる訳で。まあ、Z.A.P.が出ていけばそれでも完封できるのか。

エストのスーツが白くなったのは…ミラージュ・ファティマということもあるけど、たぶん花嫁衣裳の暗喩じゃないかな。ヘッドセットも角隠しのよう。
上述の文章を引き継ぐのであれば、ラキシスもまたソープの胸に飛び込んだ際は白スーツであった(いわゆる白ラキ)。
そういえば、如何にも恋に生きたって感じのウリクルも白スーツでしたよね。コーラスの標準的なスーツではあるけども。
逆にバシクはヨーンに対して何ら特別な感情を持っておらず、ブライドという名前を受けて花嫁衣裳のようなスーツだったので、そんなにコジつける訳にもいかないか。いや、バシクが花嫁衣裳、エストも花嫁衣裳・・・だからこそ劇中で着ることの無かったパルスェットにDE7巻末の衣裳が当てられたという考察もできるか。
黒騎士であって黒騎士ではないという立ち位置を表す意味で、ヨーンは黒スーツ、エストは白スーツでデザインのバランスを取っている感じもする。
あとミラージュ・ファティマになっても首元の宝石はデコースが贈ったやつですね。カラーページが無かったら気付けない。

本エピソードをもってついにトラフィックスが終了。長かった〜。劇中では84年、地球の実時間では35-6年を掛けたエピソードに幕が下りた。
ヨーンとデコースの間にもちろん血縁関係はないけど、物語の根幹にあるのは神話で描かれる「父殺し」ですよね。だから、ヨーンもバーシャを指して「母で姉で恋人」と言っている。まんまエディプスコンプレックスを地で行くセリフである(ヨーンの実母や実父が劇中に登場しないのは、おそらくこのテーマに沿ったキャラ構成になっているため)。
ギリシャ神話では、クロノス、ウラノス、ゼウスと続く父殺しの連鎖が、FSSではロードス、デコース、ヨーンの関係性に転写されている形である。
男子が大人になる際の通過儀礼として「父殺し」とも呼べる行為を敢行するのは古典から続くテーマ。ルークがダースベイダーと戦うのも、シンジがゲンドウと対立するのも、刃牙と勇次郎が喧嘩するのも、ある意味で「父殺し」をテーマにした話である。FSSにはそういった古典的・普遍的なテーマがベースにあると思う。

コミック4巻から始まった全エピソードを通して、星団侵攻に至るまでのキャラクターの配置がほぼ全て完了。
残るはマグダルだけ・・・と思ったら、そうだよ、トラフィックスは終わったけどプロムナードが全然〆られていない。どうすんのこれw。
最後にちゃあ、桜子、エミリィが出ているけど・・・これどこで会話してるんだろ。
数多の女性を飛び越えたバーシャかと思われたが、最後の最後に「ちゃあ」という超巨大な壁は超えられなかった、というオチなんでしょうね。
次号からベイジ解放戦が始まるのであれば、ヨーンとちゃあの物語はもうちょっと先まで続くということ。ヨーンにとっての「騎士とファティマの物語」には決着が着いたけど、「騎士とお姫様の物語」はまだ続くようだ。
(2025.06.13)

 
 
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