† ニュータイプ 2022年6月号〜2024年5月号に関する考察 †
NewType 2022 Jun - 2024 May
 

■ 2022年6月号


■ バイカルとアルカナ・オーデルは同型騎 (2022年6月号p51)

設定が宙ぶらりんになっていたアルカナ・ナイトの搭乗騎がホルダ33型バイカルであることが判明。ただし、アルカナ・オーデルの名前も残っているので、スートの刻印がつく4騎は同型であってもアルカナ・オーデルと呼んで区別しているのだろう。指揮型とされるホルダ35型アムールはボツ設定になるだろうか。
ちなみに、バイカルの元ネタはバイカル湖。オーデルの元ネタはポーランドとドイツの国境沿いを流れるオーデル川。ホルダ系列はヨーロッパの河川・湖沼から引用されている名称が多い。

ところで、第6話アクト5ステージ1に相当するエピソード「緋色の雫」というタイトル。
普通に考えると滴る血を連想するタイトルであるが・・・緋色に一番イメージが近い色はエストのファティマスーツではないだろうか。ふーむ。つまりはエストの涙ということか。いやでもトラフィックの名を冠していないから関係ないか・・・。あーダイ・グが背負っているフィルモア王家の紋章も色が近いか・・・いやこっちは山吹色ということになるのか。
誰がその「雫」を落とすことになるのか、なんとも不穏なタイトルである。
(2022.07.17)


■ アルカナ・ファティマ勢揃い (p54)
アルカナ騎士4名の登場に合わせてアルカナ・ファティマ4名がアシリア・スーツで登場。ボブカットのアレンジ集みたいになっとる。
各スーツで微妙にデザインが違う辺りに永野センセーの意地が見えるような気がする。パラーシャはハート付けまくり。誰がどのファティマかわからないヒトはスートで判断しよう。
あとなんか・・・トライトンの言葉遣いが「新入社員との会話を見つめなおす中間管理職講習を受けて余計にバグっているオッサン」みたいになってない?
(2022.07.17)


■ ナカカラ攻防戦全軍配置図 (p57)

ナカカラ攻防戦の全軍配置図。
これ、コミック11巻の開戦直後の配置図と、デザインズ6のミノグシア全土の配置図を見比べないと戦況が頭に入ってこない。図中のイェンシング共和国はバトラント共和国の間違い。
枢軸国の多くが本軍をミノグシア各国に残している一方、カッツェー公国に展開していたドレンノ連邦軍とウルッシ共和国軍、ハスハント南部のダラーン騎士団がハスハントを通り越して北西部戦線に参加(トライトンのセリフに拠ると以前からダラーン騎士団はシーゾス国に移動していた模様)。
ベラ国周辺に留まっていたとみられるカラン・ロッサム両軍、シーゾス国北端(=ハスハント南東部と接する)にいた三ツ星傭兵騎士団とザームラント騎士団(コミック15巻でラカン騎士団と対峙)はイースト・ハスハに移動した後に北東部戦線に参加している。
つまり、大国がいいように中小国と傭兵騎士団を回して矢面に立たせている訳である。
この配置であれば何か裏があると誰でも気付くはず。という訳で、7月号ではクラーケンベールが、8月号ではフィルモアの参謀長が、この辺を訝しんでいる状況が描かれる。と云うか、前面に立たされている各国騎士団はフィルモア全軍と真っ向勝負になる訳で、戦意がだだ下がりになっていると思うのだが・・・。

解説中の「ロッゾ帝国青銅騎士団」はおそらく誤植。ロッゾは本軍(帝国騎士団かヴーグラ騎士団)が後方待機。

図中でよく判らないのがマルコンナ支隊の立ち位置。マルコンナ支隊は魔導大戦においてハスハ王宮が陥落した後、半数はシーゾス王国に駐屯。残りの半数はナカカラ王国に移動してディスターブ隊に合流したという設定。しかし、この半数はナカカラに逃れた後にフィルモアから派遣されたナイアスが預かっているとの設定もある。p57の解説ではブーレイ傭兵騎士団傘下でギーレル解放戦線(=中立)を名乗っている一方、図中とp58の参謀長のセリフではナカカラ防衛のためにナカカラ騎士団と行動を共にしているという、よく判らない状況である。ナナカラに移動した支隊がさらに2つに別れた可能性もあるが、これたぶんナイアス絡みの設定をボツにして単純にディスターブ隊傘下にした方が良さそう。

星団暦3075年のハスハント解放戦では、黒騎士を失ったエストと、ブーレイから袂を分かったナイアスがミノグシア軍に参加している訳で、さらには暴風三王女とディスターブ支隊が共に行動していることが判明している。ルーン騎士団はミューズが率いる形で参加。ナカカラ攻防戦後のフィルモア軍の動向は不明であるが・・・同時期にカーマントーの独立蜂起介入戦に参加していることになっている(でもミノグシア解放戦線にクリスティン・Vが参戦するという設定もあったはず)。
つまりおそらくは、ナカカラ攻防戦から続く一連の戦闘で黒騎士デコースが死亡、ディスターブ隊は中立の立場を撤回、ナイアスが元老院騎士の立場から放逐(あるいは別使命を帯びて行動)、ミューズは自ら先陣を切る法王になるということ。
この辺から察するに「ナカカラ戦はフィルモア軍の消耗で終わった」というオチで終わるはずがない訳で、この後の展開が超楽しみ。なんつーか、乱入してきそうなメンバーがあちこちいそうな気配ですよね。慧茄とかブラウ・フィルモアとか。
(2022.07.17)


■ フィルモア駐留軍の状況と密約 (p58)

参謀長の口からフィルモア駐留軍の状況が語られる。
ノイエシルチスの赤・白グループは本国に帰還していた模様。おそらく、(元老院の指示で)最初からこのタイミングを狙って枢軸軍の侵攻が行われたのだろう。この後でブラウマ・イク率いる赤グループと国家騎士団が送られてくるようだが、到着すれば確実に枢軸軍を追い払うことが可能な訳で・・・おそらく攻めている枢軸側も短期決戦を見越して進軍している状況が窺える。
ディスターブ隊にフィルモア元老院とバッハトマ軍の密約の情報がもたらされたようだが・・・これはおそらくフィルモア駐留軍を孤立させるために意図的にリークされたもの。8月号でアドー王がちゃんと解説してくれる。

ラドンウェイがフィルモア帝国を受け入れたその背景と心情は彼が劇中で語っているとおりだが、この状態になる以前に手を差し伸べようとしていたのがハスハントから派遣されてきたアルルである。で・・・そのアルルがどこにいるか。彼女は聖宮ラーンに向かってからコミック15巻でギーレル王朝に向かい、そこからナカカラ・クルルに入りホーダウンでリズ・コールに名付けしている。もしそのままナカカラ国内に残っているのであれば・・・乱入の可能性があるかも。

バーガ・ハリ・フィニトライブが劇中初登場。どうもバーガ・ハリは各支隊で頭部形状、前腕部フライヤー、アイドラ・フライヤー、騎体色が全て異なる模様。各工場で同一デザインという設定が吹っ飛んだぞ。
13巻で登場したのが、バーガ・ハリ・SKS(スキーン隊)とバーガ・ハリ・KK(ツラック隊)。
14巻で登場したのが、バーガ・ハリ・BSコブラ(スバース隊/隊長騎)、バーガ・ハリ・ESSQ(スクリティ隊)、バーガ・ハリ・BS-R(駆逐型/特殊仕様)、バーガ・ハリ・JG(ジャーグド隊)、バーガ・ハリ・ファンディ(スパチュラ隊)。
15巻で登場したのが、バーガ・ハリ・BS(スバース隊)。
17巻収録分で登場したのが、バーガ・ハリ・ダンダグラーダ(SPK隊)。
今回登場したのがバーガ・ハリ・FTR(ディスターブ隊)。
バーガ・ハリ・DS(ドーチュー隊)とバーガ・ハリ・LA(ラーン王宮支隊)は一応デザインが発表されているものの、劇中登場時におそらくアレンジされるはず。
完全未発表なのが・・・カッツェー公国にいるバーガ・ハリ・EB(エンブリヨ隊)、ギーレル王朝にいるバーガ・ハリ・HS(パローラ隊)、アチコチ分散しているバーガ・ハリ・MS(マルコンナ隊)ということになる。
全種登場まであと少し。永野センセー頑張れ〜。
(2022.07.17)

 

■ 2022年7月号


■ GTMのコクピット (2022年7月号p55)

今月はとくに考察するポイントがない。
GTMのコクピットの解説。デザインズ4ほかに掲載されていた情報と大きく変わらないが、微妙に名前が変わってたりする。あとで辞書ページにまとめます。
(2022.07.30)


■ メロウラの通称 (p57)

これまでに明かされていたスクリーマーやナキメーカといった名称は、クリスが搭乗するようになってから付けられた通称というか渾名であったことが判明。
ナキメーカには「泣き女」とルビが振られており、名称の元ネタがバンシーであることが判る。バンシーとはアイルランドおよびスコットランドの伝承に登場する妖精である。同地域の旧家にはその家固有のバンシーが付いており、その叫び声が聞こえた家では近いうちに死者が出るとされる。連載再開以前は(MHの時代には)バンシーカという名称もあったはず。
(2022.07.30)


■ ダイ・グの誓い (p58)

クリスの回想が「3年前」となっているようだが、これは明らかにラキシスと出会った後のシーンとなるため「32年前」の間違い。永野センセーも8月号で謝罪している。
茄里およびアラン・リーと合流した後の4人の会話が描かれる。
ダイ・グのp62のセリフはコミック16巻p44の「ボクが守ろうと決めた・・・あの子」を受けてのモノ。自分の命が残り少ないことを知っているダイ・グは、その命の使いどころを「クリスを守るとき」と決めているようだ。この会話のシーン・・・ダイ・グが「クリスよりも先に死ぬ」ことを前提に話していることに、彼女自身は気付いているのだろうか。また、クリスは歴代の詩女が語った「ダイ・グ陛下のひとことひとことを覚えておきなさい」という言葉を覚えているのだろうか。ダイ・グがこれまでに遺してきた言葉と決意が真の意味で試される瞬間が、今回のナカカラ攻防戦ということになるはず。
という訳で、今回の物語の主軸はGTM戦ではなくて、コミック13巻以降で描かれてきたダイ・グとクリスの物語ということですね。
(2022.07.30)


■ 南部戦線の状況 (p64)

ナカカラ南部戦線ではメヨーヨ軍とコーネラ軍が連携して動いている模様。
マヨールの搭乗騎を見るとコミック15巻と比べて一部のパーツを取り外していることが判る。調整によって放熱パーツが減ったのか、今回は軽量化に重点を置いているのか。
くだらない戦と断じながら、枢軸軍の一角としてメヨーヨ軍を出しているあたり、クラーケンベールは結構律儀。ちゃあ・ティからもらったペンダントもしっかり身に着けている模様。
ちょっと注意したいのが、クラーケンベールは「枢軸がナカカラ北部を取って終わる」この戦について知らされていない点(でも予想はしている)。枢軸軍にこの情報は行き渡っていないようだ。
たぶんこのヒト、面白い騎士が来たら敵味方問わずに乱入するんじゃないだろうか。永野センセーがアグニムのデザインを準備しているような気がする。
(2022.07.30)

 

■ 2022年8月号


■ マドラのキャラシート (2022年8月号p55)

マドラの新デザイン。
ミラージュ騎士団のエース・ナンバーを継いだためか、パーソナルカラーがライトベージュから純白に改められた模様。
ミラージュ騎士団のトップ4は、ログナー、アイシャ、斑鳩、マドラの4名とのこと。もっとも、これは魔導大戦時におけるトップ4であり、時代が変われば代替わりも発生してくるだろう。ログナーは不動のトップだとしても、ディモス、カイエン、マキシ、ベルベットと歴代剣聖がいる時代には、いずれもトップ4の一員であったことが予想される。
腰のコルセットの部分に金具がいっぱい付いているようだが、これおそらくロングスカートをぶら下げるフックだと思う。
(2022.08.15)


■ バッハトマ本陣のジィッドとアーリィ (p56)

後方待機で出番のないバッハトマ本軍。
ジィッドのセリフから察するに、ニナリスがデムザンバラの出力を戻した結果、スイングが焼き付けを起こした模様(コミック14巻p61でデコースが指摘してたやつ)。たぶんスライダー以上の技術者で無ければ治せないはず。ニナリスを信用せず、事情を聴こうともしないジィッドの自業自得である。

また、今回の戦はナカカラ北部を枢軸に渡す筋書きになっている模様。クラーケンベールの予測は的を射ていることになる。
枢軸軍に指示を出しているのはバッハトマ魔導軍皇帝親衛隊。ジィッドも指揮命令系統から外されている点から、バッハトマ本軍であっても具体的な指示が出ていないようだ。
フィルモア本陣をやるのは「国家の枠のない」騎士団。つまり、戦後にフィルモアから恨みを買う位置に特定の国家が立たないように配慮されていると。
俯瞰してみると、今回の戦はフィルモア以外の各国主要騎士がすべて蚊帳の外に置かれており、政治的な理由だけで戦闘が起きている格好となる。とは云え、FSSの主軸は騎士とファティマのドラマである訳で・・・悪役が考える筋書きってのはへし折れるもんだよね。
(2022.08.15)


■ 情報管制専任AF (p57)

情報管制専任AFが初登場。戦場でGTMを駆るホスト・ファティマと交信し、情報収集と戦況解析を行うことが主な役割。旗艦の航行と制御を担う航行士の役割も兼ねるとのこと。立場的にはおそらく宇宙軍の所属である。ファティマの維持管理に掛かるコストを考えるとかなりパフォーマンスが悪い使い方であるため、おそらくはマスターが負傷・療養している期間に持ち回りで担当するものと考えられる。
(2022.08.15)


■ 元老の奸計 (p61)

アドー王はダイ・グの思いを理解した上で、ナカカラから撤退する道(=皇帝の威厳を守る体裁で本国の部隊がナカカラに降りる道)と、そのまま討ち死にする道(=その報復として本国の部隊が占領する道)を選択肢として与えている模様。ダイ・グが配下の騎士を案じれば撤退、意地を通そうとすれば玉砕すると。
枢軸というかボスやんからすれば、より大きな混沌(あるいは分断)が発生すればいい訳で、フィルモアがナカカラを占領するのであればと、ふたつ返事で了承したものと考えられる。
しかも、今回はほとんどフィルモア国内の出来レースであるため、枢軸各国の損害は軽微というオマケつき。

ミヤザが心配しているとおり、この筋書きでは矢面に立つ中小騎士団が割に合わない訳で、そこを補填する意味でアネッサ女王はナイアスともえぎ騎士団、さらにはブーレイ傭兵騎士団を配置していると。
フィルモア騎士団の動きをよく知るアネッサ女王と、その手駒たるナイアスが裏で戦線をコントロールするため、元老の描いた筋書きはそう簡単に覆されないと踏んでる訳ですね。
ただ、そうなってくると流石にフィルモアの戦費がやばいんじゃないの〜という疑問が浮かんでくるため、後半でノンナによる戦費補填の話が割って入って来る。なんとも丁寧な構成である。
(2022.08.15)


■ ラミアス・ステンノ登場 (p62)

GTMラミアスの派生型ステンノが登場。コミック14巻で登場したハロ・ガロの姉妹騎ということになる。
ここで問題なのが、マドラがミラージュに復帰したことでメドゥーサがフィルモアに返還されたという設定。ブラウマ・イクの搭乗騎になったようだが、そうすると星団暦3075年のハスハント解放戦でマドラが搭乗する騎体が無くなることになる=コミック11巻のファントムの登場シーンが無かったことになる訳だが・・・今月号の扉でマドラは今後GTMに搭乗することがないと宣言されているので、彼女の参戦は無くなるということか。あるいは、別の誰かがメドゥーサを駆って参戦する可能性もあるのか。

ジゼルが久しぶりに登場。ミディアム・ボブなのね。ゴスコンビではあるが、ジゼルのスーツはゴスロリだろう。
ナイアスはおそらく騎士服ではなくて下着姿。たぶん前線に出る気がない。いつもこんな格好でGTMに乗ってたらさすがにケガすると思う。

ナイアスのセリフ「糞ノンナと競っていたんだが・・・」の後に続くセリフはおそらく「ド汚さではアイツに勝てん」といったところか。ナイアスにしてみれば、自身が既に戦場に出ている時点で、負けを認めざるを得ないという感覚なのかも知れない。一方、ノンナはナイアスを見たシーンで「ゴス豚」と吠えるぐらいだから、以前戦場で会った際はヤラレたのかも知れない。お互いにライバル視してるのね。

それにしても・・・アーリィ・ブラストがヨーンのことを考えているのとほぼ同時に、ナイアスもヨーンのことを考えているのが面白い。このふたりも「I think of you」なんだよね。
ヨーン君。実は天照に次いでモテモテなんじゃないか。桜子、ちゃあ、アーリィは本気だとして、彼に手を差し伸べた女性を挙げると・・・エスト、アイシャ、シアン夫人、ナイアス、ジークママと続く。ついでにジークも入れると老若男女にモテモテである。こんだけヨーンのことを匂わせているんだから、絶対この後でやって来るはず。
(2022.08.15)


■ 戦費と国債の話 (p65)

魔導大戦における各国の戦費補填の話がノンナの口から語られる。
要するに、戦争を続ければ国は国債を発行するしかなく、その国債を他国の中央銀行に売ることで借金をしていると。国債には償還期限があるが、借り換え(一旦借金してその金で返済すること)も可能なため、これを意図して繰り返させることで借金まみれにすることが可能ということをノンナが解説している。
身近な例でいくとロシア・ウクライナ戦争におけるロシアの戦費はよく話題に上がっていると思う。ロシアの戦費は1日2兆円とも3兆円とも云われており、たぶん国内外の資産家に国債を売ることでその補填をしている。ロシアに返済のアテがないと考える資産家は購入を控えるため、結果的にロシアの経済を圧迫していると噂される。

バッハトマを含む枢軸各国はユーコン財団に国債を買い取ってもらい、ユーコン財団はその国債を支配下の各国(おそらくユーコン経済連合の各国だろう)に売り付けることで自国の経済を回している。と云うより、おそらくは麻薬の生産と売買を加速してさらに市場の拡大に充てることができる。
フィルモアは星団各国の国債を買い込むことで莫大な利益を上げており、それを自国の戦費に回していると。中央銀行を束ねているだけで国内の支配権を得られる訳ではないが、フィルモア帝国はとにかく星団各地の戦役に顔を突っ込んでいるので戦費が嵩む。それを遣り繰りしているのがバルバロッサ王家であるため、各王家は頭が上がらないということだろう。
A.K.D.は(と云うより天照は)重工業産業で莫大な元手があるため、他国の国債はいくらでも買い取りが可能。また、ミラージュ騎士団の運営は彼のポケットマネーであるため、国家の財政には全く影響がないという無敵状態である(でもだからこそ自国の産業に響くヘリオス鋼の市場独占なんかには敏感に反応する)。

クバルカンに至っては、ギーレルを支援しているフリをしつつも、裏では枢軸各国の戦費を賄ってジャスタカークにギーレルを攻めるよう仕組んでいたと。ミノグシアに加担しているように見えたフィルモアもクバルカンも、裏ではちゃんと領土支配に動いていた、というのが今回明かされたことになる。たぶん、天照は最初からそれが判っていたから、魔導大戦に対して静観の立場をとっていたのだろう。ある意味、一番考えていないのがセイレイ率いるコーラス軍ということになるかも知れない。

横道に逸れてジョーカー星団の通貨の話。
ジョーカー星団は全ての国家で統一通貨のフェザーが使用されているため、各国家が発行する銀行券もフェザーということになる。おそらく各国家で微妙にデザインが異なるが、価値は全て同一ということになるだろうか。ただし、ジョーカー星団では紙幣はほとんど使われず(100フェザーのみ)、貨幣かカードの使用が一般的という設定もある。EGに掲載された情報に拠ると、フェザーの下にカントと呼ばれる単位があり、100カントが1フェザーに相当。逆にフェザーの上にはゾウリンと呼ばれる単位があり、200フェザーが1ゾウリンに相当する。貨幣としては、ニッケル枠に真鍮が組み込まれた1フェザーおよび5フェザー・コイン、銀貨の10フェザー・コインがあり、さらに100フェザーの紙幣が存在する。1フェザーは約500円に相当するらしい。
日本の場合は日本銀行が銀行券(紙幣)の発行を行い、貨幣は造幣局が造って政府が発行しているのだが・・・ジョーカー星団では紙幣があまり使用されない=銀行券が発行されないということになるので、貨幣もおそらく中央銀行が発行している形をとっているものと考えられる。

中央銀行とか国債の話はここに載せると面倒なので次回単語辞書の更新時に反映します。

それにしても、今回のエピソードで出てくるGTMも数が多いよね。しかも、トリを飾るGTMはまだ出てない。楽しみ。
(2022.08.15)

 

■ 2022年9月号


■ バーガ・ハリ・ダンダグラーダ (2022年9月号p55)

バーガ・ハリ・ダンダグラーダのキャラシート。
AP騎士団の最高機密兵器という設定もあったが、頭部、背面フライヤー、腕部フライヤー以外は共通デザインとのこと。デザインだけ見るとスクリティの方がかなり特異な形状である。

背面に装備されているのは輻射フライヤーとのこと。輻射現象(粒子線や電磁波の放出)によって推進力を得るフライヤーということになる。永野センセーの解説に拠ると、流体を用いた放熱ができないために、電磁波に変換して放出⇒その電磁波がプラズマとして観測されるらしいが・・・この部分が何とも想像できない。例えば太陽風もプラズマの放出であるが、これは太陽から吹き出る水素イオンが主体である。また、雷は自然界に発生するプラズマではあるが、このときプラズマとなっているのは大気であって、放出された電子が電極間(雲の間あるいは雲と大地)を流れることで雷として観測されているはず。なので、輻射フライヤーからの電磁波の放出(熱放射)イコール雷という訳ではなく、高出力の電磁波が星間ガスや宇宙塵に触れることで雷が発生しているのではないだろうか。だとしても、輻射によって推進力が生まれるというのは何とも納得できない。
あーちがうのか。輻射フライヤーの内部にプラズマの元になる圧縮空気とかが備わっていて、電磁波をそこに当てることでプラズマ化。そのプラズマを放出することで推進力にしているのであれば、機構としては納得できるな。

あと、バーガ・ハリ・ダンダグラーダの英訳表記が「Baga Ha Ri SPK」となっていることから、バーガ・ハリ・SPKと呼ばれる場合もあるかも知れない。
(2022.09.11)


■ レイスル3党首 (p56)

レイスル3党首が登場。黒髪の方がメスティ・ウラスバーン。禿頭の方がヤオーニ・マルグレス4世。目立たない容貌であるが、ふたりともハツーダン名家の当主という設定。
ナカカラ戦に対して軍派遣を求める議員が多い中、ナオは国家に利益が無いことを読んで次の一手を打とうとしている模様。ミノグシアへの進軍から一転し、バッハトマに攻め入りハツーダン大陸の制覇を目指すようだ。
星団暦3075年のハスハ解放戦では、連合軍の攻め入る先がハスハントとなっていたため、このナオの思惑が成功してバッハトマの国家中枢が地図上から消え失せていたと考えればよいだろうか。
ナオ・リンドーが求めているのは戦乱ではなく、人と人が作ってきたものを壊さないこと(コミック14巻p166)。破壊と混乱を求めるボスやんは外道であり、ナオが求めている世界はダイ・グが望む世界と同一のようだ。
詩女の手から零れ落ちたハツーダンは独自路線を行く必要があるが、その手を結ぶ先としてフィルモアを選んだ、と受け取ることもできる。詩女ラーンの記憶が炎の女皇帝と共有されており、その記憶がリストアされた超帝國剣聖に伝達されているのかも知れない。

3党首のふたりはナオが超帝國剣聖の意識をもっていることも知り得ている模様。ボスヤスフォートを殺すという宣言がブラフではなく、その気になればいつでもできるということも理解しているようだ。
ナオの視点では、騎士団の増員もエクペラハの増産も、すべてハツーダンを制覇するための布石であった訳で、この情報を開示するまでふたりの党首はナオの真意を問いただすことも無かったことになる。
なんとも呑気なように思えるが、それで国家の運営に破綻が無かったのであれば、ガマッシャーンは極めて安定した国家であったという証左になるだろう。戦乱の世において目立たない、イマイチな国家であったとしても、国家に焦りがないというのは実に羨ましい話である。

この後、ナオはさらなる布石として旧超帝國東都ハツーダンと昔の友人を訪ねるとのこと。超帝國剣聖で連絡が取れる状態なのは、おそらくレンダウドということになるが・・・統一人格が発現したマドラ、超帝國時代に剣客として活動したログナーも加わって来ると面白い。ま、ログナーとか完全に無視しそうだけど。

ヒュートランの適当演算では、今回のナカカラ戦の最期にはワスチャとヒュートランも乗り込んで来る模様。
やっぱりヨーンが乱入してきて、それに絡む形でワスチャもやってくる感じだろうか。・・・そうなるとジークの登場も必要になってくるような。
そんでもって、ワスチャが来たのであればとりあえず戦場に向かわんと・・・というノリでクラーケンベールも乗り込んで来る萌え展開に期待。
(2022.09.11)


■ 元老の手駒が動き出す (p61)

ギーレル国境に潜んでいたフィルモア元老の手駒が動き出す。偽装していた貨物船に対してGTMケージがさすがに小さ過ぎるような気がする。これだと100〜200騎も余裕で運べてしまう。
アルカナ4名を本陣から引き離し、孤立したハイランダーを責め立ててダイ・グに揺さぶりを掛けるのが元老の狙いということになるだろうか。
コミック13巻では、クリスを貴族間でたらい回しする腹積もりであることをアドー王が語っていたので、おそらく抹殺が目的ではないはず。撤退と戦死の五分五分で考えているのだろう。
一方、アルカナのメンバーやダイ・グはクリスが撤退・降伏の選択をする訳がないことを知っているため、彼らの緊張度は否応にも高まるはず。クリスはおそらく重傷を負ったとしても戦い続ける。
うーん・・・どうもミヤザの言動を見ていると、ダイ・グが戦場から離れることを前提にしているような気がする。戦場に降りることを想像していないのかな。

さて、新規デザインで登場したGTMブーレイ・ロウカン。コーラス・ハグーダ戦に参加した騎体とのこと。
えーとつまり・・・旧設定におけるブーレイ[T-232]スプートニクに相当するのがロウカン。ナイアス傘下でフィルモア軍と交戦したブーレイ[T-233]ボストークに相当するのがオデオンということなるのかな。
パラーシャのセリフでラムアドはウモスが雇い主と説明されているものの、コミック13巻でウモスの青銅騎士オリバー・メルシュと対峙していたのがラムアドである。この戦闘がそもそも難民を生み出すための出来レースであったとしても、他者から見て「ウモスが雇った」と見えるほど露骨なやり方はしていないはず。ちょっと設定ミスっぽい。

ラムアドが表示されているサブモニターに「M-137」という文字列が見える。Daimler-Chrysler A.G.(ダイムラー・クライスラー社)が1999年に生産を開始したV型12気筒エンジンのモデルがM137であるため、ラムアドのエンジン型式番号ということになるかも知れない。

ロウカンを駆る「朱の頭」はブルーノが知る人物である模様。コーラス・ハグーダ戦ではブルーノを除くブーレイ騎士が全て戦死したことになっているため、それ以前の戦場に参加していたものと考えられる。面倒なのが「朱」という部分。コミック3巻で「空」「朱」のブーレイは未使用という説明があるが、「朱」と描かれた衣装を身に着けている騎士は2巻p91に登場している。また、後の設定変更でブーレイに予備騎はない(計7騎)とされていたり、朱色(バーミリオン)はジョーカー星団における兵科色では一切使用されず、あらゆる国家・騎士団のマークで使用されていない色。この色を使用している団体は唯一ミラージュ騎士団だけとの設定もあったりする。

ちなみに、コミック3巻では、赤、橙、黄、緑、青、紫、朱、空、茶の9色。うち、空と朱は予備騎扱い。
DE3では朱と茶は抹消され、赤、橙、黄、緑、青、空、紫の7色。予備はなし。
コミック11巻では赤、橙、黄、黄緑、緑、青、紫の各中隊が参加していたことになっていた。
まあ、色が変わるのは別に問題ないんだけど。朱色だけちょっと設定が濃いだけに、今回の登場はいろいろ頭をひねってしまう。
(2022.09.11)

 

■ 2022年10月号


■ ロウカンとブーレイ傭兵騎士団 (2022年10月号p59)

GTMロウカンのデザインと設定+辻褄合わせ。朱の頭がハグーダ王宮にいたことと、アイオ・レーンがかつて騎士団長であったという設定が全て盛り込まれた。
2989年のコーラス・ハグーダ戦に参加したのは、赤、橙、黄、翠(緑)、紺(青)、紫紺(紫)、茶(木)の7騎、とのことで初期設定に戻された感じ。空と朱は未参加。
ナカカラ戦では、朱、茶、翠、紫紺の4騎が参加とのこと。コミック3巻の設定が活きているのであれば、朱はユーレイのフレーム、茶、翠、紫紺はバーガ・ハリのフレームを転用した騎体となる。
また、ドリュー・ゼレはシステム・カリギュラの息が掛かった派遣騎士である模様。もともとフィルモア帝国の指揮官ではないようだ。
(2022.10.23)


■ クリス+2個小隊の奮闘 (p60)

クリス率いる部隊の戦闘が始まる。
ブルーノが口にしている連環波状攻撃とは、複数のGTMが連なり、円を描くような動きで敵騎に連続した攻撃を加える手法のこと。コミック14巻でツバンツヒ、エーディス、サイトが見せた連携攻撃をさらに発展させて、数騎が連環を組んで回りながら波状攻撃を加える戦術である。初撃を受けるのに足を止めると後ろから来る敵騎の攻撃を受けてしまうことになるため、避けて離れることが基本的な対処法になると忠告を与えている訳ですね。ブーレイ騎士が部隊を率いた際に用いる基本的な戦術が連環波状攻撃ということかな。

これに対し、クリスは突出した戦力である自分が先頭に立って攻め入り、波状攻撃は後ろに付く僚騎が割り込んで止めるよう指示。名実ともにフィルモアのトップ騎士であることが判る立ち振る舞いである。
フィルモア軍旗艦のコマンドルームに表示される文字列を追っていくと、クリス配下の2個小隊の損害が読み取れるようになっているのがスゴイ。
クリス配下の部隊はノイエ・シルチスの黒・青から選ばれた各6名の2個小隊。p063の2コマ目に示されている「B05」は「A05」の間違いで、A01からA06までのロッテ3編成が1個小隊、B07からB12までがもう1個の小隊である。
最初に大破したのは4番騎(A04)と9番騎(B09)、中破は2番騎(A02)と5番騎(A05)であったが、この後の戦闘で2騎とも潰され、次いで10番騎(B10)が大破。3番騎(A03)、7番騎(B07)が中破。さらにもう1騎がp64で潰されて残り4騎となる。きっと永野センセーの頭の中では左腕スイングが焼けたのは何番騎、ユーレイライダーを語った騎士は何番騎、というシナリオが完全にできているはず。

ヨーキがブーレイ用のファティマスーツで登場。これカラーだとたぶん朱色。シューシャとパラーシャが着ていたデカダン・スーツにアシリア・パーツだけ付けているのかな。スカートの裾が開いているけど、これは単なる着崩しだろう。楊貴妃の姿を写したとされる壁画で赤系統の衣装が描かれているせいか、ネットで検索しても赤い衣装の楊貴妃がヒットする場合が多い。なので、ヨーキのスーツが朱色ってのは元ネタに合っている感じである。
(2022.10.23)


■ ダイ・グが立ち上がる (p65)

おおぅ。8月号の部分で読み違えていた。
元老はダイ・グが撤退した場合でもクリスを戦死させて、それを理由にナカカラに攻め入るつもりでいたのね。
クリスを生き永らえさせたのは、この時のためでもあったということか。なんともやるせない話である。

というところで、なんとチャンダナがカイゼリン・スーツで登場。
あー・・・なんでファティマ・町がカイゼリン・スーツを持つことになるか今まで伏せられていたけど。なるほど納得。皇帝ダイ・グが詩女のいる大地に降り立つことを見越して、そのパートナーたるチャンダナに(かつての)皇帝騎カイゼリンに肖ったスーツが新調されていた訳ですね。これたぶん、フンフトの発注で2着作られて、1着はカイゼリンに搭乗するコンコードに、もう1着が婚約者となったダイ・グへの贈り物として渡されたんじゃないかな。一方で、フンフトはおそらくダイ・グがこのように差し迫った状態で戦場に出ることも予想していて、特別な機能を与えていたのではないかと。
カイゼリン・スーツだけがもつ特殊機能・・・ワイドレンジ・ヘッド・キャパシタに組み込まれているシリアル・インジェクターが無制限となっており、数千・数万の軍勢であっても全て制御下に置くことが可能。とくに、旧ハスハ連合共和国およびフィルモア帝国に所属するGTMに対しては常に上位の割り込み制御が可能(フィルモアに関してはフィルモア皇帝からロック解除のコマンドを得る必要あり)というやつ。
ダイ・グがこの解除コマンドを入力すれば、ミノグシア軍のバーガ・ハリもすべて制御下に置けるはず。ナカカラ戦でこの機能を使用することになるのか。なんとも胸熱な展開である。

ただね。おそらくこの後でこのカイゼリン・スーツが町に引き継がれることになる訳で・・・それってつまり、チャンダナが着ることは無くなるってことなんだよね。ダイ・グの未来が見え隠れして苦しいですわ。
ダイ・グもベリンの布で作られた歴代の皇帝衣を身に着けていない。自分の血でその衣を汚すことを避けている。つまり、死を覚悟しているということ。なんかもう漢の背中ですよ。

ダイ・グの弁に拠ると、ミヤザはこれまでダイ・グとクリスを守るために心を砕いていたらしい。
うーん・・・クリスの挙動を監視していたのも、トラウマによって自刃したり、騎士をやめて処分されるようなことが無いよう、注意を払っていたということかな。
憎まれ口を叩いていたのも、国民や貴族の不満がふたりに降りかからないようにするための小言であったと。
ただこのヒト、クリスに関して庇護する気持ちがあったとも思えないんだよなぁ。あったとしても愛憎入り混じっているとしか思えない。やっぱクリスが殴り殺した同級生ってのがミヤザの親族で、簡単には死なせないって意地みたいなものが先にあったと思いたい。
(2022.10.23)


■ デザイン画なしGTMの振り返り (p65)

今回、p65の2コマ目でGTMバヤデルガの後姿が登場しているのだけれども・・・デザイン画が発表されずにゲスト扱いで登場するGTMが増えてきたせいか、頭ン中でかなり名前と騎体の外見が一致しないようになってきた。たぶん、同じようなヒトもいっぱいいると思う。
主役クラス、準主役クラスのGTMはブチ抜きで入るから印象も残るんだけどね。
オマケに魔導大戦で新型騎がずんどこ乱入してきて、騎士団単位・国家単位でGTMの貸与も発生しているのでかなり厄介。という訳で、劇中に登場したゲストGTMを振り返り。
エクペラハ、グロアッシュ、ルッセンフリードは判り易いので、デザインが頭に浮かびにくいヤツをピックアップ。

GTMアーグ・ブーラ
オーダ宇宙海賊が使用するGTM。コミック13巻p199に登場。NT2022年1月号に登場。
登場シーンの大半は攻撃を受けて爆散しているので頭部と上半身の一部しか判らない。

GTMスコータイ
レイスル騎士団(ガマッシャーン共和国)の主力GTM。コミック14巻p45とp50に登場。
レイスル騎士団の主力騎がエクペラハに移ったこともあり、魔導大戦ではロッゾ傘下の傭兵騎士団やハプハミトン騎士団に貸与されているとの情報あり(コミック14巻p9)。
劇中登場シーンではハプハミトン騎士団が使用していたものと思われる(合流していたというガマッシャーンの部隊もおそらくスコータイを使用していたはず)。
旧設定のコルサールに相当する騎体であるが、エンジンの設計はストーイ・ワーナー、騎体の設計はヘッケラー・バシントンということもあり、ルビコンとした方が収まりがよい(DE6でも設定が混在している)。
ナカカラ戦ではドレンノ連邦軍、ウルッシ共和国軍、ダラーン騎士団の混成軍が使用している。ヤヤコシイ。

GTMグラーマス
コミック14巻p48とp49に登場。
ベラ国境の南部防衛ラインに侵入したバッハトマ同盟軍(ハプハミトン騎士団、ドレンノ連邦騎士団、ガマッシャーン・レイスル騎士団の混成軍)が使用していたGTM。
上記のスコータイの使用状況から、おそらくはドレンノ連邦騎士団が使用していたGTMということになる。エンジンの設計はストーイ・ワーナー。
旧設定のツァイトに相当するという設定もあったが、これはシャムラとするのが正解なため、同系列の派生騎になると思われる。

ついでに GTMヴェランタ
劇中には名称しか登場していない。
ベラ国境の南部防衛ラインに侵入したバッハトマ同盟軍(ハプハミトン騎士団、ドレンノ連邦騎士団、ガマッシャーン・レイスル騎士団の混成軍)が使用していたGTM。
詳細は不明だが、スコータイはレイスル騎士団から貸与されて騎体であるため、おそらくハプハミトン騎士団がもともと使用していたGTMと思われる。

GTMカイリーダウン・シャドンラ
ピチカート公国のシェン・ラン騎士団が使用するGTM。コミック14巻p183に登場。

GTMワイマールSR2
トリオ・テンプルナイツが使用する主力GTM。コミック14巻p180とp184に登場。NT2021年1月号に登場。

GTMボルドックス・ジェーム
ウモス国家社会主義共和国の主力GTMのひとつ。コミック15巻p167とp195に登場。
劇中登場時はザームラント騎士団が使用。ヤヤコシイ。

GTMハーミトン
ハスハ・ミノグシア連合の傘下国が使用している主力GTM。コミック15巻p179とp183に登場。頭部のみ。
劇中では、ベラ国家騎士団やシーゾス国家騎士団が使用。

GTMアルタイ
ラカン聖帝宮殿騎士団の主力GTM。シャムラおよびスコータイと同型騎。コミック15巻p184、p193、p198に登場。
同系列とされるアルタイとスコータイからして外観が全然異なるため、同型と云われても頭に残りにくい。

GTMライモンダとGTMバヤデルガ
ライモンダはウモス国家社会主義共和国が生産しているライセンスGTM。旧設定におけるデヴォンシャに相当。
バヤデルガはロッゾ帝国騎士団および帝国近衛騎士団が使用する主力GTM。旧設定におけるバルンシャに相当。
名前は何度も登場しているものの、劇中には未登場。汎用騎のためアチコチの騎士団で使用されている模様。
ナカカラ戦ではカラン・ロッサム騎士団、三ツ星傭兵騎士団、ザームラント騎士団の混成軍が使用している。ヤヤコシイ。

GTMデ・ハビラント
イオタ宇宙騎士団の主力GTM。NT2022年1月号と2月号に登場。

うーん・・・ライモンダ・バヤデルガ系列、スコータイ・アルタイ・シャムラ系列で印象が統一できれば、読み解くのも楽になりそう。
(2022.10.23)

 

■ 2022年11月号


■ 枢軸軍各国首脳 (2022年11月号p59)

枢軸各国を治める国家代表とその思惑の解説。
フォッケヴォルフの孫が騎士でファティマ・蘭丸のマスターという設定が初出。ほかは劇中の各国騎士団の描写に関して、国家元首の考え方がどのような方向にあるか補足した内容になっている。
ウモス国は直接的な支配が目的であるが、ほかの国家は支配それ自体が目的ではない模様。なんとなく「こういう性格の国家だよ」というところを頭にいれておけば、今後の星団侵攻に対する姿勢も見えてくるかも知れない。
(2022.11.06)


■ ダイ・グの出撃 (p60)

今回はダイ・グの緊急出撃に合わせてフィルモア軍が全力で支援する状況が描かれる。考察するようなポイントはとくにないが、自分なりに気付いた点をメモ程度に列挙。

ダランスが戦闘展開を行ったことでブリッジのモニタやシートも戦闘に適した状態に移行。
参謀長もレーダードームの傍に寄って立ち位置を変えたことで、ミヤザは自分の立ち位置をどこにしたらいいか判らずオロオロしている(p61の5コマ目と6コマ目)。芸が細かい。

ダランスの上面に飛行甲板出現(p62の1コマ目)。コマの中で小さくて判りにくいが、たぶん中央の四角いパネルが、p64で戦闘機が飛び立っていく飛行甲板である。

アルカナ・オーデルは重装型のため、拠点防御でも真価を発揮できる(p62の2コマ目)。突撃する際は最前方、後退する際はしんがりを務めるために最後方(最後まで敵軍を向く方)に置く運用が基本となる。
アルカナの部隊はスペード大隊とクラブ大隊が「黒部隊」と呼ばれる模様。なので、ダイア大隊とハート大隊は「赤部隊」と呼ばれるのだろう。

情報管制専任AFは、やはり負傷・療養している騎士のパートナーが持ち回りで当たることが判明(p64の4コマ目)。

ダランスの突撃装甲形態は旧称に倣って「シワルベ」と呼称するようだ(p65の3コマ目)。シュワルベ(Schwalbe)とはドイツ語で「ツバメ」の意味。

雷撃機が急降下するシーンで両翼の後方に小さい翼が出ている(p69の3コマ目)。これがおそらくエアブレーキ。
こういったブレーキを出してエンジン出力を落とさずに速度を落とすことをダイブブレーキと呼ぶ。
なお、急降下爆撃の思想・研究は第一次世界大戦の終戦後の1919年から始まり、第二次世界大戦中は洋上・地上攻撃において猛威を振るった。
なので、劇中ではゼレがメタなツッコミを入れている。
(2022.11.06)


■ 艦種・戦闘機・武装の解説 (p62)

フィルモア軍の艦種・戦闘機・武装について。文字列から想像できる範囲で解説。

電磁波妨害クラスター爆弾
電磁波障害を引き起こすクラスター爆弾。着弾・爆破によって電磁波や攪乱物質をまき散らして各種センサーを一時的に無効化する機能をもつと思われる。
クラスター爆弾とは、容器となる大型の弾体の中に複数の子弾を搭載した爆弾のこと。集束爆弾とも呼ばれる。

チャフブースター
おそらく、起動によって電磁妨害粒子をまき散らす機能をもつ追加推進器を指す。目標地点で起動する方法が本来の使用方法と思われるが、対GTM戦において航空機は悉く撃墜されるため、機体の爆散と同時に粒子をまき散らす方法が一般化しているのではないだろうか。

EAポッド
EAはおそらく「Electronic Attack(電子攻撃)」もしくは「Electronic Arms(電子兵装)」の略語であり、電子機器に影響を与える各種兵装を搭載したポッドを指しているものと考えられる。

ビーム妨害ディスペンサー放射ミサイル
おそらく、光線や電磁波を反射あるいは吸収する粒子を散布することで光学兵器を一時的に弱体化する機能をもつミサイルである。

強アルカリ粉末弾/ハイポリマーパーティクル弾
劇中で「イオンジャマー誘爆(弾)」と説明されてることから、爆発によって強アルカリ粒子をまき散らし、重イオンを用いる荷電粒子砲の照射を受けた際に誘爆・燃焼して目標への到達を妨げる機能をもつものと考えられる。強アルカリとは塩基解離定数の大きい塩基(強塩基)のこと。水溶性で水酸化物イオンを生成する。リチウムやナトリウムなどアルカリ金属の水酸化物は強アルカリである。

小麦粉末散布弾/火炎触媒赤外線弾
小麦粉をまき散らし、熱線が照射された際に粉塵爆発を起こすことで火炎を発生させ、一部の電子銃を無効化する機能をもつものと考えられる。

戦闘機
敵航空機との空対空戦闘を主務とする軍用機である。英訳ではファイター(Fighter)と呼ばれる。
近年では戦闘爆撃機や戦闘攻撃機、爆撃・攻撃に加えて雷撃や哨戒・観測も可能なマルチロール機が登場しており、これらを全て含めて戦闘機と呼称する場合もある。
劇中に登場した戦闘機も、今回はミサイルの投下だけに使用されていることから、マルチロール機であることが判る。

攻撃機
地上・洋上の目標への攻撃を主務とする軍用機である。英訳ではアタッカー(Attacker)と呼ばれる。
攻撃目標は艦船、戦車、施設等となるため、主要兵装は空対地・空対艦ミサイル、誘導爆弾、通常爆弾、ロケット弾などで、これらを目標に応じて搭載する形となる。なお、より多くの爆弾を搭載し、広範囲の攻撃に特化した機体は爆撃機と呼んで区別する。英訳ではボマー(Bomber)。また、ミサイルや誘導爆弾が発達する以前は機体を急降下させることで目標にピンポイント爆撃を加える手法が主流であったため、これに特化した機体は急降下爆撃機と呼ばれた。

雷撃機
雷撃(航空魚雷による対水上艦攻撃)に特化した軍用機である。英訳ではトーピード・ボマー(Torpedo Bomber)と呼ばれる。投下した魚雷は水面下を直進し、艦艇に当たった際に爆散する。その運用から、目標上空に侵入して爆弾を投下する水平爆撃を兼務することができる。FSSの劇中では、上空から急降下して推進力を持たない爆弾を投下する軍用機(=急降下爆撃機)を指して雷撃機と呼称している模様。それ故に、劇中では急降下雷撃機とも呼ばれている。

ECM艦
ECMとは「Electronic Counter Measures」の略語で「電子対抗手段」のこと。戦場・戦域で電磁波妨害を担う軍艦を指す。また、船体上面に円盤状のレドームらしき装備が確認できることから、敵軍の妨害に対して高い抵抗性を備え、各種索敵機能が強化されているものと考えられる。対電波放射源艦と共に運用し、オーロラシステムを制御する役割をもつようだ。

対電波放射源艦/ARW-EA
戦場でオーロラビームを照射し、オーロラフィールド(人工磁気嵐)を発生させる役割をもつ。その運用上、電磁波の負荷が最も高いオーロラフィールドの中心に置かれることから、システム自体の制御はその僚艦となるECM艦が行う仕組みになっているようだ。
ARW-EAについては、オーロラビームを照射する艦艇であることから、おそらく「Aurora Weapons Electronic Attack」の略語であろう。直訳すると「オーロラ兵器電子攻撃」という意味になる。

超原子生成爆弾/アトミックバーサ
ミサイルに内蔵された小型加速融合機で重元素に荷電粒子を衝突させ、一時的に半径500mの範囲に放射性元素を放出することで大量の放射線(粒子線および電磁波)を生み出し、以てGTMの眼球システムにパニックを引き起こす爆弾である。熱線・被爆は発生しない。加速器で生成される放射性元素にはわずか数秒で半減期を迎えるものから数分間もつものまで様々であるが、ジョーカー星団では半減期をコントロールすることが可能となっているようだ。また、放射される粒子線や電磁波を意図的にカットすることで人体への影響を抑えているらしい。
劇中ではガンマ線をカットするセリフがあり、アルファ線やベータ線はカットされなくとも被爆の影響はほとんどないが、取り扱いを違えればかなりキケンな爆弾である。劇中でも「超危険」「マゼルナ」「キケン」と注意書きが表示されており、一般人が触れるモノではないことが伺える。
バーサ(versa)には「逆に」という意味があるため、核分裂爆弾とは「逆に」重元素を生成させる爆弾ということでアトミックバーサと命名されているのだろうか。なお、超原子(superatom)は放射性元素とは定義が異なるので注意。

ノーベリウム259生成放射
超原子生成爆弾の起動によって発生するノーベリウムの生成現象。ノーベリウム(nobelium)は元素記号No、原子番号102の放射性金属。人工放射性元素であり、キュリウムなどを標的に粒子加速器で荷電粒子を衝突させることで生成できる。ノーベリウム259は同元素の12個の同位体の中で最も安定しており、半減期は58分とされる。劇中で爆発や熱線の発生はなく、ガンマ線もカットされるため人体に影響はないとの説明が成されているものの、取り扱いを違えればかなり厄介なことになるはず。

こんな感じだろうか。
超原子生成爆弾は推進力を持たない。なので、地上に攻撃する際に上空から急降下して落とす必要がある。第二次世界大戦ではこの役割を果たす航空機を急降下爆撃機と呼称していたのだが・・・おそらく、ジョーカー星団では宇宙船の実用化と共に戦場が宇宙空間に移り、急降下爆撃という概念が消失して雷撃機という概念だけが残ったものと考えられる。
(2022.11.06)

ダイ・グがダス・ゴーストで地上に降り立ったシーンで今月号は終了。
展開が熱すぎる!

 

■ 2022年12月号


■ ディー・ウィリーズ=ダス・ゲスペンスト=ダス・ゴースト (2022年12月号p59)

ダイ・グの乗騎となるダス・ゴーストのデザインおよび設定解説。カッコイイ。けどごめん。頭頂部がメチャクチャ精巧な「毛抜き」に見えてしまう。
デザインズが出る度に混乱していたホルダ型GTMの設定も、おそらくこれで最終決定ということになるだろうか。

ドナウ帝国が星団暦の初頭に製作した皇帝騎=カイゼリン型GTMが4騎。うち3騎は現在までに名称が変更されている。
1番騎がホルダ17型 ディー・カイゼリン
2番騎がホルダ19型 ディー・メロウラ ⇒バンシーカ ⇒ナキメーカ
3番騎がホルダ21型 ディー・プリンシパル(ジー・ボリショイグーガント) ⇒ダス・カイザース
4番騎がホルダ23型 ディー・ウィリーズ ⇒ダス・ゲスペンスト ⇒ダス・ゴースト
ゲスペンスト(Gespenst)はドイツ語で「幽霊」の意。

星団登録型式名、騎体、型式などは、デザインズ4の内容と見比べると凡そ整理が付く。この辺は単語辞書に登録した際にキレイに並ぶのでそのうち更新します。
ただ、今回の設定で4騎ともドナウ帝国製に位置づけられたため、コミック13巻p150で解説されていた東西フィルモアの皇帝騎の交換が、実際には無かった扱いになってしまう。友好の証としてメロウラだけが太陽王国直系のレーダー王家に贈られた形になるだろうか。
また、サヤステ家はドナウ帝国傘下ではなく、AD世紀の末期の時点でダス・ラントから分離してクバルカン法国が成立していたことになっているため、ディー・ウィリーズがサヤステ家管理という設定は少し微妙。あくまでも当代のハイランダーに貸与されていた騎体ということになるはず。

ダス・カイザースがメリンダ・クルップ設計による新型騎という設定はボツに。カイゼリンに搭載されているペダン07型エンジンは超帝國時代から残る唯一の遺産という設定もボツとなった。
うーん・・・ホウザイロ・グレント(旧設定のクルマルス1)がブラウ・フィルモアの乗騎になっている設定もあるので、メロウラはレーダー王家へ、ウィリーズはフィルモア王家へ、プリンシパルはそのままバルバロッサ王家の管理となっており、三色の娘がバルバロッサ王家の預かりとなった際にダス・カイザースとして渡された、とする方が収まりがいいような気もするな。
てか、ボットバルトさんが皇帝騎のひとつを使用していたのが驚き。

今月号の解説でカイゼリン・スーツが結局いつから運用されていたのかよく判らない状況となったが、このスーツは一応シリーズ・シアン夫人が製作したことになっているので、古くから使用されていたスーツということにはならない。もし以前から使用されていたとしても、慧茄とチャンダナのコンビが成立した後になるはず。

なお、コンコードが所有するカイゼリンスーツは最終的にタワーに渡るらしいが・・・それ以前に聖弟ナラリタのパートナーとなるハスノホルテに貸与されるとのと。
もちろん、スーツだけ貸与する訳がないので、一時的にカイゼリンが貸し出されるということだろう。
というか、聖なる弟って誰?何?
マグダルに弟ができるとも思えんけど・・・義兄弟ができる可能性はなくもないのか。というか、「聖帝」の間違いではないのか。その場合はバキン・ラカン帝国の所属ということになるが。
(2022.11.19)


■ ダイ・グとクリスが出会ったのは・・・ (p60)

ダイ・グが「バキン・ラカン王都」と口にしているものの、劇中でふたりが出会った場所はエラルド島の自由都市ナランシである(コミック10巻p131)。
ナランシは自由都市であって王都(=首都ラッカのこと?)ではない。
あるいは、エラルド島がかつてフィルモアの領地であった時代の王城が遺っており、聖帝による天位・剣聖位の授与がこの城で行われているのであれば、王都と呼ばれるのかも知れないが。
なお、フィルモア王家領は島の北部にあるため、エラルド・フィルモア王家の王城もそちらにあるものと思われる。
(2022.11.19)


■ 一世一代の大口上 (p62)

星団に生きるすべてのヒトにフィルモア皇帝の意志を伝えるため、バランス、バランシェ・ファティマ姉妹の連携による星団全域の通信回線の乗っ取りが行われる。
今回、話は結構単純なのに、アチコチ考察すべき点がある。

まず、チャンダナのクリアランスがフローレスに格上げされている。彼女のもともとのクリアランスはVVS1である。
おそらく、慧茄、ダイ・グとフィルモア帝国の皇族ふたりを歴代のマスターとしたことで、品性の再評価が成されたものと考えられる。
クリアランスの見直しは稀にあり、設定上でも後にフローレスに格上げされるファティマとして、アウクソー(カイエン死亡後)、コンコード(魔導大戦終盤)、町(後年)、バクスチュアル(後年)の名が挙がっている。

バランス、バランシェ・ファティマ姉妹が揃って登場するため、彼女らのシリアル番号が併記されている。
ただし、今回記載されている「BF-」「BF-Fa-」「BFe-」「BF(S)-」「BF(L)-」「BF(A)-」という表記はおそらく製作者と製作順を読者に伝えるための便宜的な表記方法と思われる(例として、クローソーであれば「BFLuFF-45CH」という設定もある訳だし)。
あと、ファティマの名前を紹介しているタグがファティマスーツの色に合わせてあるのに注目。まだキャラシートが発表されていないファティマもスーツの色が予測できるようになっている。ただし、チャンダナは今回のカイゼリン・スーツではなく、デカダン・スーツのイメージカラー(山吹色)である。

チャンダナがフル・クリティカル・ステータスに入るシーンを見る限り、設定されていたカイゼリン・スーツの特殊機能が別の機能に置き換わったように思える。
もともと設定されていた機能は、数千・数万の軍勢であっても全て制御下に置くことが可能というもの。とくに、旧ハスハ連合共和国およびフィルモア帝国に所属するGTMに対しては常に上位の割り込み制御が可能(フィルモアに関してはフィルモア皇帝からロック解除のコマンドを得る必要あり)とされていた。今回の描写を見る限り、強制介入および星間通信に関して強力なサポート機能を有しているようだ。永野センセーが予定していたシナリオから変更したのかも知れない。あるいは、割り込み制御のために設定されているリソースの全てを強制介入に向けただけなのかも知れないが。
(2022.11.19)


■ カラミティの姉妹たち (p64)

バランス、バランシェ・ファティマ姉妹の連携が始まるシーン。
各太陽系の間が約1.5光年離れているにも関わらず、ほとんどタイムラグなしで互いに通信が可能ということが判る。つまり、ジョーカー星団では光速を超える通信網が形成されていることになる。
光はこの宇宙において最も速い速度で移動するため、これ以上の搬送波というモノは存在しない。また、光ファイバのような回線がなければ、発した光はわずかな角度の違いによって目標方向から外れるため、距離が延びればそれだけ拡散して弱い光となる。おそらく、映像・音声・コードを亜空間経由で送信するネットワークが星団法委員会傘下の広域通信機関によって管理・運用されており、各国の国家機関、報道機関、一部の通信事業者に対して利用が認められているものと考えられる。一般市民はキャリア契約を結ぶことでこの通信網を使用している形になるのだろう(現在の携帯電話と一緒)。
今回、これに強制介入をしたことから「星団法違反」という扱いになるものと思われる。

これができるならコミック7-8巻の天照救出作戦もアトロポスと合流できた時点で救援信号が送れたはずじゃん、と考えなくもないが・・・今回は星間通信のネットワークに対して違法に介入する裏技を使用しているから、と考えることにしよう。たぶん、普段は実行できないか、できたとしても機密を保持した状態の通信はできないものと考えられる(=天照の力が消え失せたという情報は機密性が高過ぎて送信が憚れた等)。

オデット(白鳥時)のマスターはジークママ、オディール(黒鳥時)のマスターは茄里、という設定もあったが、茄里と一緒にいる状態でオデットになっている場合もある模様。
まあ、GTMに搭乗する状況でなければ、素の状態に戻っていたとしても不思議ではない。茄里が白鳥時のマスターで無かったとしても、オデットにとってブラウ・フィルモア王家の縁者は全て家族のような扱いだろう。
とは云え、遠く離れたアルケインにオデットがいるということは、ナカカラ戦にジークママが参加する可能性はゼロということ。ここはぜひ乱入して欲しかったので残念。

よく見ると、アラン・リーがフィルモア帝国帝国近衛兵学校の制服を着ている。茄里はベストを着ているようだが、おそらくこれも学校指定のベストと思われる。
この学校は寄宿舎生活が基本なので、このふたりはたまたま学校が休みに入り帝都から里帰りしてきたタイミングであることが判る。冬休みということになるのかな。なので、p64の1コマ目に描かれている車輌はおそらくアルケインに実家がある生徒を乗せて来た送迎のスクールバスではないだろうか。王城の外であればオデットもフード付きのマントを羽織らなければならない場面だが、今回はファティマが総出で出演するためにファティマスーツでの登場になったのだろう。

アイオ・レーンはジャスタカーク公国に、グレース・スドールはロッゾに、ベルミ・クローゼはウモスに、それぞれ帰国していることが判る。
ナカカラ戦に参加しているロッゾ軍、ウモス軍の本隊は、トップが不在ということ。それだけ、今回の戦は枢軸各国にとっては重要でもなんでもない、ということだろう。
バッハトマ軍もただの様子見なので、あくまでもフィルモア帝国における内ゲバという扱いであることが判る。

マドリガルは情報特化型ファティマなので、ハッキングはお手の物。
デカダン・スーツは初登場。ロッゾ・ファティマの共通制服と思われる。永野センセー、マドリガルの頭髪のトーン間違ってる。あとネロスかわえぇ。

先月号で存在が匂わされていた、蘭丸とそのマスターたる「ムックル総統の孫」が登場。メラリア・ムックル・ダンチヒという名前から、クローター・ダンチヒの縁者であることが判る。
制服のデザインがベルミのものと近いので、おそらく騎士団の中でも団長に近い特別扱いと思われる。蘭丸が意外にあっさりしたタイプの顔。設定上は雄型ファティマのS型。人種タイプは不明。
「わかっておる」というセリフから、ベルミ・クローゼが報告に来た時点でムックル総統は既に事態を知り得ていたことが判る。植栽の手入れをしながら、戦場の様子をちゃんとチェックしていたのだろう。出番がないのにかなり切れ者の国家元首であることが判る。
(2022.11.19)


■ ボォスの姉妹たち (p68)

ファティマ・ソナーのマスターがハイクル・コリーナという騎士であることが判明。
彼女のファティマスーツに「漆黒の花十字」があしらわれているので、ミラージュ騎士であることがほぼ確定。
この娘、初登場時はエプロンでスカートの部分が隠されていたのな。永野センセーがわざと見えないようにしていたのかも知れん。
という訳で、バランシェ・ファティマ全員のマスターがついに判明した形となる(一部は現時点でマスター不在だけど)。
これってつまり、物語上でバランシェ・ファティマの全配置が確定したってことよね。メタな意味で星団侵攻につなげるための準備が全て整ったということだろう。
魔導大戦が終わったら星団侵攻につながっていく訳で…つまりは「全てのバランシェ・ファティマが協力したこの瞬間」の後で互いに戦い合う時代に突入していくということ・・・その悲劇が目の前に来ているという見方ができる。

ソナーはおそらくドイツのドラム・メーカーとして知られるソーナー(SONOR)が元ネタ。コリーナはおそらくギブソン社が50年代の末期に生産したギターに使用されていたコリーナ・ウッドが名前の元ネタと考えられる。つまり楽器つながりのコンビである。

ミースが対面している相手は誰だろう。カメラが後ろ方向から来ているので判らない。
ログナーが成長して髪を伸ばした・・・とも思えないし。アララギ君とも髪型が違う。デコースだろうか。それともハイクル・コリーナそのヒトだろうか。あるいは体を作り変えたモラード侯だろうか。

ボォスにいるメンバーの周りに枯葉が舞っていることから、劇中の季節はおそらく秋か冬。上記のアラン・リーの制服の件も含めるとやはり年末だろう。
にも拘わらず、マキシは半袖のブラウス1枚で登場している。
子供でやたら元気だからなのか。騎士であるが故に身体が頑健なのか。S.S.L.の匂いがついた服がたまたまコレだけなのか。天照から支給されたブラウスに長袖が無かったのか。
あーでもネクタイにスバース隊のエンブレムがあるから、天照の支給品だけで生活している訳では無さそう。やっぱり子供で元気なだけか。
あと、クラカラインが出てこない。マドラと一緒にどこかに行っている可能性あり。

p68の「45+3+2+4+4+3」計61名の内訳。おそらく下記のとおり。
45:バランシェ・ファティマ+マキシ (バランシェのボディ分とマキシの抜き差しで45になる)
3:ユリケンヌ、シクローン、モンスーン
2:ロンドヘアライン、ムーンチャイルド
4:ヨーキ、サロメ、パトラ、ナゴン
4:SSL、ニーヴ、ダイオード、オーバーハイム
3:アルファ、ビューリー、デルタベルン
ただ、これで計61名ということになると、ユーパンドラやクローソーも来月号以降に出てくることになる。
無理なような気もしなくもないが、上記で書いたとおり「全てのバランシェ・ファティマが協力したこの瞬間」を描くのであれば、4100年時に戦うことになるアトロポスとクローソーが協力するシーンが欲しいな。
成人後のアトロポスとクローソーの絡みってないから、星団侵攻が始まる直前のこのタイミングにこそ「協力した」シーンが欲しいよね。

あと、個人的にデルタベルンとクローソーの居眠りコンビの絡みが欲しいところ。
デルタベルンはフォーカスライトから「GTMの強制リブート能力」を引き継ぐことになる訳で、これをもって「クローソーを載せたまま凍結されているSR4ジ・エンドレス」を動かすことができる唯一のファティマになることが予想される。なので、ふたりがこの時点で「協力した」となれば、後につながるピースにならないかなと。
デルタベルンのスーツの色はあずき色。天照家の色に近いのも意味があるかも。

ミース製作のファティマで、ビューリーは2体目、デルタベルンは3体目であることが判る。アルファは処女作なのでもちろん1体目。
えーっと・・・初期ファティマの四姉妹って、確かフォーカスライトが長女、ニーヴが次女、S.S.L.が三女、インタシティが四女のはずだけど。三女のはずのS.S.L.がニーヴのことを妹と云っている。自分のメモ間違いかな。

聖宮ラーンに三条香が来ている。ヘアードと話していたとおり、イマラの依頼を受けてドーマが流しているヘリオス鋼の情報をやり取りしているのだろう。
ヘアードはラーンに近づけないため、おそらく宇宙都市で待機して彼女の帰りを待っているものと思われる。
三条はこの後でミース邸に向かい、その後でバッハトマに捉えられることになる。
ダイモンが「サロメ姉様たちと星間空域をリレー」と云っている。つまりタイトネイブや斑鳩はまだ宇宙船あるいは宇宙都市にいるということ。
彼らと協力するのであれば、ダイ・グの口上はおそらくカーマントーにも伝わるだろう。マグダルにその声が届くシーンもあるかも。
(2022.11.19)


■ ナカカラ交戦域の姉妹たち (p70)

アンドロメーダの素顔(フードなし)が初登場。めっちゃカッコイイ。
クライマー・パイドルの姪ミュート・ル・パイドルがメヨーヨ軍の所属で、ムーンチャイルドのマスターであることが判明。
エトラムル・ファティマのマスター同士で連携を組んでいたのが面白い。相性とかあるのかも知れない。

そして、ファティマ・ヨーキはバランシェが製作したファクトリー・ファティマの2体目であることが判明。おそらくサロメが1番目ということになるだろう。
3体目がパトラ、4体目がナゴンになるだろうか。

ボォスでシカトこいてるのはおそらく令令謝。チャンダナがヒュートランに任したのであれば、おそらく間違いない。んで、やはりと云うべきか、ワスチャはボォスに来ていると考えていいだろう。このタイミングで何をやらかすのか楽しみ。
チャンダナのセリフから、オーロラはアドラーに戻っていることが判る。ユーゾッタが以前の戦闘で怪我を負っているため、バキン・ラカンにそのまま戻っているのだろうか。
という訳で、ジュノー、アドラー、デルタ・ベルンにいるファティマは来月以降に登場するっぽい。
注目すべきは、やはり休眠中のクローソーとユーパンドラ、暴風3王女とそのファティマ、久々に登場して欲しいビュラードとメガエラのコンビあたりだろうか。このヒトも絶対何かやっているはずなので、どこで何をやっているのか気になる。

ダイ・グが話したいことが何であるかは判らない。予測も無粋に思えるので来月号を楽しみにしたい。
ただ、彼がやりたいことって建前上は「星団全てのヒト」に伝えることであっても、実はその中のただひとり「天照に声を届ける」ことを狙っているのではないかと思う。
星団民全てを代表して、絶対的な存在である天照に口上を述べる⇒それに答えるべく天照が選択した道が星団侵攻という形であっても、それはそれで熱い展開ではないかと。
(2022.11.20)

 

■ 2023年1月号


■ スタント遊星の解説 (2023年1月号p55)

おそらく星団暦3225年のエピソードで舞台となるであろうスタント遊星の解説。
2022年3月号に掲載された情報に拠れば、スタント遊星は大剛神モイキュードの巨大船であるという。無(ナイン)の大きさが通常の太陽クラスとなるため、その異様な巨大さも判ろうというモノ。
無(ナイン)の衛星の数が減って信(ネードル)と環(アトール)の2つのみとなったり、緩(カー)が連星(恒星ではないので正しくは二重惑星)になったり、多少の設定変更がある模様。
ただまあ、この辺の設定がホントに活用されるのも、あと10年以上先の話になるのではないか。

あと、永野センセーは発表済と書いているけど、ミース製作のシェイビスという名のファティマは今回が初出。
シーオン(シオン)は作品集「PLASTIC STYLE」が、パロッサは作品集「CHARACTERS #7 DRAGON KLEIN」が初出。
(2022.12.28)


■ アドラーの姉妹たち (p56)

先月号に引き続き、バランス、バランシェ・ファティマに拠る連携が継続中。久しぶりにビュラードが登場。
もっとこう何か重要なことをしているかと思いきゃ、意外と暇そうな様子。奥さんのサーパさんも久々の登場。コミック9巻以来。
カロリナ・リーフはおそらくナデジダ・リーフの妹か姉ということになるだろうか。娘・・・の可能性もあるか。

アルファはコミック13巻登場時から大きくデザインを変えて登場。ファティマが髪型変えてるの珍しいな。スーツはソリュートとほぼお揃いなので、これがS.P.I.の制式スーツということになるだろうか。ただ、名前を紹介しているタグが明るいグリーンなので、ソリュートとは色が異なるかも知れない。

ミューズとビュラードが既知の仲であることは、コミック4巻の時点で既に描かれている。四角四面な性格だった若いころのミューズがよくトンチキなビュラードと仲良くなれたものだと思うけど、そういう懐の深さがビュラードの凄さ。彼がもつ端末の表示から、やはり惑星間の通信は光速を超える亜空間通信でつながっていることが判る。ただ、バランス、バランシェ・ファティマの連携は通信網に乗せたものでは無く、搬送波を用いない意識の共有・・・同調機能であることが今月号で明かされる。

また、劇中の描写からトランは夏であることが判る。素数ゼミとは、毎世代が正確に13年または17年周期に羽化し、成虫が大量に発生するセミのこと。周期ゼミとも呼ばれる。北アメリカ東部に生息し、13年ゼミは4種、17年ゼミは3種が存在。各地方で成虫が出現する年が異なっており、毎年異なる地方で周期ゼミを確認することができる。首都ノーフォートの個体群は星団暦3069年が発生年であったようだ。
大統領の別邸もほとんどホワイトハウスと同じデザインなので、トランはアメリカの風土・文化がベースになっていることが判る。
(2023.01.02)


■ 個にして全 (p58)

ビュラードが同調するファティマに対して「個であり全」という表現を用いている。
「個にして全、全にして個」あるいは「一にして全、全にして一」という言葉は、「風の谷のナウシカ」や「鋼の錬金術師」においても引用されているようだが、その本流は仏教や一神教あるいは哲学において唱えられている考え方である。ごく簡単にまとめると、個の意志をもって存在している生命体であっても、その総体(=全体)には根源的な意思が宿っており、それは個の意志の内に存在している。故に両者は同一の存在であるという考え方である。仏教や一神教ではこの根本的な意思の部分に仏や神を置き、ヒトは仏や神と同一の存在であることを説いている。
哲学においては、古代ギリシャの哲学者ヘラクレイトスが流転している万物とは別に根本的な存在(ロゴス)があると説き、「万物は一である」という言葉を遺したとされる。

FSSで面白いのは、その「個であり全」という考え方にオーバーマインド(overmind)という単語を充てているところ。
オーバーマインドは「幼年期の終わり」に登場する「宇宙を統括している精神体」であり、この作品ではやがてオーバーマインドと一体化する存在としてヒトの中から現れる新たなヒトを描いている。
FSSの劇中では、ヒトの枠を超えてやがて一体化する存在として(あるいはそこに至る要素として)、バランシェ系列のファティマを置いている訳ですね。

旧設定において「ビヨンド・クラスファー・オーバーマインド」と呼ばれてた存在は、最新設定において最高位存在アマテラス(大雲上)と呼ばれている訳だが、これは天照とラキシスが融合した後に現れる最終進化形態である。つまり、「個であり全」であるところのバランシェ系列のファティマのひとり、且つ、そこから個体進化する要素をもつラキシスが、光の神アマテラスと融合することで最終進化が行われると。逆に云えば、天照はラキシスを介してバランシェ系列のファティマの輪に加わることで、もしくは、その輪を取り込むことで最終進化するという考え方もできるかも知れない。

面白いのは、ファティマに関して門外漢であるはずのビュラードが、バランシェ系列のファティマの本質を既に見抜いているところ。このヒト、アトロポスが戦闘能力3Aの違法ファティマであることも判ってて承認していたりする(コミック7巻p136)ので、実はファティマという存在について結構深いところまで知っていたりするのかも知れない。なんせ、バランシェが生活していた国家のトップだもんね。

さて。

個であり全、つまり、バランシェ系列のファティマは個体として存在しながら、群体としての統一意識をもつ「進化した人類=オーバーマインド」であることが明かされた訳で。本来、この段階に進化した人類から戦争は根絶されるはずなんですよね。しかし悲しいかな、ファティマは「戦争の道具」であり、且つ、「人類に従属する存在」として生み出されている。なので、上位に位置する彼女たちは、下位に位置する人類によって戦争に巻き込まれることになる。ビュラードが危惧しているのは、人類はまだそのレベルに達するほど成長していないということ。ただでさえファティマを危険視する向きもあるので、放っておけば余計な火種になるかも知れない。バランス家は人工生命体に対してかなり先走り過ぎている訳である。

んで、ビュラードの心配とは別に、結局すべてのファティマは星団侵攻によって戦乱に巻き込まれることになる。この舞台を整えるのは、彼女たちが敬愛する天照そのヒトである。ほかならぬ父親と愛する存在の導きによって、ファティマが互いに命を削り合うことになる物語。これがFSSの世界で構築される悲劇性ということになる。あるいは、バランシェはその点に気付いて、人類のクビキから解放されるよう最終三姉妹のダムゲート・コントロールを外したのかも知れないが…結局これも裏目に出て、アトロポスとクローソーは戦うことになると。悲劇の入れ子状態と云うべきか。
ラキシスはさらに進化する存在として生み出されたから、彼女たち姉妹にとっての最後の希望というのもよく判る。その彼女もまた、神々と並ぶ存在となるために56億7千万年の旅路を歩き続けなければならない。・・・永野センセーは自分が作り出した彼女たちをそういった煉獄に送り出すことになる訳で、せめてもの償いに「ファティマに捧ぐ(Dedicated to Fatima)」って謳っているのかも知れない。あるいはそれは最高位存在天照から贈られた言葉なのか。

という訳で、先月号から見せられているのって「悲劇に堕ちるその直前の瞬間」「彼女たちが最も幸せだった瞬間」ということになる。これは来月以降も目が離せないですよね。FSS全体から見れば、前半の山場みたいなもんだ。まあ、先行して先先(マーター・マーター)が登場しているので、彼女たち姉妹の苦難の果てにちゃんとゴールがあることは明示されていることになる。そういう点では、FSS全体は悲喜劇の形を採っているとも云える。ギリシャの女神が多いのもなんか納得。
(2023.01.02)


■ ジュノーの姉妹たち (p59)

ジュノーでは成長したコーラス4世、トリオの騎士団長に再就任したアイリーン・ジョル、シャーリィとバランカの娘アムーラ・バランカが登場。アムーラは母親譲りのモアモアの髪の毛をもつ模様。おそらくはロレッタ・ランダースの祖母に当たる人物ということになるだろうか。んー・・・パトラとエフロシューネのスーツ、よく見るとリファインされている。パトラはコーラスの紋章が付き、エフロシューネはほぼ全面改修されてバランカ家のマークも追加されている。まあ、ほかのファティマも細部はいろいろ違うのかも。

エフロシューネが述べている3100組と3159組について。
リブート2巻に掲載されていた永野センセーの解説によると、FSSは年代ごとに活躍する主要キャラクターが決まっている模様。ただし、本人ではなくそこに到達するための血縁・・・先祖や子孫が先に登場している場合もある。振り返りのためにリブートの考察文書を持ってきて、一部修正してみた。これまでに明かされているのは、4100、3960、3239、3159、2017の5組である。

4100年組は、コーラス、シャーリィ、マイスナー、ユーパンドラ、ケンタウリ、ボード、アトワイト。つまり、コーラス26世、ロレッタ・ランダース(シャーリィの子孫)、ディジナ・フレット(リザード・マイスナーの縁者・子孫)、ファティマ・ユーパンドラ、ブロード・ケンタウリ(ラルゴの子孫)、ウェイ・ルース(ボード・ビュラードの子孫)、アラート・エックス(リィ・エックス・アトワイトの子孫)ということ。ここに並ぶ子孫・先祖はいずれもコミック1-3巻の時点で既に登場している。

3960年組は、コーラス、ハリコン、メロディ、マイスナー、エスト、レオパルト。つまり、コーラス25世、剣聖ハリコン・ネーデルノイドの縁者(?)、アルル・フォルティシモ・メロディの子孫、マロリー・マイスナーの子孫、ファティマ・エスト、カーレル・クリサリス(レオパルトの子孫)ということ。3960年はコーラス王朝が崩壊する年である。コミック1巻の冒頭で描かれたエピソードであるが、ハリコンの縁者(?)とアルルとマイスナーの子孫は登場していない。つまり、今後描かれる可能性が高いということだろう。気になるのがやはり剣聖ハリコン。ハリコンは既に他界したことになっており、直系の子孫は途絶えている。それにも係わらず「ハリコン」の名前があるということは・・・意外と本人が何らかの形で係わってくるのかも知れない。

3239年組は、マキシ、マグダル、ログナー、シルビス。3239年はスタント遊星攻防戦の年であり、サタンが襲来してくることが予想される。セントリー、懐園剣、ログナーが参戦することは明白で、この戦いにはシステム・カリギュラも参戦するらしい。マキシはこの戦いで命を落とし、異世界タイカに転生するため、シルビスも絡んでくるということだろう。

3159年組は、アイシャ、レーダー9世、マグダル、ペール。3159年は天照の大侵攻が開始される年。アイシャは星団暦3159年までの全エピソードに登場するらしい。逆を云えば、3159年以降は登場しないということ。年齢的にもかなりの老婆になっているはずで、リブート6巻に掲載された情報では、A.K.D.、天照家、コーダンテ家からも離れて隠遁し、どこかの国家で帝位を冠するようだ。また、魔導大戦の終結後にビューティ・ペールが絡んでくるあたり、いろいろと面倒なことになりそう。

2017年組は、ミコト、サヤステ、コーラス、サイレン2、リトラ、ウラニウム・・・つまり、天照家83代当主の命(ミコト)様、アルカード・サヤステ、コーラス19世、フィルモア2世(サイレン2はおそらく間違い)、天照の妻になる以前のリトラ、ウラニウム・バランスということ。リトラとウラニウム以外のメンバーは星団法制定時のメンバー。リトラとウラニウムは天照に関係する人物であるが、2017年は天照が生まれる3年前に当たる。ふーむ。

今回言及された3100年組についてはこれまでに設定が明かされていないが、確定しているのはミッション・ルースの死去、ノルガン・ジークボゥの出陣、アドラー星動乱(ヨーグン・アダマス関連)、ショウメ・タワーの完成などのイベントがあるということ。作品集「JOKER3100」ではミッションの死亡が3149年に設定されており、マスターを失ったメガエラがフロート・テンプルに入城する際に、天照、ログナー、ルン、ランド、リィ、レオパルトが付き添っていたのだが、この辺はさすがに設定が古すぎてアテにならないか。
エフロシューネが3100年組ということは、コーラス勢もしくはマスターのアムーラ・バランカがビュラードの最期の活躍に絡んでくるのかも知れない。
(2023.01.02)


■ 風の姉妹とハスノホルテ (p60)

ジュノー組が長くなってきたので分ける。コーラス王朝の季節は早春。桜満開の時期に当たった模様。セイレイとマロリーは仲良くお花見中。
セイレイたちが食べているのは下鴨の加茂みたらし。みたらし団子発祥の地とされる京都府京都市左京区下鴨にある賀茂御祖神社(かもみおやじんじゃ)。通称下鴨神社の西側・下鴨本通り沿いにある甘味処「加茂みたらし茶屋」の団子である。串に刺さっている団子は5つあり、先端の1つとほかの4つが離れているのが特徴。ちなみに加茂みたらしは5本で590円(2022年現在)。セイレイとマロリーに食いっぷりと散財ぶりは常軌を逸していることが判る。
桜餅は関西系なので道明寺を食べている模様。関東以北の東日本の桜餅は小麦粉を使用する餅で長命寺とも呼ばれる。ちなみに桜牧師の出身地である新潟と、現在住んでいる北海道は関西系の道明寺の方をよく見る。関東以北なのに飛び地で道明寺が根付いているのはおそらく北前船の影響と思われる。
出町ふたばは辞書登録してあるので省略。ここの豆餅はログナーの好物でもある。

セイレイが着ている制服はウィンド高等学校の制服で母親エルメラのお古とのこと。このヒトまだ高校生なんだね。留年しているのか。一方、マロリーが着ている服はおそらくトリオの騎士服(ケープ無し)である。この直前まで演習に参加していたのかも知れない。
柱に書いてあるカキコミを上から順に見ていくと「もうだれがだれのやらわからん、IV、colus III、XXI、M、II、XX、XVIII、II、(不明)、XVII(不明)、VI、III、XXIIがやった」と描いてある。「I」と「II」はほぼ判別不可能なので間違っているかも知れん。おそらくは背比べの跡のため、同じ世数があっても不思議ではない。一番下の部分が継手で修繕されているので、おそらくは22世が柱を折ってしまったことが判る。

ユリケンヌとアルルはホーダウンから離れてカステポーにいる模様。ナカカラ攻防戦には向かわず枢軸軍の動きを偵察しているのだろうか。ユリケンヌのデカダンは初登場かも。
ナオ・リンドーの会談相手のひとりはアルルであった模様。彼女はナオの古い知り合いではないので・・・用があるとすれば懐園剣とそれにまつわる何か、ということになるだろうか。

で、先月号で名前の出ていた聖弟ナラリタは、アダマス皇帝の実弟であり、騎士且つAFガーランドであることが明かされた。なぜジュノーのアルマ地方に来ているのかは不明。ハスノホルテは後にコンコードのカイゼリン・スーツを貸与されるらしいが、その際の舞台がアルマ地方あるいはジュノーになるのかも知れない。旧設定においては、コーラス王朝の崩壊時にクローソーとGTMジ・エンドレスが隠される場所であったが・・・最新設定では隠し場所が明確になっておらず、アルマ地方が本編にどのような形で関わってくるのかは不明である。
あと、ナラリタはダスニカ・ファティマについて「改造ファティマ」と呼んでいるので、彼の独自開発ではなく、ファクトリー製ファティマをベースとして違法に改造しているのかも知れない。
(2023.01.03)


■ 星間宙域の姉妹たち (p62)

出雲とイオタの面々が登場。シャリシャン・ホーカーって・・・すんません。ボツ設定になってると思ってました。オーダ宇宙海賊の頭目グスコ・グルゥもあっさりイオタに落ち着いている模様。
ヴィン・ティンのデカダン・スーツは初登場か。あと、この娘も髪型が変わってる(コミック11巻p64に登場)。

今回の描写を見る限り、ダイ・グとジーク、ジャコーは面識があったようだ。おそらくジャコーの中では義兄弟の扱いになっているものと思われる。
えーっと・・・ワイプ皇子が他界して、ジークママ、ジーク、茄里が剣聖慧茄に保護されて、おそらくは一旦エラルド島で生活。そこでしばらく成長してからカイエンの試練を受けて、おそらくは本国に戻るタイミングがあったものと考えられる。その際に出雲に立ち寄った感じだろうか。ダイ・グはこの後でエラルド島に戻り、ジークはおそらく本国に一度戻ってから母親と別れてフェイツ公国に渡航。そこでヨーンとちゃあ・ティに出会うと。
うーん・・・ダイ・グとジークを連れた慧茄が出雲に立ち寄る理由がイマイチ判らん。エストがクラーケンベールに保護されてホウライの開発を手伝って、そのあとでカステポーに戻されているはずなので、ホウライを開発していたダイヤモンドにエストの状況を聞きに来ていた可能性もあるか。慧茄はロードス公が黒騎士となる以前にエストを預かっていたことがあるので、そういった気配りで動いていても不思議ではない。

タイトネイブと斑鳩は相変わらず仲が良い感じ。
(2023.01.04)


■ デルタ・ベルンの姉妹たち (p64)

A.K.D.のメンバーは相変わらずユルユル。けど結構細かい描写が続く。

ベルベットが既に生まれてパルテノのマスターになっている。彼女の言に拠れば、ベルベットは通常の赤子と比べて成長が遅いようだ。それが超帝國剣聖の体質というのであれば、母親のマドラから引き継いだことになる。マドラに関して成長速度に関する言及はされていないが、あるいは隔世遺伝のような感じで子の方に強い形質が発現しているのかも知れない。

パナールが右手に持っているのはドイツが1934年に製造・配備したMG34。MGは「Maschinengewehr(機関銃)」の略語。ルイス・シュタンゲ(Louis Stange)が設計した空冷式機関銃MG30をベースに改良した機関銃で、ドラムマガジン給弾とベルト給弾の両方に対応し、軽機関銃・重機関銃に変更可能な世界初の汎用機関銃とされる。弾薬は7.92x57mmモーゼル弾を使用。製造はRheinmetall Borsig A.G.(ラインメタル・ボージク社)とMauser Werke A.G.(マウザー・ヴェルケ社)のほか数社が担当。
バケツに「第1中隊」とあるが、A.K.D.軍の備品が学校に置いてある訳ではない。おそらくちゃんとした学校の備品である。騎士兵学科では軍事教練に参加するクラスで分隊・小隊・中隊のグループ分けが成されているのだろう。1学年でおそらく1大隊クラスになるはず。ちなみに、ツバンツヒもコミック14巻で立たされているシーンがあるが、彼女は普通科の生徒なので軍事懲罰ではない。なので、水を入れたバケツをもっている形になる。

レンダウドはまだ小学生・・・じゃなくて中等部になっているのか。彼女のセリフでAD世紀の歴史が正しく伝わっていないことが判るが、もともと炎の女皇帝が星団を去る際に全ての痕跡を消してしまったので仕方が無い。コマ外の解説に拠ると、シトロン・メナーとちゃあ・ティは大学部に入った模様。ただ、グリース王立内宮高等学校に大学部があるという設定はないため、グリース王立国際大学(ディッパの母校)かも知れない。というか、ちゃあはそもそも同じ大学なのだろうか。メサ・ルミナス学園も高等部までのはずで、桜子は留年後にログナーに誘われてA.K.D.に移籍しているはずなので・・・同じくグリース王国に戻っている可能性もあるか。
ヴィッターシャッセ、パシテア、オーバーハイム、バクスチュアル、シシステルケスレムが地下工房にいるのは・・・おそらくZ.A.P.の開発・改修作業中に連絡が入ったため。ただし、最初の3名は休眠しているニーヴ、ケーリッカク、ユーパンドラの覚醒をモニタするために集まっている(p66の3コマ目、オーバーハイムが立っている場所の床に休眠中のファティマが収まっているはず)。

ケーリッカクを預かっているというシグ従親王という名前は初登場。

オーバーハイムのセリフに拠ると、星団外にいるはずのタイ・フォンにも通信が届いているらしい。つまり、ダイ・グの訴えは炎の女皇帝の耳にも入るということか。おそらく来月号に登場するのだろう。

バクスチュアルの背後にGTMモルフォ・ザ・スルタンが登場。太陽蝶(Morpho hecuba)はチョウ目タテハチョウ科モルフォチョウ属で最大のチョウ。正式和名はタイヨウモルフォ。茶褐色・黒褐色のチョウで、翅を広げると胴体から前翅にかけて太陽が輝いているように見える模様をもつ。また、スルータンはアラビア語で「権力者」や「権威」の意。「皇帝」と訳される場合もある。なので、「君主の太陽蝶」=「モルフォ・ザ・スルタン」の別名であることが判る。
首装甲に「天照帝」の文字列が確認できる。これは天照が自ら手掛けたGTMに刻印する「銘」ということになるだろう。亜奈美・ヘンシェル・アトワイトが製作したGTMモルフォ・ザ・スルタンにこの「銘」が刻印されていることから、既に天照に拠る改修を受けていることが読み取れる。あるいは、天照家の歴代当主=命(ミコト)が管理していた時代においては、その所有者の証として「天照命」と刻まれていたのかも知れない。

グリーン・ネイパーが端末でプレイしているゲームは2022年11月にPS4/PS5、Nintendo Switch、Steamで発売された「タクティクスオウガ リボーン」。メインタイトルの曲「Overture」が流れているのと、ゲーム中に登場するシェリーという名のキャラクターで判る(twitterでも情報提供いただきました)。シェリー・フォリナーはフォリナー四姉妹の次女でバクラム軍に所属する魔術師。初期クラスはセイレーン。22歳。登場時のクエストで致命傷を負わせずに逃がし、バーニシア攻略前に悪天候のバルマムッサに入ることでイベントが発生して仲間になる。進め方によって固定クラスのシャーマン(エレメントは大地で固定)に変更可能。高飛車且つ独りよがりな性格だが、姉妹の中では一番キレイ。CVはセンセーの奥様である川村万梨阿。

A.K.D.領事館のキッチンに「ヒガシマル」と「ヤマサ」の調味料が置いてある。前者は薄口醤油のメーカーとして有名。ヤマサも醤油のメーカーである。もしかして薄口と濃口でわざわざ醤油のメーカーを変えているのか。アイシャの好みなのか。アレクトーの拘りなのか。ツユ・ダシのメーカーでもあるため、この後でトンカツをかつ丼にするのかも知れない。

最後に「あと11名」と書いてあるが・・・残っているファティマは、イエッタ、令令謝、ヒュートラン、ドアランデアスティルーテ、アウクソー、アトロポス、ラキシス、クローソー、ナゴン、タイ・フォンの10名のみのはず。もしさらに1名を加えようとすると、既にアウクソーの中にデータが移されているフォーカスライトが登場することになるが、果たして。

という訳で今月もいろいろテンコ盛りでしたね。それにしても、この全ファティマが集う一大イベントを整えたのがダイ・グというのがまたすごくイイ(語彙力)。若者がその勢いを以て世界に一石を投じようとするなんて。そんなベッタベタな英雄譚を、あるいはトミノ節的な若者の王道を、ものすごく丁寧に描くのがFSSなんだな。
(2023.01.04)

 

■ 2023年2月号


■ バランス家の解説 (2023年2月号p59)

ここんところ新規設定=設定改変というのが当たり前になりつつあるけれども・・・歴代バランス家当主の解説。
バランス家当主の名前に付く世数は血統の世代数ではなく、フェイツ公国を預かる領主に引き継がれる世代数とのこと。
となると、ウラニウム・バランスが初代当主であることは変わらないが、3代目当主のリチウムはウラニウムの子、孫、ひ孫の可能性も出てくる。ただし、ウラニウムはファティマの完成が「孫くらい」の世代で成し遂げられることを予見していたので、血統の3代目としても問題はないだろう。で、間に挟まる2代目およびリチウムの後釜を継いだ4代目から9代目の当主はバランス家の出自ではなかったと。要するに、ルミナス・シティを学術都市として運用する上で、ガーランドでは無かったバランス家の跡継ぎは領主として認められていなかったことになる。

バランス家が当主でない期間にその役目を負っていたのがアトワイト家とその傍系ということに。NT2022年2月号で明かされたとおり、初代天照の命(ミコト)の旦那さんはGTMガーランドの血統。2代目当主の妹ニーブ・エックス・アトワイトがアトワイト家の始祖となり、同家がガーランドの家系として再設定されたことで、A.K.D.の主産業となる重工業および兵器開発については、ソープが生まれる以前の古い時代からアトワイト家主体で推し進められてきたことになった。バランス家がルミナス・シティを所領地とする以前は、この都市もアトワイト家の管轄であったということだろう。
今月号で登場するユリカ・シグ・アトワイトはそのアトワイト家本流の子孫ということになり、扱いとしては従親王になるようだ。この「従」は「従姉妹」あるいは「従兄弟」の「従」と一緒。83代当主の兄妹の直系となるシナーテ家とコーダンテ家の王子・王女は「親王」または「内親王」、それ以前の当主の兄弟姉妹の直系は「従親王」になる。
ということはつまり、パナールも成人後には「従親王」と呼ばれることになるはず。

アルセニックの解説にある「ハリコン血統」というのは、おそらく「コーラス血統」と読み換えるべき。超帝國剣聖から受け継がれた騎士としての強さが傍系のメロディ家に流れたというだけで、アルセニックの研究対象はあくまでもコーラス王家の血筋であったと考えるべきだろう。ただ、懐園剣がハリコンからアルルに引き継がれているとおり、クラウン銀河やモナークの秘密を追おうとすると、メロディ家に着目せざるを得ないというのも判る。だからこそ、アルセニックは光のタイ・フォンを生み出し、ハリコンに同行させたりもしたのだろう。ハリコン・メロディは2560年生まれ。生前のアルセニックとは何度も顔を合わせているはずである。

マキシの解説にある「とある可能性を確かめるため実験的に行っていた」というのはつまり、人工生命体による治世・支配体制の検証ということだろう。マキシはフェイツ公国を問題なく仕切ることができたと。では、ユーパンドラは星団全てを仕切ることができたのか・・・その回答が星団暦4100年のイベントということ。
ただ、これに関しては別の視点で考えることもできる。今回の一連のエピソードでバランス系列のファティマは「個であり全」=「オーバーマインド」につながる上位の人類という一面が描かれた。これを起点に考えると、天照は人類の進化を促す一助として、ユーパンドラをその旗頭に立ててみた、という考え方もできるかも知れない。まあ、結果的にジョーカー人類はユーパンドラから離れ、やがて退化の一途を辿りモンドやバナロッテの世界につながることになる訳だけども。
天照の旅に同行したファティマとA.K.D.の国民だけが「神や悪魔と同列に生活する理想郷」=「惑星フォーチュン」に辿り着くことを考えると・・・星団に残していく人類に進化or退化の道を選ばせる深慮があったという解釈があっても面白い。と云っても、天照はユーパンドラが討たれるのを見届けてから星団を立っている訳で、やはり自身(の影武者)を仮想敵に置くことで人類がひとつにまとまる動向を見ていた、と解釈した方がよいだろうか。
(2023.01.18)


■ フェイツ公国の姉妹たち (p60)

先月号に続き、各地のバランス系列ファティマの状況が描かれる。今月号も細かい情報がてんこ盛り。

ログナーにスカウトされた桜子は浮遊城に向かわず、フェイツ公国のバランス家本家に連れてこられた模様。ログナーが保護するのであれば浮遊城に住んだ方が都合がよいはずだが、おそらくアルセニックの研究を発掘・継承させることを考えてバランス家に置くことにしたのではないだろうか。というのと、おそらくはユリカ・シグ・アトワイトのGTM開発を手伝わせる腹づもりもあるのだろう。
よく見ると公邸の柱に四つ菱のマークが刻まれている。アトワイト家出身の領主がいたことがここでも表現されている。
イエッタが桜子に対して適当な返答をしているのは、込み入った事情を話す暇がないか、あるいは、バランス系列のファティマの特性・・・「個であり全」=「オーバーマインド」につながる上位の人種である事実を桜子に伏せておくためか。既に超帝國やモナークにつながる情報を得ている桜子に対して、これ以上の情報開示はキケンということをログナーから言付かっているのかも知れない。

先月号から情報が開示されていたシグ従親王=ユリカ・シグ・アトワイトが登場。GTMガーランドにして騎士。ファティマ・ナゴンのマスターである模様。
彼女のセリフから、GTMトリバネルの設計・開発者(もしくは天照と共同開発)であることが窺える。
ナゴンはその名のとおり、日本人系列の人種タイプであることが判る。時や静とかなり近い容姿である。
ちなみに、ブラフォードがトリバネルを壊したのは77年前。ユリカさん根に持ちすぎ。

GTMガーランドの命名ルールに沿って、彼女の名前も銃器メーカーが元ネタになっている。おそらくスイス・シャフハウゼン州に本拠を置くSIG社が元ネタ。Friedrich Peyer(フリードリヒ・ペイヤー)、Johann Conrad Neher(ヨハン・コンラッド・ネーアー)、Heinrich Moser(ハインリッヒ・モーゼル)が1853年に創業した鉄道客車製造工場がその起源。もともとはSchweizerische Industrie-Gesellschaft(スイス工業会社)という社名であったが、2001年に略称として使用していたSIGを正式な社名とした。銃器販売を担当していたのは1985年にアメリカ法人として立ち上げられたSIG Arms社であるが、ここから分社・売却されたスイス法人が事業を継続しており、Swiss Arms A.G.(スイスアームズ社)を経て現在はSIG Sauer A.G.(シグザウアー社)となっている(SIG社の本体やアメリカ法人の銃器メーカーもそれぞれ存続中)。

モルフォ系列のGTMがいろいと出てきて混乱中。
アゲハ型GTM=モルフォ型GTM=モルフォ・ザ・スルタンの基本構造を引き継いだGTMという位置づけで考えて問題ないはず。
これまで公開されているトリバネル=モルフォ・トリバネル=モルフォ・レス・トリバネル=トリバネル・アルスキュルが全て同一騎体で、おそらくアトロポスが搭乗してブラフォードが壊したやつ。これに関しては、プディン・モルフォと呼ばれる騎体に改装されることが明かされている(NT2021年10月号)。
モルフォ型の2番騎がル・マキャオ=デムザンバラ(アウクソーの頭の中ではシュペルター)。
これとは別に2代目トリバネル=アゲハという騎体が3000年代後期に作られることが判明している(NT2021年12月号)。
今回登場したタテハ・パトラクシェが2代目トリバネルとイコールなのか、それとはまた別の騎体となるのか、現時点では全く不明。パトラクシェという名称から、帝騎メガロコートの開発元になる騎体かも知れない。

そんでもってドリュー・ゼレはもともと天照家の一員である模様。システム・カリギュラを探る目的で天照家から派遣されていた可能もあるか。

大学生になったとされるワスチャであるが、ヒュートランはルミナス学園のドミトリーで留守番中。
つまり、ルミナス学園は大学部まである学園ということになる。今後もワスチャと桜子の縁が続きそうな配置である。

ヒュートランと令令謝は直通通信で会話中。どうも令令謝だけが接続可能で、その存在が公にされていない姉妹がひとりいるようだ。当然、今月号まで登場していないバランシェ・ファティマ=ドアランデアスティルーテということになる。ただし、1月号の時点で京が令令謝とヒュートランのルートでしかつながらない姉妹がいることを仄めかしているので、彼女もまたその事実を知っていることになる。
令令謝がシカトを続けていたのは、何らかの制約があってその存在を秘匿する必要があったということだろう。星団リレーに参加させれば、意識共有により気付く者がいるかも知れない。問題は、誰に対して隠す必要があるかという点。・・・なんのヒントもないが、なんとなく天照ではないかと思える。ヒュートランは天照に直訴できるくらい近い位置にいるので(コミック12巻p257)、令令謝が極度に恐れるのもそのふたりの距離感を気にしてのことではないだろうか。
一応、ドアランデアスティルーテのマスターはトワイス・カテリ枢機卿(おそらくルーン騎士)ということになっているのだが、この辺の詳細はそのうち永野センセーが明かしてくれるだろう。

星団リレーの合間に、ナオがボードに連絡を入れている。
先月号でもアルルと会談する予定であることが描かれているので、おそらくはボスやんを討つ手筈として、少数精鋭の騎士を集めているのではないだろうか。
ではなぜ魔導大戦に参加していないビュラードに声を掛けるのか。これたぶん、ビューティ・ペールがダスニカ神聖連合とヨーグン3連邦にコンタクトを取っていることを伝えているのだと思う。そうなれば、トランに放たれる新たな火種を抑えるために、内偵という名目でS.P.I.の騎士を動かすことが可能になるから。そういった連携の取り方こそ、ナオが天才軍師と云われる所以ではないかと思う。
(2023.01.21)


■ そのほかの姉妹たち (p63)

クラウン銀河の中心渦にいるタイ・フォンまで星団リレーが開通。タイ・フォンと炎の女皇帝が出会う時代は56億7千万年後の世界であるが、時の流れが止まっているこの場所においては全てが同時進行という一種の異次元空間になっている。なので、この星団リレーの会話がそのまま女皇帝に伝わったとしても不思議ではない。
このあとの女皇帝の星団帰還につながるイベントになるのかも知れない。

アウクソーはトラン国内のアミュラ自治区=インタシティがその最後を迎えた場所に来ていたようだ。
アウクソーが単身でこの場所に来る訳がないので、誰かが一緒に来ているはず。1月号でメガエラが「アドラーにはもうひとり」と云っていたのはアウクソーのことだろう。つまり、その事実をビュラードも知っていることになる。おそらくはミースの紹介でビュラードの客人として迎えられているので・・・彼女の傍にはS.P.I.の騎士が同行しているはず。登場していないけど、ナデジダ・リーフあたりがいるのではないだろうか。
 ⇒間違い。判りづらいけどアミュラ自治区の描写はインタシティのセリフのコマまで。アウクソーは枯葉舞うミース邸にいる状態であることが3月号で判る。

アミュラ自治区で没したインタシティも星団リレーの意識共有に参加している模様。死者でありながら意識を保てるのも、その意識が既にオーバーマインドと一体化しているため、という見方ができるだろうか。
という訳で、先月号でチャンダナが話していた「あと11名」は、イエッタ、ナゴン、ヒュートラン、令令謝、タイ・フォン、没後インタシティ、アウクソー、フォーカスライト、アトロポス、クローソー、ラキシスという形で締めくくられた。ドアランデアスティルーテは通信終了後のオチとして顔見せ程度に登場してくるのではないだろうか。

アウクソーと天照のセリフを読む限り、今回の星団リレーでチャンダナは死に至る可能性があるほどの過負荷に耐えているようだ。すえぞうと天照の助けを受けて生残して欲しい。

アトロポスの後姿に残像のような姿が映っているのは、おそらく現在の姿に未来の姿を下ろしているため。アトロポスの現在の姿はコミック15巻に登場したときと大きく変わっていないはず。
星団リレーに参加して人類の行く末に干渉することをよしとせず、女神である自分はただ傍観者であるべき、という信念を持っているのだろう。その覚悟の表れが「女神として見届ける姿勢」=本来の姿ということではないだろうか。
彼女がその本当の力を発揮するのは、おそらくクローソーと戦うときだけ。ユーパンドラの導きに対してジョーカー人類が離反し、天照という神からも離れて退化に向かうその新たな「誕生」の瞬間、アトロポスは「終焉」を迎えてクローソーと共にゲートキーパーとなる。それまでは「ただ見てるだけ」・・・立ち位置としてはJOKERに近い。
にしても、タイ・フォン、フォーカスライト、アトロポス、クローソー、ラキシスと並ぶオペラ色のタグがお見事。ラキシスは金色スーツで登場しているのに、ちゃんと姉妹で色を統一している。たぶん、永野センセーが一番見て欲しい部分がココなんじゃないかな。まあ、ハスノホルテも同色なんだけど。

クローソーがもつ最高称号「フォーエバー・ファンタスティック・フローレス」は以前からある設定であるが、アトロポスの「フェイテス・フォー・デミス」とラキシスの「ファナティック・ラキシス」は称号とはまた違うように思える。ラキシスのそれは「名前」であり、天照の命(ミコト)がラキシスを養女として迎えた際に与えたヒトとしての名前という設定がある。アトロポスのそれはいわゆる「二つ名」ということになるが、彼女には「放浪のアトロポス」という呼び名もある。いずれにしても、「fd」「fff」「fl」という表記はクリアランスではない。
(2023.01.18)


■ タイマーと寿命 (p68)

天照が天照家甲種1等正装で登場。ミラージュ右翼は元老会議中であったが、天照は別の祭事に出席していたことになる。なんだろう・・・。

ダイ・グが罹患している神経反応減退症は、天照曰く「とある目的をもたされたタイマー」とのこと。長い年月を掛けてもうひとつの「寿命」につながる際のいわば副反応として、あのような症状が出るらしい。
もうひとつの寿命という部分をどう考えるか・・・ヒトとは異なる生命体への転化なのか、異次元・高次元の世界への転生なのか。設定上、高位体あるいは霊体と呼ばれる存在となった天照の命(ミコト)、現世より去った詩女たち、実体から分かたれた精霊体のクーンは「異次元の世界」の住人。セントリーやJOKERは「高次元の世界」の住人。非常に特異な例として、マキシはジョーカー世界で死亡した後にタイカ世界へと転生している。ワイプ皇子やダイ・グにそのようなステージがあるとは考えにくい。

思い当たる点があるとすれば、ジークに乗り移るような形で現世に現れるサイレン皇子ことフィルモア1世である。彼の肉体は既にこの世から消え失せているはずであるが、ジークを介して現世に言葉を遺す力を得ている(コミック15巻p88)。フィルモア1世が同じ病気に罹患していたという設定はないが、現状で明かされている設定や描写から見ると、たぶんその辺につながるのではないかと思う。
ただ今回、天照は「フィルモア皇帝を」「送ってあげなさい」と云っているので、ヒトの視点から見ればやはり「この世」から「あの世」への転生ということになるのかも知れない。

あるいは、ダイ・グらの形こそが「幼年期の終わり」で描かれた「トータル・ブレイクスルー」つまりオーバーマインドと一体化するための人類の進化なのかも。バランス系列ファティマによる意識共有は人工生命体がオーバーマインドに至るための道筋で、ジョーカー人類の道筋はまた異なると。というか、ジョーカー人類もモナーク紀の人間から見れば作り変えられている訳で・・・神経反応減退症もまた、モナークや女皇帝が組み上げたプログラムという可能性はあるのか。この辺はもうただの妄想になっちゃうな。
(2023.01.15)


■ 今はもうこの世にいないバランス家の4人の娘 (p69)

今月号で気になるのってみんなこの部分になると思う。この世にいないバランス系列ファティマの4人とは誰なのか。
まず、いろいろ登場した代名詞を整理してみると。
1月号のメガエラの「アドラーにはもうひとり」=アウクソー。 ⇒間違い。バキン・ラカンのオーロラを指しているか、没したインタシティを指している。
1月号のアキレスの「最後は」はたぶん天照。バクスチュアルの「アノ方」もたぶん天照。京の「あのお方」もたぶん天照。
んで、京のいう「最後のひとり」「あの子」は令令謝からつながるドアランデアスティルーテ。その彼女の存在は秘匿されている模様。

タイ・フォンが星団外にいることは天照の知るところであろうし、これを「この世にいない」と捉えることはないはず。
確実に「この世にいない」のはインタシティに限られてくるため・・・ドアランに対して天照が「生残」と見なしているか「死亡」と見なしているかで話が変わってくる。
また、フォーカスライトがアウクソーの中にいることを天照は知り得ているはずであるが、これを「この世にいない」と認識するか否かでも変わってくる。

天照がフォーカスライトとドアランデアスティルーテを「この世にいない」と認識するのであれば、未発表のファティマがひとり。
天照がフォーカスライトとドアランデアスティルーテのいずれかを「この世にいない」と認識するのであれば、未発表のファティマがふたり。
天照がフォーカスライトとドアランデアスティルーテを「この世にいる」と認識するのであれば、未発表のファティマが3名いる、ということになる。
最低でも1名は、これまでに発表されていない、且つ、既に死亡したファティマがいることになる。この辺は永野センセーが来月号とかですぐに明かしてくれるんじゃないかな。
さすがにバランシェが未発表のファティマを残していたことにはならないと思うので、可能性としてはリチウム公の手に拠るファティマになるのではないか。

星団リレーが完成し、ダイ・グの言葉を届ける緊急放送がスタートしたところで今月号は終了。
最後に登場しているAD?のTシャツに「CAMEL」「SOMMER LIGHTNING」と描いてある。イングランド出身のプログレ・バンドCamel(キャメル)が1978年に発表したアルバム「Breathless(邦題:ブレスレス−百億のよると千億の夢−)」に収録してある楽曲「Summer Lightning」が元ネタであることが判る。
あと、テレビ画面にある「La voix de l'NORD EMPE」のあとに「REUR」と続くはずだけど、これは文法の間違い。「Le Empereur」と合わせる場合に母音の重なりをアポストロフに置き換えて「L'Empereur」と綴る形になるが、「北」を意味する「NORD」の前にアポストロフを置くことは無い。なので「le NORD EMPEREUR」とする必要がある。
(2023.01.21)

公式サイトに「ナイト・オブ・ゴールド・ラキシス・マリッジ」とか「ナイト・オブ・ゴールド・アトロポス・ターン」とか解説が出てるなぁ。

 

■ 2023年3月号


■ あいかわらずのバイオレンス (2023年3月号p57)

久しぶりのがんばれエストちゃん。この扉絵マンガ、地味に本編より殴る・蹴るバイオレンスな展開が多いような気がする。
今回はコミック17巻の宣伝とデザインズ7-8の話。
死亡している4人のバランス系列ファティマのうち、フォーカスライトとインタシティは死亡扱いとのこと。
先月号まで本編に名前が出ていないドアランデアスティルーテが公には死亡扱いであったとして、やはり未発表のファティマがひとり存在することになる。
まあ、わざわざ話題を振っているのであれば、センセーもそのうちあっさり明かすのではないだろうか。

バランシェとアルセニック・バランスについては、明確に作品数が設定されているため、あと1名が追加されるのであれば、やはりリチウム製作のファティマである可能性が高い。始祖4ファティマの名前が初代天照の命とその血縁から取られているという設定があるため、未発表ファティマの名前も天照家に絡む設定になったりするのだろうか。というか、そういった事情があるから、現時点であえて名前を伏せているような気がしなくもない。
ただそうなると、オーバーハイムとかダイオードも設定を盛り込む必要が出てくるのか。
(2023.02.12)


■ ダイ・グの勅命 (p57)

星団の全通信網を乗っ取って発せられるダイ・グの勅命。それは、ミノグシアとフィルモアの友好を願うただそれだけの訴えであった。
全星団民を証人としてフィルモアに侵攻の意志がないことを伝え、以て元老院の奸計にクギを指すことが一番の狙いであったと思われるが・・・果たしてその結果、ダイ・グの人となりを知るラドンウェイは立ち上がり、ナイアスは元老の意向を無視してアルカナとの共同戦線を構築。フィルモアが攻勢に転じる怒涛の展開へとつながる。

ダイ・グがどこまでその影響を予測していたかは想像するしかないが、読者としてはクリスティンを救うただその一点のためにこの行動に出た、という受け取り方が最もキレイではないかと思える。ナカカラ攻防戦においてスケープゴートとして盤上に置かれたのがダイ・グとクリスティンである。彼は自身に残された時間が少ないことを理解し、その命を捧げることも受け入れているフシがあるが、愛するクリスティンを見す見す失う訳にはいかない。それを覆すための訴えという解釈である。母艦にいる状態でも通信網の乗っ取りはできたかも知れない。が、命を賭して戦場に出ることに意義があったと。ただそれは、星団民の心情に与える効果を期待してのものではなく、クリスと共にあること、フィルモア騎士の鼓舞につながることだけを狙ったものではないだろうか。誠意と純粋さこそがダイ・グのもつキャラクターとしての力あるいは器ではないかと思う。

しかし一方で、ダイ・グの言葉がジョーカー星団の歴史に残した影響は計り知れないように思える。

例えば天照の視点から見ると、それは「切なるヒトの訴え」。侵略戦争を繰り返す愚かな人類の中にも純粋に平和を願う者がいるという宣言。あるいは、この後で起こるカラミティの崩壊に際して、フィルモアは他国の侵略という形で回避する意思はないという宣誓のようにも見える。ただ、ヒトの命は短く、ダイ・グの宣言とて後の世で覆される可能性も天照は十分に知り得ているだろう。その場合でも、今回の出来レースの実情を天照は予測できるはずなので、「ヒトの王が国をまとめるのはここまでが限界。星の崩壊により絶望に沈む無辜の民を救うにはヒトを超えるアナタの協力が必要」という受け取り方をしてくれるかも知れない。今回のようなエピソードが紡がれていく中で、天照が(ヒトをより良くまとめるために)星団侵攻に踏み出すという流れに期待したい。

ラキシスの視点から見ると、それは「シャルデファーで交わした会話(悩み相談)の答え」。ダイ・グ自身が口にした「どうすればいい」ではなく、「自分はこうする」という確固たる意思表明である。あるいは、未来のラキシスが見守る「ヒトの意思・姿勢」その回答かも知れない。未来のラキシスはヒトの行きつく先にちゃんと未来があることを示している訳で、ダイ・グの今回の行動はその未来につなげるための「わずかながら確実な一歩」のようにも見えるはず。

オーバーマインドにつながる「進化した人類」=バランス系列ファティマの視点で見れば、それは「平和を望むヒトの真なる心」。これから星団侵攻が始まり互いに命を削り合う時代に突入する中で、このような英傑がいたことがどれだけの救いになるか。あるいは支えに、励みになるか。ウィル星団暦7777年に到達するファティマから見れば、太古からさらに未来の人類に伝えるべき英雄譚になるだろう。

歴代の詩女の視点から見ると、それは「ベリンとトリハロンが交わした誓いの成就」「二千年以上を経て受け継がれた北の皇帝の意志」。ベリンの記憶を引き継ぐフンフトから見て、ダイ・グの宣言はどのように映るか。・・・意外と振り向いたら歴代の詩女の想いも混じってキュン死してるかも知れんけど。
ついでに、マグダルから見れば、このダイ・グの意志がやがてレーダー9世に引き継がれ、後に手を取り合う相手となる訳で・・・これもまた詩女と北の皇帝によって綴られる歴史のひとつとなる。

そしてもし、タイ・フォンを通じて炎の女皇帝にダイ・グの意志が伝わるのであれば、それは「種としてのヒトの成長」に見えるかも知れない。炎の女皇帝ことユニオ3は、人間性をも失いかけていた人類を導くために剣聖騎士団を用いて星団全域を制圧し、圧倒的な武力で破壊・蹂躙することで逆に「生きたい・幸せになりたい」という願望を発現させた過去がある。その「ヒト」が「他者と友好を築き共に生きようと訴える」など、ユニオの存在意義を考えれば本懐を遂げたと云ってもいいのではないだろうか。

まあ、この辺はただの深読みであって、妄想の域を出ない訳ですが・・・ダイ・グ好きな読者はガンガン妄想を膨らませてヨシ!これをライブでやれるのが読者の特権である。
なんというか、FSSって「定命の者」と「不死の者」が混在していて、「不死の者」から見たドラマが未来につながるギミックがあちこちあるよね。ファンタジー作品で描かれる「ヒト視点から見たエルフ」とは真逆、「エルフ視点から見たヒト」のドラマと云うべきか。「指輪物語」の逆をやってるって云ってしまうと語弊があるか。
(2023.02.11)


■ あと細かいところ (p57〜)

p57でダイ・グが大写しになっているところ。右下の星団文字(?)は次ページのコマと見比べることで「LIVE EMPEROR FILLMORE」であることが判る。この文字、公式サイトなどで使われるようになったけど、解読が難しくて頭パンクしちゃう。

p58の戦艦は本国を出立したフィルモア艦隊。ブラウマ・イクとジャンシー・ガラーがナカカラに向かって移動している模様。下にいるジークママは、オデットが茄里と一緒にいることを考えると、おそらく一緒に移動している訳ではない。彼女はおそらくフィルモア本国で様子見のはず。
帝国老人クラブの面々(レーダー8世、アビエン・ヒートサイ、スティール・クープ、ルーテン・シャープス、ド・ラ・フィルモア)は全員元気そう。メリンダ・クルップもクラブに加入したんか。

p59でミースとアウクソーが並んでいる。ありゃりゃ。2月号の描写でアウクソーはアミュラ自治区に行っているものとばかり。よくよく考えたら周りに枯葉が舞っているので、アウクソーはずっとミース邸にいたのね。とほほ。
ミマス帝は慧茄の姪に当たるため、ダイ・グから見て大叔母の娘=従姉妹違(いとこちがい)。ラ・シーラが「はとこ」になる。ダイ・グはエラルド島で幼少期を過ごしたことから、ミマス帝にとってもほとんど息子のような存在だろう。

ちゃあの目の前で手をカタカタしているのは・・・たぶんジークではないだろうか。ジークがダイ・グの覚悟を見ることで自身の血筋を受け入れ、母国に戻る決意をする…という展開であれば最高なんだけどな。今回のエピソードに関しては、ナカカラが救われた、というオチではなく、フィルモアの新たな時代につながった、というオチであって欲しい。トリハロンから始まって、歴代皇帝を経てダイ・グへ、そしてジークへと受け継がれる意思こそが、魔導大戦で描かれるフィルモアの歴史ということになるはず。
あと、ダイ・グは「ドナウ帝国初代皇帝より」って云っているけど、ミノグシアとフィルモアの友好の歴史はベリンとトリハロンの話が起点になっているので、「フィルモア初代皇帝」とするのが正しい。まあ、フィルモア皇帝の代数はドナウ帝国から続くため、始祖に遡るとドナウになってしまうのだけれど。

ラドンウェィが立ち上がったことでディスターヴ隊が出撃する。この支隊は3075年のハスハント解放戦で暴風三王女と行動を共にすることになる。中立のナカカラが旧体制派に組み入る切欠が今回の戦いということ。フィルモアの姿勢を見て、コーラスと肩を並べることになるその流れがいい。コミック2-3巻で描かれた3国の関係性からの反転。そのカタルシスよ。

APマルコンナ支隊の迷走ぶりがナゾ過ぎる。ナイアス傘下の部隊は、魔導大戦の勃発時にシーゾス国を脱してディスターヴ隊に合流した部隊。ナイアスの傘下に入っている設定は以前からあったが、ブーレイに偽装しているもえぎ騎士団と共に行動してフィルモア軍とも交戦する予定だったのであれば、自分たちが頼っていたはずのディスターヴ隊と敵対する位置付けになる。フィルモア軍を追い込む手駒として使われていたのかも知れないが、これミノグシア軍に知られたら単なる裏切者である。
(2023.02.11)

ディスターヴ隊が前線に到着したところで今月号は終了。ナイアスとは別働のゼレ配下ブーレイ部隊がどう動くか。
来月号は表紙&巻頭特集とのこと。ダイ・グ&クリスティンが来るか、ゴーストが来るか・・・でもたぶん、NTが一番売れるのは新規書き下ろしのGTMなんだろうな。

 

■ 2023年4月号


■ ナカカラ攻防戦の終結 (2023年4月号p56)

扉絵の新規設定は後半の考察にまとめる。

ディスターヴ隊の参戦により戦況は完全にひっくり返り、ブーレイ傭兵騎士団が撤退・投降。枢軸全軍が後退し、ナカカラ攻防戦が集結する。
ダイ・グは負傷していないようだが、既に身体の自由が利かなくなっている模様。
元老院の用意したシナリオを退け、予想される本星崩壊に対する対処を先送りにしたことで、ダイ・グ本人は「逃げ」果せたと評価しているようだが・・・彼自身の意地を貫き通した結果、多くのヒトが死ぬ未来を回避したことになる訳で、これは詰まるところサイレン皇子がベリンと交わした約束の成就とも云える。真なる皇帝・真なる漢の姿ですよね。

ファティマ・ラキシスの祝福を受けた者が幻視する藍色の髪をもつ少女。それは未来のラキシスの姿である。コーラス23世、モラード・カーバイトに次いで彼女と言葉を交わしたダイ・グは、果たして未来につながる選択をすることができたということ。コーラスはクローソーのために、ダイ・グはクリスティンのために・・・それぞれひとりの少女のために動いたようなもんですよね。こういったヒロイックな物語こそがFSSの醍醐味だと思います。ある意味でベタな展開ではあるけど、ヒーローは少女のために戦う・・・これはカイエンも同様だし、きっとこの後のエピソードでも繰り返し描かれると思う。

チャンダナが疲れて寝ただけなのか、昏睡状態に陥ったのかは不明。ただしばらく劇中のエピソードから遠ざかることになりそう。
(2023.03.26)


■ 緋色の雫 (p60)

ダイ・グの活躍によりフィルモア元老院のシナリオは回避できたが、詩女フンフトはナカカラがいずれフィルモアの支配下に入ることを予見している模様。
その未来に向けた次の一手として、彼女は「赤い血で染まったフィルモア皇帝の緋色の雫」をショーカムとリリの間に生まれた子(=ジーク)に受け渡すようだ。
緋色の雫が何を指しているのかは現時点で不明。物質ではなく、記憶や概念あるいはただの言葉かも知れない。おそらくベリンと約束を交わしたサイレン皇子が遺し、ダイ・グへと引き継がれていたモノ。それが次期皇帝たるジークに引き継がれることになると。そのメッセンジャーとして、フンフトは楊貴(ヤンギ)の成長を促してセントリー・カラットを呼び出したようだ。
瑞獣・麒麟が「仁の心を持つ君主」の前に姿を現すように、次期フィルモア皇帝となるジークの前にカラットが現れるということか。なるほど、だから楊貴(ヤンギ)のデザインって麒麟っぽい感じだったのね。納得。
(2023.03.26)


■ シャグジェリグリ・トウオの一角で (p62)

スタント遊星に内包されている不定出現太陽系「超(バスター)」の第6惑星シャグジェリグリ・トウオにおいて、ドアランディアスティルーテとトワイス・カテリが言葉を交わす。

んー・・・青印=ツバンツヒ、緑台=マウザー、灰群=エフィーたち、雪弁=ドアランと捉えて読むと会話の内容が通じるだろうか。ツバンツヒの怪しい動きで部下が離反したようなので、(おそらく上官に位置する)ドアランが手を打たないとまずいですよ、と云っている訳である。
トワイス・カテリは明らかに生体兵器になっているので、おそらくは彼女の記憶をコピーしたカリギュラ騎士ということだろう。
ドアランの解説の部分に「XL」つまりギリシャ数字で「40」が入っているので、彼女もやはり製造ナンバー40のカリギュラ騎士であることが窺える。
要はシステム・カリギュラ方面の話ということ。映画GTMでもカリギュラの本拠地はスタント遊星にあることが明かされていたので、彼らの本拠地あるいは拠点のひとつがシャグジェリグリ・トウオにあるということだろう。
「信(ネードル)」にシステム・カリギュラの本拠地があるという設定があって・・・この星に存在する国家としてホルテート、ラミアス、エレキフォート・アズデビュートといった名前が挙げられていたんですよね。設定の改変になるのか、あるいは、たまたま今回に限ってシャグジェリグリ・トウオに来ていた状態なのか。

スピリッターやクージャ・テンパラーといった称号・役職をもつようだが・・・スピリッターが例えば「Speziell Ritter」の略語であれば「特別な騎士」と訳されるし、「Spitze Ritter」であれば「頂点の騎士」となる。いずれにしても「○○騎士」という意味をもつ混成語と考えて間違いないだろう。クージャはおそらく仕える対象となる国家や王家の名称、テンパラーはおそらくテンペラー(templar)つまり修道騎士あるいは神殿騎士と訳されるクラス名と思われる。総じてみると、おそらくシステム・カリギュラにおいて高位の騎士という予想が立つだろうか。
⇒間違い。6月号の扉絵で永野センセーの解説があったため、上記の文章は取り消し。辞書ページも次回更新時に訂正します。

扉絵の解説を読む限り、トワイス・カテリは星団暦1750年にスタント遊星へと向かい、そのまま行方不明になったと。破烈の人形のみが帰還したものの、約1000年後の2770年に令令謝をパートナーに迎えたカイエンがドアランを連れ添って再度調査を実施。そこでドアランは行方不明となり、令令謝はぶっ壊れファティマとなり、カイエンは封印されたらしい。
カイエンの封印と復活については、旧設定においてクーンとの関係性に悩んだ末の自殺が仄めかされていたので、今回のエピソードはおそらく後出しの改変ということでいいかも知れない。
ジキジディが帰還したカイエンを見て「ナージュグ様の妹君と同じことになる」と口にしたのであれば、イコールそれはナージュグの記憶を受け継いでいるということ。つまり、ナージュグは妹が行方不明となった後の結末までモニターしていたことになる。

劇中でトワイス・カテリの身体に謎の機体の肩に破烈の人形のエンブレム(踊る人形)とシュペルター・マーク(ふたつのS字)が刻印されているのは、おそらくカイエンが使用した際の「シュペルター」を模しているため。また、1750年には無かった騎士とファティマの関連性をも模して、より上位の存在となるドアランにマスターと呼びかけているのだろう。
カイエンがかつてこの星で戦った際は魔王ラドナリスリビオンと対峙したらしいが、この魔王は星団暦3225年のスタント遊星攻防戦に登場する予定。劇中でカテリが云っているとおり、この後のエピソードで1750年、2770年、3225年の事象が重なる話が描かれるものと考えられる。

で、問題は令令謝とゼロ・ゼロである。今回の話を読む限り、令令謝はカイエンとこの星に来た後で行方不明となり、おそらく3225年から介入してきたゼロ・ゼロが成り替わって星団に帰還したものと考えられる。天照はこの事実を感知しているので、死亡したバランス系列のファティマを4人=フォーカスライト、インタシティ、ドアランデアステイルーテ、令令謝としている訳ですね。で、天照と距離感の近いヒュートランもその事実を知っていると。
ただ、ドアランのセリフでは「令令謝お姉様」と「ゼロ・ゼロ」を分けて会話しているので・・・おそらく令令謝は生きているという想像ができる。つまり、ヒュートランから連絡をもらったゼロ・ゼロが、何らかの形で「異次元の世界」にいる令令謝とコンタクトを取り、令令謝からドアランにつなげた可能性があると。まあ、今後の登場を待つしかない。

というか、カイエンの騎士服と対になっているファティマスーツの令令謝が可愛すぎませんかね。初々しいというか。
バランシェ邸でヒュートランを育てていたエピソードやランダに預けられた後の行動は全て零零(ゼロ・ゼロ)のヤラカシであって、令令謝は御淑やかなタイプかも知れん。帰還した時点で不可解な言動を繰り返すようになった令令謝を見て、バランシェはぶっ壊れファティマと断じたようだが・・・バランシェのことだからホントは似たような別人=ゼロ・ゼロに入れ替わっていることに気付いていたのかも知れない。
(2023.03.26)

来月からヨーンのエピソードに移る模様。

 

■ 2023年5月号


■ がんばれエストちゃん (2023年5月号p63)

扉絵のページで永野センセーが今後の展開を告知。魔導大戦の終結、カーマントーの解放、アドラーの動乱を経て3159年につながるシナリオが完成している模様。
永野センセーが疲れているのは、2023年3月19日に新潟国際アニメーション映画祭で再上映された映画GTMの舞台挨拶に向かっていたため。夜間移動でもしていたのかも知れないが、永野センセーが登場するときは、いつも大体眠いか気怠い感じである。
(2023.05.07)


■ ワックス・トラックスの常連 (p65)

久しぶりにワックス・トラックスが登場。一応、騎士がファティマ同伴で入店できる酒場という設定であるが、劇中の描写を見る限り昼間は喫茶店として営業している模様。ヨーンが飲んでいるのはアルコール類ではなくコーヒーである。バラッティーに常連と呼ばれているようだが、デコースの情報を求めて通っているうちに常連になったということだろう。幼少時にマスターの世話になったかも知れないが、魔導大戦の開戦直後までフェイツ公国にいたはずなので(11巻p64)、彼がワックス・トラックスに通うようになったのはパルスェットのマスターになった後である。

店内の指名手配犯のチラシを見ると、ヨーンの懸賞金の部分だけ貼り直されている点に気付く。スカウトに来た騎士を倒したことで、掛けられた懸賞金が跳ね上がったのかも知れない。
ちなみに、カイエンが指名手配されていたときの懸賞金はなんと1億フェザー(4巻p26)。8万フェザーのヨーンとは桁が違い過ぎる。
アーリィ・ブラストがソフトドリンクの代金として支払った金額は2.5フェザーであることが判るので、この辺からヨーンの懸賞金を円換算しても面白いかも知れない(一応、設定上で1フェザーは500円程度とされる)。

虹姫はミス宇宙軍に命じられてワックス・トラックスに潜入している模様。ワックス・トラックスに集う騎士の情報を集めている・・・と云うより、ヨーンを狙って動く騎士団や傭兵団の状況を監視しているのかも知れない。いくらミラージュ・ファティマとは云え、ファティマが単独で行動するとは思えないし、ミス宇宙軍はまだ産休・育休中と思われるため、マスターに替わって彼女をここに連れて来た騎士がいるはず。イオタとミラージュをつなぐジャコー辺りが連れて来たのかも。
(2023.05.07)


■ ガス・ガル連邦と忍者組織 (p69)

アーリィ・ブラストの口から語られる彼女自身の生い立ち。
彼女はヨーグン3連邦で秘密裏に進められていた人造騎士開発の実験に巻き込まれていたようだ。

コミック17巻において人造騎士は「デメリットを受け入れて我らのため応じてくれた者たち」と云われていたようだが、その実験台にされていたのは寄せ集められた奴隷民や「騎士再生プロジェクト」の名目で集められたハンパな騎士だったということ。例え力があったとしても縁が無ければ大国の騎士団に採用されない事実はこれまでも描かれてきた通りだが、奴隷民の出身ともなると彼女のように使い捨てにされる状況も発生するようだ。

ただし、ダスニカやヨーグンの連中は腐敗した国も民もすべて燃やし尽くして灰とすることを是としているため、事例としてはかなり極端かも知れない。絶対数が少ない騎士をどう育て、どう扱うかはその国の思想や経済力に左右されるのだろう。ヨーンとアーリィはもちろんのこと、劇中で幼少時から登場している騎士の面々はいずれも「生まれ」によってその半生が支配されている。クリスやユーゾッタ、ダイ・グ、ジーク、ジャコーも然り。マキシとデプレも同様である。そういう意味では、平民・奴隷民の出身でミラージュ入りするヨーンとアーリィはある意味で立身出世の花形のはずなのに・・・どう考えてもまともなルートじゃないんだよなぁ。ミラージュ騎士団に特有の体質と云うべきか。

アーリィ・ブラストとミス宇宙軍の出身校についてはデザインズ5に詳しい。
ガス・ガル連邦の都市国家パライアは武力の維持のために他国の騎士を受け入れてきた過去があり、例え犯罪者であっても国籍を得た者であれば、その前科を一切不問とすることを国法に謳っている。この国法は現在も機能しており、罪を犯した騎士がこの国家に逃れてくるという。ちなみに、パライア(pariah)には「追放者」もしくは「のけ者」という意味がある。

彼女たちが通っていたパライア高等学校は普通の学業機関のように見えるが、他の学校には見られない霞政科と呼ばれる学科が特徴で、どうやら忍者の育成を専門とする学科らしい。この学科を卒業した生徒はいずれも行方不明になるという。「死して屍拾う者無し」を地で行く闇の教育機関である。コマの中で描かれているふたりが巡り巡って共にミラージュ騎士となる訳で・・・まあ、おそらく入団後も似たような扱いになるのではないだろうか(とは云え、アーリィは洗脳されるらしいが)。
ちなみに、ふたりの様子を伺っているトモエも同じくパライア高等学校の出身である。彼女は黒豹騎士団の団長なので、アーリィの先輩にして上司という立ち位置。このヒトも4巻から登場している云わばトラフィックスのメインキャラのひとり。魔導大戦が終結したら・・・どこに行くのだろう。

ヨーンの好物のダークチェリーパイは、ちゃあのバイト先で出してたヤツ(11巻p224)。収穫時期は5月から8月までの期間となるため、ダークチェリーパイもこの時期に店頭に並ぶ。ヨーンがTシャツでウロついていることから判るとおり、劇中のミノグシアの季節は夏。なので、ダークチェリーパイを楽しめる季節でもある。咄嗟に「作ってあげるよ」と口にしているアーリィも季節限定のスイーツであることを理解しているのかも知れない。意外と家庭的。
(2023.05.07)


■ グリーン・バレー (p72)

トモエの策略により呼び出されたヨーン。イースト・ハスハの国道沿いにある、展望台付きのドライブインに舞台が移る。
Grren Valleyは緑の多い渓谷を指すが、たぶんブラジルの有名なクラブが元ネタと思われる。サンタカタリーナ州のバウネアーリオ・コンボリウーで2007年に開業した「the Green Valley Crub」は、同都市にある「Warung Crub」と並ぶ2大クラブのひとつ。1991年創刊のイギリスの音楽誌「DJ Magazine」が毎年発表している「TOP 100 CLUBS」において、2018年から20年まで3年連続で1位を獲得している有名店である。最も、このお店はジャングルに囲まれた湖畔に位置しているので、劇中の店舗とは大きく異なる。
(2023.05.07)

デコースとエストが到着したところで今月号は終了。

 

■ 2023年6月号


■ 異次元の世界における「人類に相当するモノ」たち (2023年6月号p59)

扉絵の永野センセーの解説がかなり判りにくい。
ドアランデアスティルーテとトワイス・カテリが所属する(?)勢力は、システム・カリギュラや超帝國とは全く無関係のグループである模様。曰く、異次元の世界における「人類に相当するモノ」たちとのこと。4月号に登場したタームと合わせて整理すると、凡そ以下の内容になる。

スプリッター
異次元の世界における「人類に相当するモノ」たちが、その世界に物理的に干渉するために生み出したマルチデバイス。頭部と巨大な腕部で構成されており、通信から戦闘に至るまであらゆる行動において使役される。三次元世界の住人からは感知できないが、状況に応じて実体化することも可能。ボディカラーがそのまま使役する人物の階級(ランク)を表す。
この階級を並べると、雪弁(ホワイトテンパラー)>青印(ブルーパネル)>緑台(グリーンシールド)>灰群(グレーポジション)になると。

テンパラー
最高位に位置する白色のスピリッターを使役する人物を雪弁(ホワイトテンパラー)あるいは単にテンパラーと呼ぶ。ただし、雪弁(ホワイトテンパラー)を超えるさらに上位のスプリッターも存在する模様。

クージャ
ドアランデアスティルーテが使役するスピリッターの固有名詞。あるいは、白色のスピリッターをクージャと呼ぶのかも知れない。
ドアランスティルーテは白色のスピリッターを使役する雪弁(ホワイトテンパラー)のひとり。固有名詞「クージャ」をもつスピリッターの使役者であるため、クージャ・テンパラーとも呼ばれる。彼女の使役するスピリッターがスピリッター・クージャ。・・・といった具合に定義すると、凡そ意味が通じるはず。

4月号で登場していた異様な機械は、トワイス・カテリが転じた姿ではなく、単にドアランスティルーテが使役していた機械ということになる。つまり、トワイスはあの惑星の別の場所におり、機械を介して会話していただけ。彼女は劇中にまだ登場していないということ。
んでもって彼女らの会話を整理すると、異次元の世界における「人類に相当するモノ」たちの間で内紛が起きており、これを収めるために雪弁(ホワイトテンパラー)が動かなければならない、という会話をしていたことになる。

・・・といろいろ書き出してみたものの、この解釈で合っているのかどうか正直自身が無い。すべてスタント遊星攻防戦に向けた設定のため、この辺はセンセーがさらに情報公開するまで待つしかない。

零零(ゼロ・ゼロ)は令令謝の因子を受け継ぐFネーム・ファティマ。しかし、令令謝はカイエンとシャグジャリグリ・トウオに向かった際に死亡扱いとなっている。その彼女の情報が天照やミラージュの面々と共に未来に到達するはずがないので、零零(ゼロ・ゼロ)が生まれたということイコール彼女自身が別の方法で星団暦7777年に到達したことの証左になっている、という点を永野センセーは説明している模様。ただ、素粒子運動記録から構成された物体である以上、Fネーム・ファティマは任意の時代・空間からその因子を呼び出すことが可能なような気もするなぁ。

ちなみに、これまでの設定で異次元の世界の住人として設定されているのは、ファティマ・タワー、セントリー、ヴィーキュルなど。
また、高位体と呼ばれる存在となった天照の命、現世より去った詩女たち、実体から分かたれた精霊体のクーンもこの世界に所属する。
永野センセーの解説を読む限り、Fネーム、死んだ令令謝、ドアランとカテリ、新デザインのヴィーキュルもまたこれらの存在と同列ということ。こういったメンバーが一堂に揃うのであれば、スタント遊星攻防戦は(またもや)神や悪魔が乱入するドタバタ騒ぎになることが予想される。とは云え、フル装備のZ.A.P.が登場するのはこのエピソードに限定されるはずなので、コミック16巻よりメカメカでロボロボな話にして欲しい。

あと、ドアランデアスティルーテのパートナーはトワイス・カテリ、使用GTMは破烈の人形と書いてあるけど、以前の情報でトワイス・カテリは静をパートナーにして破烈の人形を駆るとも書かれている。この辺もどう整理したらいいのか迷う。

ドアランは破烈の人形のシン・ファイアと同調しているらしい。ミューズが使用している現在において、破烈の人形の頭部にシン・ファイアが残されているとも思えないので、カテリがシャグジャリグリ・トウオに到達した際に意図的に取り外したと考えればいいのか。カイエンがこの星に到達できたのも、破烈の人形がその座標を覚えていたためであるが・・・残されたシン・ファイアとの通信を足掛かりにしたのかも知れない。
まあ、3225年のエピソードは1750年、2770年、7777年のエピソードがクロスオーバーする展開で、そのキーアイテム=破烈の人形のシン・ファイアってことになるのかな。
(2023.05.27)


■ ヨーンの敗北 (p69)

パルスェットを拉致られた上に、動揺を誘われてデコースに敗北するヨーン。
間合いの話と云うより、剣を使うか否かの差が如実に現れた結果だろう。デコースが使用したガット・ブロウはダッカスが装備しているモノと似ている。たぶん、エストがもつという名刀・黒騎士の剣であろう。2009年カレンダーで書き下ろされたデコースのキャラシートが初出。

エストにわざわざ話を振って、バーシャとしての記憶が無いことを宣言させるあたり、デコースの立ち居振る舞いは実にえげつない。でも、デコースの視点で見ればヨーンの行動の方が気持ち悪いというのもよく判る。ヒトのモノに執着して、表舞台には立たず、明後日の方向を見て勝手な尺度で鍛えた気になって…ストーカーと大して変わらないもんね。

騎士を「汚いもの」と定義していたヨーン自身が、「騎士は汚い手を使って来る」という認識をどっかに置いてきてしまった訳で・・・デコース以外の敵対者は簡単に駆逐できるという思い上がりをしていたヨーンの迂闊さが招いた結果である。こういう認識不足を放置していたのがヨーンの周りのヒトたち。そういった慣れ合いを真向から否定して、事実を叩きつけているのがデコースという構図なのね。「強いか弱いかという話じゃない」「騎士の生きる意味を考えたことは」「お前さんは何も見えていない」「求めているバーシャのことさえ知らないだろ」と云わんばかりの全否定。死ねと云いつつも、トドメすら刺す意味のないクズに貶めて放置するというヒール振りである。

今回のヨーンの反応を見るに、彼は星団の誰もが知る「黒騎士のパートナー=エスト」という事実に対して、自分だけが知る「バーシャ」がどのような形で成立しているのか、全く深掘りすることなく放置していたことが判る。目の前でバーシャからエストに切り替わった瞬間を見ているのに、である。視野が狭すぎるというか、妄信に過ぎるというか。ちゃんとミースに聞き取りしているデコースとの落差がすごい。ルミナス学園を卒業しているのにポンコツ過ぎる。

では、その事実を知ってこれからどうするか、という話。
ヨーンにとって過去の「バーシャ」は意味があるかも知れない。が、現在の「エスト」に意味はあるだろうか。自分にとってデコースとは何者なのか。騎士であるか否かという自己認識は必要か。剣をもつことに・もたないことに何の意味が。これに気付けばヨーンは強くなれるはず。
デコースの言葉を借りれば、騎士としての強い・弱いには何の意味もない。が、ヒトとしての強い・弱いには意味があるはず。ヨーンは、ヒトの言葉に耳を貸さなかった自分の弱さを自覚すべきなんだよな。

カイエンの剣技を受けたダイ・グ、ジーク、ジャコー、クリス、ユーゾッタ、ナイアスらと、慧茄に斬られた経験のあるジークママ・・・この辺の面子と、デコースに腕を斬られたヨーンって同じような経験しているはずなのに、ヨーンだけが歪んじゃってる訳で。そう考えると、もうバーシャと出会ったのがそもそもの運のツキという見方もできなくもない。悪女の大半は自覚を持たないという話もあるし。が、FSSにおいてエストが悪女であるか聖女であるかを決めるのは、たぶんこの後のヨーンの行動ってことだよなぁ。というか、バーシャの語っていた教えこそ、今のヨーンに必要な言葉だろうに。「騎士とファティマにとっていちばん大事なことは何でしょうか」その答えをはよ思い出せ。
(2023.06.15)

 

■ 2023年7月号


■ マルター (2023年7月号p55)

今月号の扉絵はアーリィ・ブラストのパートナーであるマルター。シリアルMC-14のモラード・ファティマ。
ガス・ガル連邦が組織している忍者集団の名前は「地潜り」。「じもぐり」ではなく「じむぐり」と読む。ジムグリはヘビ目ナビヘビ科ナメラ属に属すヘビの一種。ネズミの巣穴に潜って捕食する習性をもつ。枯葉の下に入るなど隠れるのがうまいので忍者に例えられたりする。ついでに云うと、薩摩島津家に協力した忍者集団は山潜り(やまくぐり)。たぶん、この辺のイメージをつなげて命名したのではないだろうか。なんというか永野センセーの抽斗の多さにびっくりしちゃう。
赤唐辛子と白コショウをばらまく術は「春花の術」。劇中ではトモエがジャコーに放っている。
(2023.06.16)


■ 現場に残るトモエ (p56)

デコースに放置されたヨーンの生残を見届けるため、そのまま現場に残るトモエ。たぶん目的はふたつ。
ひとつはヨーンに協力している勢力の確認。トモエはパルスェットが仲間に連絡するのを見届けてから彼女に声掛けしており、この後でヨーンの協力者が来ることを狙っている。
もうひとつは、おそらく事の顛末を見届けて情報屋に売るため。今月号の後半に出てくる「ミノグシア騎士ニュース」の報道。ヨーンの敗北とパートナーの死がなぜ大々的に報じられるのか。少なくともミラージュのメンバーがこの事実を公表するはずがない。また、パルスェットが生きてる間に現場から離れたバッハトマも、この情報を掴める訳がない。よって、この情報を流したのはトモエということになる。
おそらくであるが、トモエはメヨーヨの「首狩り」に参加していた時期から、情報屋にこういった情報を渡していたのではないだろうか。手合いの結果や騎士の負傷、GTMの擱座が報じられれば、救援に回る者、スクラップを狙う者、情報を求める者が群がってくる。要するに、報道機関にとって金になるネタである。トモエはその情報を売ることで小遣い稼ぎをしているものと考えられる。
(2023.06.16)


■ 「気になるのはやっぱりそこか」 (p56)

デコースとエストの会話。「それがわかってたのか」「気になるのはやっぱりそこか」というデコースの心理をいまひとつトレースできない。
エストが察していたのは「なぜあの騎士にとどめを刺さないのか」「それはマスターがさらなる絶望と恥辱を与えようとしているため」という部分で、デコースの加虐思考を読み取ってのセリフである。なので、「それがわかってたのか」=「オレの考えをよくわかってるじゃないか」という受け取り方ができる。
が、「気になるのはそこか」というセリフとミースの会話を重ねている部分が読み解きにくい。

バーシャの記憶が消えているにも関わらず、ヨーンのことを気にしている、という部分ではおそらく無い。
エストが言外に「さらなる絶望と恥辱を与えるためのトリガーが自分にあるのではないか」と考えていることを読み取って、「気になるのはそこか」と云っているのであれば、なんとなくデコースの心理も読み取れる。エストのシークモードは「根幹プログラムの下位のパッチ」であり、エストの自我を揺るがすものではない。が、自分に記憶のない空白の期間があることに彼女自身が気付けば、それは自我に何らかの影響を及ぼすことになるかも知れない。デコースはそこを狙っているのかも知れない。

ここからは妄想大爆発になるけど。

デコースはわざと自分の障害となる可能性のある騎士を生き永らえさせて戦闘を楽しもうとしているフシがある。彼は強いが故に好敵手が存在しない。かと云って、圧倒的な力量差のある剣聖と対峙するつもりもない。見込みのある騎士と因縁をもち、手負いにすることで恨み辛みをもってもらい、相手が再び挑んでくるのであれば、多少は人生の慰みになると考えているのではないだろうか。
バーバリュース・Vを打倒して見逃したのも、ヨーンの片腕を落として去ったのも、彼自身の「人生の面白さ」を増やすための布石である。つまり、デコースにとっての「人生の面白さ」は、他者と因縁をもつこと、それをより長く持たせることで増大していく。
人生を楽しみたいのであれば、過去や因縁は消し去るモノではない。記憶を消すなんて以ての外。・・・この視点で見たとき、デコースから見てエストとバーシャの在り様は実に勿体ないモノに見えるだろう。だからそれを崩したい。自我があるなら、記憶を持ち続けて、因縁に塗れろ。恨み辛みも飲み込んでヒトとつながりを持て。なぜなら誰だって「人生は面白いほうがいいだろう」・・・とつなげてみるのはどうだろうか。

魔導大戦が終結するまでに劇中から退場することが確定しているデコース。でも1巻から登場してここまで活躍してきた彼には、作品自体に爪痕を残すキャラクターでいて欲しいですよね。例えば、今後のエストから「バーシャ」という存在を消し去るムーブとかだったら最高過ぎる。果たしてデコースと別れた後のエストが「バーシャ」を発現するのか否か、些か妄想し過ぎな解釈ではあるが、そういった視点で楽しみたい。
(2023.06.16)


■ パルスェットの最期 (p61)

ヨーンを助けるために限界を超えて輸血を行い、命を落としてしまうパルスェット。
ここに至るまでに様々な描写があったが、ヨーンが最後まで自身のパートナーとしてパルスェットを見ていなかったのが悲し過ぎる。
「騎士とファティマにとっていちばん大事なことは何でしょうか」・・・ミハエル・レスターと別れた後のパルスェットは、この喜びを噛みしめることができなかった訳で、もう不憫でしょうがない。ファティマに対して不憫と口にしていたヨーンが、結局のところ一番ファティマを傷つける行動を採ってしまったことになる。

静が「危ない方でした」と評しているシーン。
ここはクバルカン法国の文化を理解していないと意味が通じない。以下、デザインズ3の考察で書いた文書を再掲載。

クバルカン法国の別名は「ダルマス・クバルカン」もしくは「カルマ・ソユーズ」。
ダルマ(DHARMA)は仏教でいうところの「法」、ヒンズー教では「徳」の意。また、カルマ(KARMA)は「業」や行為そのものを指す。クバルカンの教えはこういった宗教的な観念とは関係が無いが、解説を読む限り、ルーン騎士に求められている精神は修道的・僧侶的なモノとほとんど変わらない。曰く、「ヒトを導くモノであれば、まずその行為をもって道を示せ」というものである。ルーン騎士にあるのは「正義」では無く、国民全体に示すべき「模範」・・・もっと単純に云えば「私利・私欲を捨てよ」ということになるだろう。
この背景を理解した上で、ミューズが幼少時のヨーンと出会い、ルーン騎士団に誘ったシーン(コミック10巻p102)を思い出すと、非常に面白いドラマであったことが判る。
かつて「人形使い」になることを見込まれた少年・・・しかし、今現在のヨーンにあるのは「エストと共にいたい」という私利・私欲だけ。ルーン騎士に成り得るはずも無い、歪んだエゴをもつ人物である。では、その歪みを生み出したのは誰か・・・ファティマ・静が「恐ろしい」と評したのは誰であったか。
GTMダッカスの稼動に全てを捧げるバーシャの思考・行動は、クバルカンの教えを真っ向から否定するものである。センセーをして「クバルカンのファティマはさすがクバルカンのファティマ」と云わしめる静であったからこそ、「恐ろしい」という言葉が口から出てしまったのだろう。そして、その静が予見したバーシャの本性によって、私利・私欲に生きるヨーンが生み出されてしまった訳である。

つまり、静の視点から見てヨーンは「バーシャの魔性に取り込まれた危うい少年」ということ。
その予見のとおり、ヨーンは身勝手な行動で重症を負い、そればかりかパートナーのパルセットをも巻き込んで死なせたことになる訳で・・・今回の結果は、クバルカンの視点で見れば愚か者の烙印を押される事象ということになるだろう。ただ、ミューズが本心でどう思っているかはまた別の話。国のトップともなると、建前でしか話せないということもあるだろうし。

ヨーンの敗退・負傷の報を受けて、多くの女性キャラが登場する。
今月号の何がすごいって、彼と縁を結んだ女性陣がほぼフル出演しているところ。主要キャラで登場していないのはひとりだけである。

青年期の最初期に遭遇したアイシャとキュキィのコンビは、今回もコンビで登場。
アイシャはパルスェットの死を伝えるツライ役回りである。アレクトーと京はパルスェットがヨーンに嫁ぐ前に見守っていたファティマ。

フェイツ公国でヨーンを拉致ったナイアスは、ナカカラ攻防戦で皇帝暗殺・謀反を企てた罪で捕縛されている模様。
要するに元老院のしっぽ切りである。アルカナの面々は戦場で直接彼女と会話をしたはずであるが、帝国内の混乱を収めるスケープゴートとして彼女が槍玉に挙がったということだろう。彼女が皇帝陣に弓を引いたのは事実であるし、元老院は最初から企てが阻止された場合に彼女をこういった形で使うつもりでいたものと考えられる。
ある意味で一番ヨーンの中にある「騎士への憧れ」をくみ取っていた人物だけに、言葉を交わせずに本星に送還されるのは口惜しいのではないだろうか。
ただ、彼女は3075年のハスハント解放線に参加することが判っているので、本星に戻った後で何らかの執り成しがあることは想像できる。慧茄かジークママあたりが動くはず。

ルミナス学園で一緒に過ごしていた桜子は、何も伝えることができなかったことを悔いてジークに連絡をしている模様。
彼女はエストからバーシャの記憶が消えていることを知りながら、それを伝える勇気が持てなかったことになる。
ただ、伝えなかった彼女に非があるという訳ではなく、口に出せない雰囲気を作ってしまったヨーンに非があると考えるべき。

ダブル・アライメント・スーツを提供したシアン夫人もパルスェットの訃報に涙する。
シアン夫人が作っていたスーツは「がんばれエスト SCHOOL CALENDAR 2008-2009」で某国1等式典礼装として掲載されていたもの。ファティマ・エストがとある人物の結婚式に参列する際に着用することになるスーツである。草色、赤色、白色から成るワンピースで、この3色は地球におけるクリスマス・カラーに相当する。ファティマが結婚式に参列すること自体が星団法違反であること、星団暦3070年以降の出来事であることを考えると、天照家もしくはその周辺におけるイベントの可能性が高いが・・・。
そもそもこの時点で製作が進められているということは、全く別の理由で作られたスーツということになるだろうか。もし、パルスェットのためにロハで作っていたスーツだとして・・・これが後に仕立て直しされてエストの元に行くのであれば、これもまた奇妙な縁をつなぐアイテムということになる。

ジークママはヨーンに剣技を教えた師匠。
彼女の場合、息子ジークを救ってもらった経緯があるため、パルスェットの訃報はかなりショッキングな内容となるだろう。
左目が痙攣しているような描写があるが、これはダイ・グおよびジークとも共通する遺伝子疾患。

そして、今回の対デコース戦の原因となったアーリィも登場。彼女はヨーンの負傷の経緯を理解していない模様。
携帯電話のやり取りでヨーンが呼び出された事実に気付いていないのか。この事実を知ることでバッハトマから離反するのかも。

コミックを見直すと、ヨーンがナイアスと別れた後でマロリーとも遭遇しているのだが・・・彼女はヨーンに向けた直接的な会話がないのでノーカウント。

という訳で、ヨーンと縁が在りながら、劇中に登場していないのはちゃあ・ティということになる。物語の構造的に、その最後のひとりはとても重要ということ。
絶望に暮れるヨーンに「生きていく力」を与えてくれるヒロインがいるとすれば、それはやっぱり「I think of you」と告げてくれた彼女であって欲しい。
(2023.06.17)

 

■ 2023年8月号


■ 終わりの始まり (2023年8月号p55)

タイトルは「終わりの始まり」。
たぶん、魔導大戦の「終わり」の始まりであると同時に、白い宇宙が現れる「終わり」の始まり、という二重の意味。
劇中の零零(ゼロ・ゼロ)のセリフを読む限り、白い宇宙はジョーカー星団に破滅をもたらすらしい。
この破滅を回避するため、(おそらく)3225年のスタント遊星攻防戦においてFネーム・ファティマが大挙してやって来るようだ。

スタント遊星攻防戦において対峙するのは魔王ラドナリスリビオンであることが判明しているため、白い宇宙とはすなわちヴィーキュルの世界あるいは彼らが呼び出す「何か」ということになるが・・・この戦闘の結末は、ヴィーキュル側に突如出現したオーバーローデス・ディアブラとラキシスによる制止、ラドナリスリビオンとの和平成立によって幕を閉じることになるらしい。
そう考えると、世界の破滅・終末という意味の「終わり」ではなく、太古から続くヴィーキュルとの争いの終結を意味する「終わり」という受け取り方もできるかも。
(2023.07.23)


■ 静謐の詩女アルル (p55)

詩女となった後のアルルの衣装デザインが公開。コーラスのグリーンとハスハ・イエローで構成されているタイトなロングワンピースである。
左肩に紋章の入れ墨あり。ただこの紋章はこれまで見た記憶が無い。もしかしたらアトール聖導王朝の紋章だろうか。

静謐とは、静かで落ち着いていること。また、世の中が穏やかに治まること。魔導大戦が終結した後、マグダルが隠居生活に入りハスハ・ミノグシアに平和が訪れた時代の詩女ということになるが、そのすぐ後の時代には天照による星団侵攻が開始される。
彼女が詩女となるのも、この混乱の時代への突入を予見した選定があったためかも知れない。設定上、詩女の記憶の継承は先代の指名あるいはセントリーによる指名に拠って選定されることが明かされているものの、選定に至る以前の素養の開花がどのような意思によって為されているのかは判然としていない。コミック17巻でナカカラとフンフトが驚いている点から察するに、詩女クラスのスコーパーの発現は原則として一時代に対してひとり。同等の者が現れること=一時代にふたりの詩女が活動することになり、その理由や予測は歴代の詩女であっても見通せないようだ。ただし、ベリン・ラーンはおそらくその理由を理解しているはず。ナカカラが「あの方」と呼んでいるのはおそらくベリンである。
(2023.07.23)


■ アーリィの脱走 (p56)

反逆者と断じられたアーリィがトモエを殺害して逃亡する。トラフィックスの主要キャラのひとりであったトモエがここで退場。意外にアッサリ(泣)。

先月号では描かれていなかったが、アーリィの制服の肩に肩章が追加されている。襟元にあるのがたぶん階級章の略章。少将のアーリィが星一つ。「え!?トモエ団長!!」って言ってるヒトは星三つだけど、たぶん大佐か大尉だと思う。
尉官・佐官・将官の違いはたぶんバッハトマの星の紋章で区別されているものと考えられるが、劇中のコマを見る限りでは判別できない。もしかしたら色が違うのかも知れない。

逃亡に使用した車はメルセデスAMGのロードスター系に見えるが、正面のエンブレムはDB(ダイムラー・ベンツ)と描いてあるように見える。
地球においては、ダイムラー・モトーレン・ゲゼルシャフト社とベンツ&シー・ライニッシェ・ガスモトーレン・ファブリーク社が1926年に合併してダイムラー・ベンツ社に⇒98年にクライスラー社を吸収してダイムラー・クライスラー社に⇒07年にクライスラー社を売却して再びダイムラー社に⇒そこから商用車部門をダイムラー・トラックとして分離し、残った本体がメルセデス・ベンツ・グループ社となっている。
なお、メルセデスはダイムラー・モトーレン・ゲゼルシャフト社が所有していた商標であったが、ダイムラー・ベンツ社が成立した際に「メルセデス・ベンツ」のブランド名となった。現在はメルセデス・ベンツ・グループ社の子会社に当たるメルセデス・ベンツ社がブランド名を引き継いでおり、各種モデルの販売を行っている状態である。あーヤヤコシイ。
なお、メルセデスAMGはダイムラー・クライスラー社の時代にAMG社を取り込んで生まれたチューニング専門(スポーツカーブランド)の子会社である。

ダイムラー・ベンツは第二次世界大戦当時の会社であり、ナチス・ドイツの戦車や航空機のエンジンを作っていたメーカーでもある。なので、永野センセーの趣味を反映してジョーカー星団では現役のメーカーとして活躍しているのだろう。
ついでに云うと、ゲートシオン・MK2のエンジン型式名は「ハ-DB603」になっており、これもダイムラー・ベンツが大戦中に生産した航空機エンジンが元ネタになっている。

という訳で「ダイムラー・ベンツ社のロードスター系」が登場した訳だが、たぶん咄嗟に奪える車の中から、足が速くて飛び乗り易い車種をマルターが瞬時に選んだのだろう。
この後でアーリィがバランシェ邸に向かうことで…ミースと三条が拉致られる原因を作ってしまうものと考えられる。
なんとなく・・・だけど、トモエはアーリィを責めつつも自分である程度は庇うつもりでいたような気もする。裏切りを断じるのであれば、最初から憲兵を使って取り囲めば済む話だった訳で。大人しく付いてくることを望んでいたのではないだろうか。
(2023.07.23)


■ 謎の騎士による襲撃 (p61)

ハスハ・ミノグシアの中でも最も厳重な警戒態勢が敷かれているはずの花の王宮。バルコニーに出ていたフンフトを狙って人造騎士が侵入し、ナオ・リンドーがこれを斬り捨てる。ここに至るまで警戒に当たっていた騎士は消されたのか、あるいは、ペールが瞬間移動で直接送り込んだのかは不明。というか、ナオもたぶん面会許可とか取ってなさそう。

人造騎士の設定が出ているのはヨーグン3連邦であるが・・・超太古の言葉(=超帝國よりもさらに古い時代の言葉)を口にしたのであれば、また別方面の要素が絡んでいる感じである。ヨーグンが造り上げた気になっているだけで、実は超太古の何かがそれを依り代にして現代に蘇ろうとしているのだろうか。
フンフトはバッハトマかカリギュラの介入を想像していたものと思われるが、人造騎士の介入は予想外の事象であった模様。彼女が戦慄している反応を見る限り、「ゾ・ルゴウカ」という言葉に全く覚えが無い訳ではなさそう。詩女の歴史は炎の女皇帝から開始されたはずだが、超古代の何かと関りがあるとすれば、超帝國時代のログナーから女皇帝に伝えられた何かか、歴代の詩女の誰かが過去にその接触を受けたか、といったところだろうか。

陽貴の姿を見て女皇帝が「視て」いることに気付くナオ。超帝國の時代から土下座の文化があったらしい。陽貴が「でるたべるんまでいったん」と言っている。つまり、緋色の雫の送付先であるジークの現在地はデルタ・ベルンということ。やっぱり、ちゃあの目の前にいたのがジークということで良さそう。

破烈の人形の横に描かれているのはおそらく詩女ナージュグ。令令謝の正体については4月号以降のドアランスティルーテの登場シーンほかでほとんど解説されていたので割愛。
おそらく、数式生命体を構成している情報(データ)を「数式」と呼んでいるのだろう。物質ではないため劣化することがなく、零零の言葉に拠れば粒子(ちり)を介して伝達できる模様。令令謝の存在記録が粒子に乗ってウィル星団暦7777年以降の未来に辿り着いたことで、娘である零零が数式生命体として構築されたらしい。ここで云う粒子(ちり)とは、おそらく光速よりも速く移動する仮想的な粒子、つまりタキオンということになるだろうか。あーでも令令謝が亡くなったのは異次元なのか。

零零が母親から引き継いだのは「後」ではなくて「跡」である点に注意。母親がこの時代で為していた存在記録あるいは素粒子運動記録を引き継いでいる。つまり、その記憶はおろか思考・行動・立ち振る舞いをも引き継いでいることになる訳だが・・・超(バスター)から帰還した彼女を見てバランシェはぶっ壊れファティマと断じたというのだから、おそらく全く引き継いでいないということだろう。
(2023.07.23)


■ カラットが情報を飛ばしてくる (p66)

ナオと適当に会話していた陽貴(カラット)がスコーパーを発し、人造騎士と超古代の言葉を天照とラキシスに伝達する。
が、天照、ラキシス、ダルリハの記憶にその言葉は存在せず、ヴィス・モナーク(代理モナーク)であるイエッタだけが超古代の言葉であることに気付いたようだ。
問題は、なぜ陽貴がこの映像を飛ばしたのか。天照とラキシスに伝えたかったのではなく、イエッタに伝えようとした可能性あり。超太古の時代を知る者同士の「ヤバイよヤバイよ」アラート的な。

ラキシスのシャツに描いてあるロゴはジュエリーブランドのビズー(BIZOUX)。株式会社ドリームフィールズの創業者であった関口哲史が2009年に楽天市場で立ち上げたジュエリーブランドである。2012年以降に路面店を展開しており、GINZA SIXの旗艦店のほか、関東以南に多くの支店をもつ。たぶん永野センセーの推しブランドなんだろうな。
(2023.07.23)

 

■ 2023年9月号


■ レーダー9世 (2023年9月号p55)

ジークが成長した後の姿であるレーダー9世のキャラシートおよび設定公開。
ダイ・グの後を継いで皇帝となったジークは強権を発動し、フィルモア帝国の政体と軍グループを全て改編・再構築して強固な絶対君主制を確立することになるらしい。
流れる血を減らすための手段として、因習・慣習の全てを排除した完全な支配体制を組み上げたということだろう。本編で描かれている彼の性質を考えると、自身の心をも殺して冷酷無比の支配者を演じているであろうことは容易に想像できる。拘りと誇りの全てを捨ててでも目指すべき道を見つけたということだろう。
映画GTMで登場したジークは、おそらくこのキャラシートよりさらに未来の姿となるはず。そこで描かれた笑顔は「やり遂げた」後の安堵・安心であったと思いたい(コミック13巻扉絵)。

解説文から想像できること。

フィルモア帝国を完全専制君主制度に緊急移行する仕組みは、コミック15巻でワイプ皇子が語っていたとおり。皇位1位の人物が継承する権利であり、ポーラ・ボルガ・レーダー⇒ワイプ・ボルガ・レーダー⇒ジークへと受け継がれてきた権能である。ジークはおそらくこの仕組みを使ってフィルモア帝国を根底から作り変えるものと考えられる。

レーダー9世のパートナーがエストであることは、公にはされていなかったようだ。とは云え、搭乗騎がダッカスであれば容易にバレてしまう訳で、おそらくジークが所有していた時期はダッカスだとバレないよう偽装されていたのではないだろうか。ダッカスはもともとホルダ31M型(初期設定ではK型)として開発された経緯があるため、フィルモア帝国内であればその特徴・特性を全て隠蔽するような偽装も可能であったと考えられる。

円卓の騎士の使用GTMにMK4マッハ・シャルトマがある。つまり、グレート・ショルティ連合の成立時にクバルカン法国の筆頭騎士が傘下に入ったということ。
マッハ・シャルトマを駆る人物はノンナ・ストラウスとイゾルデ・サヤステであるが・・・おそらくジークの戴冠において、サイレン皇子の再来を国内外に意識させる必要があったと思われるため、彼の傘下に入れるのであればサヤステ家の騎士を招いたのではないだろうか。

ダス・カイザースの現在の所有者はジークママであるが、おそらく娘の茄里・ボルガ・レーダーに引き継いでいるはず。

ゴーゴンの新型騎の名称は道成寺にまつわる「安珍・清姫伝説(あんちんきよひめでんせつ)」から。
奥州白河より熊野へ参詣に来た僧の安珍。宿を借りた安珍を見て一目惚れした清姫。清姫は夜這いを掛けるも、安珍は僧であるが故にこれを断り、参詣の後に再び立ち寄ると嘘を付いて逃げる。謀れたことを知った清姫は怒り追いかけ、日高川を渡る際に身投げして大蛇へと転じる。安珍は道成寺に逃げ込み、鐘を下ろしてもらいその中に隠れるが、清姫は鐘に巻き付いて火を吐き安珍を殺害。清姫は元の姿に戻るが入水自殺を遂げる。この後、安珍と清姫は畜生道に堕ちて蛇へと転生し、道成寺の住職に頼んで成仏させてもらったという伝説である。

ゴーゴン・アンディンとゴーゴン・シンキはラミアス系列のため、ホルダ41型と43型という設定は無理がある。
ホルダはライオン・フレームを採用している系列である。一方、ラミアス系列は新規設計の道成寺フレームあるいはプーマ・フレームを採用しているドージョージ型に分類されているため、単純に設定ミスのような気がする。

んで、円卓の騎士が使用するGTMの中にゴーストとメロウラがない。
クリスは円卓の騎士とは立場を別にする最上位の騎士エンペラーズ・ハイランダーとなるため、メロウラがここに記載されていない点は納得できる。
ゴーストはどこに行ったのか。もしダイ・グが存命しているのであれば、例え搭乗できなくとも先皇の皇帝騎として他者に貸与するということはないだろう。・・・という逆算から、ダイ・グはしばらくフィルモアの重鎮として残るのではないかという想像をしてみる。
まあ、ダイ・グが崩御した後にジークの判断で皇帝騎が封印されたという想像もできてしまうため、この辺は何とも云えないが。

ルミナス学園のブラック・プリンスが、長じてブラック・エンペラーに成り、ブラック・ファティマを娶って黒騎士ダッカスを駆るという・・・黒々三昧。
一方、デコースを打倒し、エストとの思い出を過去に流したヨーンは、後に漆黒の花十字を背負って黒衣のミラージュ騎士となる(2020年7月号)。
デコースという存在がふたりの騎士を黒に染め上げた、という捉え方もできるだろうか。

キャラシートから想像できること。

ジークはおそらくブラウ・フィルモア王家から、パーマネント・レーダー王家へ婿入りする形で「レーダー」を名乗ることになると考えられる。
故に身に着けている紋章もウォータークラウンである。
一方、袖口に見える山吹色はフィルモア王家の王家色であり、ちゃんと両家の血筋を継ぐ立場であることが判るデザインになっている。

帽子に装飾されている鳥のような装飾はナイトマスターの証「リッター・トラッグレイヒャー」のようにも見える。
右手にもつ笏はダイ・グのキャラシシートで描かれている皇帝笏とたぶん同一。
左手に嵌めている指輪はおそらくトリハロンの七宝の指輪。アラン・リー・ファウトゥに預けられ、さらに未来において茄里へ、そしてレーダー9世に渡されることになる。
胸にある赤い宝石は・・・サイレン皇子のゴルゲットの中央にあった宝石かも知れない(コミック13巻キャラシート)。あるいはこれが「緋色の雫」なのか。

あとは・・・襟の色が赤く見えるけど、これ実はオペラ色ではないだろうか。FSSでは「永久」もしくは「永遠」をイメージするカラー。
あるいは、ダイ・グが幻視した「藍色の髪の少女」の姿がジークに伝わり、未来を象徴する色として当代の皇帝色として採用された的なドラマがあったら最高過ぎる。
(2023.08.13)


■ シアン夫人が作っていた「礼装用のスーツ」 (p56)

シアン夫人はパルスェットのために礼装用のスーツを作っていたらしい。7月号に登場したスーツがこの礼装用のスーツということになるだろう。
つまり、パルスェットのために作ったスーツが、仕立て直されてエストの元に行くということ。これだけで泣けてくる。
(2023.08.13)


■ 地潜りとアイス・ハンド (p60)

ステートバルロ・カイダはボォスのカラッカ・アンザ首長国出身の元暗殺者という設定であるが、今回の会話を読む限り現役の暗殺者にしてアイス・ハンドの首領ということになる。
「イラカの暗殺王」という異名もあるようだが、イラカ国はカラミティ・ゴーダースのイースタン・ショルティ大陸南端に位置する小国である。つまり、アンザ出身という経歴は暗殺者集団アイス・ハンドを束ねた後の経歴であって、本来の出身国はやはりイラカ国と考えた方がよいのかも知れない。

地潜りの現在の首領はハンザキと呼ばれる人物。
ハンザキ(半裂)とはオオサンショウウオの別称である。語源には諸説あり、生命力が強くて半分に切り裂いても生きているという説や、大きく口を開けた姿が半分に引き裂いたように見えるからという説がある。石ノ森章太郎の漫画版「変身忍者嵐(1972)」にもハンザキという化身忍者が登場する。
ハンザキの衣装パターンに何か既視感があるけど思い出せない。たぶんガマガエルの目を図案化した模様ではないだろうか。

ハンザキがトモエの偽名である「亞矢子」を口にしている。つまり、これは単なる偽名ではなく、彼女の幼名かハンザキが名付けた名前ということか。
本名が堀川南洞院亜矢之巴(ほりかわみなみのとういんあやのともえ)なので、そこから発して「亜矢子」と付けていたのかも知れない。
彼女が死ぬときに微妙に笑っていたように見えたのは、ハンザキに宣言していた本懐を遂げたことを意味していたのだろう。
(2023.08.13)


■ ちゃあの来訪 (p64)

ヨーンと縁を結んだ女性の中で唯一登場していなかったちゃあが登場。
しかし、ヨーンの現状を知って失意のうちに立ち去ってしまう。あー・・・ヨーンを立ち直らせるタイミングでの登場と思っていただけに、今回のやり取りは悲し過ぎる。

アイシャとちゃあの会話を読む限り、姉は妹がヨーンと既知の仲であることを知らなかったようだ。
天照は知っていたはず(コミック11巻)なので、ちゃあのプライベートを(あるいは自由に生きる姿勢を)守るために、敢えて情報を共有していなかったことが窺える。
フリーズもちゃあの行動に同行しつつも、今回の来訪を事前にアイシャに伝えていなかった。ここでもやはり情報の共有が図られていない。これもおそらくちゃあの意思を尊重してのものだろう。周囲の気配りが逆に姉妹の間に楔を打ち込んでしまう結果になってしまった訳である。

ニュータイプ2006年4月号の表紙で姉妹が共演してから、このふたりが劇中で揃う日を期待していた方も多いと思う。その結果がこれである。永野センセー容赦ねぇ。
ちゃあの様子にショックを受けつつも、ジークとの対面に毅然として対応するアイシャ。貴族であることが染みついてしまっていると云うべきか。
これ絶対、心で泣いているだろ。ジークちょっと手加減しなって。

ちゃあが履いているオープントゥのスニーカーサンダルはいろんなメーカーで出してるっぽい。ブランドが絞れず。ロディックのヤツが近いデザインかな。
(2023.08.13)

 

■ 2023年10月号


■ 扉ページはバルタン (2023年10月号p55)

イゾルデ・サヤステのパートナーであるバルタンのキャラシート公開。
工場製の銘無しファティマとのこと。
バランシェ系列ファティマとモラード・ファティマの物語上の配置がほとんど終了したため、今後は(星団侵攻以降の歴史も考慮して)銘無しファティマの登場が増えていくのかも知れない。
レーダー9世が3159年にグレート・ショルティ連合を打ち立て、クバルカンを傘下に置くことを考えると・・・バルタンも星団侵攻を通じて反抗勢力に流れていくのだろうか。
ちなみに、バルタン(valtan)はフィンランド語で「力」の意。
(2023.10.09)


■ ジークが猛り吠える (p56)

ちょこちょことメモ程度に。

アイシャに対してキレ散らかすジークがちょっとヤバイ。これまで描かれた彼の描写とは異なる直情型の反応である。
まあ、フィルモアの皇位を継ぐと決めた緊張感から性格がいつもよりピーキーになっているのかも知れないし、ちゃあのことになると冷静でいられないのかも知れない。
いいから落ち着け。

キュキィの隣にいるのが、アレクトー、アグライア、時。普段着でこういう表情になると結構見分けがつかない。

アイシャが泣く表情・反応は妹のちゃあと一緒。嗚咽を漏らさず振るえて泣くあたりも完全に一致している。

今月号で目を引くのはp60のシトロン・メナーの表情。
このドタバタの中で彼女は周囲を冷静に見ている。ジークがどういう人間なのか。アイシャはどういう姉なのか。ちゃあの従者としての視線と観察である。
あと、よく見たら学校の制服じゃなくてミラージュの騎士服になっとる。

先月号でちゃあが持っていたバッグのようなモノは、手作りのダークチェリーパイを包んだ紙袋だった模様。これ全然気が付かなかった。
彼女が残したメモを見る限り、紙袋と箱はどこかのお店のものを流用したようだ。
ケーキを包んでいる紙に「Ama」と描かれているようだが、これは流石にお店の流用という訳にはいかないため、ちゃあがクッキングシート(またはラッピングシート)を調達してきたのだろう。
メモに「a favorite of you(アナタの大好きな)」ダークチェリーパイですよ!ってメッセージを添えているちゃあが天使過ぎる。

ジークがプロムの当日に花束を持っていた理由は不明。本来であれば、プロムは卒業生の晴れ舞台であるため、花束を贈る相手はヨーンや桜子になるはず。
ヨーンに渡そうとしたら、桜子との修羅場に突入しちゃったので渡せない⇒その流れで天照とちゃあの会話を聞いてしまった、という感じだろうか。
まあ、最初からちゃあに渡すつもりだった可能性もありか。

天照とジークママがちゃあに対して何と云ったか。あるいは何と云おうとしたかは、劇中で明確に語られていない。…けど、たぶん答えはこれだと思う。
エリザベス女王が遺した言葉「なぜ女性はいつも笑顔でいなければならないのでしょう」。この言葉の後には「不公平だ。男性が厳粛な顔をしていれば、自動的に真面目な人だと思われ、惨めな人ではないとみなされる」と続く。25歳で王位を継いだエリザベス女王は、君主でありながらも見目麗しい女性であることを求められたため、威厳と優しさを兼ね備えた存在として常に笑顔を絶やさずにいたとされる。

天照家の歴代女帝やジークママも一緒。

女性の君主に求められる資質「笑顔でいること」。これを素の状態でやれるのが「ちゃあ」というキャラクターである。君主であることを望んでいない彼女にそれを云ってしまうのは酷、ということで天照も言葉を切ったのだと思う。
それを天然でやってしまうこと。君主の器を生まれながらに持っていること。ジークはそのことを知っているが故に彼女に対して「とても恐ろしい方」と評してしまう。君主の立場から逃げていたのは自分も同じ。にも拘わらず、ちゃあはその立ち振る舞いを知らずのうちに実行していると。そんなちゃあだからこそ、どんなに落ち込んでいても必ず笑顔を取り戻すと彼は断言する。ちゃあ自身の思いとは別に、ジークは君主の鏡としてちゃあの姿勢や生き方を見つめている訳ですね。

で・・・その結果として、彼自身はフィルモアを導く皇帝として笑顔の無い「冷酷無比の君主」を演じることになる。ヒトの笑顔を守るために自らの笑顔を捨てる、という決意が何とも皮肉であるが・・・ジークの目指す世界とちゃあが思う世界がイコールであることを、読者は今回のエピソードから読み取るべき。先月号でわざわざレーダー9世の解説を入れたのも、この辺のことを狙ってのことだと思う。
(2023.10.09)


■ 兄と妹 (p63)

アイシャ(姉)とちゃあ(妹)の一幕から引継いで、ジーク(兄)と茄里(妹)のシーンに移る。

イースト・ハスハのA.K.D.領事館から離れたジークとちゃあは、ムンスターまで移動してきて空港で別れる模様。ちゃあはおそらくデルタ・ベルンのルミナス学園へ。ジークはフィルモアに渡るのだろう。
ジークと茄里の会話を読む限り、茄里はダイ・グの星団放送を聞いたこと、その後でナイアスが拘束されたことを受けて、兄ジークを頼ってデルタ・ベルンに迎えに行っていたようだ。彼女にとっては、ダイ・グの意思を継ぐこと、ナイアスを救うことが急務であるが、ジークはちゃあに付き合うことを優先してボォスへ立ち寄ったと。自分の焦りを抑えて兄の都合を優先したのは・・・腹を刺してしまった手前の遠慮もあるのかも知れないが、もう兄しか頼れるヒトがいないという困窮状態を表している。
味方がいないこの状況下で、母ではなく兄を頼るという点に、茄里とジークママの関係性も微妙に透けて見える。

ジークが手にしているのは「ネギうどんギュービーさん」。ちゃあがコミック13巻で買ったアイテムである。ジークにとってはたぶん「お守り」。
もしかしたら、これからちゃあと会えなくなるかも知れない。思わずこれを握ってしまうというのも判る。

ダークチェリーパイの季節=プロムの季節ということで、ジークにとってもこの季節は進級の狭間ということになるはず。高等部はおそらく卒業済と思えるが・・・大学生になったちゃあがルミナス学園にいるのであれば、ジークも同じように大学に進学しているのだろうか。

アラン・リーが身に着けている帽子にトランプのスートが描かれている。フィルモアではアルカナ・ナイトがそれぞれ身に着けるエンブレムであるが、4つのスートが揃うこの衣装に何らかの意味があるのか否かは不明。単なるファッションアイテムなのか、皇位継承者に付く少年・少女騎士の制帽かも知れない。

ジークが口にしている「旧帝国の亡霊」とは、おそらく帝国の最高決議機関とされる「円卓の騎士」のこと。
盟約とは、コミック15巻でワイプ皇子が語っていた、フィルモア帝国を完全専制君主制度に緊急移行する仕組みのことだろう。
(2023.10.09)


■ アイシャの決意 (p65)

一連の騒動を受け、アイシャは引退を決意した模様。
ただし、「進退願い」という表現は間違い。「進退伺い」もしくは「退職願い」と書くべき。前者は、組織に何らかの損害を与える重大なミスを犯した場合に、自身の過失を報告し、その進退の判断を組織に委ねる旨をまとめた文書のこと。後者は、組織に対して退職の申し入れを行い、その合意を得る文書のこと。こちらは却下される場合もある。
アイシャのセリフを読む限り、彼女は血の十字架を返還しようとしているので、「伺い」ではなく「願い」の意志が強い。つまり、「退職願い」とするのが正解。ミラージュ騎士団において退団は死と同義であるが、一線を退いたミラージュ第1期のメンバーの例もあるため、おそらくはそのまま引退という形になるはず。

ヨーンに復活の兆しが見えたところで今月号は終了。
という訳で、やっぱりヨーンに「生きていく力」を与えたのは彼女でしたね。
(2023.10.09)

 

■ 2023年11月号


■ ルナ・アインハイトの解説 (2023年11月号p55)

扉絵はルナ・アインハイトの解説。独語アインハイト(Einheit)は英語でユニット(unit)と訳されるので、旧設定からリニューアルされたルナ・ユニットということになる。
ブーメラン・ユニットを接続した状態で合体するのも旧設定を踏襲。デザインは異なるが、元の設定から大きく変更されていない。

Z.A.P.による敵軍・敵国の殲滅・蹂躙を極限まで迅速化するための追加武装という感じ。宇宙戦闘における高速移動、衛星軌道上からの(テレポートを使用しない)降下と戦術展開、武装の追加・運用を可能とする巨大ユニットということになるが・・・たぶん天照が合体メカを作りたかっただけ。3つのメカが1つにってザンボット3かよ。

A.K.D.で増産されたマーク2の名称はスピード・ブリンガーMk2。解説にはないけどオリジナル騎とはエンジンが異なるはず。
ログナーの搭乗騎は雷丸(その五)と呼称。カラーリングはダークブルーとのこと。
その壱が超帝國時代のシュツィエン、その弐がホルダー・ブリンガー、その参がB2バビロンズ.、その四がZ.A.P、その六がマーク3、その七がΦ型ミラージュとなる予定。
(2023.10.11)


■ ヨーンのミラージュ入団 (p56)

先月号から続いでヨーンの独白シーン。
ヨーンに助言を与えた多くのヒトの中で、正面から「いつも気にしてます」「心配してます」と伝えたのはちゃあだけ。
自分より力のある人間ではなく、弱い立場の人間から心配されていたということ。
では、何を心配されていたのか。
ヨーンは「ちがう」「笑いながら君とお茶を・・・」と絞り出すが、本当にそれを実行していたのであれば誰も心配などしない。
ヒトに心配されるような何かをやっていたことで、パルスェットは命を落とした。あまつさえ、彼女はそれに不満を述べることも無く、最後まで笑顔で騎士になることを応援していたと。
騎士として立つ機会を全て無視し、パルスェットの願いを汲むこともしなかった・・・その事実に気付いたヨーンは初めて謝罪する。

パルスェットへの贖罪として、剣を取ることを選択するヨーン。パルスェットの「願い」は文字通り命を懸けた「願い」である。これを蔑ろにする選択肢はない。
迷うアイシャに対して、エストの魔性を打ち消したと判断した天照はミラージュ入団を宣言する。

ここでちょっと今月号のツッコミどころ。
ヨーンが思い浮かべるジークママは下着姿ということ。いや、服着てるとこも見たでしょ。

という訳で、コミック10巻から描かれてきたヨーンの旅路は、ミラージュ入団という形で帰結する。
ただ、これはヨーンの物語だけでなく、連載当初から描かれていた物語の帰結でもある。

天照にとってデコースはコミック1巻から続く因縁の相手。読者にとっては、星団侵攻が始まる=新たな時代を迎える前の総決算である。
連載開始から37年を経て、やっと星団侵攻につながるキャラクタの配置がほぼ完了した状態。
デコースにとっても最後の見せ場となるエピソードとなるはず。ここまでホントに長かったなー(遠い目)。

天照の視点でみると・・・。
デコースやボスやんに絡んで失われたミラージュ騎士は、リィ・エックス、ポエシェ・ノーミン、ビョトン・コーララ、ヌー・ソード・グラファイト、バーグル・デ・ライツァー、ベスター・オービットの6名。この影響で天照はGTMの開発が遅れたり、結構な影響もあった訳だが・・・彼らと対峙する中で得たモノもある。
デコースやボスやんが動いた結果・・・アーレン・ブラフォード、ヨーン・バインツェル、ベルベット・ワイズメルの3名がミラージュに入団。直接的な関連性ないが、ベラ戦を通してバーナー・レンダウドとツバンツヒが合流。ツバンツヒを介して、マウザー、エフィー、ボーまで採用。また、可変GTM4騎を得た上でツバンツヒの協力によってGTMの開発を大幅に進めることができ、さらにはボォス地上でのGTM試験運用とZ.A.P.スーツを用いた宇宙空間での試験運用まで実施できたと。
ミラージュ騎士の損失に何ら感情を動かさなかった天照も、損得勘定で「得るモノは得た」状態になっている訳で・・・デコースやボスやんの相手をするのもここらが「潮時」な訳です。

だから、デコースを消す。魔導大戦を終わらせる。
その「終わりの始まり」が、ヨーン対デコースというカードになると。
ヨーンを雇う際にアイシャが天秤に乗せた「賭け」が、今や魔導大戦を終わらせるか否かの「大博打」になっている訳で・・・アイシャが焦ってしまうのも判る。

プラスして、天照はジークが皇位を継ぐことに注意を払っている。
これまでのフィルモアとは大きく情勢が変わることを気に掛けている訳ですね。
大国が大きな方向転換を進めることを見越して、足かせになっている魔導大戦を終わらせようとしていると。
天照自身が動けば秒で終わらせることが可能なその事象を、ただヒトの背に負わせる。その役目を負うべきは、数多の騎士との因縁を築き、フィルモアを統べる新たな皇帝と共に歩み、さらには数十年前より期待の目で見つめていたヨーンの役目である、と天照は判断したことになる。
・・・これだけの大役を負わせるからこそ、天照は後にヨーンのミラージュナンバーを欠番にするのではないかと。

ヨーンが迎えるこの後の戦いは、これまでFSSの中で描かれた物語の中でも最高のクライマックスになると、期待しましょう。

ついでに。
血の十字架の柄付近にある「II」の文字。
アイシャのミラージュナンバーを表しているんだけど・・・ヨーンの名前の元ネタを知っていると「Amon Duul II」を想起してしまう。
あ、2020年7月号p61のヨーンのキャラシートを見たら、ガットブロウの柄に「II」の刻印があるわ。
アイシャから剣をもらうことが既に示されていたのね。

んでもってAUGEからGTMにリニューアルされたモルフォが登場。
両肩のバックライド・リジット・フライヤーの雰囲気とスイレーの両腕のシルエットがなんか似てる。設計時のイメージソースになっていたりするのかも。
余剰エネルギーは背面から全排出する結構ヤバ目な騎体。これ格納庫でどういう状態になってるんだろ。エンジン起動時にバリバリしてたら格納庫の整備士も困っちゃう。
チンガードのパーツが額の位置に上がってヒサシになるようにも見えますね〜。いやぁ、やっとバシクとヨーンが合流できた。

天照が口にしている「あの名」というのがわからん。
天照はジークがブラウ・フィルモア王家の嫡男であることを知っているので、皇帝となった場合に「フィルモア」を名乗るということは知り得ているはず(設定上は「レーダー9世」であるが、この時点でそのように名乗る要因は発生していない⇒順当に行けばフィルモア王家出身の6人目の皇帝である)。が、これを指してわざわざ「あの名」とボヤかす意味も無い。ここで指しているのは「エラニュース」のような皇帝名を指しているはず。
となると、「三色の皇子」あるいは「三色の娘」が皇帝となった際に付けられる秘匿名があり、天照はそれを知り得ている・・・と考えればいいだろうか。おそらく初代皇帝に連なる名前になると思われるが・・・そうなると「トリハロン」とか「ドナウ」という名前ぐらいしか思いつかん。
(2023.10.12)

 

■ 2023年12月号


■ 扉ページはクリスティン (2023年12月号p55)

扉ページはエンペラーズ・ハイランダー(あるいは皇后)の衣装に身を包んだクリスティン。
以前発表されていたモノと色彩が異なり、漆黒に染められている。おそらくレーダー9世の漆黒の皇帝衣と対を成す衣装である。
彼と彼女が未来において漆黒を身に纏う理由・・・それはおそらく先帝ダイ・グを悼む意思の表れ、喪に服す意味を込めているのではないだろうか。
(2023.12.10)


■ ナカカラ離宮に集う人々 (p56)

劇中初登場のナカカラ離宮。ダイ・グの要望により迎賓館として置かれた離宮とのこと。
寿命をすり減らしたダイ・グが最後の時を迎える場所として選んだことで、元老院メンバーや配下の主要騎士が集っている模様。
ナカカラ攻防戦の際に援軍として派遣されたジャンシー・ガラーはそのまま居残りとなったようだが、一緒に出発したブラウマ・イクは本国に戻ったようだ。ただ、彼女がこの場にいない理由はおそらく本国で起きている事象=ジークの即位に対応しているため。

離宮の周りがやたら広いのは、他国の要人が(大型のスキッパーや宇宙船で)訪問することを想定しているためか・・・それとも非常時に軍船が集まることを想定しているのか。あるいはその両方かも。

イアンのセリフに拠ると、氷グループに続き萌葱グループも解散となった模様。ナイアスは略式軍事裁判でも死刑が判決されたようだ。皇帝ダイ・グを亡き者にしようとした元老院の差し金であることは明らか。
なんだけど・・・7月号で言及されていたのは元老院即決裁判。今回は略式軍法会議となるため、裁判を招集している組織が異なる。軍法会議は通常、犯罪を起こした兵士の上級士官が招集することで開かれる。ナイアスは元老院の直属で動いていることもあり、その上官イコール元老院という可能性もあるが、元老院は軍組織ではないため軍法会議を開くのは越権であるはず。普通に考えれば、フィルモア騎士団の組織図上、帝国騎士長官のアビエン・ヒートサイ、帝国騎士長官補佐のブラウマ・イクが招集することになる。
となると、元老院のやり方に気付くであろうこのふたりが、ブラフとして「死刑判決」を周知しておきながら、彼女を裏で保護している可能性も見えてくる・・・かな。
と云っても、言葉を変えているだけで同じ裁判を指している可能性もあるか。
(2023.12.10)


■ ダイ・グとクリスを慕う騎士たち (p60)

ダイ・グに近づけないクリスを心配してブルーノとニオが動く。
ダイ・グがクリスを救ったのは「彼女を愛しているから」。でも、彼自身はその言葉を口にしていない。だからニオも「その耳飾りをもっているのがあなただから」という言及に留める。アルカナ騎士であると同時に皇帝侍従長である彼女は、皇帝の意を汲んで直接的な言葉をちゃんと避けている。この気配り・奥ゆかしさがニオの凄さだと思う。

元老院の指示に従いつつも、クリスに詫びを入れるバルバロッサ騎士。騎士団の枠を超えて尊敬の念を寄せられている状況が窺える。このエピソードのタイトルから判るとおり、今回の主題はエンペラーズ・ハイランダーの誕生である。故に、クリスが名実ともに騎士の筆頭として認められるハイランダーであることが丁寧に描かれる。
(2023.12.10)


■ 竜がもたらす干天の慈雨 (63)

アドー王の執権を提案する元老院の茶番は無視して、気になるのは「蒼い血をもつアドー王」という部分。
「蒼い血」はその名称からブラウ・フィルモア王家の直系や傍系に引き継がれ血筋と考えられるが、設定上、バルバロッサ王家にブラウ・フィルモア王家の血が入るタイミングはワイプ・ボルガ・レーダーと璃里(リリ)=ブラウ・フィルモア女王の婚姻に拠るものとなるはず。アドー王はバシル・バルバロッサの甥に当たるため、その血が混じることにはならないが・・・それ以前にバルバロッサ王家とブラウ・フィルモア王家の縁故が存在したのだろうか。

侯爵位を断り、ダイ・グに付くことを宣言するミヤザ。侯爵位は五爵位の第二位。通常は自治区を与えられる身分であり、平民出身のミヤザから見れば貴族の仲間入りという破格のチャンスである。これを断る漢気よ。

そして雨が降り注ぐ中で円卓の騎士団が登場する。おそらくは即位を宣言すべくジークが遣わした騎士団ということだろう。あるいはこの騎士の集団に護衛される形でジークも来ているのかも知れない。
雲を呼び雨を降らすは竜の権能。強すぎる太陽は国を焦がす。故に竜は雨を以て国を潤す。双頭竜たるジークの目覚めはフィルモアにとっての干天慈雨ということ。だから彼らは雨と共にやってきた。カッコよすぎる。イクさんも混じっているのかな。
(2023.12.10)

 

■ 2024年1月号


■ 扉ページはZ.A.P.(アンクル・クレーンなし) (2024年1月号p56)

扉絵はアンクル・クレーンを取り外した状態のZ.A.P.。スッキリしててカッコイイ。
側頭部のテールコードが「X」なので、設定どおりであれば、コーラス・ハグーダ戦で使用されたウラッツェン・ジィの搭乗騎。おそらく、デザインズ7で「コーラス・ハグーダ戦当時の仕様」ということで掲載されるのではないだろうか。後にヨッヘンマ・ピストーチがジュノー侵攻戦で使用する騎体である。
(2023.12.10)


■ フィルモア騎士の行進 (p59)

円卓の騎士に次いでフィルモア帝国の各騎士が登場。
儀仗騎士は儀礼・式典などに参加する国家元首や高官に付く護衛騎士のこと。アラン・リー・ファウトゥは成長後にこの儀仗騎士となる。

三大王家騎士団は、フィルモア三大王家の各王家に付く近衛騎士団のこと。ブラウ・フィルモア王家付きのブラウ近衛騎士団(双頭竜騎士団)、ボルガ・レーダー王家付きのレーダー王家近衛騎士団(青百合騎士団)、バルバロッサ王家付きのバルバロッサ騎士団(黒鷲調停騎士団)を指す。このうち、新設定で騎士団長の名前が公開されているのは、劇中で登場しているブラウ近衛騎士団長のメリー・マーカスのみ。旧設定では、レーダー王家近衛騎士団の団長がバルファ・レスト、バルバロッサ騎士団の団長はギャリー・アドモンとされていた。

そして、またしても何も知らないブルーノ・カンツィアンさん。合流している青グループは本国に残してきた第4中隊とのこと。

クリスを手招いた円卓の騎士は、センセーが「メガ盛りアタマで中身バレバレ」と書いているので、おそらくジークママのリリ・ニーゼル。
円卓の騎士と儀仗騎士の間に入るように指示されているので、クリスは全騎士団の統括者ハイランダーとしての立ち位置に呼び込まれたことになる。

円卓の騎士は11名。間にフードを被っているヒトがいるようにも見えるが、不明瞭なので判らない。
11名の内訳は・・・たぶんセンセーは全部設定してあるはず。
茄里と璃里(ジークママ)は確定として、たぶんブラウマ・イクもいるはず。ほかは判らない。
イアンが強いと評する騎士が何人もいるのであれば、アビエン・ヒートサイもいるのかも知れない。
設定から察するに、騎士ではない人物もいると思われる。

劇中のアドーの解説に拠ると、円卓の騎士は本来、元老の一部の者が皇帝に上奏した上で、三大王家の承認と元老院の4分の3以上の賛成が無くては召喚できないらしい。
ジークの即位のために多少強引な手続きが採られたとして、三大王家の承認なしでここまで進むとは思えない。なので、三大王家の筆頭当主が影で協力していると思われる。
つまり、ブラウ・フィルモア王家筆頭の璃里・ニーゼル、ボルガ・レーダー王家筆頭のジェイン・ボルガ女王、バルバロッサ王家筆頭のバシル・バルバロッサといった面々である。
茄里は三大王家の血を引く「三色の娘」であるが、たぶんジェイン・ボルガ女王の名代としての役割を負っているのではないだろうか。
そうなると、バシルの名代も居て欲しいことになるが・・・あるいは本人がいる可能性もある。

茄里の目が一瞬だけ痙攣しているのは、ダイ・グや兄ジークと共通する疾患。
彼女が立っているコマでカーテンに描かれているのは双頭竜の紋章とダス・ラント正式紋章から引き継いだ四方矢尻十字。ドナウ帝国の正統後継者という意味合いをもつはず。

という訳で、ジークが表舞台に出る準備が整った模様。次回に期待。
(2023.12.10)

 

■ 2024年2月号


■ 扉ページはデザイン展の告知 (2024年2月号p55)

扉ページはデザイン展の告知+ノーマルのエスト。なぜここにエストが?と云われれば・・・空きスペースを埋めるため+がんばれエストちゃんからの乱入+永野センセーはたぶん、エストを描かない期間が続くと発作的に描きたくなってしまう性分なのだろう。
デザインズ7の解説にある「マリエ」とはファッション用語でウェディングドレスのこと。とくに、婦人服のコレクションで最後を飾るウエディングドレスを指す。仏語で「花嫁衣裳」を意味するロープ・ド・マリエ(Robe de Mari'ee)が語源。
本編中でウェディングドレスを着ることになるのはおそらくクリスティンと思われるが・・・デザインズ7の最後を飾るのであれば、ここはやはりパルスェットに花を持たせてあげたい気分。

デザイン展は正直めちゃくちゃ行きたいです。けど、北海道から交通費・宿泊費込みで行くと、関東近辺に住んでる方が10回行けるぐらいの費用が簡単にすっ飛びます。
ファンであればそれぐらいへーきへーきという方も多いと思いますが、うちはそこまで余裕がないので諦めます。
なので、行ける方はガンガン行って、デザイン展を盛り上げていただければと思います。図録はたぶんネット販売ぐらいしてくれるはず。

それにしても、サービス名が変わった後も未来永劫にX(旧Twitter)と表記(英語圏でもTwitter/Xと表記)されるのだから、イーロン・マスクってアホなことに拘ってるなーと思いますね。もうTwitterでいいじゃん。
(2024.01.14)


■ ジーク登場 (p56)

円卓の騎士の間に隠れていたジークが登場する。
皇帝と円卓の騎士を合わせて12人という構成。アーサー王物語における円卓の騎士は作品によって人数が異なるが、一般にアーサー王を含めて12人とするパターンが多い。
フィルモア帝国の円卓の騎士も、その構成人数に準えているようだ。

先月号の考察で、今回の即位に関して三大王家の筆頭当主が影で協力しているのではないかと予測していた訳だが・・・協力どころか家督を全て譲渡したらしい。
つまりジークは、ブラウ・フィルモア王家当主+ボルガ・レーダー王家当主+バルバロッサ王家当主の座に就いており、その財産・事業と全ての権利を自由に扱える立場になったと。
アドー王やティルバー女王がおそらく王家当主から持たされている(名代としての)議決権も全てジークに移ったことで、彼らが本来もつ議決権はごくわずかに留まり、この地に来ている元老院メンバーの議決権は2割未満となったようだ。
議決権うんぬんの話は帝国法にちゃんと載っているらしいので、ジークが口にしていた「旧帝国の亡霊」、ワイプ皇子が語っていたフィルモア帝国を完全専制君主制度に緊急移行する仕組みというのは、「皇子」「皇女」が欲した場合に全家督を譲渡する盟約のようなものであったと想像できる。ただ、アドー王は「専制君主を強制発動する時」と口にしているので、そのような仕組みが存在すること自体はちゃんと知り得ていたようだ。

バシルがポーラ・ボルガ・レーダーを手籠めにしたことが結局裏目に出たと云うべきか・・・あるいは、例え皇子であっても実際にそのようなことを求める暴挙に出る訳がないとタカを括っていたのか。実際、ジークはダイ・グの星団放送を聞いた上でフンフトの呼びかけが無ければ立ち上がらなかった訳で・・・この状況を生み出したのって実はダイ・グなんですよね。そういう意味では、元老院がダイ・グを軽く見ていたことが全ての遠因とも云える。
まあ、バシルあたりはダイ・グの星団放送を聞いた時点でこのようなことも想定していたのではないだろうか。
(2024.01.14)


■ ドナウという名前 (p60)

フィルモア王家、レーダー王家、バルバロッサ王家の全ての家督を掌握した人物が名乗る名前が「ドナウ・ガァ・ダス・ラント」となるようだ。
えーと・・・フィルモア帝国が東西分裂を起こす以前の統合帝国が「ダス・ラント連合帝国」であるが、この帝国の王家名は明かされていない。
んで、東西分裂後のフィルモア・イースト=ドナウ帝国を治めていたのがドナウ王家、フィルモア・ウエスト=太陽王国を治めていたのがジー・ボルガ・フィルモア太陽王家である。
ここを起点に考えていく。

ドナウ帝国最後の皇帝=トリハロンの実兄がドナウ・ガァ・ブラウ。トリハロンとブラウの父君はドナウ・ガァ・アルカナス・ブラウで、この人物はアルカナス帝家の出自とされる。
(デザインズ4では最後の皇帝としてドナウ・ガァ・ニーゼルという名前も掲載されているが、この部分は設定が混乱しているので無視)
んで、ドナウ・ガァ・ブラウの(おそらく)息子ゾンダー・フィルモアが、ジー・ボルガ・プリンシパル・レーダースと婚姻を結んだことで、現在のフィルモア帝国が誕生。
ドナウ・ガァ・ブラウ⇒ゾンダー・フィルモア+プリンシパル・レーダースと繋いだ血筋が、現在のブラウ・フィルモア王家である。
つまり、ドナウ王家の直系が、統合フィルモア帝国の成立時に「ドナウ」の名を捨てたことが窺える。

んで、ジー・ボルガ・プリンシパル・レーダースを嫁に出した後もボルガ本家は継続していた訳で、こちらが現在のボルガ・レーダー王家。
バルバロッサ王家はドナウ王家の傍系から発した王家であり、デザインズ4記載の家系図でもドナウ帝国成立後に分かれている。

ただ今回、三王家の血筋がひとりに集約されたことで「ドナウ」と「ダス・ラント」の名を名乗っているので・・・
ダス・ラント帝国の王家名がもともと「ドナウ」であり、バルバロッサ王家の発生は分裂以前のダス・ラント時代であったと仮定するべきであろう。
であれば、三王家の統一=ダス・ラントの源流に立ち返ったとみなすことが可能となり、「ドナウ・ガァ・ダス・ラント」を名乗ることにも納得できる。

ジークの衣装にシュペルター・マークに近いS字があるが・・・これの意味するところは不明。
ただ、ドナウ帝国時代のルドルフ・サヤステがシュペール太閤と呼ばれていたこと、超帝國剣聖騎士団の別名がザ・シュペルターズであること、ダス・ラント帝国が超帝國皇分家の血筋から起きたことを考えると、超帝國時代に存在した「シュペルター」という名称が、一方では何らかの変遷を受けてフィルモア帝国内の領地や称号名に、一方では超帝國剣聖の子であるカイエンに、それぞれ引き継がれた状況も考えられなくはない。

ナイトマスターの紋章を付けているのは、幼少時にダイ・グと共にカイエンから認められたため。左腕を斬られた代償に得た紋章である。
背中の紋章は四方矢尻なのでこれはドナウ帝国の紋章。
こういう衣装って戴冠が決まってから制作するのが普通なので、ジークがフィルモアに帰還した後でお針子が必死に縫い上げたものと考えられる。

p62の枠外のコメントが少し雑で判りにくい。「ジークは旧帝国皇帝名をもつので、太皇太后である慧茄からの敬称も"陛下"となる」と修正すればいいかな。
たぶん、通常の皇帝であれば「様」とかになるはず。
(2024.01.14)


■ ジークがもつ異能 (p66)

再会したジークとダイ・グの会話から、@ジークが夢で会っていた少女の正体がマグダルであること、A星団放送の際にちゃあの目の前にいたのはジークであったこと、B陽貴(カラット)がデルタ・ベルンに向かったのはジークと会うためであったこと、が判る。
時系列をまとめると、星団放送の後で陽貴がジークに接触⇒おそらく茄里がフェイツ公国に来てジークと合流⇒ヨーン敗北のニュース報道⇒ジークがちゃあを誘ってヨーンに引き合わせ(イースト・ハスハ訪問)⇒フィルモアに一度帰還して三王家と交渉⇒円卓の騎士を伴ってナカカラを訪問、という流れになる。かなり忙しい。

フンフトの説明に拠ると、ジークの中にサイレン皇子の人格が宿っている訳ではなく、三色の血をもつジークと相対した者が彼に対して畏怖の念をもった場合に「サイレン皇子の姿」となって現れてしまうようだ。とは云え、ジークママが見た皇子は「過去の対話内容を思い起こさせるような言動」をとっているので、単なる幻影・幻聴とするには無理がある。
この現象は、ジーク自身に弱いスコーパー能力がある、と仮定すると何となく説明ができる。

ジークが夢の中で出会っていた少女はマグダル。マグダルの思念は全てのヒトに伝播する訳ではないため、強力な思念に対してジークの能力がパッシブに働くことで限定的にそれを受信したものと考えられる。
一方、能力を持たない一般人がジークと相対する場合はその能力がアクティブに切り替わり、それを介して畏怖する気持ちがサイレン皇子の姿となって発信されてしまうのだろう。逆上していたジークママに対して理性的な言葉を掛ける姿は、彼女の無意識の部分ではなくジークの意識による影響と考えた方がスッキリする。
ドナウ王家が双頭竜=2つの頭をもつ竜を紋章としていたのも、それ以前の太古の皇帝に似たような能力があったことを示唆しているのかも知れない。失われていたその能力が、三色の血を持つに至ったジークに発現したと考えれば納得もできる。

という訳で、ジークが15巻で口にしていた「目の美しい少女」の正体はマグダルであることが判明。そのジークがマグダルという存在を認識した時、カーマントーへの出征が始まることになるのだろう。
んで、もうひとりの「美しい声の女性」は夢の中で「ラブを」と叫んでいるので、すえぞうをこのように呼ぶ人物=ベリンということになるはず。このタイミングで登場した「ベリンがトリハロンに預けた言葉」がどう繋がっていくのか・・・次回に期待。たぶん、この言葉イコール「緋色の雫」ということになるはず。
(2024.01.15)

 

■ 2024年3月号


■ ベリンがトリハロンに贈った言葉 (2024年3月号p56)

詩女ベリンが皇子トリハロンに贈った言葉をジークが読み上げる。ベリンの言葉「あなたの国に蒔いてください」は「花の咲く場所を作ってください」と解釈できそう。その言葉を受けたトリハロンは帝国の東西統一を成し、ダイ・グは(その言葉を聞くまでもなく)星団放送を通して種を蒔いた。だから次はジークの番ということ。皇帝として即位した後にジークが携わることになる、カーマントーへの出征やマグダルとの超法規協定も「花の咲く場所を作るため」と考えると一貫性が見えてくる。

また、ベリンがリチウム公に花の種を渡したのも、たぶん根底は一緒である。リチウム公から始まったファティマの製作と、その子孫によるファティマの強化・進化を通して、最終的にフォーチュンに花の種が蒔かれることになる。おそらく、マキシ=蒔子もまた種を蒔く者として設定された存在であり、その名のとおりタイカに種を持ち込むことになるのだろう(物理的に持ち込むのではなく、その意思を継いで広げるという意味で)。
だから、フォーチュンに生まれ、タイカに向かうことになる天照の娘の名は花蓮=カレンという名前になるのだろう。種の蒔かれた世界に咲く花。名付け親がバランシェという設定もあることから、リチウム公に渡された種の意味がちゃんと引き継がれているのかも知れない。まあ、嘩憐という表記もあるからナンとも言えんけど。

ジークが手紙と一緒に持ってきたケース(双頭竜の紋章が描かれたケース)に入っているのはたぶん「花の種」。おそらくはクリスがミノグシアに蒔くことになる花の種である。今月号はコミック13巻でクリスが得た預言の成就であり、ここを読み直すと詩女が何を云っていたのか判るようになっている。クリスをこれまで見守って来たのはトライトンやブルーノたちアルカナ騎士たち。しかし、彼女を本当の意味で助け、この後の未来で守ることになるのはジークと円卓の騎士ということになるだろうか。
(2024.02.28)


■ 円卓の騎士が顔を明かす (p57)

ジークと共に現れた円卓の騎士が、それぞれの素性を明かす。彼の行動を暴挙と考えるヒトたちに向けた牽制と、元老院の悪だくみトリオに向けた威嚇の意味もあろう。顔を表したのは、レーダー8世、ブラウ・フィルモア(ジークママ)、ジェイン・ボルガ、バシル・バルバロッサ、ジルメア王、ブラウマ・イク、ナイアス・ブリュンヒルデ、茄里、アラン・リー、イゾルデ・サヤステ、アイオ・レーンという面々。

レーダー9世の治世後の騎士団配置は2023年9月月号に示されていたとおり。
円卓の騎士を最上位組織に置き、クバルカンの筆頭騎士が配下に加わる状況となる。ジャスタカークの配置は読めないが、おそらくダス・ラント陣営で問題ないはず。枢軸のジャスタカークと中立(と言いつつ枢軸に有利な振る舞いをしていた)クバルカンがダス・ラント陣営に入ったことで、バッハトマに付く勢力が削られたことが判る。この布陣から察するに、3075年のハスハント解放戦に参加していたミューズとナイアスは、ダス・ラント陣営としての参加だったことになる。

うーん・・・こうなるとクバルカンを客人として迎えていたメヨーヨにも影響が出そう。できれば、ちゃあがもっかいクラーケンベールにボケかまして枢軸から引き剝がすくらいのエピソードが欲しいところ。

今回のエピソードで判明したのは、「円卓の騎士は新皇帝の選出時に選ばれる」ということ。
本来は元老院の議決によって選ばれるようだが、今回に限ればジークが単独で元老院の議決権を有している状態なので、彼個人の意思で円卓の騎士が選ばれたようだ。
(2024.02.28)


■ バシルが見る初代皇帝 (p65)

バシル・バルバロッサが見る初代皇帝の姿は、フィルモア帝国が統合する以前の皇子トリハロンとしての姿。
彼が畏怖の念を抱く初代皇帝の姿は「若い」という点がポイント。つまり、帝国の統合によって構築されたシステムの運用・継続を望んだ頃の姿ではなく、まだ若く、がむしゃらで、その思いだけで突き進んでいた頃の姿である。目の前のいるジークの意見を否定しつつ、若さ故の勢いで事を成し遂げようとする皇子を理想の姿として認めている訳ですね。また、この描写から察するに、バシルがバルバロッサ家当主としてもつ矜持の中に、「我が王家は初代皇帝が即位する以前から仕え、その志を同じくしていた」という思い・誇りが含まれていることが窺える。

帝国を守る堅牢なシステム(それでいて良きも悪きも呑み込むシステム)の重要性を理解しつつも、どこかで若さと善意による改革を願っているとも見えるこのシーン・・・バシルさんも紛う方なき漢ということ。泣けるじゃねぇか。
(2024.02.28)
 

■ 2024年4月号


■ ミヤザの思惑 (2024年4月号p57)

ジャンシー・ガラーとの会話でミヤザのこれまでの動向と真意が明かされる。ダイ・グが貴族の因習に捕らわれない若い皇帝であったからこそ、民間出身の身でありながら共に歩んでいくことができる相手と見込み、辛辣な態度を取りながらもその意思を汲んで行動していたようだ。
クリスの扱いについてもイクの方は気付いていたようだが・・・読者視点で見るとさすがにちょっとミスリードが過ぎてると思う。コミック12巻p201では「潰す」と明言していたり、コミック13巻p152ではクリスの境遇を面白がっていたりする訳で(このシーンはモノローグなので貴族の姿勢に合わせる必要がない)。ミヤザの立ち位置が変わったのって大体コミック16巻辺りよね。
(2024.05.23)


■ 引き継がれる思い (p58)

ジークのナカカラ訪問の真意を確認するダイ・グ。これに対しジークは、トリハロンの理念とダイ・グの想いを引き継ぐことと答える。そのような意思を持っていることをダイ・グが見抜けないはずがないので、このふたりの会話は「任せていいいよね」「任されました」という確認である。その確認をもって、ダイ・グはクリスの今後とフィルモア・ゴルゲットの扱いをジークに託す。ジークのセリフを読む限り、このゴルゲットは皇帝自身が身に付ける装飾品であり、例え皇帝の配偶者・近親者であっても預けることができない代物のようだ。これをダイ・グの「遺志」として彼女に渡すということは、彼女を「皇帝の遺志を引き継ぐハイランダー」とすること同義である。つまりは、クリスをエンペラーズ・ハイランダーとすることが、「詔」として伝えられたという見方ができる。ジークの指名ではあるが、ダイ・グの指名でもあった・・・という部分がポイント。

このあとのダイ・グのセリフにあるように、彼自身はクリスを「守ってあげられた」とは考えていない。彼が考えていた「守る」というのは、ナカカラ防衛戦でクリスを戦死させないことではなくて、もっとずっと大きなこと・・・おそらくは彼女を取り巻く全ての憂いを払うことだったのではないかと思う。それがもう叶わないと考えているからこそ、彼女を託す相手としてジークを選び、さらにはジークの隣にいられるようにエンペラーズ・ハイランダーという立場を残そうとしたのかも知れない。

あと、この「詔」の受け渡しを、ダイ・グの部屋に現れた「円卓の騎士」が立会人として見届けた形になるが・・・レーダー8世は「前皇帝」であると同時に「クリスの養父」でもある訳で、想い人の遺志を継いでこれから帝国の重責を背負うことになる養女に対して、そこそこ複雑な心境を持っていたとしても不思議ではない。と云うか・・・振り返ってみると、バーバリュース、ブルーノ、レーダー8世、ダイ・グと、それぞれがそれぞれの立場でクリスを守ろうとして最後まで守り切れなかったという見方もできる。彼らが必死に動いた結果として、クリスがより過酷な時代のうねりに投げ込まれていくことを考えると・・・彼女がエンペラーズ・ハイランダーになることは決して幸せな結末とは云えないし、おそらくダイ・グ自身もそう考えるはず。でも、「そうせざるを得なかった」というのがクリスを主人公とするドラマの芯であろう。まさに大河ドラマである。
(2024.05.23)
 

■ 2024年5月号


■ ダイ・グの死 (2024年5月号p59)

クリスに抱きしめられながら息を引きとるダイ・グ。慧茄は息子に次いで孫を失う形になる訳で、その悲哀の大きさは察して余りある。天照が口にしているところの「とある目的をもたされたタイマー」が何を意味しているのかは判然としないが、もし彼にもうひとつの「寿命」につながる何かがあるのであれば、いつかの再登場に期待したいところである。
カイエンを最後に抱いたのはムグミカ。ダイ・グを最後に抱いたのはクリスティン。彼らはふたりともその命が尽きることを承知の上で、最後の最後まで彼女たちを守ろうとしていた訳で…これもまた師弟の絆という見方もできるだろうか。天照を始めとする全能神には絶対に作れないドラマである。
(2024.05.23)


■ エンペラーズ・ハイランダー (p63)

ジークの戴冠と同時に、彼の指名を受けてエンペラーズ・ハイランダーとなるクリスティン。その身に纏うものは、初代皇帝のガット・ブロウ、慧茄がダイ・グの配偶者となる女性のために用意していた后冠、そしてダイ・グの遺志を象徴するフィルモア・ゴルゲット。これまでに明かされている設定を合わせると、皇帝笏と七宝の指輪はこの後でジークが引継ぎ、初代皇帝が残した遺物が全て揃うことになる。古き因習を全て捨て去り、初代皇帝の理想とした国家が発足したこの瞬間より、星団侵攻の影が伸びてくる時代へと向かうことになる。

DE7に掲載されたとおり、クリスと円卓の騎士を頂点とするフィルモアの軍事力は、星団でもほぼトップクラスの布陣となる、これを苦も無く駆逐可能なZ.A.P.がいかに規格外の存在であるかは想像に難くない。そういう意味では、多くのGTMが繰り広げる華々しい戦乱の時代が終わり、これから一方的に全てのGTMが破壊されるだけの時代に突入していくことになる。メカが出てくるマンガとしては盛り上げにくい感じになるのではと心配になるが・・・センセーが物語を牽引するだけの魅力をZ.A.P.に込めていることは明白。

永野センセーの解説に拠ると、ジークが「レーダー9世」を名乗るのは、三王家のバランス取りのためらしい。という訳で、このホームページではかなり以前からジークによるレーダー王家への婿入りを推して来たので・・・なんかホントにすみません。ごめんなさい。いやね、だったら「誰もが驚く人物を妻とする」というジークの設定はどこいっちゃうのって話なんだけどね。まあ、これからの展開を見守りましょう。

クリスは「エラニュース」の名を引き継いだようだが・・・DE7の解説に拠ると、この名はエラルド・フィルモア王家の名字とのこと。そうなるとクリスティンがエラルド・フィルモア王家に嫁ぐか養子に入ったことになってしまう。もしダイ・グの后となった扱いであれば、フィルモア帝国は死後婚を認めている国家ということになってしまうし・・・少し微妙。なので、旧来の皇帝名としておくのが正解と思われる。
まあ、ダイ・グとの間にこれだけの思い出を残したクリスが別の男性と添い遂げる未来は全く想像できないので、この後の時代で登場する「エラニュース」の名を継ぐ人物というのはおそらく養子ということになるだろうか。

最終ページで描かれている未来は、映画GTMの最期に描かれた、クリスと町が共に聖宮ラーンを訪問したシーンである。ダイ・グの願ったナカカラとの懸け橋は、やがてミノグシア全土に影響するラーンとの懸け橋につながり、星団暦3159年にフィルモアとミノグシアの間で超法規協定が結ばれることになる。レーダー9世、クリスティン、町、エストを出迎えるのは、マグダル、デプレ、マキシの3名とのこと。そこに至るまでに必要なエピソードは残りわずか。そのエピソードが次月より始まる。
(2024.06.03)

たぶん、ここまでがコミック18巻収録分。
 
 
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