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FSS第3部のエピソードとして位置付けられる本作をFSS的視点から考察してみます。
初版を参考に。 |
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■ 表紙のゲートキーパー |
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フール・フォー・ザ・シティ(以下、「FFC」とする)の表紙はゲートキーパーの2人、つまりアトロポスとクローソーである。 なぜ、FFCの表紙がこの2人なのか。 これはFSSの11巻を見るとなんとなく理解できる。11巻の冒頭、天照大神らが会話する神界に入っていくシーンでもゲートキーパーが描かれていた。おそらく彼女らはジョーカー宇宙から他の世界に移るためのゲートを監視しているのだろう。我々読者は、彼女たちの間を通過することで、ジョーカー宇宙とは異なる世界に入っていくのである。 ここで、FFCの初版の発行日に注目すると・・・1987年10月21日。一方、FSSの初版は1987年5月21日。FFCは永野センセーのデビュー作であり、FSSの連載が開始される以前に描かれたものであるが、単行本の発行はFSSの方が先である。コミックの順列に沿っていけば、読者はまず「FSSの読者」であり、そこから「FFCの読者」として表紙をめくることになる。つまり、ジョーカー宇宙から地球という別世界に入っていくことになると。・・・そのゲートの監視者としてゲートキーパーの2名が描かれているのではないだろうか。 まあ、後付で考えたただのコジツケなので、読み流してください。 ちなみに、FSS本編でタイカ編に移る際(コミック5巻)はゲートキーパーの2名が描かれてません。んが、このエピソードはクーンの前に現れたカレン(5巻p36)が伝えた物語として位置付けられるので、ゲートキーパーがいなくてもまあOKかなーと。 (2006.11.21) |
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■ FFCの背景について |
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FFCを楽しむ前に前提として知っておきたいこと。それはラキシスの存在である。 FSSコミック巻末にある星団年表を見れば判るとおり、ラキシスは西暦1945年から2187年までK.O.G.と共に地球に滞在していたことになっている。 FFCで描かれるのは2185年から2186年、つまりラキシスが再び宇宙に打ち上げられる直前の出来事である。そういった微妙な時期にF.U.ログナーというキャラクターが絡んでいることが非常に重要なファクターとなる。 また、FSSの最新設定によると、第3部においてラキシスが放浪している期間、天照だけでなくルシファ・センタイマも何らかの目的をもって彼女を追っていることになっている。彼らの鬼ごっこが異次元・異宇宙をまたぐものであることを考えると、当然、地球にサタンたちが襲来してきても不思議ではない。 もちろんFFCにはそういったファンタジー要素が一切含まれていない訳だが、FSS的視点を通して本編で描かれることがなかった部分を並べていくと、少しだけ見えてくるモノがある。・・・と思いたい。 つーわけで、以下の考察につきあってください。ついでに、FFCの劇中に登場する主だった単語は「豆単帖」に整理してあるので、そちらも参考にされたし。 (2006.11.20) |
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■ 22世紀の地球 |
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劇中の冒頭で解説されているとおり、22世紀の地球はドウターとメトロポールによって徹底的に管理された超管理社会が形成されている。 FFCは、抑圧された人々がその支配者に対して反旗を翻す物語であるが、この「支配者」と「レジスタンス」という構図はFSS第2部の世界観と重なる。つまり、天照という絶対的な支配者と、それに反抗するラベル(コーラス26世)率いるレジスタンスという構図である。 ここで少し思い出して欲しいのだが・・・FSSコミック3巻で描かれたように、天照は「誰かがコントロールするのではなく自然に人々が(中略)世界という一つの町内の中でうまく生活していける」ような世界を構想していた。星団を統一した後、レジスタンスを完全に駆逐することが可能であったにも関わらずそれを放置・・・さらに、ファティマ・ユーパンドラにその支配権を譲り、アラート・エックスを派遣してA.K.D.を崩壊に向かわせるように仕向けるなど、天照の行動には不可解な点が目立つ。・・・んが、この辺の矛盾は「天照は自身を絶対的な支配者として置くことで、それに反抗する星団民が自発的に統一した意思をもつように仕向けた」と考えれば、一応のつじつまが合う。 天照にとって、コーラス26世は支配体制を引き継ぐ「次世代の王」ではなく、星団民の意志をまとめあげる「象徴」だった。 そして、天照はその「象徴」が表舞台に出てくる時を待っていた。・・・これがFFCにも重なってくるポイントになる。後述。 (2006.11.19) |
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■ 機動ポリスについて |
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劇中に登場する5種の機動ポリス。これらの機能については、劇中で少しずつ語られる。 まず、無人機で自律行動が可能ということ。機種によっては敵を殲滅するための機能を有しているということ。とくにベオ・グライドは完全な殺人マシーンで、大量殺戮兵器である電化火炎砲までも装備している。 レジスタンスを狩るのにイチイチ軍隊を派遣していても、軍側に死傷者が出ることは目に見えている。となると、コスト面さえクリアすれば、無人機による制圧は極めて効率的なやり方と云える。火焔放射など大規模の戦闘に投入可能な火力をもっている点や、ベオ・グライドが開発された点から考えても、機動ポリスが「ヒトに替わって敵を殲滅すること」を第一義として開発されてきたモノであることは明らかである。そういった意味では、ロウ・グライドのような公安用の機動ポリスは、本来目的のオマケとして(試験的に)作られた機種と云えるだろう。 一方で、S.I.D.は火星ベースの建設も同時に進めている(p155)。この点から、無人機の開発は火星での運用も視野に入れていることが予想できる。人間が火星で活動するためには宇宙服の着用が必須で、当然、活動範囲や作業の内容も限られてくる。無人機によってヒトの行動が代替できれば、かなり有用なものとなる。火星の大気はほとんどが二酸化炭素で、重力は地球の約40%、大気圧も地球に比べてずっと小さく、地球で自律活動が可能であれば、当然、火星の地表でも運用は可能である。電力と気温(火星の平均気温は-43℃、極地では-100℃以下になる)の問題さえクリアできれば、地球で運用された機種よりも大型の機体を稼動させることだってできるかも知れない。 だがそれにしても、なぜS.I.D.は火星に基地を建設する必要があるのか?なぜインターセプターのような戦闘機を配備する必要があるのか?火星には「敵」となる対象も存在しないというのに。もし、機動ポリスを火星ベースで運用するのだとしたら、果たして「敵を殲滅する機能」は使われることになるのだろうか?・・・この辺の疑問もあとで回収しやす。 (2006.11.20) |
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■ ログナーの狙い |
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マシン・チャイルドであるログナーは、劇中でおそらく2つの目的をもって行動している。 ひとつは、劇中でしっかり描かれるように「ドウターからの世界の解放」である。ドウターのプログラム改編を機に、その機能を完全に停止させると同時に、人々の意志をまとめあげる存在としてスーパーノヴァを世に送り出す。ログナーはソーニャ・カーリンをスパイ兼アドバイザーとして派遣させることで、スーパーノヴァがマコトの追悼コンサートを開催するという情報を入手。マコトの命日が9月6日であることも計算に入れて、わざわざドウターのプログラム変更日を9月6日に設定しているのである(p156)。 ドウターが沈黙すれば、もともと考える力のなかった官僚はログナーの言い成りになるだろうし、たとえ口煩い官僚がスーパーノヴァの放置を咎めたとしても、ドウターが沈黙したとなればその混乱に巻き込まれることになる。一方で、スーパーノヴァはコンサートによって全世界の注目の的となるし、彼らはそもそも反体制的なグループであったことから、そのまま放置されれば一気に世界解放の象徴と成り得るだろう。 マコトの死は偶発的なものであるが、彼の死によってスーパーノヴァは「本気でやる」という決意を固めた。ドウターからの乳離れを狙っていたログナーにとっては、スーパーノヴァのマコト追悼コンサートが千載一遇のチャンスだったことになる。 また、劇中でラスが尋ねているように、ログナーはデビュー当時からスーパーノヴァを標的にしていた。それはなぜか。おそらく、失われたロックを継承しているサクセサーではなく、抑圧された社会のど真ん中から出現する「正真正銘のロック・バンド」の登場を待っていたのだろう。それこそが新たな世界を築くための象徴になると信じて。 ここで、前述のFSS第2部の構図が見えてくる。 天照がコーラスという「象徴」の出現を待っていたように、地球のログナーはスーパーノヴァという「象徴」の出現を待っていた。抑圧された世界をひっくり返し、人々が自身の意志で考え、行動することを促す・・・その「象徴」となるべき存在の出現である。 そう考えると、ラッセル・コールという名前も、コーラスをもじった名前に見えなくもない(ラッセル・コール⇒略してラス・コール⇒ひっくり返してコール・ラス⇒コーラス・・・ちょっと苦しいか)。また、たった一人の特別な少女と出会い、過去の遺物を掘り起こすという部分でも両者は共通している。コーラスにとってのクローソーとジュノーンが、ラッセルにとってのアラニアとプレシジョン・ベースに当たるのではないか。 そして、ログナーのもうひとつの目的が「火星への進出」である。これについては次項に回す。 ところで、マコトの命日にしてスーパーノヴァのコンサート開催日となった「9月6日」。これはもしかして「既存のロックの意義を覆す」という意味を持たせるために、ロックの日(6月9日)をひっくり返して「9月6日」に設定したのではないだろうか。なんとなくそう思えます。 (2006.11.21) |
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■ 火星には何があるのか |
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FFCの劇中では、火星についての具体的なエピソードは描かれていない。 読んでいて判るのは、S.I.D.が火星ベースを建設していること、ログナーの「次の仕事」が火星を対象としているらしいということ、そして、ログナー自身は「宇宙はまってくれない」と考えて行動していること、の3点である。ログナーはなぜ火星に進出しようとしているのか。 ここからは、FSS視点で見て尚且つ「F.U.ログナーはあくまでもF.U.ログナーである」という過程の上で考察する。 (センセーは以前、「ジョーカーのログナー」と「地球のログナー」はまったく別人という解説をしていたが、ここではFSSの最新設定(を噛み砕いた桜牧師の考え)に沿って「ログナーはサタンの駆逐者であり、全宇宙全次元に存在するログナーは統一した意思を持っている」と仮定する。) 前述のとおり、FFCで描かれる時代はラキシスが地球に滞在していた期間と重なっている。となると、ラキシスを狙ってサタンたちが襲来してきても不思議ではない。おそらくログナーはそのことを知っていて、彼女を宇宙に逃がすための準備をしているのではないだろうか。 火星ベースの建設や、軍隊の派遣、ベオ・グライドのような重火器を装備する自律稼動兵器の開発は、全てサタンの襲来に抗うための対策なのだろう。 しかし、なぜ火星なのか?宇宙からサタンたちがやってくれば、火星などスルーして地球に降り立てば済む話である。 ・・・と考えてしまうが、おそらくサタンたちは「宇宙からやってくる」のではなく、「火星をゲートとして出現する」のではないだろうか。というのも、FSSにおいてサタンの出現に絡んでくるスタント遊星は、「焔星」とも呼ばれるという設定があるのだ(エピソードガイドp183・・・正しくは中国語の漢字で「旧」の部分が「臼」になる。コードの関係で正しく表示されない場合があるので、ここでは「焔」として整理)。「焔星」とは「火星」のこと。つまり、FSSにおけるスタント遊星は、太陽系における火星に該当するのである(メタな設定として、ということだが)。 サタンたちが出現するゲートを何らかの形で封じ込め、ベオ・グライドの電化火炎砲のような重火器を絶え間なく打ち込めば、サタンたちをある程度は押さえ込めるかも知れない。そう考えると、上述してきた疑問はおおよそ解消されるはず。ログナーは眠っているラキシスを保護しつつ、火星ベースの建設と無人兵器の開発を進め、サタンの襲来に備えている。そして、実際に戦闘が行われたか否かは不明だが、2187年にはラキシスが目覚め、K.O.G.と共に再び宇宙に(もしくは異次元に)打ち上げられるのである。 しかし、そうは云ってもドラゴンとも拮抗する力をもつサタンたちが、その程度の戦力で押さえ込めるかどうかは、甚だ疑問である。地球よりも重力や大気圧が小さい火星であったとしても、ベオ・グライドのような無人機がMHのような超高速で動くのは無理だろうし、そもそものスペックが違いすぎる。「異界のモノが別の次元に干渉する際には、その本来の力が大きく抑制される」といった設定でもない限り、地球の技術力でサタンを追い払うことはまず不可能である。・・・あるいは、目覚めたラキシスが無人機全てを制御するのであれば、多少の役には立つのかも知れないが・・・うーん、難しいか。カレンやU.R.I.が助けてくれない限り、無理かも。 (2006.11.21) という訳で、仮定の上にさらに仮定を乗っけてつらつらと書いてきましたが、とりあえず「そういった考え方もあるかも」程度に読み流してください。 桜牧師はFFCも結構気に入っていて、そのうちDESIGNSの別冊でFFCの設定集を出してくれたらなーとか考えてます。グライド・シリーズの全身設定とか見てみたいと思いませんか?このページはそういった意味も含めてFFCの応援ページとして作ったものです。 FSSファンの方でまだ未見の方がいらっしゃいましたら、とりあえず読んでみて、ここをもう一度読んでいただければ幸いです。 |