† 第15巻 エピソードガイド †
The Five Star Stories XV
 
コミック初版を参考に。
14巻と同様にNT連載時の扉絵が考察の参考になっている場合があるので、可能な限り補足を入れて整理しています。
 

 

■ 15巻に登場するキャラクター (p2〜)


登場人物のキャラシートに幾つか新規発表のデザインあり。
NT連載時の扉絵で先行公開されていたものもあるが、アラン・リー、ヒュードラー博士のドレス姿、ユーゾッタ、アルテン・サヤステ、破烈の人形は初公開。巻末にあるラカン騎士団とコーネラ帝国のGTMスーツも初出のはず。
あと、マヨールのキャラシートにガットブロウが追加されている。

キャラクター紹介の範囲でとくに大きな設定変更はないが、マヨール・レーベンハイトはアルルと異父姉弟の間柄とのこと。
巻末に解説があるが、剣聖ハリコンとバランカ家王女シリセの間に生まれた娘がアルル。ただし、アルルはフンフトの胎を借りて生まれており、連載時の解説に拠ると実母が誰か知らないらしい。んで、ハリコンとフンフトの間に生まれた実子が桜子。さらに、シリセが再婚するか何かで生まれてきた子供がマヨールということになる。
うーん・・・アルルが実母を知らないのであれば、どうやったってマヨールが弟であることを知り得る道理がない訳で・・・つまり、彼女は弟であることを知らないまま弟子としてマヨールを鍛え上げたことになる。

ついでに云うと、p162で描かれているように、桜子はアルルが姉であることを知らない。連載時の解説に拠ると、桜子の方は実父を知らないようだ。
つまり、桜子が姉を知らないように、アルルは弟を知らない可能性があると。・・・なんか、コーラスの王家は血筋の管理がいろいろとズサン過ぎませんかね。あと、いろいろと話が膨らむ中で24世が蚊帳の外過ぎる。
(2019.12.14)


■ GTMデモール登場 (p10)


本編に入る前のプロローグとして、コーネラ勢の面々が描かれる。
NT連載時の順番から大きく構成が変わっており、p10-12は書き下ろしとなる。ルーパート2世との会話が入ったことで、ネイキッド状態で描かれていたデモールが消えてしまった。

デモールの戦場デビューは今巻の後半で描かれるが、おそらくコミック12巻で登場したベータテスト騎の実地テストが行われており、そこからさらにシステム・カリギュラの協力を得て改良した状態が今回のモデルになるはず。
バルター・ヒュードラーとビリジアンの会話を整理すると、エトラムルの搭載を前提としたシステムの素案作成はガステン・コーター(旧設定でカンの開発者はガステン・コルトとされていた)。コーター姓から察するに、ゼビア・コーターやマギー・コーターと同じコーター家の出自であろう。バルター・ヒュードラーがその思想を引き継いで設計を開始。ユーゴ・マウザーによるパンター・フレームのアレンジと、ギルフィー・ビリジアンによるエトラムルの補助システム導入(思考を読み取るコンバーターの増設)を経て完成したようだ。
(2019.12.15 修正)


■ ユーゴ・マウザー参戦 (p14)


マウザーのセリフから、ダイアモンド・ニュートラルのミドルネーム(?)である「クラック」という名は、もともとユーゴ・マウザーが騎士として活動する際に使用する名前であり、彼と関わった際に預けたものであることが判明した。
単に関わっただけでなく、巻末の解説で「育ての親」と書かれているので、ガーランドとして多少の手ほどきをした可能性もある。ニューがモナークから帰って来たのであれば、システム・カリギュラが食いついて来ても良さそうなものだが・・・記憶が無くなっていたために不要と判断されたのだろうか。
んでもって、ファティマ・ベルダの登場である。
ベルダはミラージュ騎士団左翼大隊に所属していたクー・ファン・シー・マのパートナーであったが、本編未登場のうちにマスターが死亡してしまった悲惨なファティマ。以前の設定では、マスターの死後にザームラント傭兵騎士団に所属するワスペン・ナンダ・クラックに娶られ、クラックのミラージュ移籍に伴って出戻ることになっていた。入団までの経緯に若干の変更はあるが、デザインズ6で明かされているとおり、ユーゴ・マウザーの騎士としての名がワスペン・ナンダ・クラックである。彼はこの後でミラージュに移籍することになる。

マウザー自身が搭乗するボルドックスの派生騎カンポデルテンシェロ。名前の元ネタは、アルゼンチンのチャコ州で発見された隕石カンポ・デル・シエロ(Campo del Cielo)だろう。その名はスペイン語で「天の草原」を意味する。地上で発見された隕石の中では2番目に大きい隕石とのこと。成分は鉄とニッケルの合金で、いわゆる隕鉄である。ボルドックス系列に共通してみられる「鉱石の名」であるが、星団民から見て極めて異質な存在であるシステム・カリギュラの使用騎に「宇宙から来た鉱石の名」が使われる点がなかなかマッチしている感じ。

この時点でやたら姿勢の良いマウザーであるが、この後でヨーンと出会った際は腰痛を患っているような姿勢となっている(p60)。この辺が微妙に気になる。バッハトマに出入りする際は老体を装っているのだろうか。
(2019.12.15 修正)


■ ヨーンの動向 (p17)


アイシャと別れてからノウランに潜入していたヨーンの動向に話が移る。
ベラ国攻防戦から既に3年が経過。桜子やちゃあとはミノグシア国内で再会できなかったようだ。
ヨーンがいる場所はノーキィシティの近郊・・・つまり、エストがロードス公を失った場所、且つ、ヨーンとパルスェットが初めて出会った場所に近い。

パルスェットが「ゴリゴリ」してるやつ・・・なんだろ?ミル?缶切り?

ヨーンの所有するストライカーはアーレン・ネス・スタイルとのこと。
ハーレー・ダビッドソンのカスタマーとして世界的に有名なArlen Ness(アーレン・ネス)が打ち出したカスタム・スタイルということだろう。ただし、アーレン・ネスはその時代々々において様々なスタイルを打ち出しているため、これぞアーレン・ネス・スタイルといったような定義は見当たらない。ヨーンが使用しているストライカー(12巻p110)に最も近いモノを探すと、1986年に発表したストリート・スタイルの「Accell」というモデルが最も近いか。にしても・・・アーレン・ネスは「The King of Choppers」と呼ばれるだけあってホントにいろんな形のバイクを発表している。エンジンを2基搭載した「Two Bad」とか、やたら流線型の「Mach Ness」とか、ハチャメチャなモンを作る点が天照っぽいかも。
(2017.08.16)


■ 騎士にしか見えないヨーン (p21)


騎士公社の受付のオジサンから見て、ヨーンはどっからどう見ても間違えようがない「騎士」になっているらしい。
単にファティマを連れているからという理由ではない。騎士になることを拒んでいても、その体躯や立ち振る舞いは既に一人前の騎士になっているということだろう。
オジサンが食べているお菓子はかっぱえびせん。
(2017.08.16)


■ 騎士公社の中身 (p22)


騎士公社の中には、騎士とファティマ、そしてGTMそのものとその維持に必要なあらゆる物品が売られているらしい。
コマ内の描き込みから、戦車も売られていることが判るが・・・戦車は基本的に騎士が乗り込むものではないため、部下を率いて作戦行動する場合のあらゆる装備を入手できるということか。GTMも販売しているのであれば、当然、GTMセイラーも置いているはず。2本線、3本線とのフリー契約も可能かも知れない。

p22の1コマ目を見ると、テナントの看板に「SARUTAAH」と読める文字列がある。2011年に大塚朝之が東京都渋谷区恵比寿でオープンし、東京各所で店舗展開している「猿田彦珈琲」が元ネタか。
あと、無理やり「RSC」と読める看板もあるが、これは株式会社ホンダ・レーシング(本田技研工業出資の二輪モータースポーツ専門会社)の前身に当たるレーシング・サービス・センター(RSC)と同名である。ただし、店内に並んでいる商品らしき物体は中型のスキッパーに見えるため、全然別の企業かも知れない。
p23でヨーンが持っている紙コップはブルーボトルコーヒーのもの。Blue Bottle Coffee Company(ブルーボトルコーヒー)はJames Freeman(ジェームス・フリーマン)が2002年にアメリカ・カリフォルニア州オークランドで創業したコーヒーの生産販売企業。海外進出は日本が最初で、2015年2月に1号店となるロースタリー&カフェを江東区清澄白河にオープンしている。
(2017.08.16)


■ ダイ・グとジークの天位取得 (p24)


コミック13巻でクラーケンベールが語っていた、ダイ・グおよびジークの天位取得の詳細が明かされる。
デザインズ4の設定に拠ると、ダイ・グが天位を受けたのは星団暦2968年。カイエンがマドラのスカートを捲ったのが2955年であるから、そこから十数年後のエピソードとなる。クリスティンとちゃあが生まれた年も2968年である。
ちなみに、同じくデザインズ4においてジークの出生年は2974年になっているため、設定上に矛盾が生じている。ジークの成長具合とロードス公の存命時期を考えると、天位取得は2980年代後半のエピソードとなるはず。
p23でエストが着ているスーツはコミック10巻でファティマ・静からもらったモノ。

ロードス公とエストの他に、剣聖慧茄、ジークママ、ファティマ・チャンダナ(慧茄のパートナー)、オデット(璃里のパートナー)が登場。・・・この時期だと、オデットはクローター・ダンチヒのパートナーになっているはずであるが・・・この理由と背景はp133で明かされる。ダンチヒ公はウモスの内情によって2970年代には引退していたらしい。
コミック13巻p156に登場した璃理はここからさらに数年経過しているはずであるが・・・そうなると今回の立ち会いの時点で慧茄の頭髪が白髪となっている点に違和感が残る。まあ、髪なんぞいくらでも色を変えられるだろう。
んが、バーシャが「エストであった頃の記憶」を語るのは流石にセンセーのミスのような気がする。
コミック10巻では静と戦った過去を忘れている描写があったのに、ロードス公との思い出を普通に語るのは明らかな矛盾である。

カイエンが見抜いた、ダイ・グとジークが戦う「もっともっと大きなもの」について。
ダイ・グは幼少時から皇帝になることがほとんど決まっていたはずなので、ジークが守ろうとしたものはダイ・グ本人と「未来のフィルモア皇帝」である。
一方、ダイ・グはジークの出自を知っているはずなので、彼が守ろうとしたものはジーク本人と「帝国で最も尊い血筋」ということになる。互いに相手に圧し掛かって来るであろう重圧を慮り、互いが自己犠牲を厭わず守り切ろうとしていることが判る。
そういった「互いを庇い合う」姿勢が今後のふたりの成長にマイナスとならないよう、慧茄はふたりに試練を課したものと考えられる。もっとも、ふたりともその姿勢を崩さないまま試練を乗り越えた訳で、慧茄が思っていた以上にふたりは頑固で、且つ、優れた技量を持っていたということだろう。

コミック10巻のダイ・グの登場シーンで、ジャコーも同じような目にあっていることが判るが・・・もともとのプロットでジャコーとダイ・グでこの試練を受けることになっていたのか、それとも、ジャコーは全く別のところでカイエンの試練を受けることになるのか、この辺はまったくもって不明である。あと、クラーケンベールがエストに出会う以前にこの立ち会いの話を聞いていたというのも(13巻p94)・・・どういったルートで話が伝わったのか、微妙に気になるところ。

エストが口にしているスローハンドについて。
騎士の動きが観測者の想像を超えてあまりにも速過ぎた場合、その動きを見切ることができずに逆にゆっくりとした動きに見えてしまうらしい。この現象をスローハンドと呼ぶ。ギタリストのEric Clapton(エリック・クラプトン)を指す異名スローハンドが元ネタだろう。この言葉が生まれた理由は諸説あるが、「手があまりにも速過ぎてスローモーションに見える」とか「無駄の無い究極の動きをしている」という意味もあるようだ。また、クラプトンが1977年に発表したアルバムのタイトルも「Slowhand(スローハンド)」である。
うーん・・・プロペラの動き観察していて、その回転速度が上がっていくと、ある一定の速度でプロペラの残像がゆっくりとした動きに変化し、やがて逆回転に切り替わるように見える場合がある。これをストロボ効果とかワゴンホイール効果と呼ぶ。デコースやカイエンの動きも、あるいはそういった視覚現象に近いのかも知れない。

p31は映画GTMのカーテンコールで描かれたシーンである。ジークは後にレーダー9世となり、エスト、クリス、町と共に聖宮ラーンを訪れることになるようだ。
エストのセリフ「そして・・・あの少年は・・・」に続くセリフは「おそらくフィルモア帝国皇帝となるお方」ということになるはず。慧茄と璃里が同席している状況から、ふたりの少年が皇位継承上位にあることはバレバレであったということだろう。
(2019.12.15 修正)


■ シアン夫人の乱入 (p33)


シアン夫人が60年代のファッションで登場。スバース市を出た後で各地を営業で回ってノーキィシティに来ていたのだろうか。着の身着の儘のパルスェットを心配してスーツ一式をプレゼントするあたり、なんとも太っ腹な対応である。p35の6コマ目で確認できるキャリーケースのロゴは「シリーズ・シアン」ブランドのマークだろうか。名前の頭文字(Series Cyan)であるS字とC字を重ねたようなマークであるが・・・微妙にS字をふたつ重ねたようにも見える。シュぺルター・マークに寄せてあるようにも感じられ、彼女とカイエンの関係性を暗示しているようで面白い。

ヨーンの手袋はエストのスーツを流用して作られたもの(コミック10巻p99)。このスーツはシアン夫人が2876年に製作したシリアル0001のスーツである(10巻p102)。手袋を見てすぐにヨーンの正体に気付けたのは、「彼女自身が製作したスーツだから」というだけでなく、「最初に製作した思い入れのあるスーツだから」という理由も含まれているのではないだろうか。
シアン夫人のセリフから、2着のみ現存するダブル・アライメント・スーツの1着目は「ファティマであることがバレると困る人物のためにある御方がオーダーした白と銀のスーツ」であることが判る。依頼人はおそらく天照ということも判るので、その1着目がどこにいったか?という疑問点が出てくるが・・・これはコミック14巻のキャラシート解説でラキシスのスーツであることが明かされている。

シアン夫人は自身が製作したファティマスーツだけでなく、各種ブランドの普段着を見繕って大量に買い与えた模様。
長文になるが、登場したブランドは以下のとおり。

マノロはマノロ・ブラニクのこと。スペイン領カナリア諸島出身のファッション・デザイナーManolo Blahnik(マノロ・ブラニク)が1972年にロンドンで立ち上げたブランド。セレブ御用達の高級靴を生み出すブランドとして有名。
ルブタンはクリスチャン・ルブタンのこと。フランス・パリ出身のデザイナーChristian Louboutin(クリスチャン・ルブタン)が1992年に立ち上げた女性専用の靴ブランド。全ての製品の靴底が赤く染まっているのが特徴。
シャネルはGabrielle Chanel(ガブリエル・シャネル)が1914年にパリで創業したオートクチュール・メゾン。
パラデュームはフランスのブーツ・ブランド。もともと航空機用のタイヤを製造する会社として1920年に創業。戦後の47年よりキャンパスブーツの製造を開始。現在はブーツだけでなく、スニーカーやレインシューズなど、男性用・女性用で幅広い商品展開を行っている。おそらく、ヨーンのブーツと合わせてパルスェットが荒れ地に入る際に履けるブーツを選んであげたのだろう。
ワールズエンドはVivienne Westwood(ヴィヴィアン・ウェストウッド)がロンドンのキングスロード430番地に構えていたブティックの名前。この店は現在もそのまま残っているようだが、ヴィヴィアンはデザイナーとして第一線で活躍する際に店を引き払っている。
レッド・レーベルは同じくヴィヴィアン・ウェストウッド)が1993年より開始したレディースのセカンドラインVivienne Westwood Red Label(ヴィヴィアン・ウェストウッド・レッドレーベル)のこと。プレタポルテおよびライセンス生産のラインで、日本国内では株式会社インコントロが生産・販売している。
ブルーマーリンは1994年創業のアメリカのヴィンテージ・スポーツウェア・ブランドBlue Marlin(ブルーマーリン)・・・ではなくて、イタリア・カルピ出身のデザイナーAnna Molinari(アンナ・モリナーリ)が1980年に発表したプレタポルテ・ブランドBlumarine(ブルマリン)のことか。フリルやレースをふんだんに使用したニットカーディガンやシフォンドレスが有名。
ピケはラキシスも爆買いしたジェラート・ピケのこと。
ミウ・ミウはプラダが1993年に発表した姉妹ブランドMiu Miu(ミウ・ミウ)のこと。ブランド名はオーナー兼デザイナーのMiuccia Prada(ミウッチャ・プラダ)が幼少時に呼ばれていた愛称に由来。
シャマスクはオランダ出身のデザイナーRonaldus Shamask(ロナルダス・シャマスク)が、シカゴ出身のMurray Moss(マーレー・モス)と1978年にニューヨークに開業した服飾ブランドMoss Shamask Ltd.(モス・シャマスク社)のこと。
モリ・ハナエは島根県出身のデザイナー森英恵が1954年に立ち上げた自身のブランドHANAE MORI(ハナエモリ)が元ネタ。オリジナル・ブランドは既に倒産しており、現在存続しているブランドは売却されたプレタポルテ部門である。
プラダはMario Prada(マリオ・プラダ)とその兄弟が1913年にイタリアのミラノに開業した服飾ブランドPrada S.p.A.(プラダ)のこと。

コミック1巻から読み直すと、ラキシスやアトロポスは軍属でないこともあって比較的初期から普段着が登場している(ラキシスはコーラス来訪時、アトロポスはツァイハイのゲリラ活動時から)。他のファティマに関しては、だいたい5話以降で登場しているようだ(コミック9巻のメガエラのウェスタン・ファッションなど)。まあ、厳密にはパルスェットのガウン姿やブラウス姿は4巻にも登場しているし、他のファティマも戦闘服とデザインが共通なだけで、アチコチ普段着が登場していたのかも知れないが・・・そもそも旧設定では、プラスチック・スタイルの導入と同時にカレント・スーツの概念が生まれたことになっていたため、劇中の描写に反映されたのが5話以降になってしまうのは仕方がない。現在の設定では、グロス・フェイスの登場と同時に制定された服装となっている。

今回の買い物の描写を見る限り、星団内のあらゆるブランドが天然素材の衣服を商品化しており、騎士公社を通して星団中に供給していることが判る。
シアン夫人が「営業どぼーん」な状態になってしまったのは、魔導大戦よってアシリア・スーツの需要が増えたものの、高価なスーツであるために売りが進まず、且つ、デカダン・スーツやカレント・スーツの需要が減っているためと思われる。天照は星団最高の金持ちであるため、こういった状況に影響を受けずにジャンジャン依頼をすることが可能なのだろう。

パルスェットのキャラシートに描かれていたファティマスーツが登場。
ダブル・アライメント・スーツとセットで作られたスーツだったのね。
デザインズ3ではレスターが騎士公社で購入したスーツという設定であったが・・・ダブル・アライメント・スーツのデザインを起こす際に設定を変更したのだろう。
(2018.11.25 修正)


■ 典星舎からの通信 (p41)


典星舎執政官で中納言のメレトレが登場。執政官とはもともと共和政ローマにおける政務官のひとつ。内政・軍事における最高責任者である。典星舎における役割と指揮権順位は不明であるが、総裁を務めるメル・リンスに次ぐ責任者・・・実質的なリーダーと考えて問題ないだろう。ミラージュ付きの女性魔導士ホワイト・リンクスも中納言であったが、彼女は引退したのだろうか。

枢軸連合の会議にバッハトマの重要人物が出席するとのこと。ボルテッツの四強であるボスやん、ビューティー・ペール、フ・リエ、ル・ゾラを除く重要人物ということになるが、この正体はp60で判明する。ユーゴ・マウザーである。
また、ヨーンの動きを探っている「怪しげな集団」についても、p65で三色の娘こと皇女茄里が差し向けた間者であることが明かされる。ジークとの接触を狙って以前からヨーンを監視していたのだろう。
(2018.11..25 追記)


■ ジィッドの失態が美化されとる (p42)


ベラ国攻防戦におけるジィッドの失態が、報道管制の影響なのかやたら美化されとる。
アイシャにやられた右腕は完治した模様。とりあえず、あの敗走で失脚した訳ではなく、エース騎士としてちゃんとがんばっているようだ。
「憎まれっ子世にはばかる」と云われるとおり、FSSに登場する悪役の皆さんはなかなかにしぶとい。スカ閣下も然り。
(2017.09.19)


■ ルージョン市 (p43)


パルスェットがルージョン市について「あの場所にまた行くのか」と口にしている。
ルージョン市はユーコン経済連合の首都であり、ツァイハイ自治区から見ると東の海を渡ってハツーダン大陸に入り、さらに東に移動して逆側の海岸沿いまで行かなければならない(デザインズ3のp167)。カステポーから見るとかなり離れた場所にあり、通常であれば空路の移動が必要となるはず。しかし、メレトレのセリフとp44の解説でルージョン市はツァイハイ自治区にある町であることが判るので、おそらく設定が変更されたのだろう。コミック4巻でミハエル・レスターとパルスェットが最初にいた場所(カイエンが盗みに入った場所)はウースー国のチバム城で、そこから逃亡したカイエンを追って西に向かい、ツァイハイ自治区に入っていたはず(コミック6巻p40)。この辺の足取りは副読本がないと判りづらい。

ルージョン市はかつての鉱山を残しつつリゾート開発を進めて生まれ変わった都市とのこと。かつてカイエンとアトロポスが邂逅した場所である。
季節風による砂の巻き上げが周辺一帯の電子機器を故障させる劣悪な環境であったはずだが・・・おそらく、資源の大半を掘り尽くしたことで採掘事業が縮小され、巻き上がる砂の量が減ったのではないだろうか。

枢軸軍会議の会場に集まっている多くの船舶から、枢軸軍に加担する国家がいかに多いか想像できる。p44の2コマ目と3コマ目に掲げてある国旗を見ると、バッハトマ、ウモス、メヨーヨらしき国家マークが確認できる。
3年のうちにボスやんの左腕は完治した模様。
(2019.12.15 修正)


■ バッハトマ首脳陣の会談 (p44)


ぬーん・・・ボスやんのセリフはなんとも「読み解きにくい」という印象ですね。
「読みにくい」ではなくて「読み解きにくい」です。
誰が、何を、どこまで知っているのかが微妙に判らず、各キャラクターの関係を読み解くのが難しい。

バッハトマの主要メンバーの場合。
ボスやんが「我々超帝国の民」と口にしているので、ビューティー・ペールとユーゴ・マウザーが超帝國由来の人物であることは把握しているのだろう。だが、ボスやんが全てを知り得ているのかどうかはいまひとつ不明。
例えば、ビューティー・ペールの正体はBeauty Pale Azhamid XXVI Asylmuratova Disturb(ビューティー・ペール・アザミド26・アセルムラトワ・ディスターブ)という設定があり、超帝國皇帝家の直系か何かといったところであるが、ボスやんはこの「アセルムラトワ・ディスターブ」という名を本当に知っているのか否か。
自分以外の超帝國の遺産(=詩女)を排除しておきながら、ペールの方は片腕として傍に置くあたり、微妙に正体を把握していないような気もしてくる。

一方、システム・カリギュラに所属するユーゴ・マウザーから見て、超帝國総帝が名乗るナンバリング名「ヒフツェン」を自称するボスやんは果たして「本物」と見えるのかどうか。
同じ超帝國の由来であっても、システム・カリギュラ(=ポリメリゼーション・キャスターのグループ)とボスやん&ペール(=ブリッツェン・フォースのグループ)は、そこに至るまでの道程が異なったはず。そんな二者がなんの引掛りもなく互いに相容れることが可能なのだろうか。
知識欲の権化とされるシステム・カリギュラであれば、ボスやんの正体を探ろうとするはず。あるいは、既に正体を知っているのか。

カリギュラの協力を得て魔導大戦に参入するコーネラ帝国であるが、ユーゴ・マウザーが状況を報告して南部戦線の展開を話している点をどう見るか。ボスやんから見れば、マウザーはコーネラを戦場に配置するための良いパイプ役に見えるだろう。実戦テストはルーパート2世の指示であり、その舞台を準備するためにマウザーが動くのは理解できるが・・・マウザー自身はおそらくボスやんの考えに沿って動いているのではなく、デモールの開発を進めるためにバッハトマを都合よく利用しているだけだろう。
要するに何がいいたいかというと、ボスやんは「我々超帝國の民」と口にしているものの、ビューティー・ペールやマウザーはそういった仲間意識がホントにあるかどうかは微妙ということ。

また、ボスやんが云う「平和を尊び幸福を実感できる世界」は、かつて炎の女皇帝(ユニオ3)が推し進めた政策でもあるため、総帝のひとりとしてその考えを受け継ぎ、安寧とした平和を築いてきた詩女を敵視した・・・という見方もできる。しかし、ボスやんがそういった古い考えに固執するとも思えない。彼自身も「超帝國の民」という言葉を都合よく使っているだけで、実際は暇つぶしにペールやマウザーとつるんでいるだけ、と考えた方がしっくり来るか。

ちなみに、アドラーの「ディ・ヨーグン」とは「ディ・ヨーグン群国」のこと。星団暦3075年に周辺諸国をまとめ「ディ・ヨーグン統一連邦」となる国家である。
「ダスニカ」は大ロマン大陸南部の「ダスニカ神聖連合」のこと。皇帝アグラハが支配する帝政・連合制国家である。
魔導大戦の終結後に動きだす大国であるが、今回のボスやんのセリフから、バッハトマの影響下にあることが窺える。
(2019.12.15 修正)


■ レンダウドの入団 (p47)


シオの門番の捜査網を掻い潜り、相変わらず女子高生として過ごしているツバンツヒ。
生体兵器と化して数千年を生きているシステム・カリギュラのメンバーには、おそらく「子供」というものが存在しない。それ故に、ツバンツヒが変形する身体をもつことは判っていても、頭身を下げて子供になっているという発想に思い至ることができないということか。制服を着て学校に通っているツバンツヒは彼らの目には入らないようだ。
・・・にしても、ユーゴ・マウザーはツバンツヒの恋心にちゃんと気付いていたのね。

んで、バーナー・レンダウドがあっさりミラージュ入りしとる。
天照はベラの戦場でスコーパーの能力を使った彼女を察知しており、その後で王朝を訪問した彼女をスカウトしたようだ。

うーん・・・ミラージュ側も、誰が、何を、どこまで知っているのかが微妙に判らない。
ログナーはバーナー・レンダウドに超帝國剣聖オージェの意思が宿っていることを見抜いている模様。レンダウドが「すべてを知った上で」と云っているので、天照もおそらくその辺の事情は察している。
一方、レンダウドもまたログナーがヘリオス剣聖騎士団に籍を置いていた剣客ログナーであることを把握している模様。
こうなってくると、マドラの内に剣聖プロミネンスの意識が宿っていること、同じくナオ・リンドーやコーラス24世の内に剣聖がリストアされていることを、ログナーや天照が把握しているのか気になってくる。

おそらく、ログナーはナオ・リンドーの内にあるクルマルスの意識に気付いている。それ故に、「へたれ騎士」と噂されるナオの動向に注意するようエレーナに指示を出していたのではないだろうか(14巻p148)。
マドラやコーラスについては何らヒントがないが、ミースの胎内にいるマキシの存在に気付き、超帝國剣聖であることを看破した天照であれば、彼らの状況をも察している可能性が高い。あるいは、炎の女皇帝が超帝國剣聖をリストアしている意味にも気付いているのかも知れないが・・・彼は基本的に深く考えるタイプではない。例えいろいろ察していたとしても、そういう「なんやかんや」は全てログナー任せである。

んで、劇中の描写から、ツバンツヒは超帝國剣聖がリストアされていることに気付いていないことが判る。
となると、この事実はシステム・カリギュラでも把握していないし、ユーゴ・マウザーもおそらく知らないということ。
超帝國の騎士を制御することが可能なボスやんであれば、スコーパーの能力を駆使してナオやレンダウドの存在に気付きそうなものだが、彼らの身体自体は超帝國剣聖のものではないのでおそらく無理だろう。

総じて見ると・・・超帝國に由来する存在として、@詩女、Aボスやん、Bシステム・カリギュラ、Cリストアされた剣聖、の4つが現世に介入していることが判明しているものの、彼らは意思疎通をしてる訳でもなく、むしろ互いに牽制し合う状況になっているということ。
この辺、これから帰還する炎の女皇帝はどうやってオチを付けるつもりなんだろ。システム・カリギュラあたりは殲滅されそうな気もするが・・・ユーゴ・マウザーは4100年代も活躍するらしい。

ついでに気付いた点。
レンダウドのランドセルの背面にMHオージェ・アルスキュルのマスクが描かれている。
ログナーがこの場にいたのは、おそらくシオの門番の動きを監視していたため。
(2017.10.21)


■ 再会するジークとヨーン (p49)


会談の会場となったホテルから離れた位置で偵察しているヨーン。そこにジークがやって来る。
このふたりとちゃあの関係性も微妙に読み解きにくい。

ヨーンがジークに向かって「ナニそのレーダー王みたいな目」と云っていることから、おそらく彼がフィルモア帝国の関係者であることは知っているのだろう。
んが、流石にブラウ・フィルモア王家の皇子であることは知らないはず。
また、ヨーンはアイシャの配下に入っているものの、その妹が「ちゃあ」であることを知らない可能性がある。何せ互いに仲の良かった桜子もちゃあの出自を知らなかった事実があるし、アイシャはヨーンの前で「ちゃあ」という名を口にしていない。もし知っていたとしても、そういったプライベートな情報をジークにしゃべるとも思えない。
つまり、ヨーンはちゃあの正体を知らないか、知っていたとしてもその事実を隠してジークと会話している可能性が高い。また、「ジークが既にちゃあの正体を知っている」ことも、ヨーンは知らないのではないだろうか。

一方、ジークはヨーンとエストの関係を知りつつも、パルスェットを迎えたことに絡んでツッコミは入れていない。おそらく、エストに関する事情を知りつつも口に出すことはタブーにしている。
ちゃあが天照家の皇女であることも知っているはずであるが(コミック13巻p103)、ジークの方もまたそういったプライベートな情報をヨーンにしゃべるとは思えない。
また、ヨーンが典星舎の指示を受けて動いていることは知らない可能性あるし、知っていたとしても、自分がそれに気付いていることをおくびにも出さないだろう。
ちゃあが将来的に天照家に戻れば、ヨーンはミラージュ騎士として配下に入ることになるが・・・この全てをジークが把握していたとしても、やはりヨーン自身にそれを云うことはないだろう。

まとめると、ちゃあが天照家の皇女であることは両者の間で共有されておらず、知っていたとしても相手側は知らないつもりで会話している、あるいは、自身も知らない振りを装って会話しているのではないかということ。
互いの立場を完全に理解していたら、「告れ」という言葉はおいそれと出てこないと思うんですよねー。
それとも、そういった身分の違いや相手の立場を無視できるほど恋話に花を咲かせる年頃なのか。

ついでに、剣を持たない理由についても、互いに本音の部分では話していないようだ。
剣を持たない、騎士にならない、そう決意した理由をちゃんと話しているならば、このように軽く相手に「騎士になればいいのに」的な会話をするはずがない。
仲の良い友人ではあるが、本当の意味では友人になっていないのではないだろうか。

何が悲しいって・・・このふたりが大人になった時、ジークはレーダー9世としてフィルモアのトップに立ち、ヨーンは天照の大侵攻に参加してフィルモアに攻め入る立場になるということ。
p55はおそらくミラージュ勢による大侵攻を受けたシーンだろう。

ジークの夢に出てくるというふたりの女性。
「目の美しい少女」はクリスティン・Vのことか。いや、このコマのとおりであれば、クリスティンは壮年の女性になっているはずなので「少女」という表現はおかしいが。
「美しい声の女性」はおそらくベリン・ラーン。セントリー・ライブの幼生を「ラブ」と呼ぶ女性はベリンだけのはず。
クリスが仕えている皇帝で「レーダー陛下」と呼ばれるのはおそらくレーダー9世。つまり成長後のジークである。
んー・・・なぜ「美しい声の女性」はレーダー陛下にラブを呼ぶよう懇願しているのか。彼はセントリー・ライブを呼び出せると・・・つまり、召喚アイテムのセントリー・ドロップを所持しているということか。

ま、それは置いておいて。
問題はジークの「ずっと気になっている女の子」がおそらくクリスティンであるということ。
この様子だと、ジークはクリスティン(の美しい瞳)をまだ知らない。知らないけど、夢の中で会っていて微妙に気になっている。そんな彼がクリスティンと出会うとき、何を感じるかってことですよね。
このホームページでは、ジークの奥さんとなるヒトがおそらくクリスティンではないかと予測している訳で・・・かなり明確な前振りという感じです。

にしても・・・・ちゃあは一体どこをほっつき歩いているのか。
(2018.11.25 修正)


■ おびき出されるヨーンとジーク (p56)


ジークの訪問は夕刻ギリギリの時間帯だったようで・・・おしゃべりしている間に日が暮れたようだ。
騎士同士の小競り合いを見つけて調査に向かうヨーンとジークであるが・・・この後のユーゴ・マウザーのセリフや、謎の騎士たち(この後ですぐに判るが氷グループの騎士たち)の会話から、この戦闘自体が「目標の誘因」つまりジークとヨーンをおびき出すためのエサであったことが判る。ジークも騎士の動きを見てすぐに身内であることを察したようだ。ヨーンはまだ気付いていないが、今回は完全にジークの身内に絡んだトバッチリである。

異変を察したル・ゾラ、フ・リエ、ユーゴ・マウザーが参戦。マウザーが年寄りの如く腰を曲げている理由は不明。腰の調子でも悪いのか。
ブラストがp64で「マウザー様」と口にしたことで、ヨーンは「バッハトマの重要人物」の名前を把握することができた。無事に逃げ切ることができれば、ヨーンが帯びていた使命は果たされることになる。
マウザーの言動がオモロイしカッコイイ。そのまんまヨーンと腐れ縁ができそうな感じである。
(2017.11.26)


■ 流体コート (p64)


マウザーのセリフから、流体コートを作った人物はアシリア・セパレートの開発者であるビリジアン博士であったことが判る。
シン・ファイアのもつ記録変換機能の応用から輪波理論が作られ、その転用で流体コートの形状変換制御を行っているということか。
シン・ファイアの技術が絡んでいるのであれば、流体コートの製作に関わる基礎理論は星団暦初頭の時点ですでに構築されていたのかも知れない。
(2017.11.26)


■ ハー・マジェスティについて (p65)


アラン・リーが口にしている「御意(ハー・マジェスティ)」について。
ハー・マジェスティ(Her Majesty)を直訳すると「彼女の威厳」という意味になるが、命令に対して「Yes, Her Majesty.」と返答した場合は「女王陛下の意のままに」と訳される。身分の高い者に対して自身がへりくだる場合、「彼女自身」ではなくて「彼女の威厳」に対して受け答える体裁をとるためにこのような表現方法となるらしい。
「Her」は女性に対する三人称の表現となるため、対象が国王の場合は「His Majesty」、本人に受け答える場合は二人称の表現をとって「Your Majesty」となる。
なお、王族の場合は「Your Highness」(=殿下)、法王の場合は「Your Holiness」(=聖下)、枢機卿の場合は「Your Eminence」(=猊下)、高官の場合は「Your Excellency」(=閣下)、騎士団長や地位のある者(裁判官など)の場合は「Your Honor」(=閣下)となる。「Highness」は「高位」、「Holiness」は「神聖さ」、「Eminence」は「高位」とか「卓越」、「Excellency」は「優秀さ」とか「優越」、「Honor」は「名誉」であり、それぞれ相手自身ではなく、相手がもつ「見えない何か」に対して敬意を表す受け答えとなる。

んで、上記のとおり、マジェスティは本来「女王陛下」に対して用いる言葉であり、女帝の場合は「Imperial Majesty」、皇女の場合は「Imperial Highness」、王女の場合は「Highness」が用いられる。
フィルモア帝国でもトップクラスに位置する皇女・茄里の場合、「皇帝と比べると下位、各王家の王女と比べると上位」であるが、現皇帝の身内でもないために「Imperial」を用いる訳にもいかず、苦肉の策として「Majesty」が用いられているのかも知れない。
ただし、アラン・リーの通信相手が茄里であるならば、「ハー・マジェスティー」とするのは間違い。これだと通信相手はアラン・リーの上司で茄里の側近ということになる。茄里自身と話しているのであれば、「ユア・マジェスティ」とするのが正解。
(2019.12.16 修正)


■ 「無手」を放つジーク (p67)


バッハトマ騎士団の面々に追われるジーク。おそらく最初に氷グループと小競り合いしていたメンバーがブラストを追って来て合流したのだろう。包囲を解くためにジークが飛び出し、ブラストは自分の力を試すためにわざとヨーンの前にひとりだけ残ったものと思われる。マウザーやブラストの反応を見る限り、ジークよりもヨーンの方が「力を見極めたい相手」「腕試ししたい相手」=「強そうな相手」として見られているようだ。

ジークが放った剣技は連弾衝撃波のようにも見えるが・・・これまでの描写と微妙にエフェクトが異なる。この後でアラン・リーが口にしているとおり、この技は「無手」と呼ばれるらしい。無手はもともと手に何も持っていない状態を指すが、劇中では剣技のひとつに位置づけられる模様。この技の詳細はこの後でジークママが語ってくれる。
(2018.02.25 修正)


■ ぽんこつなブラストさん (p72)


トモエ直伝の開脚技を繰り出すも不発に終わるブラストさん。月明かりに照らされたヨーンの顔を見て乙女心を射抜かれてしまう。
コマの流れをよく見ると、p69でスカートと上着を投げ捨てた後で、レオタードの脚ぐりの部分を持ちあげていることが判る。この後で技を放つためにわざわざ食い込ませているらしい。永野センセーもツッコミを入れているとおり、何とも下品な技である。

にしても、デコースを狙って今後もバッハトマと絡むことになるヨーンが、全く関係のない氷グループの企みによって、マウザーやブラストと接点をもってしまうという・・・この一連の流れが面白い。
このまま魔導大戦の最中を生き延びていけば、再び彼らと相見えることもあるだろう。
ブラストをわざわざ呼び付けてヨーンに宛がうあたり、マウザーは意図して若い騎士を鍛えているようにも見えますねー。同時にヨーンも鍛えているように見えなくもない。
おそらく、不老であるが故にこの世界に飽いており、この先の未来を少しでも楽しめるよう、見込みのある若者を導いているのではないだろうか。
(2017.12.24)


■ 茄里とアラン・リー (p73)


撤退したアーリィ・ブラストと入れ替わりで皇女・茄里が登場。
ふたりが使う剣技はフラッシュ・ニードルとのこと。そのエフェクトから察するに、カイエンがバランシェ邸を襲撃した際に放った技と同一である。

さて、氷グループはどうやら高度な教育(ジーク曰く「洗脳」)を受けた少年・少女騎士が所属する暗殺部隊であるらしい。
茄里が口にしている「強権」とは国家が司法上・行政上有する強い権力のこと。フィルモア帝国を帝国たらしめているのは正義ではなく権力であり、その権力を維持するためであれば汚名をも背負う覚悟を持てと。その役目を負うべきは強力な力をもつ騎士であるという教えを受けているようだ。ついでに云うと、暗殺のような汚れ仕事を担う役割は、まだ名を成していない少年・少女騎士が負うべき、という思考も見え隠れする。
正義の名のもとに剣を振るうことなかれ。剣をもつことは悪であり、悪を自覚できない者は剣を持つなと。剣を持とうとしないヨーンとジークは、自らを悪と認めようとしない意気地なしだと暗に責めているようでもある。

茄里もジークと同じく緊張すると目元が痙攣する疾患を受け継いでいる模様。ここで重要なのは、ジークと対峙していることで緊張しているということ。
冷徹な態度を示しながらも心は穏やかではないのだろう。
(2018.01.09)


■ サイレンという名 (p79)


茄里のセリフと対になるジークのセリフ。
茄里がいう「汚名」は自身を悪と断じるものであるが、ジークの考える「汚名」「悪役」は和平を探す道程において他者から投げかけられるであろう「腰ぬけ」や「意気地なし」といった誹りを指しているようだ。
力をもつ騎士は戦の代理人であるが、だからと云って戦を起こすことがその役目ではない。
力をもつ者こそ、その力を安易に使わないよう自戒し、例え他者から非難されようともなお封じ続けるだけの気概をもて、という考え方ですね。
映画GTMを見ている方は、トリハロンとベリンが「流れる血を減らす」約束を交わしているのを見ているため、帝国の教えの真意がどちらにあるかは判るはず。

トリハロンはベリンと別れた後に統合フィルモア帝国を築いて初代皇帝となったが、惑星カーマインから帰国した後は剣をもつことなく、また、GTMに搭乗することもなかったとされる。
うーん・・・つまり、ジークが剣を持たない理由は、まさにこの教えの実践という側面もあるのか。フィルモア1世の教えが後世において捻じ曲げられていることを知るジークは、その根底にあった教えの実践として剣を捨てた(あるいはただ単純に母親が剣をもつ姿を見て忌避を示した)。んが、ブラウ・フィルモア王の嫡男が剣をもたないという姿勢を示せば、帝国の各騎士王家からのプレッシャーは凄まじいモノがあったはず。そういった軋轢もジークが実家から距離を置いた理由のひとつかも知れない。

茄里が「見ろ」といって素顔を晒すシーンを見る限り、ジークは目の前にいる彼女が茄里であること=自分の妹が氷グループに所属していることを知らなかった模様。
彼女にしてみれば、兄が家を出たために、自分は暗殺をも指示する汚れ役に成り下がったという恨み節もあるのだろう。それでも彼女の顔に浮かぶのは目の痙攣と涙・・・彼女がジークに対してホントはどのように想っているのか、なんとなく読み取れますね。
あと、茄里のセリフによって、ジークに引き継がれていた秘匿名が「サイレン」であることが判明。
ジークにトリハロンの姿が重なるシーンについては後述する。
(2018.01.27)


■ 緊急措置をとるパルセット (p83)


ファティマスーツに生命維持システムが内蔵されている設定は以前からあったが、実際に稼働させるのは初めて。いや、これほどの機能を仕込んであるスーツ自体が珍しいのか。
p83の5コマ目と6コマ目で「ピッピッピッ」とか「ピピピッ」と光っているのはおそらく表示機と音声による操作ガイドだろう。医療機器のAED(自動体外式除細動器)などでも、次にどの端末を使用するのか、どのスイッチを押せばいいのか、ガイドに沿って操作することで全くの素人でも心肺蘇生ができるようになっている。もっとも、ファティマは騎士付きの救急救命士でもあるので、この辺のガイドが無くともすぐに対応はできるはず。
となると、操作ガイドではなくて、単なるアラート表示機ということになるか。

問題は、裸眼で見ているにも関わらず創傷を透過解析している点。アシリア・スーツのヘッド・キャパシタに透過モードが搭載されているのか、ダブル・アライメントだけに搭載された機能なのか、あるいは、全てのファティマスーツに搭載されているのか、その辺がいまひとつ判らず。これまで描かれた透過シーンでは、GTMに搭乗しているか、少なくとも付近にGTMがあったはずなので、遠隔操作して解析データだけ受信しているのかと思ってました。
ダブル・アライメントのインジェクターはアシリアと同クラスのキャパを備えているとの説明もあったため、小型でありながら透過するための各種電子銃を備えているのかも知れない。

ジークの腕の傷跡を見て、ヨーンはバーシャから聞いた幼い騎士(剣聖カイエンから天位を得た騎士)の特徴と一致していることに気付いたようだ。んが、「どこまで同じなんだよ」というセリフはp52で「同じじゃないですか」「似てますね」と云っていたジークへの返しである。黒髪で容姿もなんとなく近いというだけでなく、「剣をもたない」「ファティマはとらない(ヨーンはとったけど)」「左手を斬られた過去がある」という共通点。なんとなく「ちゃあ」を好きな点、多くの騎士と出会う点、何かを求めて彷徨っている点も似ている。

はー・・・黒騎士デコースが没した後、エストはわずかな期間を天照やログナーのパートナーとして過ごし、さらに休眠してからレーダー9世のパートナーとなるという設置があったが・・・このレーダー9世が後のジークである。バーシャであった頃の記憶を完全に消去されたエストが、ヨーンとよく似た特徴をもつレーダー9世の元に行くってのも、なんつーかこうひとつのドラマになりそうですね。
(2018.01.27)


■ ジークとママとトリハロン (p85)


ジークママが登場(息子に会うためにニーハイタイツを着用)。
ファティマ・オデットが姿を消したことで、黒鳥モードが起動した=マスターの茄里が動いたことを察したようだ。ふたりの間でのファティマ使用の優先権がどのようになっているのか気になりますね。

さて、理由は不明であるが、ジークの身の内には初代皇帝フィルモア1世の意識が宿っている模様。過去にジークママとも直接言葉を交わしたことがあったらしい。
彼女がジークに対して極端にオドオドした態度を見せるのも、この辺の事情が影響しているようだ。
一方、ジーク自身もその身の内に宿る「何か」に気付いているらしく、その「何か」が周囲の者に与える影響を恐れて家を飛び出したらしい。その口から出る言葉が自分自身の言葉か否か混乱しているようだが・・・少なくとも映画GTMのカーテンコールでは多くの艦船を伴ってミノグシアの大地に降り立ったレーダー9世が描かれていた。ジークのこの悩みは成長に伴って解消され、ダイ・グと交わした約束が成就される日が来るということだろう。

なぜジークだけにこのような症状が現れるのか、理由は定かではないが・・・没後であるにも関わらず時を超えて姿を現すというのであれば、その力の根源はやはり超帝國もしくは詩女ということになるだろうか。
例えば詩女ベリンによる干渉。彼女は未来を見通す「予言」が可能であったが、当サイトではその理由を「おそらく時間を超越して先の未来に現出する技をもっていたのではないか」と予想している。彼女が何らかの密約の下でトリハロンを支援している可能性はないか。
あるいは炎の女皇帝による干渉。詩女を通してフィルモア王家の直系にそのような能力を与えた可能性はないか。また、超帝國剣聖を現世にリストアしているように、フィルモア1世を支援している可能性はないか。もしくは、フィルモア1世にもともと超帝國剣聖の意識が宿っており、同じ人物がジークの内にリストアされているのかも知れない。
この辺は後で設定が公開されるものと考えれる。
(2018.01.27)


■ 運命の3女神とジーク (p94)


時代が少し巻き戻って幼い頃のジークとジークママ。
車椅子に座っているのがジークの実父に当たるショーカム。彼はラーン教導学院の大学部司法科に通っており、在学中に妻を得て二子を儲けるが、その身体は病魔に侵されており、若くしてこの世を去っている。この詳細が今巻で明かされる。
ショーカムの車椅子を引いているのがファティマ・オデット。ジークの名付け親となったのが幼き日のクローソー。「ずるいっ!」と云っているのがアトロポス。「ゲヘヘ」と云っているのがラキシスである。
ラキシスのセリフから判るとおり、ジークママは妊娠中で、お腹に茄里がいる。

運命の糸を紡ぎ、測り、断つ役割をもつ3人の女神を前にして、生まれようとしている命、生きている命、死にゆく命の三者が揃っている。
クローソーは劇中で「運命の糸を断つ」役割をもつ女神であるが、メタな部分ではもともとのギリシャ神話における役割と同じく「始まり」を司る。その彼女がジークの名付け親であった点がなかなか面白い。ジークは将来的にフィルモア帝国の存亡に関わることになる人物である。レーダー9世となった彼が果たす役割は帝国民の命を紡いで次につなげること。だからこそ、彼の名付け親はクローソーであることが必須だったのではないだろうか。
(2018.02.26)


■ サッシャタウンに移動してきたヨーンとパルスェット (p95)


ジークの治療のためにサッシャタウン郊外のカントリーハウスに移動したヨーンたち。
カントリーハウスとは、王族・貴族が避暑もしくは地方巡幸などを目的に田園に建築した邸宅のこと。とくに英国ブリテン島の農村に16世紀以降に作られた邸宅を指す。主棟と隣接して農園と庭園があるのが特徴。この場所はおそらくブラウ・フィルモア王家が所有する別荘であろう。

ヨーンのセリフに拠ると、別荘にいるメイドも全て騎士とのこと。さすがにブラウ・フィルモア王家が抱える双頭竜騎士団のメンバーとは思えないが、もしそうだとしても新人の騎士をお付きにしているのだろう。彼女は今回、完全な私用でナカカラ駐屯地から出てきているはず。
細かいところだが、メイドが来ている服は夏用の午前服。出している食事はおそらく朝食である。んで、パルスェットはデカダン・スーツに着替えている。2〜3日経っているのであればカレント・スーツに着替えるはずなので、このシーンはジークが負傷した後の翌朝の可能性が高い。
(2018.02.26)


■ ジークの正体を知るヨーン (p97)


ジークママの正体が強天位騎士のリリ・ニーゼルであることを知って愕然とするヨーン。反応から察するに、リリの名は以前から知っており、彼女がジークの母親であったことに驚いているようだ。
つまり、ヨーンはジークの出自をこれまで知らず、今回はじめて知ったということ。やはり、仲の良い友人ではあるが、互いの事情についてはあまり知らない間柄のようだ。
(2018.02.26)


■ クープ博士がやってきた (p97)


ジークの治療にクープ博士を呼び出したようだが、彼もまた別件で用事があった模様。弟子の桜子に呼ばれてアウクソーの延命を行うための署名あるいは状況確認に来たのか。あるいは、慧茄やマドラに絡む用事があるのか。この回答はp140で明かされる。
クープ博士の言に拠ると、パルスェットがジークに施した適切な処置は、マスターの資質と教育の賜物ということになるらしい。この場合、騎士教育をまともに受けていないヨーンの影響が大きいとはあまり思えず、前マスターのミハエル・レスターが遺してくれた教育が良かったと考えるべきか。レスターがフリーの騎士として活躍している間に多くの経験を積んだのかも知れない。

パルスェットのシリアルはS-308型M-12。この名称だけでモラード・カーバイトが責任者として在任していた時期に作られたファティマであることが判るようだ。つまり、「S」はシードル工場の頭文字、「M」はモラード公の頭文字ということだろう。
(2018.03.03)


■ ジークママの特訓が始まった (p105)


ヨーンが生き残るために、黒騎士と対峙するために、持てる技の全てを教えようとするジークママ。
彼女やジークが使う「無手」という技は、瞬時に相手の懐に飛び込み、衝撃波を放った後に一瞬で元の場所に戻る一連の動作を指しているらしい。
ジークがバッハトマ騎士に放った技も無手、ジークママが13巻でトライトンとブルーノ相手に使用した技も無手である。つまり、騎士の目から見ても相手の接近を感知できないほどの超高速の踏み込みを行っているということ。リリが放てばフィルモア上位騎士でも見逃してしまうほどのレベルに達するということか。ほぇー。
まあ、実際には身体が音速を超えるはずなので、周りの人間も吹き飛ぶはずだが(13巻ではブルーノとトライトンの手前にミヤザがいた)、この辺は漫画なので仕方がない。

また、ストラト・ブレードは単純に指弾、弧拳、掌底を周囲に放つ技ではなく、すり足を用いた移動にこそ極意がある技とのこと。
ヨーンは対デコース戦で左腕を落とされたものの、これが原因で死に掛けた訳ではない。本当の原因はストラト・ブレードによる内臓へのダメージである。ストラト・ブレードの動きを理解したヨーンの反応から察するに、デコースと戦った時はバーシャのことで頭がいっぱいで、自分がどのような攻撃を受けて倒れたのかもよく理解していなかった可能性がある。その技の詳細を改めて知った。だからこそ、デコースの真の強さも認識できたのだろう。

剣を持っていれば、マウザーやアラン・リーとも渡り合えたかも知れない。剣を持たない自分自身の在り方に焦りを感じ始めるヨーン。
騎士とファティマにとって一番重要なことはGTMに搭乗して戦うこと。GTMを駆るためには、騎士として剣を持たなければならない。このことはバーシャが既に教えてくれた。
ヨーンはジークママにバーシャの面影を感じることで、彼女が遺してくれた言葉の意味を改めて噛みしめているのかも知れない。

p105の最期のコマでジークママの影がバーシャの形に描かれるが・・・これはジークが感じているバーシャの面影を表していると同時に、バーシャのもつ知と技の伝授がここに来て再開したことを示唆しているものと思われる。
ジークママが教えようとしている歴代黒騎士の技と、フィルモア、クバルカン・サヤステ家、剣聖剣技、古の技の全て・・・これらの技を知る者として最初に設定されていたキャラクターは誰であったか。

剣聖ビザンチンが生み出し、ディーザス・ビィからエストに伝授されたという飛燕剣(エコー・ブレード)。
同じく剣聖ビザンチンが生み出し、クラーケンベール・メヨーヨから伝授された壊陽剣(レイダウン・ソード)。
慧茄からエストに伝授された首倒剣(サロメ・スライサー)もビザンチンの剣技である。
また、慧茄が生み出してエストに伝授したダブル・ヘクサグラム。
剣聖ディモスがエストの仮マスターで会った頃に生み出し、エスト自身がヨーンの眼前で見せたブレイクダウン・タイフォーン。
さらに、マヨール・レーベンハイトから虹刃剣(クラッシャー・ブレード)。
ガリード・ケンタウリから居合い(セイバー・ブレード)。
ログナーから崩壊剣(ディストーション・フルダウン)。
ヨースト・サヤステから無走剣(ブラインド・ソード)。
マロリー・マイスナーから八文字霞斬り(デフォッガー・アタック)。
既に設定変更で変わっている部分もあると思われるが、エストが知る剣技は非常に多い。

一部の剣技は魔導大戦の後でエストに伝授されるはずだが・・・その技が受け継がれてきたルートを想像するに、ほぼ全ての剣技をジークママが知っていたとしても不思議ではないだろう。さすがにログナーの崩壊剣は無理だが。
おそらく、これらの剣技がヨーンの頭にインプットされるのではないだろうか。
並の騎士であれば圧倒してしまう強さをもつが故に、ヨーンはこれまで上位の者から教えを受ける機会を得られなかった。ジークママに導かれることでどこまで伸びるのか。おおぅ。熱い展開だ。

連載時の扉絵の解説に拠ると、ジークママは成人前にアビエン・ヒートサイ、ロードス・ドラクーン、ヘリデ・サヤステに師事していたらしい。ヘリデ・サヤステの没年を考えると微妙なため、アルテン・サヤステに師事していたと考えればいいか。
彼女が歴代黒騎士の技、フィルモア、クバルカン・サヤステ家、剣聖剣技、古の技の全てを使えるのは、彼らに師事した過去があるから。
実質的には、過去に何度も挑んでいた慧茄も師匠に加わるはずなので、彼女は当代トップクラスに位置する多くの騎士から技を伝授されていることになる。
んでもって、これらの弟子筋として新たにヨーンが加わったということ。どこまで伸びるか楽しみですね。
(2019.12.16 修正)


■ フィルモアに帰還した茄里とアラン (p106)


フィルモア帝国のアルケインに帰還した茄里とアラン。アルケインは初出。帝国の北都アルクに近い名前であることから、レーダー王家系列が治める都市だろうか。
さて、アラン・リーと会話しているこの女性・・・レーダー8世をファーストネームで呼ぶこと、背後にある髑髏付き水仙紋章からボルガ・レーダー王家(=ボルガ・レーダース・フィルモア王家)の女性であることが窺える。
また、彼女の姉が「均衡の乱れ」を生んだというのであれば、おそらくその姉とはバルバロッサ王家に嫁いだ同家の前当主ポーラ・ボルガ・レーダーということになり、彼女の正体はボルガ・レーダー王家の現当主ジェイン・ボルガ女王となる(DE4ではモーズ・ボルガ・レーダーの妹とされていたものの、連載時のセンセーの解説で修正されている)。

彼女が話している「カモン殿」の正体はこの後で判るが、ピアノ・メロディ3世を指している。この点については後でまとめる。
また、「我らが主君ルーカ様」はブラウ・フィルモア王家宗主でもあったヨミ・ルーカ・レーダー・フィルモア2世のこと。「ルーカ様の支えであったあの方」は詩女ナカカラを指している。
レーダー王家系列でありながら、初代皇帝やフィルモア2世に対してこれだけの敬意を払っている点がポイント。

ジェイン女王が「我らが主君」と云っていることから、ボルガ・レーダー王家はもともとヨミ・ルーカ・レーダー・フィルモア2世に仕えていた王家であったようだ。
ブラウ・フィルモア王家はルーカの直系であるが、時代を経る中でこのふたつの王家のつながりが薄れてしまったものと考えられる。
そんな中、前当主ポーラ・ボルガ・レーダーがバルバロッサ王家に嫁いでしまったことで、バルバロッサ王家によるレーダー王家系列の掌握が進行し、両家の乖離は決定的になったと。
さらに、ラルゴによってケンタウリ家(レーダー系列)の名が地に落ち、レーダー8世の寵愛を受けていたV家もクリスティンの凶状によって非難されたことで、(おそらく)穏健派のボルガ・レーダー王家は沈黙せざるを得なくなった・・・といったところか。
アルク・レーダー王家などはバルバロッサと共に元老院を操っているため、レーダー王家の中でも穏健派と革新派が対立していることになる。
ボルガ・レーダー王家の血筋に当たるジェイン・ボルガ王女としては、ルーカ直系のブラウ・フィルモア王家に助力したい気持ちがあるものの、現在の立場では何ら手出しができない。
そのため、ルーカの直系にあたるジークと茄里に対して「何事もなくすこやかに静かに生きること」を望むだけになっていると。
現状で読み取れるのはこんか感じだろうか。

とは云え、リリに対して「ブラウの馬鹿女王」と罵るあたり、彼女の身勝手な言動を非難する気持ちも見え隠れする。
リリの父親とは年齢的にもおそらく近かったため、王家の当主同士それなりの敬意を払っていたのかも知れないが・・・であればなおさら、娘のリリは「知人の小生意気な娘」のように思えているのかも知れない。
彼女はブラウ・フィルモア王家に対して忠誠を示している訳ではなく、あくまでもルーカ直系という点でジークと茄里を見守っているのだろう。

また、p137で明かされるノルガン・ショーカムの正体と、ジークと茄里の出自を読めばジェイン女王と茄里の関係性も明らかになる。
ジェインから見て、ジークと茄里は姉の孫(又甥と又姪)、ジークと茄里から見て、ジェインは大叔母である。また、ジェインから見てリリは甥の嫁(=義理の姪)ということになる。
ジェインが彼女らを見る視点の中に「血縁者」の視点もあるということ。「すこやかに静かに生きること」を望むのは、姉の血を継ぐ者に対する庇護の思いである。

にしても・・・アラン・リーがケンタウリ家の出自とされたことで、後世におけるケンタウリの血筋が彼女から続く可能性も出てきましたね。ふむふむ。
(2019.12.16 修正)


■ クリスの活躍について (p109)


茄里の見ている映像で、クリスティンの活躍によるナカカラの鎮静化が報道されている。戦闘なしで沈静化・・・つまり、会談や協定締結で敵対状態を終わらせたということか。
ここで一旦ナカカラの情勢を振り返ると・・・ナカカラに攻め入っていたのはガマッシャーン共和国、メヨーヨ朝廷、ブーレイ傭兵騎士団などで・・・このうちガマッシャーン共和国は北上してベラ国攻防戦に参加していた。ブーレイ傭兵騎士団はもともとミノグシア中央の混乱ぶりを演出させるためにフィルモアが裏で派遣していた面もあるため、フィルモアの都合で動きを止めることはできたはず。んで、メヨーヨはおそらくルーン騎士団との協定で戦闘介入を見合わせていたと思われる(コミック13巻考察)。
そう考えると、ナナカラに残っていたのはおそらく小国の武装集団だけで、もともとフィルモアと争う力を持たない相手であった可能性が高い。
フィルモアとクバルカンがどこまでつながっているのか、その辺はいまひとつ読み取れないが・・・中部ミノグシアに対する両国の政略は一致しているように思われる。つまり、移民の足掛かりとして中部ミノグシアに恩を売るということ。そしてそれは順調に進んでおり、この報道もまた政略の一環である可能性が高い。
その意味で、戦闘無しの鎮静化はクリスティンの功績ではなく、フィルモアのプロパガンダとして演出されている部分が大きい。クリスティン自身もまたその役目を判っていると思われる。

皇帝騎士としての姿勢を崩さず、無表情を貫くクリスティンは国内で「磁器の女」と呼ばれている模様。瀬戸物の人形のように見えるほど無表情ということだろう。
磁器は陶土を用いて作る焼き物で、表面はガラス化しており、熱しやすく冷めやすい特徴がある。一方、陶器は粘土を用いて作る焼き物で、表面は凹凸が残り(釉薬を施したものはつるつる)、熱しにくく冷めにくい特徴がある。イメージとしては、つるっとしていて透明感があり、細かい造形まで表現できるのは磁器の人形。表面に味があり、シンプルな造形となるのが陶器の人形である。
クリスティンの美しさを表現する場合は「磁器の人形」という表現が相応しいと思えるが・・・着飾ることをせず、心に熱を宿す彼女は熱しにくく冷めにくい「陶器の人形」というイメージである。
(2018.03.27)


■ 詩女ナカカラが登場 (p110)


現詩女フンフトを介さず、茄里の眼前に突如現れた詩女ナカカラ。「あらたま(荒魂)の詩女」と呼ばれたリトラと同じ時代に活躍した女性で、フィルモア2世との間に淡い恋物語があったらしい人物。「にきたま(和魂)の詩女」とも呼ばれた女性である。
今回の出現はこれまでの詩女の預言とは状況が異なる。現詩女を通して預言を述べる詩女と、未来に直接現出して言葉を交わす詩女の2種がいるようだ。ベリンとナカカラはどうも後者っぽいイメージである。

ただし、ナカカラの足元を見ると、茄里の部屋とは異なる場所に立っているようにも見える(p109の2コマ目とp110のナカカラの足元の床に注目)。ナカカラが立っている場所は聖宮ラーンではないだろうか。となると、ナカカラは自身が生きている時代に茄里の精神を呼び出したことになる。うーん・・・ベリンの能力とは異なるのか。ちなみに、ベリンは逆に自身の精神を未来に飛ばしているように見える描写がある(13巻p120)。
さらに付け足すと、同じく詩女のリトラは天照の影響で死後現世に表れているので別枠扱い。

ナカカラがコミック13巻の時点で既にクリスティンに接触している点に注意。クリスティンと茄里を意図して会わせようとしている可能性がある。
フィルモア帝国が抱えている厄介な問題について、歴代の詩女の介入が始まっているということか。
(2019.12.23 修正)


■ ショーカムとリリそしてフンフト (p114)


ジークが実父の体質を引き継いでいないことが語られた後で、両親が出会った頃の過去話に移る。
星団暦2972年。メガエラのお披露目が2974年であり、この時期は既にバランシェ邸で運命の三女神の製作が始まっているはず。また、カイエンが剣聖位を継いだのが2970年であるため、慧茄は剣聖位を返上しておそらくはエラルド島に移っているはず。そういう訳で、この後のエピソードで運命の三女神と剣聖慧茄が登場する。

ショーカムは大学部司法科に通っていた学生で、この時点で既に詩女から優秀な学生に与えられるメダル(首元の装飾品)を受け取っているとのこと。
騎士法とそれを取り巻く国家の思惑を逆手にとってリリを挑発するあたり、どうも騎士そのものに対してあまりいい印象を持っていないように見える・・・が、この後の話を読むと、ショーカムは最初からリリの正体を知っていたようだ。
ショーカム自身の生い立ちがバレてしまえば、バルバロッサ家の一員であることも伝わってしまう。父親の死を経験しているリリに恨まれる可能性もあった訳で、最初は敢えて嫌われる腹づもりがあったのかも知れない。

ふたりの前にフンフトが登場。彼女の詩女在位期間はDE4で2920〜2961年となっている。しかし、同じくDE4で桜子の出産は2974年となっており、この時点でまだ現役の詩女である。在位期間が変更されたようだ。
フンフトの後ろに神官とAP騎士が護衛に付いている・・・のだが、もしかしたらリリの素行の悪さを相談されたために、詩女自ら出向いてきたのかも知れない。

次第に仲良くなっていくふたりを見て、フンフトが「2人の中にあるものは同じ」と口にしていることから、彼女はこの時点でふたりの背景を全て知り得ていることが判る。おそらく、「フィルモア帝国の王家のふたり」というだけでなく、ふたりが子を生せばその子が「三色の皇子」となることも全て見抜いていたのだろう。
(2019.12.17 修正)


■ カモン=ピアノ・メロディ3世=ハリコン (p124)


ピアノ・メロディ3世の正体が剣聖ハリコンであったことが判明。ずこー。
システム・カリギュラとの闘いで命を落としたとされているハリコンが、実は星団に帰還しており、妹(2代目当主フォルテ)の采配で息子として戸籍操作されていたようだ。

ハリコンが口にしている「かの国」はフィルモア帝国、「東の国」はA.K.D.を指している。
ジェイン女王のセリフと合わせて考えると・・・コーラス王朝の王子が詩女と結ばれたことに対して、フィルモア帝国は「出し抜かれた」と判断したと。つまり、詩女を政治的に利用しようとしたと考え、コーラスに対して不審の目を向けたということですね。それによってフィルモアとコーラスの間で確執が生まれ、コーラス・ハグーダ戦におけるラルゴの失策につながったと。んでもって、魔導大戦中のダイ・グとフンフトの婚姻話も、コーラスの干渉に対する意趣返しの意味合いを多分に含んでいると。なるほど。

ハリコンのセリフを読む限り、もともとヴィーキュルの侵攻を止める事情があってフンフトに接近したようだ。
ライブ、カラット、ブリッツの転生が開始されるタイミングでヴィーキュルの侵攻が予想されると。詩女の力を触媒に彼らが現世に現れれば、この世に穴が開いてしまう。だから、詩女の力を一時的に消失させると同時に、超帝國剣聖の力を用いてヴィーキュルを封印し、その後の監視はプロミネンスに引き継ごうとしていたようだ。プロミネンスのデザインは今回が初出。ララファは敢えてクローソーのデザインラインに寄せているっぽい。
ブリッツの転生は今巻で描かれることから、ハリコンが考えているヴィーキュルの封印はこの後の話つまり3036年以降ということになると思われるが・・・ハリコンはおそらくフンフトを連れてラーンから離れた後で他界しており、剣聖ララファの意識はコーラス24世の中で成長しつつある。うーん・・・となると、ハリコンによる封印は描かれていない2974年からコーラス24世の誕生する2990年までの間にあったイベントと考えればよいか。

劇中の描写を見ると、フンフトは双子を宿しているようにみえるが、アルルはハリコンとバランカ家王女シリセの子、桜子はハリコンとフンフトの実子である。連載時の扉絵の解説に拠ると、ジョーカー星団の技術と詩女の能力でふたりを同時に宿しており、この後でアルルが先に生まれたらしい。ただし、アルルの生年は不明であり、この辺はセンセーもさらに裏事情があるようなことを匂わせている。2974年に生まれたのが妹の桜子。ただ、桜子とヨーンは年齢が近く、ジークはふたりの後輩であるため、この時点で既にジークが生まれているのは少し微妙。ただし、桜子は飛び級で上級生になっている可能性もあるので、ジークと同い年でも問題ないか。

さて、ピアノ・メロディ3世の正体が明かされたことで、アルルは剣聖ハリコンの娘であることが判明した。懐園剣とSR1は父親から譲り受けたモノということになる。ユリケンヌがハリコンのパートナーを務めていたのであれば、この辺の事情全てをアルルも知り得ている可能性が出てくる。んーそう考えると、アルルがミノグシアに入国して傭兵として雇われたのも、ただの偶然ということにはならないなぁ。超帝國剣聖(おそらくプロミネンス)に懐園剣を渡そうとしているのではないだろうか。
また、アルルの弟子マヨールの渡航(=コーラスへの入国)についても何等かの意図があるような気配が見えてきた。ハリコンはヴィーキュルの出現だけでなく、おそらくはシステム・カリギュラの介入の対して何等かの対策を講じていたはず。懐園剣とユリケンヌがアルルに引き継がれたのであれば、ハリコンの意思や目的もまた引き継がれたと考えるべきだろう。また、マヨールはコーネラ帝国の騎士団長になった時点で既に「シオの門番」が何者であるかを把握していた(コミック12巻p151)。この情報源はやはりアルル以外に考えられない。
ハリコンの意思がアルルに引き継がれているのであれば、ブリッツのリダクション(=ショウメの出現)もアルルに伝えられている可能性が高い。今後のエピソードでショウメ争奪戦が起きるようだが、今巻でアルルとマヨールの出自について情報が公開されていること、ショウメが出現するエピソードの手前でマヨールが劇中に登場したこと、この辺を全てひっくるめて考えると、今後のエピソード(ショウメ、懐園剣、マキシなどが絡むエピソード?)でこのふたりがそこそこ動くことになるような気がする。

詩女フンフトが更迭後に向かった「あの地」とはおそらく「廃都アマダ・ジー」のこと。
ハリコンが「私の見た未来」と口にしているのは、聖典モナーク・セイクレッドに接触して実際に未来を見てきたためと考えられる。おそらく、アルルと桜子のそれぞれに、未来へつなげるための役割が与えられているのだろう。アルルはおそらく懐園剣の引き渡し役。連載時の扉絵の解説に拠ると、アルルはダイアモンド・ニューとも関係があるとのこと。劇中でも初登場は出雲であった。おそらくタイ・フォンやモナーク・セイクレッドの絡みがあるのだろう。桜子の役割は不明であるが、成長してガーランドとなった彼女が次期詩女マグダルと絡む可能性があるか。あと、桜子は後にミラージュに移籍するらしいことが判明している。

にしても、ハリコンはあまりにも周りを顧みなさ過ぎる・・・メロディ家、バランカ家、聖宮ラーンの神官たちに迷惑を掛けた上に、フィルモアとの間に遺恨を残してコーラス3世を死に追いやり、さらにケンタウリ家没落の遠因になってアラン・リーを暗殺専門の騎士団に追いやった挙句、ふたりの子供たちに必要最低限の情報すら与えなかったと。とんだピーナツ野郎である。全員に土下座が必要ってことだ。うん。

あと、「カモン・ピアノが誰かは永遠に闇の中」と云っているのに、ジェイン・ボルガは「カモン」の名を口にしている点も微妙に気になる。
フィルモア帝国元老院では「コーラス王子」と呼んでいた訳で、彼の公式な名からすれば「ピアノ」と呼ばれて然るべき。ヨミとナカカラの件も含め、どーもジェインさんは詩女に関してそこそこ深い事情を知り得ているようである。
(2019.12.17 修正)


■ 赤子を守るということ (p130)


リリは知らされていなかったようだが、ショーカムがバランシェ邸を訪問したのは、彼自身の病気の治癒が目的ではなく、外部の干渉から家族を守るため。その理由はp135以降で明かされる。
バランシェは星団最高のガーランドであり、天照王朝の支援もあることから、あらゆる国家の干渉を完全にシャットアウトできる。また、バランシェは剣聖カイエンに絡んでトーティー・ジキジディと接触していたり、そのカイエンの身受け先がボルサであったりしており、この時点で何かと詩女に助けてもらっている過去がある。バランシェが口にしている「借りも多い」とはそういう意味である。
ショーカムの複雑な事情を察していたフンフトは、自身の力が及ぶ範囲の中でバランシェに預けることが最適と判断したのだろう。フンフトがフィルモアの内情を知り過ぎているような気もするが、おそらく慧茄と連絡を取り合っているのではないだろうか。

p131の4コマ目でリリが座っている机の周りに「テスト」「ルミナス学園」「50単位」という文字が確認できる。おそらく彼女は、ラーン教導学院を中退した後にルミナス学園の通信制を利用して法学の修士課程を修めたのだろう。息子のジークは同窓の後輩ということになる。
同じくp131の欄外に「のちミースが使う」と書いてある端末は、コミック10巻p238に登場しているコンピュータ(?)である。Apple Computer Inc.(アップル・コンピュータ社)が1999年8月に発表したパーソナル・コンピュータ「Power Mac G4」が元ネタ。

バランシェがp132で「ここはフェイツ公国」と口にしているものの、厳密にはフェイツ公国ではない。バランシェは同国を治めるバランス家から出奔しており、邸宅がある場所はトラン連邦のバストーニュである。フェイツ公国による保護ではなく、バランシェ個人による保護(と天照による保護)が働いているだけである。
と云うか、バランシェは年喰ってからだいぶ丸くなったのね。言動がかなり大人しい。
(2018.06.24)


■ オデットの「ばれてた」 (p133)


オデットが「ばれてた」と口にしているのは、「リリに娶ってほしい」と考えていたことが「ばれてた」ということだろう。
ダンチヒ公の引退をバランシェに隠しており、それが「ばれてた」という意味ではないはず。
・・・というか、ダンチヒ公は魔導大戦の途中で引退という設定もあったが、その設定自体が「公にされていなかったために流布されていた誤情報」として位置付けられたことになる。ちょっと珍しいパターンかも。

バランシェのセリフを読む限り、オデットとオディールのモード変更は最初から設計されていた機能ではなく、オデット自身のデータを多層レイヤー化した影響であるようだ。オデットの人格・情報・記憶を階層構造に組み上げ、彼女自身に埋め込むことで、特定の行動・思考をもつ騎士(要するに近親者)をマスターとして認めるような細工を施したと。云うなれば、オデットとオディールのモード変更は、この操作の副作用である。また、リリと茄里だけでなく、ジークも同時にマスターと認めているようだが・・・彼女に第3の人格があるかどうかは不明。
(2018.06.06)


■ ショーカムの正体 (p135)


ショーカム自身の口から語られる彼の出自。
フィルモア帝国における最も高貴な血筋は、フィルモア帝国統一時に結婚したゾンダー・フィルモアとプリンシパル・レーダーの直系・・・つまり、現在のブラウ・フィルモア王家であるが、フィルモアは権力集中を避けるためにブラウ・フィルモア王家の子を皇位継承最上位に置かずに来たと。その一方で、国家存亡の危機に際していつでも完全専制君主制に移行できるよう、皇位継承1位を常に置いてきた。それがボルガ・レーダー王家であったと。リリもボルガ家が第1位であることを知らなかったことを考えると、この事実を知る者はボルガ家と円卓の騎士のみ。ショーカムが知っているのは、母親からその事実を聞かされていたためと思われる。

という訳で、ジークの正体は、ブラウ・フィルモア王家、ボルガ・レーダー王家、バルバロッサ王家の全ての血筋を引き継ぐ「三色の皇子」であることが明かされた。その事実が公になれば、ジークを巡る権力闘争が激化し、彼を暗殺しようとする輩も出てくる。それを回避するために、ショーカムは剣聖慧茄に子供の保護を依頼し、同時に次期皇帝にダイ・グを指名したようだ。この事実を全て受け入れたということは、慧茄も円卓の騎士のひとりということだろう。慧茄はこの時点でアドラーのエラルド島で生活していたはずで、ジークとダイ・グは兄弟のように育つことになる。んで、p23の過去エピソードにつながると。

この後、おそらくはショーカムの死を境にリリがフィルモアに帰還したものの、茄里の方はバルバロッサ家に取り上げられてしまったものと考えられる。
一方、ジークは成長の過程で自身の中に眠るサイレン皇子の因子(?)に気付き、母親から距離を置くためにバランシェ家を介してルミナス学園に渡ったのだろう。
ジークの中のサイレンは過去に一度リリと言葉を交わしたらしい(p88)ので、それがジーク出奔の直接的な原因になったのではないだろうか。

コミック13巻も併せて読むと・・・リリはバランシェ家にいる間に茄里を出産しており、茄里が生まれる前に2度、慧茄に挑んで敗れている。茄里が生まれた後に3度目の挑戦をしており、その際は狂気をはらんだ目をしていたらしい。
んー・・・ショーカムの出自を聞く前はまだ円卓の騎士では無かったようだが、1度目と2度目の慧茄への挑戦の時点では既にサクリファイスの称号を受けており、帝国一になろうと慧茄に挑んでいたようだ。つまり、帝国最強騎士がサクリファイスの称号を継ぎ、それとは別にブラウ・フィルモア王家の当主は代々円卓の騎士のひとりを務めていたということか。ショーカムと付き合うようになった後でリリが本国に帰っていたとは思えないため、彼女が慧茄に挑んだ1度目と2度目の挑戦は、おそらくラーン教導学院に入る以前のエピソードである。
んで、茄里を連れてフィルモアに戻ったと思ったら、その茄里を取り上げられた。3度目の挑戦で精神を病んでいたのは、そのことが原因と考えるべきか。うーん・・・彼女自身がもつ政治的な力ではバルバロッサ王家に敵わないことから、慧茄を降して自身の力をアピールしようとしていたのだろうか。慧茄との関わりを見ていると、二重人格になったのはお前の方かとツッコミたくなるピーキー振りである。

ちょっと細かい部分。p139でリリが慧茄に対して「皇太后陛下」と呼びかけているが、これは間違い。この時点のフィルモア帝国皇帝はレーダー8世であり、慧茄は先代皇帝の妻である。ダイ・グが皇帝となって初めて慧茄は「皇太后」となるので注意。
ショーカムが慧茄と話す際に、胸の中央に着けているアクセサリーは詩女より賜ったメダルである。通常、このような正装では最も格式の高いモノを中央に、その他の勲章や紋章は左胸に付ける。ワイプ皇子であれば中央につける勲章や紋章が幾らでもあったはず。にも拘わらず、彼は学生時代にもらったメダルを中央に付けた。この衣装の着こなしから、彼が何を最も大切に考えているのか窺うことができる。
(2019.12.22 修正)


■ クープ博士が告げる真実 (p140)


クープ博士の口から伝えられるダイ・グの病状。p98で口にしていた別の「用事」とは、おそらくダイ・グの診察を指していたのだろう。
皇帝ダイ・グが倒れれば帝国の政治はむちゃくちゃになる。これを治めることができるのはおそらく円卓の騎士のみ。
という訳で、魔導大戦の後半でフィルモア帝国に起きる事象が何となく透けて見えてきた感じだろうか。3075年のハスハント解放戦でフィルモア勢が全く絡んでいない理由も、この辺が理由になるだろうか。

p140の欄外にある「これはホンモノ」という書き込みは、「リリがここで着ているワンピースはパチモンではなく、ホンモノのシャネルのワンピースだよ」という意味だそうです。しーはつ様に掲示板で教えていただきました。ありがとうございます。
(2019.12.22 修正)


■ ブリッツのリダクション (p65))


年が明けて星団暦3036年、セントリー・パルサーとマグマが動き出す中、ついにブリッツの転生(リダクション)が起きてしまう。
ブリッツのセントリー・ドロップをもつファティマ・静、ハリコンよりリダクションの情報を得ていた詩女フンフト、旧超帝國北都マグダル(=ベリンの故郷)に来ていたアトロポス、この3名が異変に気付いたようだ。
生まれ出た幼生体がショウメ。クーンが「お戻りに」と口にしていることから、ショウメの誕生は今回に限ったことではなく、以前にも起きたことがあるらしい。このショウメを巡って争奪戦が繰り広げられることになるが・・・最終的に、このショウメの因子を受け継いでファティマ・タワーが生まれることになる。
静やアトロポスも絡むのであれば、今後の展開もやはり非常に濃い感じになりそうですね。

パルサーの解説にあるヒッグス粒子は質量を与える役割をもつ素粒子、重力子は重力を媒介する素粒子である。原子はもちろん素粒子を持たない存在ということで、セントリーは霊体のような存在であることが伺える。質量を持たない存在が、物体の移動といった物理現象を引き起こすことはないはずなので、マグマの登場で海が荒れるのもおかしな感じもするが・・・彼らの存在自体がなんでもありだから仕方がない。海がシューシューしているのは、マグマの高熱で海が蒸発しているものと考えれる。

アトロポスが出てくるコマの上に描かれている石窟はベリンが禊をした場所。映画GTMでベリンが最初に出てくるシーンに登場する。
また、彼女が所持しているガット・ブロウはミラージュ騎士がもつ血の十字架であるようだ。

あとひとつ。
クーンのセリフがカタカナトークになっている点が気になる。
これまで、初登場時のクーン(製作直後のクーン)はカタカナトーク、カイエン誕生から霊体分裂までは通常トーク、分裂後のファティマ・クーンはカタカナトーク、霊体のクーンは通常トークで大体統一されていたので、今回のクーンがカタカナになるとかなり微妙な感じ。
(2018.07.02)


■ オードラ付近に枢軸の動きあり (p155)


ユーゴ・マウザーが匂わせていた南部戦線に話が移る。シーゾス王国の北端オードラから海を挟んだ場所に枢軸の動きがある模様。場所的にちょうど旧体制派と分離派の間に位置していることから、AP騎士団内でも互いに出方を見る必要のある場所となる。ここを狙って来るということは、枢軸軍に何らかの思惑があるということ。軍を預かる身分であれば、陽動あるいは挟撃もあり得ると考えてもいい場面である。

マルコンナ隊支隊長ゾンタ・クルーエルとの会談後に不満を漏らしているユーゾッタを見る限り、彼女はこの時点でそのような発想に至っていないようだが・・・p179では陽動の可能性に言及している。
三つ星傭兵騎士団やザームラント騎士団を二流三流と位置付けているようだが、三つ星傭兵騎士団の一部のメンバーはナイアス・ブリュンヒルデ率いるブーレイ傭兵騎士団に参加している。二流三流とされる騎士団の裏に大国の思惑が絡んでいることを、ユーゾッタはまだ想像できていないようだ。戦果を求めて焦っている点は仕方ないが、どこかの戦線で動きがあれば、連動して他の戦線にも動きが出るという考えに至らない点はちょっと危うい。
ユーゾッタに話しかけた老人については後述。
(2019.12.22 修正)


■ 改装を終えたバーガ・ハリ・SQ (p158)


通常戦闘を視野に入れて改装を施したバーガ・ハリ・SQ。AP騎士団[スクリティ隊]が使用するバーガ・ハリ・SQは、その任務の特殊性からバーガ・ハリの感覚器を完全に無効化する装備を搭載していた。おそらく、アルルの会談の内容によってはすぐに戦場へ向かう可能性があったため、対バーガ・ハリ用の特殊装備を取り外したのだろう。スクリティ隊も遊撃部隊として動くために若手を増員したようだ。

アイシャとバルンガの会話。ベラ国攻防戦におけるナルミの活躍・評価は本国において意図的に低くされており、戦中に本国に引き抜くような動きはないようだ。
バルンガのセリフのとおり、ナルミは魔導大戦の終結後に再び評価が下され、後に発足するアトール聖導王朝(もしくは体制見直し後のラーン教導学院)では彼女の子孫と思われるキャナル・アイデルマが神聖教官となり、同王朝が組織する聖導騎士団アイル・フェルノアの騎士団長となるらしい。
アイシャはベラ戦参加の言い訳をした後に本国へ戻る模様。ベラ戦に参加したミラージュの面々を追うと・・・ツバンツヒはグリース王国で学園生活中。バイズビズはミス宇宙軍とともにラキシスとナナカラへ。ブラフォード、ステートバルロ、キュキィの所在は不明であるが、おそらく彼らはミノグシアに潜入しているものと考えられる。
(2018.07.22)


■ ギーレル王との会談 (p161)


アルルが会談に来たギーレル国の王宮。ギーレル王朝の首都はパーフェーンであり、このほかに旧王都ギーレルが存在する。以前からの王宮が残っているのであれば、その王宮はギーレルにあるものと思われたが・・・p155の地図でクバルカン法国が陣を構えているのはパーフェーン周辺であること、静がいる王宮(p143)と会談中の王宮(p161)の屋根が同じ形状であること、魔導大戦の開戦時にパーフェーンに駐屯していたパローラ隊が登場していること・・・この辺から察するに、ギーレル王宮はパーフェーンにあるようだ。

旧体制派からの離脱を表明したギーレル王国であるが、ミノグシアに対して弓を引く訳ではない模様。ハスハントから来たアルルとその部隊を受け入れ、駐留させてくれるようだ。
パローラ隊の支隊長はロダン・モドトという名前であったが戦死したのだろうか。今回登場した人物はジンセン・サルボである。伯爵位をもつのであれば、もともとギーレルの王族とは近しい位置にいた人物となるはず。
(2019.12.22 修正)


■ アルルと桜子の邂逅 (p162)


初見で一番びっくりしたポイント。桜子は異母姉のアルルと面識がない。前述のとおり、アルルは実母を、桜子は実父を知らないらしい。
桜子は自分の母親がフンフトであることを知っているはず(コミック10巻p123)。んで、その母親がコーラス王子との不倫で子を生したことはかなり有名なエピソードで、ミノグシア全土でもロマンチックな恋物語として語られていたはず。この事実はフィルモア元老院でも話題に出ているため、フィルモア帝国においてもそこそこ有名な話であるはず。スティール・クープに師事していた桜子であれば、自身の出自と合わせて知り得ていてもよさそうな情報である。
また、アルルがコーラスの王女であることは星団中に知れ渡っており、だからこそ桜子も「アルル王女」と呼んだと思われるが・・・桜子の反応を見る限り、彼女は父親がコーラスの関係者であることもわかっていない様子である。
つまり、フンフトは父親のことを一切話さずに桜子を育て、桜子もまた独り立ちしてから父親のことを一切調べていないということになる。

一方、アルルは父親が剣聖ハリコンであることを知っており、桜子が妹であること、超帝國剣聖ララファの存在、懐園剣がもつ超常の力も父親から云い渡されているようだ。とは云え、懐園剣はこの世のものではない魔剣であり、彼女は自身について「呪いを掛けられている状態」として認識している模様。懐園剣が彼女の手から離れ、コーラスの血筋からララファが消え失せるためには詩女に会わなければならないようだ。
懐園剣の正統後継者は剣聖マキシ。そのマキシは一応誕生しているはずで、この後でフンフトに育てられることになる。懐園剣がマドラの手に渡り、その後でマキシに渡ることは確定しているため、問題は超帝國剣聖ララファが懐園剣にどう絡んでくるか、という点。コミック14巻で描かれたとおり、剣聖ララファの意識はコーラス24世の中で形成されつつある。懐園剣がマキシに移った時点で24世にも何等かの変化が現れるかも知れない。んー・・・ララファとマキシの佇まいが微妙に似ている点も気になるかな。

桜子が担当しているファティマは不明であるが、コミック13巻では静を見る予定と云っていた。彼女が手にしている端末に5つの円が描かれているため、クバルカン法国の国家マークが刻印された端末のように見える。おそらく、桜子はクバルカンに所属するファティマの状況をチェックするために、騎士団所有の端末を借りているのだろう。
(2019.12.22 修正)


■ 謎の老人 (p164)


ユーゾッタに声を掛けた老人はファティマ・静と既知の間柄であった模様。「静様」ではなく「静」と呼ぶのであれば、かなり身近な人物であったはず。また、ミマスから直に願いごとをされたのであれば、クバルカンとバキン・ラカンの双方に関係がある人物ということになる。クバルカンとバキン・ラカンと云えば、ユーゾッタ侯爵家の本家筋であるサヤステ家が怪しいということになるため、巻頭でキャラシートが発表されたミューズ以前にファティマ・静と組んでいた枢機卿アルテン・サヤステということになる。
それにしてもこの老人、スクワルトでユーゾッタに声を掛けた後、海を渡ってパーフェーンまで来たのね。戦中で警護が厳しいはずの王宮まで簡単に立ち入るあたり、なんとも行動力のあるジーサンである。
(2018.07.22)


■ ギーレル北部に降り立ったコーネラ勢 (p165)


話は南部戦線に移り、輸出型のユーレイが登場。本国仕様のユーレイとはエンジン音が異なり、肩装甲も少し異なるようだ。マウザーはスタンダードなGTMの戦闘データと比較することで、試作騎デモールの完成度を計ろうとしているらしい。ライオン・フレームのスタンダード騎として輸出型ユーレイ、パンター・フレームのスタンダード騎としてボルドックス・ジェームを加え、4個小隊計12騎の中隊を編成したようだ。ボルドックス・ジェームは初出。集めたザームラント騎士団のメンバーは、ブーレイ傭兵騎士団に選抜されていたメンバーとのこと。ナカカラに展開していた部隊から引き連れて来たのだろう。こうなるとブーレイ傭兵騎士団を率いていたナイアスがどう動いているのか気になってくる。
マウザーのセリフを読む限り、ビリジアン博士はエトラムルのほかに人型ファティマも作っているようだ。今後、彼の作品も登場するかも知れない。

p168で輸送艦3隻とGTMケージ9台が確認できる。艦船の大きさやデザインから判断すると、右上がおそらくボルドックス・ジェーム6騎を運んできたザームラント騎士団の船。真ん中がサイレン3騎を運んできたカリギュラの船。左下がデモールを運んできたコーネラ帝国の船。容量的に、カリギュラとコーネラの船は予備騎を積んでいてもおかしくない。サイレン3騎のGTMケージは色が異なる模様。GTMを購入すると、そのケージごと渡されるようだ。

持ち出されたデモールは2種3騎。頭部に測定管をもつリーダー騎がデモール・ゾロ、これに従う僚騎がデモール・バイブルスとのこと。ただし、このエピソードがNT上で掲載された後、デモールの詳細が解説された際はデモール・レガータに改められている(NT2019年6月号p59).。デモール・バイブルスはこの時点で本国で先行量産されていたエトラムル搭載型。今巻の戦闘の後、ファティマ搭載型の開発が進められ、新たにデモール・タンジェリンと呼ばれるモデルに置き換わる。
今回、放熱問題があるためにフル装甲で出てきたということは、デモールの装甲に強力な冷却機能が備わっているということ。後方に飛び出ている板状の装甲が放熱器の役割を兼ねていると思われる。フレーム構造を変えるほどのコンバーターを胸部に追加したことで、発生する熱量が増えたのかも知れない。

南部戦線について。初見で混乱したので説明入れておきます。ユーゴ・マウザーが云うところの「南部軍」を「ハスハント南部シーゾス戦線で展開している枢軸軍」=「スバース隊と戦っている枢軸軍」=「p155の地図で下に描かれている戦線」として捉えると混乱する。彼らが実戦テストを行う場所は、シーゾス王国の北方、ギーレルとハスハントの3国が接する位置=「p155の地図で三角が示している位置」であり、スバース隊が展開している地域から少し離れている。つまり、「南部軍」とは南部シーゾス戦線だけでなく、ハスハント共和国の南国境付近全体で展開している軍を指していることになる。p165で「ハスハント南部シーゾス国境付近」と書いてあるから、余計に混乱するので注意。

マウザーはわざと情報を流すことで、デモールのテストと戦場の活性化を同時に進めようとしている模様。p170でビリジアン博士が「予想外の大軍」と云っていることに注意。彼はおそらくラカン騎士団の規模を既に把握しており、それ自体は問題視していない。情報を流しまくったことで別の国家が介入してくる可能性を危惧しているようだ。

p170のビリジアンとの会話で、ラ・ベルダはフローレス・ファティマであることが判明。オモロイものが大好きで、戦闘とかワリとどうでもいいと考えていて、ファティマは超一流って・・・マウザーはまさにミラージュ騎士に相応しい人物のようだ。劇中のセリフにあるとおり、詩女暗殺計画におけるマウザーの対応ひとつで歴史が変わっていたのかも知れないが・・・FSSの準主役級メンバーはほぼ似たような影響力を持っている。恋に走って天照の元に行き、ツァラトラを作ることになるツバンツヒも然り。
上の方でも書いたが、マウザーは不老であるが故にこの世界に飽いており、とにかく面白い展開というものを求めているのではないだろうか。ヨーンに手心を加えてやったり、敵に情報を与えて戦場を混乱させたり・・・長生きしているからこそ、勝ち負けに拘ることのくだらなさをよく理解しているのだろう。彼がなぜミラージュに入ることになるのか、この辺からも何となく推察できますね。天照と一緒にいたら、そりゃオモロイ展開だらけだろう。
(2019.12.22 修正)


■ デモールの基本理念 (p171)


ビリジアン博士のセリフから。
エトラムルはシン・ファイアに近いロジックを持っているためにGTMとの連動自体は速い。ただし、騎士の思考を読み取る直感的な判断ができないために、それを補助するコンバーターをデモールの胸部に追加したようだ。エトラムルの設計はビリジアンの作業、パンター・フレームのアレンジとコンバーターの追加をマウザーが進めたと。
戦争が長引けば死傷者が増えるため、ファティマの絶対数が減ることでGTMの稼働率は下がっていく。他方、エトラムル搭載型にも「死」が存在しているものの、生産が容易なために供給が安定しており、騎士との相性を気にする必要がないことからすぐに戦場投入が可能。ファティマ搭載型に比べて稼働率が下がりにくい。エトラムル搭載型とファティマ搭載型に埋められない性能差があったとしても、長い目で見ればエトラムル搭載型の方に利が傾くという考え方である。
魔導大戦の初戦で既に各国軍で定数割れが出ているため、このまま戦争が長引けばデモールの優位性が早い段階で証明されることになる。この先の未来で天照の大侵攻が長期に渡って続くことを考えると、彼らの発想はまさに時代の先取りと云える。
(2018.09.18)


■ 禁断のスイーツとゴスロリワンピース (p174)


不用意な発言でベルダの機嫌を損ねてしまったマウザーがかき氷を注文する。
マンゴー雪花氷はマンゴー味の雪花氷(シェーファーピン)。マンゴーかき氷とも呼ばれる。台北市のICE MONSTER(アイスモンスター)が1997年に生み出したマンゴーかき氷が元祖とされ、台湾のスイーツ界で流行して様々な味の台湾かき氷が作られた。日本への上陸は2015年。アイスモンスターの表参道店が第1号となり、その後も各スイーツ店で台湾かき氷が作られているようだ。

なぜか通信機が黒電話になっているようだが・・・おそらくカリギュラが配備している野戦電話がこの形状なのだろう。一見してレトロに見えるが、民間で使用されている小型の携帯電話は簡単に盗聴されてしまうため、軍隊では使用されない。2000年代に入った現在でも野外通信で最も活躍するのは通信兵が背中に背負う巨大な無線機である。むしろ、劇中で黒電話のレベルまで小型化されている点が極めてハイテクと考えるべき。・・・いや、さすがにダイヤル式はレトロすぎるか。

アリスアンドザパイレーツはゴスロリ・ファッション・ブランドのひとつ。アツキオオニシから独立した礒部明徳と妻の磯部フミ子が立ち上げたBABY, THE STARS SHINE BRIGHT(ベイビー・ザ・スターズ・シャイン・ブライト)が、2004年に発表したセカンドラインALICE and the PIRATES(アリス・アンド・ザ・パイレーツ)のこと。「海賊の中に紛れ込んだアリス」をイメージしており、黒や紺、シックなベージュやブラウンを基調とするドレスが多い。取り扱う商品は、ワンピース、ジャンパースカート、ジャケット、ブラウスのほか、ヘッドドレス、ソックス、靴、バッグ、アクセサリーと多岐に渡る。ラフォーレ原宿の店舗は地下1.5階に位置しており、永野センセーもどこにあるのか迷ってしまうらしい。
(2018.09.12)


■ マエッセンと老人 (p64))


マエッセンとプーウラーが登場。プーウラーのスーツはミラージュのロジウム・アシリアであるため、この時点で既に入団扱いとなっているようだ。
マエッセンのセリフに拠ると、GTM8騎の中隊規模で行軍人員は50名程度とのこと(ただし、パイド・パイパーはこの規模でもウモスの独立駆逐大隊として登録されていた)。今回、コーネラ勢が200名規模となっているのは、おそらくシステム・カリギュラのGTMも用意されているため、p167のセリフで4個小隊計12騎となっていたものの、それ以前にマウザーがボルドックス・カンポデルテンシェロを持ち込むことを口にしている。カリギュラの他のメンバーもGTMを持ち込んでいると考えた方がいいだろう。

アルテン・サヤステが戦場に来た模様。静を通してミューズに連絡⇒ローテ騎士の護衛を付けてオードラ北部までやって来たようだ。ホントに行動力のあるジーサンである。
初出の騎士バレフィラはローテ騎士団の副団長とのこと。今回は「ルッセンフリード」を持ってきていないらしい。

新登場のファティマ・イグリド。「MC28Br-S VVS2 A-A-A-BB」と書いてあることから、
製作者:モラード・カーバイト
シリアル:28番目
人種タイプ(もしくは外見仕様):ベルリン(Berlin)
成長タイプ:S型
クリアランス:VVS2
パワーゲージ:A-A-A-B-B とのことでかなり高性能のファティマである。

アルテン・サヤステのセリフを読む限り、マエッセンのおそらく母方の人物がローテ騎士団の関係者ということになるが、この詳細はp229で明かされる。「ならばなぜ・・・」の後に入るセリフは、「縁のあるクバルカンに戻らないのだろうか」といった感じだろうか。
一方、マエッセンは典星舎のメレトレと幼馴染である模様。天照王朝の男爵位をもつ点を考えると、2992年の戦闘後にアイシャが助けたのも、王朝貴族の一員であることを知っていたから、という理由付けが付加されるかも知れない。メレトレのセリフでもマエッセンが既にミラージュ入りしたことが判る。
典星舎のメンバーがもつ笏(しゃく)が情報端末になっている点が面白い。ヨーンはまだジークママと一緒にいる模様。つまり、がんがん腕を上げているということ。
(2019.12.22 修正)


■ オードラの戦況 (p179)


ハーミトンはベラ国家騎士団でも使用していたGTM(劇中では未登場)。ハスハ連合の傘下国で採用している国家主力GTMということになるだろうか。
オードラの国家騎士団は1個中隊と云っていたので、5騎がやられれば実質壊滅状態ということになる。一方、コーネラ勢は既にラカン騎士団が現地に来ていることを察知しており、国家騎士団との戦いではデモールを出さなかったようだ。
スバース隊はシーゾス戦線に別の動きが出ることを警戒して南下してきた模様。ユーゾッタは自信満々で現地に向かう姿勢を見せているものの、この時点で既に新型GTMのテストであることを見抜いているメレトレらとの格差が発生している。また。この後の戦闘でも地形データを得ることなく戦地に降り立っており、偵察行動を一切とっていなかったことが描かれる。敵軍のGTM数を先に把握しようとしなかったり、土地鑑がないのに地形データを準備しなかったり・・・ユーゾッタとラカン騎士団が戦慣れしていないことを如実に表しているシーンである。この辺、なんだかんだしっかりやっていたスカ閣下は百戦錬磨の騎士ということになるのだろうか。
(2018.09.17)


■ ベルダとニトロゲン (p181)


ヒュードラー博士がワンピースに着替えとる!というのは置いておいて。
ベルダが口にしている「前のマスター」とはミラージュ騎士のティン(クー・ファン・シー・マ)のこと。これ、副読本とか持ってるヒトにはすぐ判るが、コミック本編だと4巻p44に名前が出てるだけなんだよなぁ。あと2005Editionの2巻か。
ガリュー・エトラムルの正体はエーロッテン・ニトロゲンとのこと。
ガリュー・エトラムルは星団暦2300年代の後半に活躍したAFガーランド。ファティマ開発の始祖リチウム・バランス亡き後(2389年没)、ファティマ製作において当代最高峰と云わしめた人物であったらしい。一方、エーロッテン・ニトロゲンはロッゾ帝国の南部グラウロッゾに居を構えていたAFガーランド。サリタ・アス・ジンクの師という設定もある。となると、エトラムル博士の活動期間は少なくとも500〜600年続いていたことになる。ビリジアン博士とも既知の仲であったことを考えると、彼もまたカリギュラと同様に数千年を生きてきたことになるだろうか。
ベルダがいつ頃に製作されたのか、なぜティンと接点を持てたのか、この辺も興味が湧いてきますね。

ベルダとビリジアン博士の会話が少し判りにくい。ベルダがビリジアンのところで休養していたところに、コーネラ帝国のGTM開発を手伝うという名目でやって来て、実はベルダの方に興味があった人物=ユーゴ・マウザーということか。初見時、ビリジアンがAFガーランド、マウザーがGTMガーランドというイメージがあるため、ベルダに興味を持っている人物=ビリジアンと捉えてしまった。
マウザーは、パートナーとしてだけでなく、今後のGTMの制御システムを見極めるための研究対象として、ベルダと組んでいる側面があるということか。結局、その「興味」で入手したベルダの尻に敷かれて散々振り回されている点がなんともマウザーっぽいが。
(2018.09.17)


■ ラカン騎士団の戦闘 (p183)


準備不足で戦場に入ってしまったラカン騎士団の苦戦が描かれる。
複雑な地形と戦闘ノイズの影響で敵騎の位置が全く把握できない模様。いかにGTMの索敵機能が優れていたとしても、戦闘でしっちゃかめっちゃかしているときはまともな情報が得られないということか。
p183の2コマ目がハーミトン。ユーゾッタの搭乗騎がホウザイロII。かつてイアンが搭乗していたGTMである。p184の4コマ目がラカン騎士団のアルタイ。p186に登場したのがマヨール搭乗のデモール・ゾロ。ずんどこ新しいGTMが出てきますねー。下手したらベラ国攻防戦より種類が多くなるかも。

オーロラがアシリアに着替えている。p179で登場した際はデカダン・スーツである。戦闘用のアシリアの方がカッコカワイイ感じ。
ベルダが気にしていた「ロンド・ヘアライン」と「オーロラ」のカードが成立したところでデモールの実戦テストであることが看破される。
あらゆる可能性から正解を導き出すファティマならではの演算力といったところ。

ゾンタ・クルーエルのセリフから。マルコンナ隊の半分がナカカラに移動してディスターブ隊に合流したことはこれまでの副読本に掲載されていたものの、理由が「裏切り」だったのは初出。つまり、魔導大戦の開戦時に東側のギーレルが独自路線を選択したことでスパチュラ隊およびパローラ隊との連携が組めなくなり、中立を表明したナカカラに部隊の半数が逃げ出したということか。ゾンタさんが慎重派になってしまうのも理解できますね。
(2019.12.23 修正)


■ ホウザイロvsデモール (p188)


ユーゾッタとマヨールの戦闘が始まる。
ユーゾッタが駆るホウザイロIIはかつてナッカンドラ・スバースが搭乗していたGTMの2番騎。フォーカスライトが星団で初めて公開された際、ナッカンドラはホウザイロIに搭乗した状態でソニック・ブレードを放ち、騎士の動きを完全に再現することが可能なコンピュータが誕生したことを知らしめたとされる。旧設定を引き継いでいるのであれば、ホウザイロ・シリーズのロールアウトは2238年。シリーズ3騎は星団で初めてファティマ搭載型に改修された騎体でもある。新設定の発表直後の設定では、ナッカンドラが搭乗した当時の名前がグロウスタイン。現在はホウザイロであった。また、ビュラードの搭乗騎はグロウダインという資料もあった。

ユーゾッタの部下はなぜかイギリス系の名前が多い。
ブリストルはイングランドの都市のひとつ。また、イギリス海軍に同名の駆逐艦があり、ブリストル・エアクラフトという飛行機メーカーも存在した。
ブラックバーンもイングランドの都市のひとつで、ブラックバーン・エアクラフトという飛行機メーカーがある。
バレンタインは第二次世界大戦中にイギリス軍が使用した歩兵戦車。
ネルソンは第二次世界大戦中にイギリス海軍が保有していた戦艦の名前である。就役時は本国艦隊の旗艦であった。
(2018.10.27)


■ 沽券を保つために尊厳を捨てるオーロラ (p190)


ユーゾッタを落ち着かせるために、敢えて恥部を晒す作戦に出るオーロラ。
くまちゃんパンツはコミック10巻のセリフに出ていたアイテム。カイエンと出会ったのは3007年のエピソードであるため、なんと28年前のパンツである。物持ちが良すぎる。
ユーゾッタはくまちゃんパンツ。セイレイはブタさんリュック。ちゃあはワンちゃん(BAFU)バッグ。劇中の女性騎士は動物のキャラクターが好きな模様。

ユーゾッタが想像している新聞の見出し(?)に「Jo-Spo」と書いてある。おそらく「東スポ」が元ネタ。
東京スポーツは1960年創刊の夕刊スポーツ新聞。発行は株式会社東京スポーツ新聞社。
最初に想像する姿がなぜかスポーツ新聞の記事って・・・少女時代と変わらず、ユーゾッタは相変わらず耳年増というか、発想が微妙にオッサンくさい。後見人のオルカオンの影響を受けているのだろうか。んが、この捨て身の作戦によりユーゾッタが覚醒する。

部下のセリフによると、身勝手で性格の悪いこちらの状態が本来のユーゾッタらしい。
そういえば、ミラージュ女子勢がかわいく見えるほどのワガママ騎士という設定もありましたね。
底意地が悪いというより、こうやって部下をイジることで他者と距離を置き、自身の心の安定を保つタイプという感じだろうか。
(2018.10.27)


■ デモールの反応に気付くオーロラ (p194)


デモールの挙動を見て、バランシェ・ファティマに似通った操作手順を踏んでいることに気付くオーロラ。
つまり、デモール・ゾロの頭部に収まっているロンド・ヘアラインは、バランシェ・ファティマの「クセ」のようなものを引き継いでいるということか。
(2018.10.27)


■ 駆け付けるアードとヒン (p196)


動かないマルコンナ隊に代わり、南下していたスバース隊からアードとヒンが駆け付ける。それぞれ中隊を率いているようだ。
コミックがモノクロのため判りにくいが、BSコブラはブラックグリーンの騎体。BSはダークイエローのはず・・・であるが、DE6でブラックグリーンに改められた。
エベレストとカプリコーンは劇中初出。

エベレストについて「VVS1=B-2A-B-A-A MC32-Brt=M」と書いてあることから、
製作者:モラード・カーバイト
シリアル:32番目
人種タイプ(もしくは外見仕様):イギリス(British)
成長タイプ:M型
クリアランス:VVS1
パワーゲージ:B-2A-B-A-A
イグリドと同じくこちらもかなり高性能。

カプリコーンは「VVS1=B-2A-A-A-B MC33-Pol=S」と書いてあることから、
製作者:モラード・カーバイト
シリアル:33番目
人種タイプ(もしくは外見仕様):ポーランド(Polish)
成長タイプ:S型
クリアランス:VVS1
パワーゲージ:B-2A-A-A-B
ふたりはBSコブラに搭乗するため、黒のアシリア・スーツとのこと。かわいいデザインですね。

モラード・カーバイトがその生涯において「銘入り」として生み出したファティマは39名という設定。
これまでに明かされている設定からすると、エストが1番目、イグリドが28番目、エベレストが32番目、カプリコーンが33番目、そしてタワーが39番目となる。
シリアルが判明していないファティマを列挙すると下記のとおりになるはず。一部のメンバーはコミック11巻p212でスペックが公開されている。

ビルド (現在のマスターはワンダン・ハレー)
ウリクル (コーラス23世のパートナー 2989年戦死 育成ベッドに「7」と刻印されていた)
ポーター (JOKERの半身でラキシス・ガード 2971年戦死扱い)
アイジェルン (運命の三女神に並ぶ超級スペックファティマ)
エルマ (プルース・ランダースのパートナー 2989年戦死)
スパルタ (ビヨトン・コーララ⇒ヴィンズ・ヴィズ)
ソリュート (ルビール・レイス)
スラート (ミラージュ騎士ヨッヘンマ・ピストーチのパートナー 現在は不明)
テック (ミラージュ騎士ベスター・オービットのパートナー 現在は不明)
マルター (アーリィ・ブラストのパートナー 3030年前後の時点で新作との設定)
そのほかに、ウラム、クエスラ、レィールゥ、ルーリィといった名前も挙がっていた。
(2018.10.27)


■ 新型エトラムルの欠陥 (p200)


通信回線から聞こえる「コ・ワ・イ」という言葉は、どうやらブラス・シャーレ型エトラムルが発しているのではなく、デモール自体が発しているらしい。
「コワクナイヨ」「タスケルヨ」と応答しているのがロンド・ヘアラインのため、GTMの感情を抑えることができないブラス・シャーレ型に代わって、リーダー騎のロンド・ヘアラインが応答しているようだ。

うーん・・・ビリジアン博士のセリフから察するに、エトラムルは「母にはなれない」ということになると思われるが・・・「母にはなれない」からGTMの声を垂れ流す、という訳ではないはず。おそらく今回の事象は単純にブラス・シャーレ型の欠陥である。彼の頭の中ではシン・ファイア≒エトラムルというバイアスが掛かっているために「ファティマとエトラムルの決定的な差」=「シン・ファイアがあっという間にファティマに代わった理由」になっているようだが、エトラムルも一応ファティマであることに変わりはない訳で・・・通常のエトラムルがGTMの制御に「母」としての機能を上乗せできなかったとしても、それが「シン・ファイアを使用しなくなった理由」とするのは少し飛躍し過ぎのような気がする。
ロンド・ヘアラインの応答が、通常のエトラムルの反応なのか、バランシェ・ファティマ故の(通常のエトラムル以上の)反応なのか、この辺もちょっと判りにくい。

アードがユーレイとボルドックスの混成部隊を見て「ザームラント」と特定しているのも、微妙に描写不足のような気もするなぁ。三つ星傭兵騎士団とザームラント騎士団がオードラ北部に来ている情報は事前にマルコンナ隊が掴んでいたため、AP騎士団の中で既に情報提供されていたのかも知れないが・・・あ、ユーレイを見て何ら疑問を挟まないのは、p196でオーロラとリンクしたためか。
(2018.11.24)


■ 乱入する黒騎士 (p202)


乱入してきたダッカスと黒騎士団。ケサギとカエシもいるので、おそらく山羊座騎士団と射手座騎士団の混成部隊ということになるが、巻末の解説ではゴーン・ホー率いる第1大隊とジーラ・ハイドンが率いる第2大隊が主体になっていたようだ。ケサギとカエシは第3大隊扱いとなっているようだが、戦時下編成で山羊座騎士団と射手座騎士団を第3大隊に置いたのだろう。
ケサギとカエシのカーバーゲンはプロトタイプの模様。マーキングが派手で判りやすい。コミック2-3巻で出ていたブーレイのマーキングと似ている点から察するに、目や口のマーキングはもともとミミバ族の様式なのかも知れない(このふたりはミミバ族の出身)。

ホウザイロの胸装甲破損で腕部コントローラが下がり、手を挟まれたユーゾッタが負傷してしまう。ホウザイロのチンガードも外れた模様。
いやーダッカスが激烈にかっこいい。
マウザーは最初から黒騎士団が加勢に来ることを見越して余裕綽々であったようだ。うーん・・・この流れで彼のX-13の出番が欲しかったところ。
(2019.12.22 修正)


■ 密着伝達式のコントローラー (p209)


ダッカスの一撃を左腕で凌いだホウザイロであるが、その衝撃でユーゾッタが痛がっている描写がある。
おそらくバックラッシュではなく、GTMがフライヤーで剣を受ければこのように多少の衝撃が身体に戻ってくるものと思われる。密着伝達式のコントローラーのデメリットである。
「左腕で剣を受けた」状況を体感的に理解できるようにその衝撃が伝わる⇒今回はユーゾッタが負傷しているため、通常は平気な衝撃でも痛がっている、という状況なのかなと。コントローラーの接続を完全に切ることで衝撃は来なくなるものと思われるが、おそらく左腕にフライヤーを付けている感覚も失われるのではないだろうか。
なので、オーロラは左指のコントローラーだけを切って、ユーゾッタの代わりに左手の操作を受け持ったものと思われる。
(2018.11.24)


■ 破烈の人形登場 (p211)


コミック5巻からまともな登場シーンが無かった破烈の人形が再登場。飛行形態を見る限り、映画では垂直尾翼だった部分が水平尾翼のようになっている。おそらく飛行速度に応じて翼の傾斜を変えているのだろう。

カエシの動体視力をもってしても上空を旋回する物体が可変GTMであることを見抜けなかった模様。それだけ超高速で移動している・・・という訳ではなく、それだけ可変GTMの実体を知る者が少ないということだろう。ヒュードラー博士の目から見て装甲の変化が見て取れるということは、変形プロセス自体がかなりスローモーということ。
デコースは最初から変形GTMであることを見抜いていたようだが、傭兵騎士としてアチコチ出向いていた頃に破烈の人形が超ド級の爆音を発するというウワサぐらいは聞いていたのかも知れない。このGTMが戦場に来たことを受け、デコースはエストに「ギーレル国境まで」索敵範囲を広げるように指示している。つまり、パーフェーンから向かって来るルーン騎士団の本隊を既に警戒しているということ。ちゃんと指揮官してます。

劇中の変形プロセスから、モーフィング装甲を使用している部分は腕のフライヤーと頭部装甲の2ヶ所であるが、巻頭の解説では後部腰装甲(=変形時の垂直尾翼)も変形するらしい。ビリジアン博士が開発したのであれば、流体コートと同じく輪波理論の応用ということだろう。彼の言に拠れば、モーフィング装甲は重量が増す反面、放熱材としては優れているとのこと。変形による超高速移動と、エンジン直結の主武装を見る限り、破烈の人形はエンジンに極端な負荷を掛けるGTMである。モーフィング装甲で重量が増えればエンジンの負荷はさらに高まるはずであるが、そのデメリットを考慮してもなお、放熱機能を重視しなければならなかったということだろう。

コミック14巻p208において、ツバンツヒは破烈の人形の放熱問題を最後まで克服することができなかったことを述べていた。おそらく、これ以上のモーフィング装甲の追加は重量が増え過ぎるために不可能と判断したものと思われる。これらの点から察するに、破烈の人形は最大出力・最大戦力での運用に難を残す未完成のGTMということ。量産されなかった理由もこの点にあると思われる。
一方、天照はツイン・エンジン騎の放熱問題をアンクル・クレーンを追加することで解決した。天照とツバンツヒが協力すれば、破烈の人形を上回る超高性能騎が生まれる訳で、その結果がスピード・ミラージュ2種ということになるだろうか。
にしてもまー・・・カッコいいですね。ほんと。
(2019.12.22 修正)


■ エネルギーソード⇒D.B.B. (p218)


黒騎士をホウザイロから遠ざけるため、敢えてテスト騎のデモールを最初に狙うミューズ。戦場全体の状態を把握し、テスト騎を取り巻く枢軸軍の思惑を読み取れていなければできない思考と芸当であり、この一瞬の動きだけでミューズがいかに戦場の空気を支配することに長けているかが読み取れる。カステポーで武者修行した成果ということだろう。ミューズがちゃんと成長してます。

静が云っている「幼い少年」は2995年の時点で一緒にいたヨーンのこと(コミック10巻p102)。「その前」は2930年の初代黒騎士とアルテン・サヤステとの戦いのこと(コミック10巻p104)。ヨーンとアルテン・サヤステがそれぞれ魔導大戦に来ていること、また、ミューズとデコースがそれぞれ幼少時のヨーンと接点を持っていることを考えると、この出会いもまた奇縁と云わざるを得ない。
うーん・・・物語の構図から行くと、デコースとミューズとヨーンの三者が同程度の「重み」を持たされていると思うんですよねぇ・・・ヨーンがこの後で搭乗するGTMがあるとするならば、黒騎士や破烈の人形と並び立つレベルの主役ロボットであって欲しいと思います。旧設定で公開されていたデザインとその公開タイミングを見る限り、ヨーンの搭乗騎はクロス・ミラージュ(=グリット・ブリンガー)になると思われるが・・・もうひとひねり欲しいところ。

p221のミューズのセリフから、サヤステのアドバイスを受けてこの戦場に来たこと、黒騎士が来る可能性も既に予想できていたことが判る。つまり、サヤステはバキン・ラカンが浮足立っていること、そこを狙って枢軸軍が何らかの動きを見せること、さらにバッハトマ軍の本隊が絡む可能性も既に見越していたことになる。その上で、黒騎士と対峙すべき者として国家代表たる法王ミューズを指名したということだろう。
黒騎士との闘いが熾烈を極めることは事前に予測できていたにも関わらず、筆頭騎士のイゾルデではなく敢えてミューズを向かわせた・・・サヤステがミューズに寄せる信頼の大きさ、それに答えるミューズの度量の深さが読み取れるというもの。

そう考えると、ミューズが最大戦力となるD.B.B.を持ち出した理由も見えてくる。
この戦いは「人形使いとして黒騎士を降せるが否か」「法王自身に国家を背負えるだけの度量があるか否か」それを見極める意味合いを含んでいるということ。
ミューズは笑顔で流しているようだが、本質的には絶対に死ねない・負けられない条件をいきなり突き付けられたに等しい。ミューズにとっては余力を残す状況ではない、背水の陣であったと考えるべき。

p222のエストのセリフより。D.B.B.はガット・ブロウにエンジン直結の超強力なプラズマを纏わせ、その攻撃によって敵GTMの装甲を電磁崩壊させる機能をもつとのこと。ガット・ブロウの握把にチャージ用のソケットがあり、騎体右胸から直接プラズマのラインを発してチャージを行うようだ。チャージ時間は0.3秒。刀身にプラズマを纏わせる限界時間は1秒。1秒を超えると過剰エネルギーにより刀身は溶け、GTM本体もオーバーフローで機能停止に陥るらしい。デコースが口にしているとおり、普通に考えてかなりヤバイ武装である。
また、マウザーもこの武装の詳細を把握しているようなので、ツバンツヒが搭乗していた時点で既に実用化されていたということだろう。ファティマがオペレーションを行う現在であればともかく、シン・ファイアの時代にこれだけ繊細な操作を必要とする騎体を作る辺り、ツバンツヒもかなりトリッキーな思考をもつガーランドと云えるのではないだろうか。天照とソリが合うのも納得である。

破烈の人形にエンジン負荷を与えるために動き回らせる作戦に出るデコースと、間合いを取って最低限の動きだけで攻撃を回避しようとするミューズが描かれる。長期戦になればなるほどミューズは不利になると思われるが、エンジン自体は高性能であるため、D.B.B.の使用頻度を減らすことで十分対処できるような気がする。この2騎の戦いが伝説のGTM戦として語られているということは、おそらく長時間に渡って高度な読み合いを続けた戦いがあったということだろう。短時間の戦闘で語り草になるとは思えない。
(2019.01.27)


■ 黒騎士団の撤退 (p227)


エストの説明では、破烈の人形は「超短期決戦型」とのこと。短時間の駆逐戦闘に特化したGTMである。ただし、これはおそらくD.B.B.を装備している状態を指した評価であり、D.B.B.を使用しなければ放熱問題はある程度無視できるはず。エストが100年前に対峙した際と同じ状態であるため、目の前にいる破烈の人形は「超短期決戦型」ということになるが・・・やはり「伝説のGTM戦」が短時間で終わった戦闘とは思えない。この状態で長時間の戦闘を続けたからこそ伝説に謳われたのではないだろうか。
んが、今回はルーン騎士団の本隊とスバース隊も到着したことで黒騎士団は撤退してしまう。なんとも残念。
デコースの予想を超えるサポートを行うことで、エストとデコースの関係が微妙に仲睦まじくなってきたようだ。

ルッセンフリードの「白の婦人」と「赤の婦人」は同一仕様で装甲色とマーキングのみ異なるとのこと。この2種はモーフィング装甲を採用していない。つまり、放熱問題がほぼ存在しない騎体ということになる。おそらく、ルッセンフリードにはD.B.B.が装備されていないのだろう。破烈の人形から最大戦力をオミットし、汎用戦闘に対応できるようにした制式騎ということになる。ツバンツヒが開発した騎体の中では、MK3はナンバー5、MK4はナンバー6となっており、ワスペン・ナンダ・クラック(=ユーゴ・マウザー)が使用するMK2ナンバー7としてグラウオーナが設定されている点を考えると、ルッセンフリードはナンバー8以降のロットナンバーが宛てられている可能性がある。

ついでに、「白の婦人」と「赤の婦人」という名称は、フィルモア系列のGTMと同じく幽霊や妖精から取られたとの設定があったので、再度調べてみた。
「白の婦人」はおそらくドイツのホーエンツォレルン家に纏わる伝承に登場する女性の幽霊「Die Weisse Frau(白い婦人)」から。プラッセンブルク城のほか、ドイツ国内の古城に現れるとされており、この幽霊を見た者には間もなく死が訪れるという。
「赤の婦人」はおそらくバンクーバーの老舗ホテルとして有名なフェアモント・ホテル・バンクーバーに出没すると云われる幽霊「The Lady In Red(赤いドレスの貴婦人)」から。また、フィリピンにも「red lady(赤の婦人)」と呼ばれる女性の幽霊の伝承があるようだ。

ルッセンフリードのデザインが思ったより破烈の人形に近い。細かく見るとほぼ全身のパーツに違いがあるが、各パーツの構成やシルエットなどは近いようだ。
まさに試作騎と制式騎の相違という感じである。
(2019.12.22 修正)


■ マエッセンとアルテン・サヤステ (p228)


謎の老人の正体はアルテン・サヤステ。また、p177で名前が出ていたオドリがマエッセンの母親で、アルテンの弟が興したヴァンブロウ・サヤステ家に嫁入りしていたらしい。つまり、マエッセンはヴァンブロウ家の3代目であり、アルテンから見てマエッセンは又甥、マエッセンから見てアルテンは大叔父ということになる。
ただし、マエッセンは天照王朝中納言のメレトレと幼馴染であり、グリース王立内宮高等学校に通っていた。となると、ヴァンブロウ家に生まれた後でA.K.D.に渡って青年期まで過ごしたか、母親オドリがルーマー王国にいる時期に生まれ、その後で連れ子としてヴァンブロウ家に移った可能性も出てくる。後者の場合、厳密にはサヤステ家の血筋ではないことになるが・・・この辺はなんとも判断しづらい。
(2019.02.01)


■ 考えを改めるヒュードラー博士 (p230)


数多くの名騎とその戦いを目の当たりにしたバルター・ヒュードラーがファティマの認識を改める。今後はファティマ搭載型のデモールを平行して開発することになり、これが後にデモール・タンジェリンとなる。
彼女の製作するGTMに異なる設計思想が入ることで、劇中に新デザインのGTMが登場することになるかも知れない。また、コーネラ帝国に所属するヒト型ファティマはこれまで登場していないため、エレクトロナイツの編成も含めてどのように変わっていくのか楽しみ。
(2019.02.01)


■ ルーン騎士団も戦艦で来ていた (p231)


ルーン騎士団が登場しているシーンで戦艦も来ていたことが判る。
ルッセンフリードはパーフェーンから直接戦場に飛来したのではなく、おそらく途中で戦艦から発進して現場に駆け付けたのだろう。

ミューズ率いるルーン騎士団はギーレルに駐屯しており、ギーレルは旧体制派からの独立を表明している。枢軸軍と対峙している点はスバース隊と共通しているものの、AP騎士団の視点から見てルーン騎士団の腹づもりはいまひとつ不明なはず。ミューズがミノグシア領内(ギーレル国境よりも北側)で戦闘したことについてランドにお詫びしているのは、その点について「少なくとも敵ではない」という意図を含んだ挨拶と思われる。ふたりの会話は穏やかであるが、ミューズは微妙な場所で戦闘展開したことについて、パーフェーンに帰った後でノンナあたりにドヤされる可能性がある。まあ、太閤サヤステの名前を出せば大丈夫か。
また、3075年のハスハ解放作戦では、ミューズ率いるルーン騎士団が旧体制派と足並みを揃えているため、今回の戦闘を機にギーレルと旧体制派のつながりが強まっていくのかも知れない。

p232で静とティスホーンが並んでいる。おそらく姉妹で会話していたものと思われるが、ページの都合でカットされたのだろう。
ミューズとユーゾッタの会話も上記と同様。ユーゾッタは旧体制派のシーゾス王国から派遣されて戦場に降り立ったため、ルーン騎士団に救われたとなると立場上は恰好が付かない状態となっている。
左手の傷は深そうだが、十分再生できるだろうし、彼女も復活して魔導大戦の後半で活躍するのではないだろうか。

ユーゴ・マウザーがツバンツヒの裏切りに気付いたところで15巻は終了。「スプラウト・ソング」のプロローグが終了して次巻から本編に移るようだ。
コミック13巻、14巻、15巻までのエピソードで星団のほぼ全ての列強と主力GTMが登場した。新設定に置き換わってから今後のエピソードを描く下地がやっと全て揃ったことになる。トラン連邦が全く登場していない点が気になるが、おそらくディ・ヨーグンの登場に合わせて絡んでくるのだろう。
(2019.02.01)


■ ル・ゾラとフ・リエ (p243)


巻末の解説でとくに大きな設定変更はない。
パイドパイパーの騎士の半数がラカン騎士団に加わっていたという部分は、本編にあまり絡まない裏設定であろう。

あとは、ル・ゾラの名前がララトゥからホーリンに変わったことぐらい。
ただし、ル・ゾラとフ・リエは「あの人物」を守るためにGTMすら破壊するブリッツェン・パワーを発揮することになるらしい。
つまり、おそらくは詩女マグダルを保護する立場になるということだろう。ふむふむ。次巻以降の展開が楽しみ。
(2019.12.22)
 
 
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