赤い国からの訪問者
第28話
ふと気付くとガンロッカー(押し入れ)の中を覗き込んでいた。

気が付くと何かをしているってことが良くあるのだが、そこに疑問を持つことに何か物凄い危機感を感じるので、気にしないことにしている。
取りあえずガンケースをおもむろに取り出し、中身を出してみた。「β−スペツナズだ!」
そう言えば俺のメインアームでありながら今年まだ1回もゲームに使用していなかった銃だった。
「次のゲームに使ってみるか!」そう思いながらβ−スペツナズをかまっていると、腹もすいていないのに急に赤いラベルのカップうどんが食べたくなってきた。
本当に腹がすいていないのに不思議だ!たまらずお湯を沸かし、カップに注ぎ込み5分待ちフタを開いた。
もう言うまでもないが湯気と共に赤い狐が現れた。「今週土曜日に夜戦があるそうじゃ。」それだけを言い残して、赤い狐は湯気の中に消えていった。「夜戦か!それならこのβ−スペツナズで参加するかな。」
メインアームは決まり、装備品の準備をしようとバッグを見ると既にSEALSの黒装束がバッグの中に入っていた。「奴も参加するつもりなんだな。けど、今回これは俺が使わせてもらう。」今回はSEALS装備にβ−スペツナズで野戦に参加する事にした。

当日、夜戦前にINDIへ寄ってみた。

夜戦に参加する連中がたくさんいるかと思ったが、旭日軍曹が1人居るだけだった。INDIの閉店時間まで旭日軍曹とバカ話をし、8時過ぎにあぶらげヒルへと向かった。
あぶらげヒルに到着する。辺りに街頭も何もないし、あいにくの曇り空で月はおろか、星もまったく見えない。「これなら黒装束でなくてもフィールド内では敵に見つかりにくいだろうな。」
案の定、フィールド内は駐車場より更に暗く、近くの味方の姿すらほとんど見えない。唯一の確認手段は、背中につけるサイリュウムだけである。ぼちぼち参加者が集まってきたので夜戦開始かと思いきや、バーベキューが始まった。
腹が減っては戦は出来ぬ!ってやつだ。各自持ち寄った食材を各々が焼き、食べる。
俺は何も持ってこなかったのだが、山ほど食材を持ってきた人がいたので、少し分けてもらう事が出来た。取りあえず1回目の焼きが終了し、参加者の腹が程よく膨れたところで夜戦開始となった。
この夜戦のルールは、いつもの通常戦とは違い攻撃、防衛という風に組み分けをする。攻撃側は奥からスタートし、セイフティーゾーンを落とすか防衛側を全滅させると勝ちとなり、防衛側は攻撃側を全滅させると勝ちとなる。今回は参加者が10人だったので攻撃側7人、防衛側3人という形で行なわれた。

1ゲーム目は夜戦のエキスパート3人が防衛側になった。しかし、ゲーム内容は攻守まったく逆で、攻め上がれない攻撃側に対し、積極的な動きで防衛側が無傷で攻撃側を全滅させた。
匍匐では背中のサイリュウムが丸見えになってしまうし、真っ暗で足元もよく見えないために縁を移動するのも厳しい。敵のサイリュウムが見えていても距離感覚が掴み辛いせいか、サイトが合っていないのか撃ってもなかなか当たらない。
この日の夜戦では相当苦戦した。ひとつ思ったことは、積極的に味方と連携して動くのがベストであるということ。3方向から攻めあがると、どこからかはサイリュウムが見えてしまうので狙撃されてしまう。サイリュウム丸見えで動いていなければまずやられてしまうのだ。
連携下手なツンドラの一匹狼である俺は、今後も夜戦には苦戦を強いられる事だろうが、また次回があったら参加するつもりだ。久々に俺の瞳にツンドラの炎が燈った。