(戻る)

ワルターの録音(1958年)


○1958年1月6日、8日

ベートーヴェン:交響曲第2番

コロンビア交響楽団
(ハリウッド、アメリカン・レジオン・ホール、米CBS・スタジオ録音)

コロンビア響はやや高弦の線が強い感じで・響きにもう少し潤いが欲しいと思いますが、ワルターのテンポ設計はこの曲の古典的な格調を感じさ、余計な力みがない自然な表情が魅力的です。第1楽章も素晴らしいですが、特に感心させられるのは第2楽章で・最初はちょっと遅めにも感じられますが、その落ち着いた佇まい・しっとりとした美しさが心に沁みます。この第2楽章が後半に生きてきます。後半2楽章も表情が生き生きしています。テンポをせき立てることなく、音楽が落ち着いているのです。いかにも大家の芸という感じです。


○1958年1月13日、15日、17日

ベートーヴェン:交響曲第6番「田園」

コロンビア交響楽団
(ハリウッド、アメリカン・レジオン・ホール、米CBS・スタジオ録音)

ワルターの「田園」は、永い間、この曲の理想的名演と言われてきましたが、今聴いてもこの演奏はみずみずして、まったく古さを感じさせません。旋律の歌いまわしはワルターらしくよく歌う演奏で、無理な力が入ることなく・自然に音楽が流れていきます。第1楽章と第2楽章は心持ち早めのテンポに感じられますが、ワルターはことさらに自然描写を心掛けることなく・淡々を曲を進めており、むしろ純音楽的表現と言えるような感じですが、これも大変に好ましく思えます。コロンビア響の響きはやや明るめで、微妙な歌いまわしではこれがウイーン・フィルだったらと思う場面もなくはありませんが、大きな不満はありません。第5楽章の自然への喜びと感謝の表現も大げさではなく・サラリとした味わいで、聴いた後の印象は実にさわやかです。


○1958年2月8日・10日

ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」

コロンビア交響楽団
(ハリウッド、アメリカン・レジオン・ホール、米CBS・スタジオ録音)

スケールが大きい名演だと思います。無理な力が入らず、それでいて器の大きさが自然ににじみでるという感じです。コロンビア響の高弦が力強く、旋律をしなやかに歌い上げています。第1楽章は早めのリズムの持つ推進力を前面に押し出しながらも、それを力任せに感じさせません。冒頭の運命の動機など第4音をグーッと長く引き伸ばす大見得をいれてくるのですが、これがぴったりと決まります。第2楽章は勢いのある第1楽章を受けて、これを鎮静するかのような落ち着きのある足取り。第3楽章はややテンポを速めて、心持ち重めでスケールの大きい第4楽章へなだれ込んで行きます。この四つの楽章のテンポ設計も見事です。


○1958年3月3日

シューベルト:交響曲第8番「未完成」

ニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団
(ニューヨーク、セント・ジョージ・ホテル、米CBS・スタジオ録音)

第1楽章は心持ち早めのテンポで、比較的思い入れの少ない引き締まった表現です。ワルターだから「厳しい」という言い方は当てにくいですが、造形に無駄がなく甘さの少ない古典的な表現です。第2楽章はやや遅めのテンポでゆったりと流れるように進めます。全曲を通してスケールの大きさがあって巨匠的な表現の演奏だと思いました。ニューヨーク・フィルはワルターの意図をよく体現していると思いますが、欲を言えば弦の響きにもう少し柔らかさが欲しいところです。


○1958年11月27日・30日

ベートーヴェン:交響曲第4番

コロンビア交響楽団
(ハリウッド、アメリカン・レジオン・ホール、米CBS・スタジオ録音)

今でも色褪せることのない名演だと思います。四つの楽章のバランスが実によく、生き生きした表情としなやかで力強い旋律の歌わせ方。無理な力が入っておらずスケールの大きさが自然と出ています。コロンビア響の高弦の力強く斬れの良い動きが利いてります。特に前半の2楽章は文句のつけようないほど素晴らしいと思います。第1楽章は表情が生き生きとしていて、序奏から展開部への移行などめくるめく輝きを感じさせます。第2楽章はスケールの大きい滔々とした流れのなかにもキリット引き締まった表情を見せます。第3楽章は軽めに仕上げて第4楽章へ続ける設計も効いています。リズムを前面に押し出しながら力で押すところがまったくなく、自然に器の大きさが出るのはまさに大家の芸です。


(戻る)