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ムーティの録音 (1990年〜99年)


○1990年ライヴ

R.シュトラウス:交響的幻想曲「イタリアから」・作品16

フィラデルフィア管弦楽団
(フランクフルト、アルテ・オーパー)

フィラデルフィア管の響きは透明ななかに・どこか柔らかい感じがあって、それがこの演奏にロマンティックな印象を与えています。R.シュトラウスの若書きの作品で曲自体は冗長なところがないとは言えませんが、ムーティは響きを大事に流麗に進めて、飽きさせません。第3楽章「ソレントの海岸にて」ではオケの明るい響きがよく生きています。第4楽章「ナポリ人の生活」はリズムも活気があって、ダイナミックに締めました。


○1991年7月28日ライヴー1

モーツアルト:ディヴェルティメント・ニ長調・K136

ウイーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ザルツブルク、ザルツブルク祝祭大劇場)

モーツアルト没後200年の年のオープニング・コンサートです。第1楽章はテンポを軽やかに取った演奏です。ウイーン・フィルの弦の優美さが印象的で、旋律がしなやかにしっとりと歌い上げられます。力任せのところがなくて、肩に力をいれずに・ウイーン・フィルの作り出す流れに身を任せたような指揮ぶりは見事です。第2楽章はテンポを遅くして甘ったるく演奏する指揮者が多いのですが、ムーティは早めのテンポで・余計な甘みを殺したのはさすがです。第3楽章も躍動感あふれる演奏で、聴いた後さわやかな印象の残る素晴らしいモーツアルトでした。


○1991年7月28日ライヴー2

モーツアルト:交響曲第40番

ウイーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ザルツブルク、ザルツブルク祝祭大劇場)

ウイーン・フィルの自発性をよく生かした・いい演奏になりました。特に両端楽章が成功しています。テンポ設定がよく、この曲の古典的なたたずまいをよく表現しています。とかく甘めに料理しがちな曲ですが、第2楽章などちょっと武骨に聴こえそうなほど旋律を淡々と処理して旋律そのものが持つ味わいをすっきりと表現しようとしています。第4楽章は早めのテンポで甘みを抑えた厳しい表現です。それでいて中間部の木管が何とやさしく響くことか。


○1991年7月28日ライヴー3

モーツアルト:交響曲第41番「ジュピター」

ウイーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ザルツブルク、ザルツブルク祝祭大劇場)

モーツアルト没後200年記念の年のザルツブルク音楽祭のオープニング・コンサートですが、それにふさわしい充実したモーツアルトです。テンポ設計が良くて、この曲の古典的均整美を感じさせる格調高い演奏に仕上がっています。ムーティは強引にオケを引っ張ることをせず・ウイーンフィルの自発性を生かしながら・要所を締めています。第2楽章はとかく甘い表現になりがちですが、甘さを殺して・流れるような表現です。素晴らしいのは両端楽章で、リズムに生気があって・表情が実にみずみずしく感じられます。ウイーン・フィルの弦は艶やかで・伸びのある旋律の歌いまわしと、柔らかく・優美なアンサンブルが魅力的です。


○1994年1月8日ライヴー1

ベートーヴェン:「エグモント」序曲

ウイーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ウイーン、ウイーン楽友協会大ホール)

いかにも「オーソドックスな出来で・テンポ設定も良く・造形的には申し分ないのですが、聴き終わっていまひとつ聴き応えがしないのは、リズムの刻みがちょっと不足で・音楽がサラサラ流れるためかも知れません。スマートなのですが、音楽的に心に引っ掛かって来ない感じです。冒頭部ではもっとタメの効いた響きを聴きたいと思います。


○1994年1月8日ライヴー2

ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」

ウイーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ウイーン、ウイーン楽友協会大ホール)

同日の「エグモント」同様にテンポ設計は申し分なく・造形的にも立派なベートーヴェンなのですが、どうも聴き応えがいまひとつです。リズムが完全に打ち切れておらず・音楽がサラサラ流れる感じなのです。さっそうとして・スマートな印象なのですが、どこか力動感に不足するのです。ムーティの場合はせかせかした感じがないのは良いのですが、もうちょっと音楽が豊かに流れて欲しいと言う気がします。第1楽章の冒頭など・ここぞと言う時に音にタメがなくて、ダイナミクスが小さくなるのは惜しいと思います。しかし、曲が進むにつれて音楽は熱さを帯び、第4楽章はなかなか締まった演奏を聞かせます。


○1994年5月13日〜21日ライヴ

ヴェルディ:歌劇「リゴレット」

ロベルト・アラーニャ(マントヴァ公爵)、レナート・ブルソン(リゴレット)、アンドレア・ロスト(ジルダ)、ディミトリ・カヴラコス(スパラフチレ)、マリアナ・ペンチェーヴァ(マッダレーナ)他ミラノ・スカラ座管弦楽団・合唱団
(ミラノ、ミラノ・スカラ座、ソニー・クラシカル・ライヴ録音)

ムーティはテンポを速めにとって・リズムをキビキビと刻んだダイナミックな演奏を展開しています。スカラ座のオーケストラの弦の響きが力強く・輝くように魅力的です。旋律の息の流れを重視して・小気味良いなかにもどこか粘りが感じられるのが、ムーティの特徴のようです。ここでのキャストはドラマ重視のようで・マントヴァ公爵もよくあるようなアッケラカンと能天気に明るいキャラではありません。アラーニャのマントヴァ公爵はどこか暗さと言うか真面目さを秘めていて・その本人なりの真実がそこにあるという感じなのです。この人物設定はなかなか悪くないと思います。それでないとジルダの死が救われないような気がします。ロストのジルダも暗めの音色で・ちょっと年増風の感じもしますが、アリア「慕わしい人の名は」は情感こもった名唱だと思います。ブルゾンのリゴレットも素晴らしい出来です。気迫のこもったアリア「悪魔め、鬼め」も素晴らしいと思いますし、娘への情愛が感じられる歌唱です。


○1994年9月11日ライヴ

ブルックナー:交響曲第7番

ウイーン・フィルハーモニー管弦楽団
(リンツ、ブルックナー・ザール)

ノヴァーク版による演奏。テンポはインテンポではなく、微妙に緩急をつけて・表現にメリハリをつけていますが、作為的にテンポを揺らさないので・変化はあまり目立ちません。第1・第2楽章などウイーン・フィルの響きがスッキリと整理されて旋律線を大事にしていると感じられます。ある意味で聴き易い演奏だと思います。しかし、一方で悠揚迫らざる荘厳な雰囲気にはちょっと欠ける感じもあります。同じリズムを執拗に繰り返すなかで・聴き手のなかのイメージが少しづつ膨れ上がっていくのがブルックナーであると思いますが、ここではそれが単なるパッセージの繰り返しに過ぎないように感じられます。細部の表現にこだわり・全体の大きな部分を取りこぼしたような感じがあって、聴いていてさほど不満を感じないのですが、聴き終わって見ると充足感がいまひとつと感じられるのです。しかし、宗教的な荘厳さより・叙情的な美しさに置いた演奏であるならばこれも良しです。


○1995年4月30日ライヴー1

マーラー:リュッケルトの詩による5つの歌曲

ジェニファー・ラルモア(アルト)
ウイーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ウイーン、ウイーン楽友協会大ホール)

米国出身の新進ラルモアはたっぷりした質感ある声が魅力的です。第1曲「私はほのかない香りをかいだ」も素敵な出来ですが、第4曲「真夜中に」がスケールが大きく・見事な歌唱です。一方、第3曲「私の歌を覗き見しないで」はちょっと歌唱が大柄な感じがします。ムーティの指揮はテンポをゆったりと取って・歌手を手堅くサポートしています。


○1995年4月30日ライヴー2

マーラー:交響曲第4番

バーバラ・ボニー(ソプラノ)
ウイーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ウイーン、ウイーン楽友協会大ホール)

全体を早めのテンポで通した演奏です。サラリとした感覚で・旋律を粘らず流れるように美しく演奏しており、耳当たりが良い感じがします。両端楽章は早めのテンポでメルヒェン的な世界を描き出して心地良く感じられます。ウイーン・フィルは透明で柔らかい響きで聞かせます。バーバラ・ボニーの歌唱は澄んだ美しさが魅力的で、天上の世界にふさわしい清らかさを湛えています。この第4楽章が素晴らしいと思います。問題は第2・第3楽章にありそうです。本来これら中間楽章は結構重いものなのですが、ムーティはこれを難なくサラリと仕上げています。第2楽章のアイロニカルな味わい、第3楽章における沈滞するロマンティシズムのなかにマーラーの屈折した感性が見えるわけですが、ムーティはその辺をキレイにまとめすぎているよう で・マーラーの毒気にちょっと乏しいようです。


○1995年5月23日ライヴ

オルフ:世俗カンタータ「カルミナ・ブラーナ」

エレナ・プリロヴァ(ソプラノ)、リチャード・ボーダス(テノール)
アントニー・マイケルムーア(バリトン)
ミラノ・スカラ座合唱団
スカラ・フィルハーモニー管弦楽団
(ミラノ、ミラノ・スカラ座)

合唱・管弦楽ともにかなりの大編成で、これは確かに迫力はありますが、リズムが重めになり・音楽が大柄に聴こえます。これがオルフの音楽の粗野で力強い印象を削いでいるように感じられます。もうひとつの不満はムーティが変拍子を巧く処理できておらす音楽の柄が太めで単調に感じられる箇所があります。特に管弦楽だけの輪舞であるとか・合唱を伴う円舞曲などに不満を感じます。中世民衆の生きいきした表情がいまひとつ伝わってきません。独唱陣はなかなか健闘しています。


○1995年8月5日ライヴ

ヴェルディ:歌劇「椿姫」

アンドレア・ロスト(ヴィオレッタ)、フランク・ロバート(アルフレート)、レナート・ブルソン(ジェルモン)、ニコレッタ・サニー二(フローラ)他
ウイーン・フィルハーモニー管弦楽団
ウイーン国立歌劇場合唱団
(ザルツブルク、ザルツブルク祝祭大劇場)

ムーティはテンポを心持ちゆっくりめに取って・旋律を伸びやかに歌わせています。ウイーン・フィルの音色がイタリアのオケよりは暗めで柔らかいこともありますが、第1幕でもリズムをキビキビ取って華やかさを強調するのではなく、むしろこれを極力抑えて・第1幕フィナーレの心理描写に重点を持っていこうとしているようです。印象的なのはウイーン・フィルの弦の柔らかく繊細なことです。ヴィオレッタを歌うブルガリア出身の新進ロストは声は美しいですが、歌唱はまだまだ心理の掘り下げが浅くて・表面的な綺麗に留まっているようです。 第2幕第1場のジェルモンとの二重唱も哀切さがいまひとつ。一方、アルフレート役のロバートは声はどちらかと言えばバリトンに近く暗めの声で・どこか分別臭い感じがして・若さの持つ甘さをちょっと感じにくい感じでもあり、ジェルモン役のブルソンの明るめの声とのバランスがあまり良くない感じがします。 ムーティの指揮は見事だと思います。内面的なドラマを見事なサポートで歌手を大きく包み込み聴かせます。


○1995年8月15日ライヴー1

シューマン:交響曲第4番

ウイーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ザルツブルク、ザルツブルク祝祭大劇場)

ムーティは微妙にテンポを伸縮させていますが、全体的にテンポは遅めであり、オーソドックスな表現を目指しているようでおとなしい感じがあって、もっと締りと冴えがある表現の方がムーティらしいのにと思うところがあります。印象としてはやや重めで、旋律が粘る感じです。ウイーン・フィルの重厚な響きを生かして、濃厚なロマンティズムを表出させています。第4楽章はテンポの変化が大きいようで、冒頭部のテンポが特に早いですが、この変化が全体のなかで浮き上がった印象でちょっと残念です。


○1995年8月15日ライヴー2

ショスタコービッチ:交響曲第5番

ウイーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ザルツブルク、ザルツブルク祝祭大劇場)

ウイーン・フィルにとってはこの曲は親しいものでないと思いますが、力がこもった演奏に仕上がっています。むしろ親しい曲でないことがウイーン・フィルに緊張感を与えているようで、前プロのシューマンよりはるかに引き締まった感じに聴こえます。もちろんウイーン・フィルですから、この曲が持つ鋭敏な感性・刺激的な音色が、マイルドに出るところがあります。その点でオーソドックスに古典化したショスタコービッチなのです。ムーティはテンポを速めに取って、一気に効かせます。緊張感がある前半の2楽章の出来が良いです。特にマーラーのスケルツオに似た感触の第2楽章に、ウイーン・フィルらしさが出ています。第4楽章もダイナミックで、聴き手を巻き込む熱気に溢れていますが、もう少し音を引っ張れば切迫感が増すと思うところで緊張感が持ちきれないで、やや淡白な表現になっているところがあります。


○1995年9月13日ライヴ−1

ベートーヴェン:「エグモント」序曲

ミラノ・スカラ座フィルハーモニー管弦楽団
(東京、東急文化村オーチャード・ホール)

全体にテンポはゆったりして遅めで、スケールの大きい演奏です。冒頭部分の全奏の気合いが物足りないですが、曲が進むにうれて熱気を帯びてきて・中間部からは締まりのある演奏を展開しています。


○1995年9月13日ライヴー2

ベートーヴェン:交響曲第4番

ミラノ・スカラ座フィルハーモニー管弦楽団
(東京、東急文化村オーチャード・ホール)

テンポはゆったりと余裕のある歌い回しで、無理な力を入れず・自然な音楽作りです。四つの楽章のバランスが取れており、オーソドックスな安心して聴ける演奏です。スカラ座フィルは重量感にはやや乏しいところはありますが・明るく張りのある音色はこの曲にふさわしく、特に前半2楽章は好演だと思います。第4楽章も最近は快速で飛ばすような演奏が多いですが、テンポをしっかり抑えた落ち着きのある出来なのも好感が持てます。


○1995年9月13日ライヴー3

エルガー:序曲「南国で」

ラノ・スカラ座フィルハーモニー管弦楽団
(東京、東急文化村オーチャード・ホール)

珍しい曲ですが、エリがーがイタリアに滞在していた時の印象を曲にしたもので、南国的な明るさと活気に満ちています。オケもリズム感鋭く、色彩的な演奏を展開しています。


○1995年9月13日ライヴー4

ラヴェル:ボレロ

ラノ・スカラ座フィルハーモニー管弦楽団
(東京、東急文化村オーチャード・ホール)

テンポはやや早めで、スカラ座のオケの明るい音色と斬れの良いリズムで、さっそうとして見事なボレロになっています。オケの響きが透明で、管楽器がよく抜けて聞こえます。クライマックスへの盛り上げもうまく、スケールも十分です。


○1995年9月13日ライヴー5

ヴェルデイ:歌劇「運命の力」序曲

ラノ・スカラ座フィルハーモニー管弦楽団
(東京、東急文化村オーチャード・ホール)

当日のアンコール曲。テンポをゆっくりと取って、余裕を以って旋律をしなやかに歌い上げています。お国物ですからもちろん見事なものですが、リズムを強調して聴衆を煽るようなところはなく、むしろ冷静にコンサート・ピースとして割り切った演奏であるようです。叙情的な弦の旋律の歌い回しがしみじみとしています。


○1995年10月8日ライヴ−1

パガニーニ:ヴァイオリン協奏曲第4番

ギドン・クレーメル(ヴァイオリン)
ウイーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ウイーン、ウイーン楽友協会大ホール)

第1楽章はヴェルディ初期のオペラを想わせる様な簡素で力強さで聞かせます。ムーティの史気はリズム感がよく、イタリアの太陽の明るさがあり・聴き応えがあります。第3楽章で聴かせるクレーメルのテクニックは見事なものですが、音色としてはちょっと硬質で・線が細い気がします。第2楽章は音色にいま少し潤いが欲しい気がします。


○1995年10月8日ライヴ−2

シューマン:交響曲第2番

ウイーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ウイーン、ウイーン楽友協会大ホール)

ドイツ系指揮者は4番を好み・非ドイツ系指揮者は2番を好む傾向があるようにも思えますが、表現が外に向けて開放されているようで・構成が緊密とは言えないこの曲では、ムーティのイタリア的感性が良い面に働いていると思います。中間楽章の出来が良く、特に第2楽章スケルツォは早めのテンポでキビキビと曲を押し進めて、いかにもムーティらしい溌剌とした魅力的な表現です。一転して第3楽章はゆったりとしたテンポで、旋律をじっくりと情感たっぷりに歌い上げています。ここではウイーン・フィルの弦の美しさがものを言っています。リズムが粘らず、イタリア的な明るい太陽に照らし出されているように曲のイメージが鮮明に浮かび上がります。第1楽章も同じことが言えます。要所をキリリと締めて、ムーティのうまさが光ります。


○1996年7月ライヴ

マスカーニ:歌劇「カヴァレリア・ルステカーナ」

ワルトラウト・マイヤー(サントゥッツァ)、ホセ・クーラ(トゥリッドゥ)
アンア・マリア・ディ・ミッコ(ローラ)、パオロ・カヴァネルリ(アルフィオ)
ティツィアーナ・トラモンディ(ルチア)
ボローニャ市立歌劇場管弦楽団・合唱団
(ラヴェンナ、アリギエーリ劇場、ラヴェンナ音楽祭)

まずムーティの指揮が力強く・彫りの深い造形を聞かせて、凝縮した熱いドラマを感じさせてくれて・なかなか見事です。リズムの振幅を大きく付けて、旋律をしなやかに歌わせて一気に聴かせます。マイヤーのサントゥッツァはやや絶叫調、クーラは声の張りが素晴らしいがやや英雄調。二重唱はなかなかドラマティックですが、ややヴェりズモからは離れた感じです。


○1996年8月3日ライヴー1

ベートーヴェン:エグモント序曲

ウイーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ザルツブルク、ザルツブルク祝祭大劇場)

ウイーン・フィルの音色は重厚で・リズムが重めの感じです。曲の劇的要素をよく生かして・オペラ序曲風に演奏したようで、なかなか面白く聴きました。


○1996年8月3日ライヴー2

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番

ラドゥ・ルプー(ピアノ独奏)
ウイーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ザルツブルク、ザルツブルク祝祭大劇場)

ルプーのピアノはベートーヴェンとしてはちょっと線が細い感じですが、タッチの粒がそろっており・音色が透明なのがルプーの魅力で、この曲にはそれが似合っています。第1楽章は最初のうちはエンジンが暖まっていない感じであるが、次第に音楽に活気が出てきて・第2楽章以降はその叙情性を生かして好感が持てます。第3楽章はリズムが快適で・小気味が良く、ムーテイの伴奏とも息がよく合って・音楽する喜びにあふれています。


○1996年8月3日ライヴー3

ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」

ウイーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ザルツブルク、ザルツブルク祝祭大劇場)

構成ががっちりした正統的とも言える演奏で、いかにもベートーヴェンらしい演奏です。冒頭の運命の動機からして気合いが入り、響きの色合いもさすがウイーン・フィルです。テンポは心持ち遅めで・リズムの勢いで聴かせるというよりは音を積み上げていくという感じで、これは最近聴いた「運命」のなかでも「らしい」という点でこれほどはまる演奏も珍しいと思います。これならばウイーン・フィルのムーテイの評価が高いのも納得できます。同じことは堂々たるゴシック建築を想わせるような重厚な最終楽章も見事ですが、中間2楽章も軽くなることなく・しっかりとした重みと味わいを持っていて優れていると思います。


○1998年2月22日ライヴ

ブラームス:交響曲第2番

ウイーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ウイーン、ウイーン楽友協会大ホール)

ウイーン・フィルは重心の低い渋めの音色ですが、そのなかに柔らかさがあって魅力的です。この交響曲の歌謡性をよく生かした演奏で、旋律がじっくりと息長く歌われて、しなやかで美しい演奏に仕上がっていると思います。特にウイーン・フィルの弦の魅力が、中間第2・3楽章によく生かされて、ゆったりと落ち着いた味わいがします。ムーティはウイーン・フィルの自発性を生かしながらも、要所はしっかり締めて、聴き応えのある演奏になりました。第4楽章もダイナミックに締めています。


○1998年8月19日ライヴ−1

プロコフィエフ:交響曲第1番「古典」

ウイーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ザルツブルク、ザルツブルク祝祭大劇場)

ムーティはリズムをきっちりと明確にとって早めのテンポで演奏していますが、機能主義的な印象を与えないのは、リズムを鋭角的に取らず丸く取るウイーン・フィルの特性にもよるのでしょう。オケの編成もやや大きめのようで・響きが厚めで・低音が効いており、新古典主義的というより・ロマンティックに傾いた印象です。第4楽章がオケの躍動感を楽しめて・面白いところです。


○1998年8月19日ライヴー2

チャイコフスキー:マンフレッド交響曲

ウイーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ザルツブルク、ザルツブルク祝祭大劇場)

チャイコフスキーの交響詩的な標題音楽を色彩的・かつダイナミックなオーケストラの動きを堪能させます。ムーティらしい熱気を感じさせて、これに応えるウイーン・フィルもなかなか気合いが入っています。オケは濃厚な色彩で・弦は力強く引き締まっています。全曲に通じて緊張感が漲っていますが、特に第1楽章はテンポを遅くとって濃厚な色彩を生かしていて聞かせます。第4楽章も鋭敏なリズム処理が見事です。


○1998年10月5日ライヴ

レスピーギ:交響詩「ローマの松」

フィラデルフィア管弦楽団
(フィラデルフィア、アカデミー・オブ・ミュージック)

「ボルゲーゼ荘の松」冒頭の明るい響きも、フィラデルフィア管の場合はどこかマイルドですが、それがこの曲に独特の味わいを与えています。「アッピア街道の松」のオケの重量感あるダイナミックな動きは素晴らしく、終演後の聴衆はかなり反応しています。


○1999年3月7日ライヴー1

シューベルト:交響曲第3番

ウイーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ウイーン、ウイーン楽友協会大ホール)

ムーティらしいスタイリッシュな、早いテンポの流麗な演奏です。両端楽章では、リズムが生き生きして生気のある演奏を聴かせます。特に弦の表情が生きています。しかし、反面、テンポが速すぎでシューベルトの若書きの素朴な雰囲気が消し飛んでいることも否めません。両端楽章でも、力任せとまでは行かないが、機能性が前面に出ている感じで、これをどう評価するかというところでしょうが、曲よりはムーティを聴く感じであるとは言えます。


○1999年3月7日ライヴ−2

チャイコフスキー:マンフレッド交響曲

ウイーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ウイーン、ウイーン楽友協会大ホール)

色彩感あって・スケールが大きい演奏です。第1楽章はゆっくりとして息長く旋律を歌い上げ、濃厚なロマンティシムズを感じさせます・長大な交響詩とも言える曲で・構成的には冗長なところもある曲ですが、展開する絵巻物のような大きな流れを大切にして・緊張感が途切れることなく手堅くまとめています。速いテンポの第4楽章前半は弦の表情がちょっと柔らか過ぎで・悪魔的な凄みに不足の感もありますが、後半はゆったりした音楽の流れがスケール大きく聴かせます。


○1999年7月1日ライヴ

ヴェルディ:レクイエム

バーバラ・フィリットリ(ソプラノ)、ヴィオレッタ・ウルマーナ(メゾソプラノ)
ヴィンツェンツォ・ラスコーナ(テノール)、ジャコモ・ブレスティア(バス)
ミラノ・スカラ座管弦楽団・合唱団
(エルサレム、スルタン浴場、ラヴェンナ音楽祭)

野外コンサートせいか表現に若干大柄で粗いところがなくはないですが、ムーティらしい線の太い・ドラマティックな表現で聴かせます。「怒りの日」など力強い表現で、ムーティは大きくテンポを動かしてドラマティックな設計をしています。独唱ではフリットリが高音の張り・輝きが素晴らしく、繊細な感情表現を聴かせます。ラスコーナはイタリアのテナーらしい伸びやかさがありますが、やや歌唱に力任せの感じがあります。独唱陣はしっくり溶け合う感じではありません。合唱はとても素晴らしい出来です。


 

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