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カラヤンの録音(1983年1月〜6月)


1983年2月16日・17日−1

ブラームス:悲劇的序曲

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン、ベルリン・フィルハーモニー・ホール、DGスタジオ録音)

ブラームスの分厚い響きを濁らせることなく・透明な美しい響きで、作品の構造を写真でも見るようにスッキリと見渡せることのできる ような明晰さのある演奏です。内に凝縮していく力というよりは、外に向かって開放される力を感じさせます。これは録音の操作によるところも多少あるかも知れません。重々しさを意識的に避けているような響きです。カラヤンの実演とはちょっと印象が違う気もしますが、しかし、こうした響きはカラヤンの基本コンセプトにあるもののように感じられます。特に第2主題はしみじみとして味わい深い と思います。


○1983年2月16日・17日−2

ブラームス:ハイドンの主題による変奏曲

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン、ベルリン・フィルハーモニー・ホール、DGスタジオ録音)

テンポをやや遅めにとって・余分な力を入れない自然体のなかに・スケールの大きさと余裕がおのずから生まれてきます。各変奏の特徴をよく生かし、曲の展開がまるでパノラマを見るような面白さです。第7変奏でのベルリン・フィルの合奏力もさることながら、ソリストたちの演奏がニュアンス豊か。第8変奏の息深いじっくりした味わいなど、聴くべきところが多い演奏です。


○1983年2月16日・17日ー3

ブラームス:ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲

アンネ・ゾフィー・ムター(ヴァイオリン)
アントニオ・メネセス(チェロ)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン、ベルリン・フィルハーモニー・ホール、DGスタジオ録音)

ベルリン・フィルの響きが豊穣で・開放感のあるスケールの大きい音楽空間を作り出しています。それはカラヤンが息の深いフレージングの奥義を若い音楽家に伝授しようとしているようにも感じられます。ムターとメネセスはそれに応えて力一杯の演奏を繰り広げます。ムターのヴァイオリンは若干線が硬いように感じられますが、メネセスの演奏はなかなか雄弁です。特に第1楽章が熱い出来で、カラヤンは最終音を長く引っ張って・かなり気合いが入っている感じです。


○1983年2月18日・19日、11月16日

R・シュトラウス:交響詩「ツァラトストラはかく語りき」

トマス・ブランディス(ヴァイオリン)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン・フィルハーモニー・ホール、DGスタジオ録音)

ベルリン・フィルの豊穣な響きはもちろんのことですが、聴き直してみるとテンポ早めで武骨な感触に思えました。旋律の歌い方も直線的で力強い感じがします。表面を磨きあげたということではなく・一本芯が通った響きで、これが本物のシュトラウスの音だという気がします。カラヤンの演奏は晩年に至って余裕と深みがさらに増した感じです。フォルムの締め付けを若干緩めて・オケの表現に自由さを与えています。音楽はロマンティックに流れることがなく、みしろサラリとした感触ながら、「大いなる憧れについて」では旋律の息の長い歌いまわしなど実に素晴らしいと思います。ブランディスのソロも響きが美しく、説得力があります。


○1983年5月4日〜8日

ブラームス:ドイツ・レクイエム

バーバラ・ヘンドリックス(ソプラノ)
ホセ・ファン・ダム(バリトン)
ウイーン楽友協会合唱団
ウイーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ウイーン、ウイーン楽友協会大ホール、独グラモフォン・スタジオ録音)

冒頭から深みのある響きで、力のこもった素晴らしい演奏に仕上がりました。落ち着いたテンポで、しっかりした足取りの音楽です。特に第2曲「人はみな草の如く」と第6曲「この机上に永遠の都はない」はスケールが大きく・劇的な作りで感動させられます。合唱も渾身の熱唱を聞かせます。こうした宗教合唱曲でカラヤンの劇的構成力が優れているのは言うまでもないですが、音楽の展開に併せてリズム・テンポ処理が絶妙で、聴き終わった後の充実感があります。ヘンドリックスの透明な声が実に美しく、ファン・ダムも落ち着いた歌唱で説得力があります。


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