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カラヤンの録音(1972年7月〜12月)


○1972年8月13日ライヴ-1

バルトーク:ピアノ協奏曲第3番

ゲザ・アンダ(ピアノ独奏)
ドレスデン国立管弦楽団
(ザルツブルク、ザルツブルク祝祭大劇場、ザルツブルク音楽祭)

アンダのピアノのタッチは冷たくクリスタルで、バルトークにぴったりの感じです。カラヤンの指揮は第1楽章開始部のミステリアスな雰囲気、第3楽章のリズム主体のキビキビしたオケの動きが聴きものです。


○1972年8月13日ライヴー2

シューマン:交響曲第4番

ドレスデン国立管弦楽団
(ザルツブルク、ザルツブルク祝祭大劇場、ザルツブルク音楽祭)

珍しいドレスデン・シュターツカペレとの組み合わせで、名門オケとがっぷり四つに組んだ演奏が聞かれます。第1楽章の決めどころでカラヤンのうなり声も聞こえ、その力の入り具合がうかがわれます。弦の引き締まった透明な響きはベルリン・フィルの暗めの響きとまた違った魅力があり、安定した演奏を繰り広げます。特に前半2楽章が熱演で、早いテンポでせきたてるように曲を進めながら・リズムは完全に打ち込まれているのはさずがです。濃厚なロマン絵巻を一気に描き抜いたような迫力があります。表現が引き締まって無駄がありません。後半はややテンポを落としています。第3楽章から第4楽章への移行にやや思い入れあって・一気にフィナーレに突入していく感じで大きく盛り上がります。観客はかなり反応しています。同時期のベルリン・フィルとの演奏と比べても甲乙付け難い出来だと思います。


○1972年9月ライヴ

モーツアルト:ヴァイオリン協奏曲第5番「トルコ風」

ダヴィッド・オイストラフ(ヴァイオリン)
ヨーロッパ青少年管弦楽団
(ベルリン)

まず聴き物はオイストラフのヴァイオリンの素晴らしさ。引き締まった音色の艶やかさと、第1楽章で聴かれる音楽の持つ気品の高さ・第3楽章で聴かれる自然な音楽の恰幅の良さです。カラヤンはしっかりと手堅いサポートで、オイストラフとの息の合ったところを見せます。オケは学生オケですからリズムの立ち上がり・響きの柔らかさなどに不満はないことはありませんが、素直さと若々しさを感じさせます。特に第1楽章は好感が持てます。


○1972年9月21日〜27日

フランク:交響変奏曲

アレクシス・ワイセンベルク(ピアノ独奏)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン、イエス・キリスト教会、EIMIスタジオ録音)

テンポ早めにして、情念を内に凝縮したような密度の高さで、その厳しさを秘めた古典的な造型のなかに煮えたぎるロマンの熱気が伝わってきます。ワイセンベルクの透明度の高いピアノの響きが、ベルリン・フィルの暗めの響きのなかで煌めくように聴こえます。


○1972年10月、1973年3月22日

プッチーニ:歌劇「ラ・ボエーム」

ミレルッラ・フレーニ(ミミ)/ルチアーノ・パヴァロッティ(ロドルフォ)
エリザベス・ハーウッド(ムゼッタ)/ローランド・パネライ(マルチェルロ)
ニコライ・ギャウロフ(コルリーネ)/ジャンニ・マッフェオ(ショナール)
ベルリン・ドイツ・オペラ合唱団
シェーネベルク少年合唱団
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン、イエス・キリストキョウカイ、英デッカ・スタジオ録音)

パリの庶民の生活を生き生きと描き出して・素晴らしい出来です。カラヤンがオペラ演奏に習熟したウイーン・フィルを使わず、ここでベルリン・フィルを起用したことも成功しています。シンフォニックな声付き交響曲になるという心配はカラヤンの場合には無用です。確かにパノラマ映画のような画面の大きい演奏ですが・プッチーニの旋律の細部の感情の綾までも描き出していることに感嘆のほかありません。またこのオペラの四つの幕が緊密な構成を成していることも納得させてくれます。パヴァロッティはその明るく・空に伸び行くような声が楽天的な青年の性格をよく表現しています。ただナイーヴな詩人と言うよりは・歌手という感じではありませうが。しかし、マルチェルロとの軽妙なやり取りはパリのボヘミアンの貧しくとも夢いっぱいの生活のいとおしさを感じさせてくれます。フレー二の情感溢れるミミの歌唱は言うことありません。 第1幕のミミとロドルフォの二重唱は実に素敵。若いふたりをやさしく包み込むカラヤンの繊細なサポートは素晴らしいものです。ベルリン・フィルの弦のピアニシモが生きています。第2幕のパリの賑やかな街角の描写がまたsy場らしいものです。ここではカラヤンのパノラマ的な音楽描写とベルリン・フィルのシンフォニックな表現力が生きています。第3幕は一転して暗く湿った雰囲気のなかに悲劇が迫っていることが予見されています。ここから第4幕のミミの死までプッチーニのドラマを描き出すカラヤンの手法はまったくスキがありません。ミミの死が湿っぽくなく・澄んだ哀しみに感じられます。この録音ではプッチーニの音楽とカラヤンとの相性の良さをつくづく感じます。パネラィ・ギャウロフなど共演歌手陣も揃っています。


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