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カラヤンの録音(1971年7月〜12月)


○1971年7月30日ライヴ

ヴェルディ:歌劇「オテロ」

ジョン・ヴィッカース(オテロ)/ミレルラ・フレーニ(デズデモーナ)/ペーター・グロソップ(イヤーゴ)
ステファニア・マラグ(エミリア)/レイランド・デイヴィス(カッシオ)/ハンス・ベークマン(ロドリーゴ)
ウイーン国立歌劇場合唱団ウイーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ザルツブルク、ザルツブルク祝祭大劇場)

ウイーン・フィルの響きが思いのほか重厚で渋く・ドイツ的な感触が強いのに驚かされます。ドラマ性を強く・論理性を強く読み込もうとするほど、情感は重めに・リズムは重めになる印象があります。これはもちろんカラヤンの意図ということですが、曲自体にもそういう方向へ傾こうとする本質があると思います。歌手陣もその意図で選ばれているようです。ヴィッカースの声は暗めで・第1幕登場の場面こそ英雄的な輝かしさに不足しているような感じがしますが、聴き進むにつれて・声の明るいグロソップのイヤーゴとの対比の意味が明らかになってきます。第2〜3幕でのオテロとイヤーゴとの対決は実に彫りの深いドラマ性を感じさせます。また「オテロ」の場合・第4幕が地味に聴こえることが少なくないですが、この演奏ではそんなことはなく・むしろ第4幕のためにその前までの幕があるのがよく理解できます。第4幕のオテロの詩でのヴィッカースは渋くて素晴らしいと思います。


○1971年8月17日〜23日

モーツアルト:クラリネット協奏曲

カール・ライスター(クラリネット)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(サン・モリッツ、フランス教会、EMI録音)

いかにも真面目に音楽してますという感じで、折り目正しく・がっちりした骨太い演奏です。しかし、もうちょっと音楽の愉しみが欲しいところです。オケの編成が大きめに感じられます。そのせいか第1楽章などアクセントが強くて・旋律線がきつい感じです。第2楽章もちょっと表情が硬い感じに思えます。ライスターのクラリネットもカラヤンの解釈に沿った真面目な感じです。

 


○1971年9月22日〜24日-1

ウェーバー:「舞踏への勧誘」(ベルリオーズ編曲)

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン、ダーレム、イエス・キリスト教会、独グラモフォン・スタジオ録音)

純音楽的なトスカニーニの演奏とはまた違った実に美しい語り口です。前半のチェロとコントラバスの絡み合いからして、たっぷりと旋律を歌って甘く切ない情感に溢れています。後半の華やかなワルツもリズムの軽い刻みが優美この上ありません。そして終結部の語らいの場面もどこか切なく名残リ惜しい感じがします。


 


○1971年9月22日〜24日ー2

ベルリオーズ:劇的物語「ファウストの劫罰」〜妖精の踊り・鬼火のメヌエット

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン、ダーレム、イエス・キリスト教会、独グラモフォン・スタジオ録音)

カラヤンとしては珍しいレパートリー。どちらの曲でも、カラヤンの弱音の繊細な生かし方が印象的であり、思いの外、ロマンティックな要素が強いように思われます。


○1971年9月22日〜24日ー3

リスト:メフィスト・ワルツ

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン、ダーレム、イエス・キリスト教会、独グラモフォン・スタジオ録音)

徳に前半のリズム処理が巧いと思います。リストのこの曲の前衛的な要素をよく表出しており、面白く聴けます。


○1971年9月22日〜24日ー4

スメタナ:歌劇「売られた花嫁」〜ポルカ、フリアント、道化師の踊り

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン、ダーレム、イエス・キリスト教会、独グラモフォン・スタジオ録音)

オペラティックな雰囲気とか民族色というのはあまり感じられないですが、コンサート・スタイルに徹して、リズムがしっかり取れた純音楽的な表現です。


○1971年12月2〜4日、6−10日、13日、1972年1月10日

ワーグナー:楽劇「トリスタンとイゾルデ」〜前奏曲と愛の死(全曲録音からの抜粋)

ヘルガ・デルネッシュ(ソプラノ)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン、ダーレム、イエス・キリスト教会、EMI・スタジオ録音)

全曲録音から冒頭部と最終部を繋ぎ合わせた抜粋ですが、とても素晴らしい演奏です。ゆったりとした滔々なる大きな音楽の流れを感じさせ、叙情性が際立ち、陶然とするほど響きが美しいと思います。ベルリン・フィルの透明で艶のある高弦が実に美しく・色彩が煌めくように感じられます。音楽の情感がうねるようですが・その色彩は決して濁らず、灼熱しているにも関わらず・決して焼き尽くすことのない炎のように感じられます。響きが透明で・ラテン的な明晰さを持つ新しいタイプのワーグナーです。デルネッシュの歌唱も声量ではなく、澄んだ響きで・その細やかな表現が素晴らしく、カラヤンのコンセプトによく合った起用であると思います。


 

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