(戻る)

カラヤンの録音(1971年1月〜6月)


○1971年1月2日、5日、6日

ロッシーニ:歌劇「ウィリアム・テル」序曲

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン、ダーレム、イエス・キリスト教会、独グラモフォン・スタジオ録音)

トスカニーニの演奏と並んで・この曲の双璧とも言えるものです。トスカニーニは純音楽的に処理する方向でしたが、カラヤンは逆に描写音楽として四つの場面の性格をくっきりと描き分けて・この小交響曲とも言える曲の構造を浮かび上がらせています。「夜明け」のチェロの旋律の絡み合いの切々とした語り口、「嵐」でのオケの迫力ある動き、「静けさ」での安らぎ、「行進」での歓喜と興奮、これらを十二分に描き分けたカラヤンの語り口が見事です。


○1971年1月4日・8日、2月15日−1

シューマン:交響曲第1番「春」

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン、ダーレム、イエス・キリスト教会、独グラモフォン・スタジオ録音)

シューマンの交響曲はよく構成に難あるということを言われますが、四つの楽章の連関を取るのが難しいのかも知れません。カラヤンはバランス感覚の優れた指揮者ですが、カラヤンにしても第2楽章は若干弱い感じがあるようです。このなかでは第1楽章が飛びぬけて良い出来です。ベルリン・フィルの弦の引き締まった造形と・渋い硬質の響きが魅力的で、速いテンポで・表情が生き生きしています。第3〜4楽章ではテンポを速めて聴き手をあおりたくなるところですが、カラヤンはリズムをしっかりと刻んで・落ち着いた表現を心がけているのはさずがです。全体としては重厚な印象に仕上がっていると思います。


○1971年1月4日・8日、2月15日−2

シューマン:交響曲第4番

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン、ダーレム、イエス・キリスト教会、独グラモフォン・スタジオ録音)

シューマンの交響曲ではカラヤンは第4番を好んで振っています。これは独墺系指揮者によく見られる傾向ですが、四つの楽章が連結した交響詩的な感じで密度が高いところがフィットすると思います。カラヤンの演奏では第1楽章が勢いがあって素晴らしいと思います。テンポを速めに取って、ベルリン・フィルの弦の鋼のように強い響きが旋律を直線的に歌います。その一方で第3〜4楽章は他の指揮者はテンポを速くしてあおるところですが、カラヤンは若干テンポを遅くして・リズムをしっかり刻んで落ち着いた印象に仕上げています。第2楽章はテンポをゆったりと取って、サラリとした味わいを出しています。この曲ではカラヤンが微妙にテンポを変えて・色合いに変化を与えているのが興味深いところです。特に目立つのは第3楽章から第4楽章への移行部分でテンポをぐっと落として・弱音を生かして抑えた表現をしている点で、これは第4楽章主部でのテンポの変化を強雨徴するためだと思いますが、これはちょっと芝居掛かった感じがしなくもありません。


○1971年1月4日、22日、2月17日−1

チャイコフスキー:バレエ組曲「白鳥の湖」

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン、ダーレム、イエス・キリスト教会、独グラモフォン・スタジオ録音)

同時期の「眠りの森の美女」と同様に、コンサート形式でのこの曲の可能性を追求した演奏です。特にこの曲では、哀切を極めた旋律とドラマ性の起伏が富んでいるのでカラヤンの語り口のうまさがより生きる感じです。特に第1曲「情景」の哀切な美しさ、終曲におけるドラマティックな表現はそのスケールの大きさで比類なく、さながら交響詩を聴くが如くと言った腹ごたえがあります。確かに表現としては重めなのですが、そのリズムの斬れと色彩感で重ったるさをまったく感じさせない見事な演奏です。


○1971年1月4日、22日、2月17日ー2

チャイコフスキー:バレエ組曲「眠りの森の美女」

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン、ダーレム、イエス・キリスト教会、独グラモフォン・スタジオ録音)

テンポの取り方など基本的な解釈は65年ウイーン・フィルとの録音と大差はありません。しかし、リズムの斬れ・アタックの鋭さではベルリン・フィルは比類なく、またオケの響きも華麗で重量感があります。チャイコフスキーの3つのバレエ組曲の録音のなかではウイーン・フィルとの個性の違いが一番際立っていると思います。スケールが大きくて極彩色の大絵巻を見るが如きです。どの曲も素晴らしいと思いますが、旋律を息を大きくとって滔々たる流れを作る「アダージョ」と「パノラマ」は繊細極まりない美しさです。終曲「ワルツ」の華麗な表現は言うまでもありません。


○1971年1月6日・7日

シューマン:交響曲第3番「ライン」

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン、ダーレム、イエス・キリスト教会、独グラモフォン・スタジオ録音)

ベルリン・フィルの低弦の響きをたっぷりと生かし、シューマンの交響曲に骨太い骨格を与えたような印象の演奏です。リズムを早めに・推進力をつけて一気に描き上げた力強さを感じさせます。特に第1楽章は輝かしく力強い表現です。息を大きくとって旋律を歌い上げていて聞かせます。第3・4楽章は曲として構成が弱い感じがありますが、これは名手カラヤンにしても難しいようです。カラヤンは実演ではこの曲を振っていないと思いますが、確かにカラヤンとの相性はしっくりこない感じも若干あるようです。第5楽章は早めのテンポでキリリと締めています。


○1971年1月6日・8日

ヴェルディ:歌劇「オテロ」〜バレエ音楽

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン、ダーレム、イエス・キリスト教会、独グラモフォン・スタジオ録音)

オペラ上演では通常カットされる曲ですが、ヴェルディらしい旋律美と、エキゾチックな雰囲気があります。カラヤンはそれを鮮やかに描き出しています。終曲のダイナミックなオケの動きも素晴らしいと思います。

 

 

 

 


○1971年1月7日・8日

メンデルスゾーン:交響曲第3番「スコットランド」

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン、ダーレム、イエス・キリスト教会、独グラモフォン・スタジオ録音)

この時期のカラヤンらしくテンポ早めで・リズムが明確で・造形が引き締まり、交響曲としての密度が高い演奏も仕上がっています。各楽章の表情が見事に描き分けられていて、一気に聴かせます。特に中間の2楽章が印象的に思えます。スケールの大きい第1楽章につづく第2楽章はその早めのリズムの軽やかさで爽やかさで、ひときわ印象的です。一転して第3楽章はゆっくりしたテンポのなかにも表現が引き締まった荘重な雰囲気です。第4楽章は畳み掛けるようなキビキビしたリズムが魅力的で、活気のあるスケールの大きい表現です。


○1971年1月23日・2月15日−1

グノー:歌劇「ファウスト」からのバレエ音楽とワルツ

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン、ダーレム、イエス・キリスト教会、独グラモフォン・スタジオ録音)

リズムがしっかり取れて・引き締まった造形なのは・この時期のカラヤンの特徴でもありますが、色彩とリズムが飛び散るように感じられます。旋律は心地良く・伸びやかに歌われていますが、リズムがしっかり取られているので・バレエ音楽らしい折り目正しさが感じられます。優美な「ヌビア人の踊り」・「トロイの娘たちの踊り」、リズム感があってダイナミックな「クレオパトラと奴隷たちの踊り」・「フリネの踊り」、最後はワルツで華麗に締めくくられます。グノーの旋律の美しさを存分に堪能させてくれます。


○1971年1月23日・2月15日ー2

オッフェンバック(ロザンタール編曲):バレエ音楽「パリの喜び」

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン、ダーレム、イエス・キリスト教会、独グラモフォン・スタジオ録音)

響きがやや暗めで・リズムが重めのベルリン・フィルは本来オッフェンバック向きではないように思えますが、カラヤンはこれを逆手に取って・オッフェンバックの音楽が内包している芸術性を明らかにしたとも言えそうです。確かに特にテンポの速い曲では微妙なリズムの取り方でもっと洒脱な味わいが出せそうに思うところもあり・その意味ではやはり真面目な演奏なのです。しかし、叙情的な旋律の表現ではこれほど魅惑的な歌いまわしはないと思うくらいに魅力的です。


○1971年2月16日・17日

シューマン:交響曲第2番

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン、ダーレム、イエス・キリスト教会、独グラモフォン・スタジオ録音)

ドイツ系の指揮者はシューマンの交響曲は第4番を好み・第2番はあまり好まぬようで・カラヤンもこの曲を実演ではほとんど振っていませんが、構成が若干弱くて・冗長な面があるからでしょう。逆にうまくまとめれば・ロマン的で優美な独特な曲がある曲だと思いますが。ここでカラヤンは早いテンポで・リズムを鋭角的に斬り込み、がっちりした骨組みを前面に出しています。一本筋の通った・男性的な印象で、イタリア系の指揮者が指揮するこの曲とはまったく印象を異にします。ベルリン・フィルは一糸の乱れも見せず・特に弦の硬質の力強い響きは魅力的ですが、曲本来の持ち味と比べると・やや音楽が固いような印象があるのも事実。カラヤンからば第3楽章などはロマン的にゆったりした流れに仕上げることも考えられると思いますが、ここでは全体の流れから来るのでしょうが・スッキリと押さえた表現です。眼目はやはり第1楽章でしょう。曲が構成的にやや弱い感じがあるのを・推進力のある音楽作りで一気に聴かせます。第4楽章も力のこもった輝かしい出来であると思います。


○1971年2月17日ー1

ウェーバー:歌劇「魔弾の射手」序曲

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン、ダーレム、イエス・キリスト教会、独グラモフォン・スタジオ録音)

カラヤンの得意曲なので、表現に不足あるはずがないありません。特にベルリン・フィルの高弦の力強さが印象的です。全体として早めのテンポで、シェープされた造形で、交響詩的な表現です。意外なことにオペラティックな感興は乏しく、むしろ内側に凝縮した密度のある表現で、コンサート・ピースとしての表現を追求したと云うことかと思います。


○1971年2月17日ー2

ウェーバー:歌劇「オベロン」序曲

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン、ダーレム、イエス・キリスト教会、独グラモフォン・スタジオ録音)

同日録音の「魔弾の射手」序曲と同じく、ふんわりとしてメルヒェン的雰囲気よりも、響きの力強さが印象的で、コンサート・スタイルに徹した表現です。展開部からのテンポの速さと、オケの躍動感が素晴らしく、表現が生き生きとしています。


 

(戻る)