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カラヤンの録音(1965年)


○1965年3月19日−1

チャイコフスキー:バレエ組曲「白鳥の湖」

ウイーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ウイーン、ソフィエン・ザール、英デッカ・スタジオ録音)

テンポを早めにとって・キビキビとした若々しさのある演奏です。表現が引き締まっていて魅力的です。ウイーン・フィルの艶のある柔らかい弦の響きはこの曲の情感を描き出すのにうってつけですが、カラヤンは巧みにオケを引き締めて甘さをコントロールしています。特に素晴らしいのは「情景と白鳥の女王の踊り」での、ヨゼフ・シヴォーの暗めで哀愁に満ちたヴァイオリン・ソロと、エマヌエル・ブラベックのチェロとの旋律の絡み合いは甘く切なくて、この演奏でも随一の聴きものです。終曲のスケールの大きい表現も素晴らしいと思います。


○1965年3月19日ー2

チャコフスキー:バレエ組曲「眠りの森の美女」

ウイーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ウイーン、ソフィエン・ザール、英デッカ・スタジオ録音)

「眠りの森の美女」はシンフォニックな曲なのでカラヤンの体質に合っていると思います。カラヤンはウイーン・フィルの艶やかな弦の魅力をよく生かして華麗な音絵巻に仕上げています。魅力的なのはテンポをたっぷりとった「アダージョ」のスケール大きなフ表現、 あるいは「パノラマ」の旋律を息を長くとったその歌いまわしです。フィナーレの「ワルツ」の華麗な表現も見事です。後年のベルリン・フィルとの録音はよりシンフォニックで劇的ですが、このウイーン・フィル盤も捨て難い魅力があります。


○1965年8月19〜21日

モーツアルト:アイネ・クライネ・ナハトムジーク

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(サン・モりッツ、ヴィクトリア・ザール、独グラモフォン・スタジオ録音)

構成がしっかりした骨太い演奏なのですが、ちょっと遊び心がないというか・愉しむという気分にはひたりにくい演奏かも知れません。第1楽章はテンポ早めで・リズムはしっかりしていますが、ベルリン・フィルの弦の作り出す旋律線がややきつ過ぎのようです。第2楽章以降は耳が慣れるせいかそれほどに感じませんが、真面目に音楽してる感じで・リズムにもう少し軽みが欲しいところです。


○1965年9月21日、22日−1

ベートーヴェン:フィデリオ序曲

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン・ダーレム、イエス・キリスト教会、DGスタジオ録音)

密度の高い・緊張感ある表現です。リズムの推進力を重視した演奏で、その音楽の勢いには圧倒されます。後年(70年)ベルリン・フィルとの演奏では細やかな優美な面を見せていますが、ここではどこまでも骨太な・男性的な表現です。


○1965年9月21日、22日−2

ベートーヴェン:レオノーレ序曲第3番

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン・ダーレム、イエス・キリスト教会、DGスタジオ録音)

まるで交響詩の如く凝縮された・緊張感あふれる演奏です。前半の抑えられた沈痛な表現も素晴らしいですが、それが後半に至ってドラマティックな感動に流れ込んでいく・その劇的な設計は無駄がなくて、しかも作為的なところがまったくありません。特にベルリン・フィルの弦の強く男性的な響きは、フルトヴェングラーとはスタイルは違っていても、確かにドイツ指揮界の正統性を主張するものです。


○1965年9月21日・22日ー3

ベートーヴェン:コリオラン序曲

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン・ダーレム、イエス・キリスト教会、DGスタジオ録音)

密度の高い素晴らしい演奏です。冒頭からベルリン。フィルの低重心の充実した響きで気合いが入っています。テンポはやや早めですが、第1主題と第2主題の描き分けもバランスがよく、構成もシャープにきりりと引き締まった感じです。ベルリン・フィルの弦の暗めの響きが素晴らしく、悲劇的な情感がドラマティックに聴き手に伝わってきます。


1965年9月22・24・27日・11月8日

チャイコフスキー:交響曲第5番

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン・ダーレム、イエス・キリスト教会、DGスタジオ録音)

ベルリン・フィルの引き締まった力強い弦と輝かしい金管の響きが素晴らしいと思います。この時代のベルリン・フィルは暗めの渋い響きですが、これさえもチャイコフスキーのメランコリックな曲想にマッチしていると感じら れます。特に前半の2楽章が印象的です。第1楽章はテンポに幅を持たせたダイナミクスの大きい表現で、弦の動きが実に見事です。第2楽章はゆったりしたテンポですが、息が詰んでいるのでダレた感じがまったくなく て、内容が実に深いのです。ホルンの情感を込めたたっぷりした歌い方は素晴らしいと思います。このテンポで持たせるのは容易ではないと思います。第3楽章「ワルツ」はこの曲の息抜きの楽章 とも言えますが、この曲の転換点たる意味を十分に感じさせ ます。第4楽章「行進曲」ではリズムに推進力があって、ベルリン・フィルの機動力を十二分に発揮しています。


○1965年11月6日〜8日

チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲

クリスチャン・フェラス(ヴァイオリン独奏)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン・ダーレム、イエス・キリスト教会、DGスタジオ録音)

これはなかなか魅力的な演奏だと思います。カラヤンの作り出すスケールの大きな舞台で・フェラスが持てる力を存分に発揮しています。フェラスの音色は艶やかで美しく・力いっぱい引き込んで・カラヤンの伴奏に位負けするところがまったくありません。それでいて旋律の細部まで細やかな神経が行き届いています。カラヤンの伴奏の各楽章のテンポうまさには感心させられます。第1楽章はベルリン・フィルのちょっと甘さを殺した渋い色彩感が素晴らしいと思います。第3楽章のオケのダイナミックな動きも聴き物です。


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