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カラヤンの録音(1957年)

1957年4月15日:ウイーン国立歌劇場でヴェルディ:歌劇「オテロ」を指揮。オテロはデル・モナコ。ミラノ・スカラ座との提携公演の第1回目。
1957年11月:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団を率いて来日公演。


○1957年2月13日ライヴ−1

ヒンデミット:交響曲「画家マチス」

ウイーン交響楽団
(ウイーン、ウイーン楽友協会大ホール)

ウイーン響は暗めの響きで低音がよく効いています。カラヤンはこの響きをよく生かし、第1曲ではテンポをちょっと遅めにして・リズムの打ち込みを重視しているのがよく分かります。バロック建築的な様式感と力強さがよく出てきます。第2楽章もその渋い色調が生きています。オケは力演だと思います。


○1957年2月13日ライヴー2

ベートーヴェン:交響曲第7番

ウイーン交響楽団
(ウイーン、ウイーン楽友協会大ホール)

カラヤンがウイーン響の個性をよく取って・持てる力を最大限に発揮させていることに関心します。ウイーン響はもちろんウイーンのオケですからベートーヴェンが悪いはずがないですが、カラヤンはリズムの打ち込みをしっかりとすることで重量感のある演奏に仕上げています。第1楽章から力のある響き、決してスマートな感じではないですが・真っ向から曲に対している真摯さが伝わってきます。第2楽章も素朴な味わいです。第4楽章は決してはやることなく・しっかりと手綱を締めて、線の太い出来に仕上がりました。聴き終わってがっしりした構成感が印象に残ります。


○1957年4月28日〜30日

レオポルド・モーツアルト:おもちゃの交響曲

フィルハーモニア管弦楽団
(ロンドン、キングスウェイ・ホール、EMIスタジオ録音)

子供の為の音楽だから愉しいければ良いというようなところがまったくなく、実に音楽的かつ真摯な演奏で、こんなに真面目に演奏してもらったらレオポルドも本望じゃないかと思ってしまいます。


○1957年5月26日ライヴ

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番

グレン・グールド(ピアノ独奏)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン、ベルリン音楽大学)

カラヤンとグールドの数少ない共演の録音ですが、ふたりは互いに尊敬し合っていたそうで・この演奏でもとても気の合ったところを見せています。グールドというと何か奇をてらった解釈を仕掛けてきそうなイメージがありますが、ここでのグールドはまったくオーソドックスなスタイルを守っています。強いて言えばできるだけノン・レガートに響きの持続を切り・華やかさを抑え、ベートーヴェンの音楽の構造を強く意識した演奏になっていますが、これも渋い地味めのこの協奏曲によく似合った解釈だと思います。カラヤンの指揮もカラヤンの時期のベートーヴェンらしい質実剛健の引き締まった造型を見せており・解釈としてとてもオーソドックスなもので、その骨太いフォルム感覚の確かさがグールドとぴったり合っているのです。ベルリン・フィルの暗めで渋い音色もここではよく生きています。第2楽章の渋い落ち着いた流れも美しいですが、第3楽章の派手さを抑えたなかにもゆったりとした心地良いリズムがなかなか良いと思います。


○1957年7月27日ライヴー2

ベートーヴェン:歌劇「フィデリオ」序曲

ウイーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ザルツブルク祝祭劇場(フェルゼンライトシューレ)・全曲上演からの抜粋)

緊張感にあふれて気力充実した好演です。この時代のカラヤンらしい早目のテンポでキビキビとしており、メロディーの歌わせ方も直線的で簡潔で剛直なイメージがあります。リズムがしっかりと打たれ、ベートーヴェンにふさわしい渋い重厚な響きで聞かせます。


○1957年7月27日ライヴー3

ベートーヴェン:「レオノーレ」序曲第3番

ウイーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ザルツブルク祝祭劇場(フェルゼンライトシューレ)・全曲上演からの抜粋)

全曲上演での第2幕第2場フィナーレ直前に演奏されています。序曲と同様に、早めのテンポで一気に描き上げた勢いと緊張感のある演奏です。特に終結部における盛り上げ方は素晴らしい と思います。最終音を長く引っ張って、そのまま拍手なしで フィナーレへ流れ込んでいくのも非常に効果的です。


○1957年7月29日ライヴー1

モーツアルト:ピアノ協奏曲第21番

ゲザ・アンダ(ピアノ独奏)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ザルツブルク、モーツアルテウム音楽院大ホール)

この時期のカラヤンらしくテンポは早めです。やや編成が大きく・響きが重めに感じられますが、合わせ物のせいもありますが・同日プロの交響曲に比べるとカラヤンがぐいぐい引っ張る感じは少ないと思います。しかし、古典的にかっきりとした印象があって・遊び心には乏しい感じです。それがよく出ているのは第2楽章で・甘さに陥ることなく渋く精神的な印象があります。アンダのピアノもカラヤンのコンセプトに沿った手堅い出来ですが、全体に渋い感じがします。


○1957年7月29日ライヴー2

モーツアルト:交響曲第35番「ハフナー」

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ザルツブルク、モーツアルテウム音楽院大ホール)

この時期のカラヤンのモーツアルトはフォルムへの意識が強く、構成ががっしりしています。したがって、音楽に遊び心というか・余裕のようなものが乏しい感じではあります。両端楽章はテンポ早めにぐいぐいと引っ張る感じで、ベルリン・フィルの重めの響きがドライヴ感があります。この感覚が当時のモダンな感覚なのでしょう。演奏後の聴衆がよく反応しています。

 


○1957年7月29日ライブー3

モーツアルト:交響曲第41番「ジュピター」

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ザルツブルク、モーツアルテウム音楽院大ホール)

ベルリン・フィルの編成が大きく・響きが重いのと全体のフォルムががっしりして・太い骨組みが感じられ・古典的に印象が強いので、ややベートーヴェンに傾いた感じがします。それにしても両端楽章は指揮者がオケをぐいぐいと引っ張っていくドライヴ感覚があって、音楽に勢いがあるのが当時のカラヤンらしいと思いますし・その徹底したスタイルに感嘆する思いがします。印象的なのは第2楽章で、早めの流れのなかに古典的な端正な味わいがあります。

 


○1957年8月22日ライヴ

ブラームス:ドイツ・レクイエム

リザ・デラ・カーザ(ソプラノ独唱)
ディートリッヒ・フッシャー=ディースカウ(バリトン独唱)
ウイーン楽友協会合唱団
ウイーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ザルツブルク、フェルゼンライト・シューレ)

第1曲冒頭からゆったりと深く呼吸するようなリズムの・深い雰囲気とスケールの大きさが素晴らしいと思います。特に前半の出来が素晴らしいと思います。合唱も良くて第2曲など聴かせます。独唱はフッシャー=ディースカウが同曲の独唱として図抜けて素晴らしく・強く印象に残ります。声の力強さ・発声の明瞭なこと、説得力がずば抜けていて・圧倒されます。デラ・カーザも清楚で美しい歌唱なのですが、フッシャー=ディースカウがクリアで細部まで描きこむ歌唱のせいか・スタイル的にややバランスを欠いた感じに聴こえます。カラヤンの指揮はテンポをゆったり取って・劇的な振幅が大きい演奏で、いつもながら見事なものです。


○1957年11月3日ライヴ

ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(東京・内幸町・旧NHKホール)

ベルリン・フィル音楽総監督としてのカラヤンの初来日公演です。特に第3楽章から第4楽章での盛り上がり、劇的高揚が素晴らしいと思います。当時のベルリン・フィルの響きにはまだまだフルトヴェングラー時代の影響が残っています。カラヤンはそれを時間を掛けて少しづつ自分の色に塗り替えていく時期にありました。カラヤンが満を持してベルリン・フィルとの第1回交響曲全集の録音を世に問うまでにはまだ数年の期間があります。フルトヴェングラーの音色を残しながらも、この演奏にはまぎれもなくカラヤン独自のベートーヴェン観がはっきりと見られます。早めのテンポのなかにくっきりとした輪郭で描かれる旋律線がそれです。ここではベルリン・フィルの力強い鋼のような弦の響き が威力を発揮しています。後年62年のスタジオ録音と比べると、62年の演奏はリズムの刻みが深く・それが音楽の推進力となって聴き手を巻き込んでいくというトスカニーニ的な演奏ですが、ここでのカラヤンは造形に余裕を持たせて・フォルムに対する意識をオケに対してまだ強く強いていないように思われます。そのせいか前半はまだエンジンが暖まっていないような感じもありますが、曲が進むにつれて音楽は熱気を帯び、第4楽章では圧倒的な輝かしさに達しています。ファイナーレの最終音は通常の2倍に引っ張られており、カラヤンのオケとの格闘の凄まじさが目に見えるようです。


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