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パウル・ベルグンドの録音


○1977年8月17日ライヴ

グリーグ:ピアノ協奏曲

スビャトスラフ・リヒテル(ピアノ独奏)
スイス音楽祭管弦楽団
(ルツェルン、クンスト・ハウス、ルツェルン音楽祭)

リヒテルのピアノは時折ハッとするような強靭な打鍵と鋭いリズムを聴かせるかと思えば・一転して実に繊細な情感を込めたソフトな表現を聞かせたり、表現の幅が実に広くて素晴らしいと思います。しかし、音楽造りは決して派手になることがなく・リヒテルらしい骨太で渋く高尚な感じがします。ベルグントの指揮はリヒテルとコンセプトを合わせたと言うべきでしょうが、第1楽章などテンポの緩急が大きい感じがします。全体にロマンティックな味わいが強いのですが、テンポの遅めの第2楽章で若干情感が持ちきれない感じがします。


セミヨン・ビシュコフの録音


○1997年ライヴ

プッチー二:歌劇「トスカ」

ガリーナ・ゴルチェコヴァ(トスカ)、ネイル・シコフ(カヴァラドッシ)
ルッジェロ・ライモンディ(スカルピア)、ルイージ・ローニ(アンジェロッティ)
ミラノ・スカラ座管弦楽団・合唱団
(ミラノ、ミラノ・スカラ座)

全体として形はそれなりに整っており・目立つ不満はないのだけれども、ドラマが額縁に収まっている感じで、聴いていてドラマに興奮させられません。 良く言えば古典的ということなりますが、ビシュコフがテンポをインに取りすぎて、リズムを自在に揺らさないところにあるようです。旋律を息に乗せて歌わせていないということです 。もっと繊細微妙なリズムの揺れが欲しいと思います。これではフォルムとしてプッチー二の音楽の魅力を表出できているとは思えません。それが歌手にも波及しているようで、ライモンディならばもっと凄みのあるスカルピアが歌えても良いと思います。ゴルチェコヴァのトスカもえらく渋い印象がします。 高音はまあまあですが、もっと強い感情の迸りが欲しいと思います。


リチャード・ボニングの録音


○1972年4月22日ライヴ

ドニゼッティ:歌劇「ランメルモールのルチア」〜ルチアとエドガルドの二重唱:「燃える思いがその風に乗っていくだろう」

ジョーン・ザザーランド(ルチア)、ルチアーノ・パヴァロッティ(エドガルド)
メトロポリタン歌劇場管弦楽団
(ニューヨーク、メトロポリタン歌劇場、支配人ルドルフ・ビング引退記念ガラ・コンサート)

サザーランドは声の輝き・技巧とも素晴らしく聴きごたえがありますが、パヴァロッティも声が若々しくて・いかにもイタリアのテノールらしい伸びやかさがあって素晴らしいものです。ボニングの指揮も手堅いものですが、もう少しリズムに斬れが欲しいところです。



ジェームズ・コンロン


○2000年ライヴ

マスネ:歌劇「ドン・キショット」

サミュエル・レイミー(ドン・キショット)、ジャン・フィリップ・ラフォンテ(サンチョ・パンサ)
カルメン・オプリサス(ドルシネア)
パリ・オペラ座管弦楽団・合唱団
(パリ、オペラ座)

レイミーの歌唱と演技はその真摯さと真情の深さで人々の心を打つドン・キショットの人柄をよく表現していて、第3幕、盗賊とのやり取りの場面、第4幕のドルシネアとの場面など実に感動的です。ラ・フォンテのサンチョとのコンビもよくバランスしていて・軽妙に聴かせます。



プラシード・ドミンゴの録音


○1979年9月1日ライヴ

ヴェルディ:歌劇「運命の力」序曲

ウイーン国立歌劇場管弦楽団
(ウイーン、ウイーン国立歌劇場、ガラ・コンサート)

指揮者としてのドミンゴとしてはそのキャリアの始めの方のものと思いますが、手堅い指揮ぶりを見せており、演奏はなかなか見事なものです。

 


クルト・アイヒホルン


○1965年ライヴ

オルフ:童話オペラ「月」

ジョン・ファン・ケステレン(語り手)、ウィリー・ブロックマイヤー(村人)
クラウディオ・ニコライ(村人)、エルナー・コッツェルケ(村人)
エリック・ヴィンケルマン(村人)、エルンスト・サンドレーベン(農夫)
バイエルン国立歌劇場管弦楽団・合唱団
(ミュンヘン、バイエルン国立歌劇場)

グリム童話から題材を取ったオペラで、曲風は「カルミナ・ブラーナ」に良く似ていて聴きやすいオペラです。素朴さと単純さから来る 粗野な力強さがあってなかなか楽しめます。



クリストフ・エッシェンバッハ


○2007年10月10日ライヴ

マーラー:交響曲第1番「巨人」

パリ管弦楽団
(パリ、サル・プレイエル)

これは素晴らしい演奏です。奇を衒った仕掛けをするわけでもなく・自然体で曲に対しており、派手はところはないけれども、聴き応えのする・とても充実した演奏に仕上がっています。まずパリ管がドイツのオケの響きかと思うような・やや湿り気のある暗めの響きを出していることにも感心させられます。第1楽章冒頭でその響きが生きています。テンポがしっかり取られ、息深く旋律が歌われて、音楽がすみずみまで生きていると感じます。エッシェンバッハのコントロールの巧さが実感できます。第3楽章は冒頭部のチェロ独奏のちょっと引きずったような歌わせ方が絶妙で、特に印象深い演奏に仕上がりました。第4楽章フィナーレも聴き手を急き立てることなく・じっくりと引き締めて納得できます。



アッシャー・フィッシュの録音


○2009年10月4日ライヴー1

ショパン:ピアノ協奏曲第2番

ダニエル・バレンボイム(ピアノ独奏)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン、ベルリン・フィルハーモニー・ホール)

バレンボイムのピアノは華やかさを抑えつつも・しっかりとリズムを刻んで、タッチのニュアンスが実に豊かです。第1楽章はちょっと渋い感じもしますが、線が太い演奏に仕上がっています。また第2楽章は音楽をじっくりと歌わせて説得力があります。スケールが大きいということではなくて、音楽が深いのです。フィッシュの指揮も堅実なサポートで、よくバレンボイムに付けています。


○2009年10月4日ライヴー2

ショパン:ピアノ協奏曲第1番

ダニエル・バレンボイム(ピアノ独奏)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン、ベルリン・フィルハーモニー・ホール)

バレンボイムのピアノはタッチのニュアンスが実に豊かで、第3楽章のポーランド舞曲風の微妙な装飾的なリズムの付け方などとても巧くて、そこにショパンの音楽の民族性がよく出ています。全体に派手さを抑えた感じもしますが、じっくりと足取りをとった骨太い音楽で説得力のある演奏だと思います。フィッシュの指揮もバレンボイムの解釈をよく理解して、堅実なサポートを展開しています。



エットーレ・グラチス


○1957年

ラヴェル:ピアノ協奏曲

アルトゥーロ・ベネディティ・ミケランジェリ(ピアノ独奏)
フィルハーモニア管弦楽団
(ロンドン、EMI録音)

まさに「鮮烈」と云う言葉がぴったりの演奏です。両端楽章はまさにミケランジェリのピアノのリズムが色彩になって飛び散るが如くで、しかもそれが硬い質感を持って耳にピンピン当たる感じがします。とても刺激的で、ラヴェルの機能的かつ遊戯的な音楽のなかに背中合わせにある虚無的な感覚まで表現し尽くしているように感じられます。これもまたラヴェルの本質をえぐった演奏だと思います。この両端楽章に挟まれた第2楽章がこれも瞑想的な心の世界を聴くようで、この協奏曲があたかも三幅対の金屏風を見ているように感じられます。ミケランジェリにばかり耳が行きますが、グラチス指揮のフィルハーモニア管も見事にがっぷり四つに組んだ演奏を聴かせてくれます。


 

フリードリッヒ・ハイダーの録音


○2002年ライヴ

R.シュトラウス:歌劇「ナクソス島のアリアドネ」

ハイジ・ブルンナー(作曲家)、ヴォルフガング・ブレンデル(音楽教師)
アドリエンヌ・ピエクツォンカ(アリアドネ)、ロバート・ディーン・スミス(バッカス)
エディタ・グルヴェローヴァ(ツェルビネッタ)、ヴォイテック・ドラヴォヴィッツ(ハーレキン)
バルセロナ・リセウ劇場管弦楽団・合唱団
(バルセロナ、リセウ劇場)

歌手も揃っており・演出もなかなか面白くて楽しめる舞台ですが、やはり聴き物はグルヴェローヴァのツェルビネッタで、第2幕のアリア「偉大なる王女さま」の素晴らしさで観客の声援をひとりでさらってしまった感があります。とにかくその声の妙技・技巧の素晴らしさには感嘆するばかりです。ハイダーの指揮はしっかりとテンポを守った手堅いもので、歌手はとても歌いやすいだろうと思います。


○2003年11月ライヴ

ドニゼッティ:歌劇「マリア・シュチュアルダ」(演奏会形式)

エディタ・グルヴェローヴァ(マリア)、ソーニャ・ガナッシ(エリザベッタ)
ジャン・ディエゴ・フローレツ(レスター)、シモン・オルフィラ(タルボ)
バルセロナ・リセウ劇場管弦楽団
(バルセロナ、バルセロナ・リセウ劇場)

グルヴェローヴァのマリアは声の伸び・斬れの良さ共に素晴らしく、圧倒的な歌唱です。レスターのフローレツも素晴らしい歌唱で、ふたりの二重唱は堪能させられます。ガナッシのエリザベッタは悪くないのですが、もう少し声量が欲しいところです。ハイダーの指揮は歌手を邪魔しないソツのない出来ですが、オケにリズムの斬れがちょっと不足で、グイグイと音楽を引っ張るところがもう少し欲しいところです。


ワルター・ジュエスキンドの録音


○1961年1月17日

モーツアルト:ピアノ協奏曲第24番

グレン・グールド(ピアノ独奏)
CBC交響楽団
(トロント、マッシー・ホール、CBSスタジオ録音)

恐らくグールドは当時のピアノの性能を考慮したのでしょうが、タッチを柔らかく、音量の変化を抑えて、ダイナミクスを最小限に抑えた演奏をしています。その結果、華やかさは控えめに 、内省的なモーツアルトに仕上がりました。それがこの曲のちょっとシリアスな要素によくマッチしています。特に第2楽章のゆったりしたテンポの密やかともいえる、落ち着いた風情は、ちょっと忘れ難いものがあります。 ジュエススキンドもグールドの解釈をよく理解して好サポートだと思います。


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