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べームの録音 (1960年以前)


○1953年6月

ブラームス:ピアノ協奏曲第1番

ウィルヘルム・バックハウス(ピアノ独奏)
ウイーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ウイーン、ソフィエン・ザール、英デッカ・スタジオ録音)

聴き応えのある名演です。バックハウスのピアノは渋く重厚なタッチで・骨太いがっしりとした音楽作りで風格を感じさせます。ベームはしっかりとリズムを明確に取って・ブラームスのフォルムを見据えた指揮です。特に第1楽章が素晴らしいと思います。テンポを速めにとって・ピアノとオケが四つに組んだスケール感のある演奏に仕上がりました。第2楽章はゆったりとしたテンポで瞑想的な旋律を息深くじっくりと聴かせます。深い安らぎがあって・この第2楽章があってこそフィナーレが生きてきます。第3楽章は一転して速いテンポでキビキビとした活気のあるフィナーレで締めます。


○1955年5月

モーツアルト:ピアノ協奏曲第27番

ウィルヘルム・バックハウス(ピアノ独奏)
ウイーン・フィルハーモニー管弦楽団
(ウイーン、レドウテン・ザール、英デッカ・スタジオ録音)

ベームの指揮は早めのテンポでキビキビとして無駄のない運びですが、特に高弦の旋律の歌い方が強い感じで・・もうちょっと表情に柔らか味が欲しいところです。音楽が全体的に硬く感じられます。スケールが大きいと言えなくもないですが、やや威圧的な感じがします。交響曲ならばこれでも良いと思いますが、協奏曲であるとちょっと乗り切らない感じです。ソリストをゆったりと遊ばせるような余裕が欲しいのです。しかし、バックハウスのピアノはなかなか良い出来です。打鍵は強く・造形に甘さがないのはバックハウスらしいところですが、音の粒が揃っているのが良いと思います。音楽の足取りがしっかり取れていて・内容が深いのです。特に第2楽章が良い出来です。


○1957年7月−1

R.シュトラウス:交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快な悪戯」

ドレスデン国立管弦楽団
(ドレスデン、独グラモフォン・スタジオ録音)

録音のせいか、弦が薄く、管楽器・特に木管の響きが抜けて聴こえます。そのおかげで、この曲のアイロニカルな味わいが強く聴こえるところが、面白いと思います。ベームの表現は、テンポ早く、直線的に引き締まって、古典的な印象さえ受けます。旋律の歌い方は簡素で、面白く聴かせようという感じなどさらさらないのですが、ユーモア感覚に欠けているわけではありません。ただし、ちょっと乾いた感じもユーモアです。それはベームにとって師匠でもあったR.シュトラウス指揮の録音にも通じるところです。


○1957年7月−2

R.シュトラウス:アルプス交響曲

ドレスデン国立管弦楽団
(ドレスデン、独グラモフォン・スタジオ録音)

モノラル録音であるのが、惜しいほどの名演です。山を散策するなかでの情景が、早いテンポでパノラマを見るように展開して行きます。オケは色彩感があって、力強く引き締まった弦が魅力的です。オケとベームの相性の良さがうかがえます。ベームは情景描写に心を配るというよりも、むしろ純音楽的表現に徹しているように思いますが、それが結果として、スコアの音符をそのまま音化したようで、音を以て情景を語らしむような、絵画的表現になっているのです。


○1958年4月

ベートーヴェン:交響曲第7番

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン、イエス・キリスト教会、独グラモフォン・スタジオ録音)

壮年期のべームらしい引き締まった造形。無駄を省いた表現で、ぶっきらぼうな感じさえしますが、音楽を表面的に磨き上げるようなことをせず、実に厳しい態度を感じます。ベルリン・フィルの暗めで引き締まった弦の響きが、この時期のべームによく似合います。第1楽章はリズム主体の構造を前面に出して純器楽的な表現に徹した印象です。第2楽章は淡々としたなかにも静かで透明な情感が流れます。第3・4楽章はリズムをしっかりと刻み、聞き手を決して煽ることをせず、手綱をしっかり締めて音楽の格調を高めています。四つの楽章のバランスがとても良いと感じます。


○1958年12月

ベートーヴェン:コリオラン序曲

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
(ベルリン、イエス・キリスト教会、独グラモフォン・スタジオ録音)

テンポ早めで劇的表現が煮詰められたと感じられる好演です。悲劇的な第1主題の無駄をそぎ落としたような表現も良いですが、静かな哀しみが湧き上がような第2主題との対比がまた素晴らしい。劇的構成がしっかりして、緊張感が漲っています。


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