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ガリー・ベルティー二の録音


○1996年11月23日ライヴー1

シューベルト:交響曲第8番「未完成」

シュトゥットガルト放送交響楽団
(東京、東京芸術劇場)

スッキリとして・細身のシューベルトです。オケの作り出す音楽の線が細くて・丸みがない・旋律線がやや硬いというのがシューベルトとしては痩せた印象を与えて難ですが、こうした造形のスッキリした・清新な印象を好む方もいるかと思います。テンポは二楽章ともにかなり早めで、直線的な表現です。曲の骨身が透けて見えるような印象で、個人的にはふくよかな雰囲気のなかにロマンが沈滞していくような演奏を良しとしたいと思います。


○1996年11月23日ライヴー2

ブラームス:交響曲第1番

シュトゥットガルト放送交響楽団
(東京、東京芸術劇場)

全体の傾向として前プロのシューベルトと同じ行き方なのですが、ブラームスの方がぴったり来るのは、やはり此の曲がフォルムに重きを置く作品であるからに違いありません。シュトゥットガルト放送響の響きは低音が不足で・ドイツ的な重厚さからはちょっと遠いのですが、ここでは力強く引き締まった高弦が生きています。全体のテンポを早めに取って・一気に曲を描き切る印象で・古典的なアプローチですが、第1楽章後半や第4楽章後半ではベルティー二もなかなか熱いものを感じさせます。逆に中間楽章ではちょっとスッキリしすぎた感じがなきにしもあらず。


○1996年11月23日ライヴー3

マーラー:交響曲第5番〜第4楽章:アダージェット

シュトゥットガルト放送交響楽団
(東京、東京芸術劇場)

当日のアンコール曲目。早めのテンポで・スッキリと歌い上げたマーラーです。濃厚なロマン的情念のうねりを感じさせるよりは、叙情的で・どこか慰めにも似た感情に満たされるのは、シュトゥットガルト放送響の細身の響きの印象にもよりますが、ベルティー二の音楽作りも曲に余計なものを付け加えず・淡々とした感じに思えます。


○1996年11月28日ライヴー1

ワーグナー:歌劇「さまよえるオランダ人」序曲

シュトゥットガルト放送交響楽団
(東京、東京芸術劇場)

じっくりとした足取りで・テンポをしっかり守って・激することなく・淡々と描き切った演奏です。したがって感情のうねりがあまりないので・オペラティックな感じはなくて、手堅いという印象です。ゼンタの動機の叙情的な美しさが印象に残ります。


○1996年11月28日ライヴー2

ワーグナー:楽劇「トリスタンとイゾルデ」〜前奏曲と愛の死

シュトゥットガルト放送交響楽団
(東京、東京芸術劇場)

早めのテンポで・旋律をスッキリと歌わせた演奏です。シュトゥットガルト放送響の引き締まった高弦を生かして・旋律線を強調して・明晰で分かりやすいワーグナーですが、その分ワーグナーの毒気に乏しいのは仕方ないところ。しかし、叙情的な澄んだ美しさに聴くものがあり、後半・愛の死の盛り上がりではスッキリとした流れのなかに光り輝くものが確かに感じられます。


○1996年11月28日ライヴー3

ベートーヴェン:交響曲第7番

シュトゥットガルト放送交響楽団
(東京、東京芸術劇場)

ベルティー二は曲のフォルムを意識して・それを的確に描き分けていきます。シュトゥットガルト放送響の響きは明るめで・ドイツ的な重厚さよりも・ラテン的な明晰さを感じますが、この演奏でも曲の構造が明確に見渡せる印象であり、曲に虚心に対する態度に好感が持てます。テンポは中庸ですが、しっかりと足取りを守って・職人芸的な手堅さがあります。感心するのは第4楽章でも・リズムの刻みを前面に出して煽りたくなるところですが、律儀にテンポを守って・決して激した音楽にならないことです。むしろここで腰が重めに感じられるほどじっくりと音楽を作っていく点にベルティー二の真骨頂を見る思いです。


○1996年12月1日ライヴ−1

モーツアルト:交響曲第40番

シュトゥットガルト放送交響楽団
(東京、東京芸術劇場)

ちょっと線の細いきらいはありますが、造形の引き締まった清新の趣きのあるモーツアルトです。全体を早めのテンポを取り・オケの透明な音色をよく生かしています。若干低音不足で・重量感に不足する響きで・高弦にふくらみが不足で・造形に硬い感じはありますが、逆に言えば・硬質に引き締まって・新古典主義的な印象があるとも言えます。成功しているのは第1楽章で、早めの流れのなかに・甘くべとついた所がない・爽やかな印象があります。ただ第2楽章はテンポが速すぎる感じで、旋律がサラサラと流れて・味わいが淡白な感じがします。もう少しゆったりとした方が全体のバランスが良くなった気がしますが。第3・4楽章もキビキビとした展開で楽しめます。


○1996年12月1日ライヴ−2

マーラー:交響曲第1番「巨人」

シュトゥットガルト放送交響楽団
(東京、東京芸術劇場)

このシュトゥットガルト放送響の特性ですが・低音がやや不足で・重量感に欠けて・音楽の線は細い感じはしますが、造形は引き締まっており・あまり余計なものを感じさせず・ストレートな印象です。したがってこのマーラーでも熱いロマンの奔流のようなものは感じさせす、むしろ古典的で端正な感じがします。その意味では物足りなさもあるのですが、この若書きの交響曲にはそれらが若々しさ・清々しさにも感じられるようです。第1楽章冒頭もドイツの森の暗く湿った霧の立ち昇る朝という感じではなく・爽やかな朝の光が差し込むような感じであり、主部に至って・生きる喜びが爆発的に湧き上がるという印象です。これも悪くはありません。第2・3楽章では底に流れるグロテスクな情念は取り払われて・オケの快活な動きに取って替わっています。このなかでは第4楽章がバランス的に遅い感じで・ちょっと異質な感じを受けます。一貫して早めのテンポで押した方が良かった感じもしますが。


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