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クラウディオ・アラウ Claudio Arrau


○1979年3月22〜24日、9月28〜30日

ショパン:ワルツ集(14曲)

クラウディオ・アラウ(ピアノ独奏)
(スイス、フィリップス・スタジオ録音)

数あるワルツ集の録音のなかでもとりわけ魅力的な演奏であると思います。全体としてテンポはゆったりと遅め、そのなかに豊かな情感をたっぷり注ぎ込んでいます。旋律の息が深く、表現のすみずみまで神経が行き届いており、聴いていてとても心が安らぎます。1分半くらいで弾かれることが多い「子犬のワルツ」など2分23秒も掛かっています。これだけゆったりしたテンポでは普通のピアニストはなかなか弾けないでしょう。ふっくらした情感があって、いかにも大家の芸という感じがするのです。しかも、感心するのは情感たっぷりに弾いているから言って甘ったるい感じはあまりせず、むしろ古典的な感覚でワルツの形式を大きな形で掴んでいることです。どの曲でも細やかで薫り高い表現が古典的な趣きのなかにしっくりと落ち着ういた表現なのですが、それゆえショパンがワルツという表現形式で何を実験しようとしたのか・という意味が感覚的に分かる気がしてきます。


○1982年ライヴ

リスト:ピアノ・ソナタ ロ短調

クラウディオ・アラウ(ピアノ独奏)
(トロント、カナダ)

派手なところがない・自然体の表現なのですが、流れに身を任せて聴いていると・曲想が次々と展開していく様が実に面白く・聴き手を飽きさせるところがまったくありません。それは曲の構造を知り尽し、表現の細部までよく練り上げているからなのでしょう。打つ手打つ手が次の段取りとして・どれもぴったりはまると言った感じなのです。叙情的な場面における美しさ・あるいは安らぎの表情において優れた印象で、それは激しいパッセージにおいても決して破られることはなく、最後に精神的な解脱の境地にまで至るという感じでありましょうか。特に終結部は朴訥な感じで・別に大したことをしているようでもないのに・どの演奏にも増して心に深く残るものを感じます。


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