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アンセルメの録音 


○1949年3月

ストラヴィンスキー:バレエ音楽「ぺトルーシュカ」(1911年版)

スイス・ロマンド管弦楽団
(ジュネーヴ、ヴィクトリア・ホール、英デッカ・スタジオ録音)

スイス・ロマンド管の木管・金管の輝かしく・硬質かつ透明な響きが印象的で、鮮烈な印象を受けます。リズム処理が実に上手くて、音楽を勢いでなく・じっくり聴かせます。リズムをしっかりと打ち込んでいるので、音楽に安定感があるのです。 色彩的な曲がアンセルメの個性に合っているせいか・「春の祭典」(50年録音)よりも刺激的な感じさえします。次々と展開する色彩的な情景の変化が走馬灯のように実に 面白く聴けます。


○1950年10月

ストラヴィンスキー:バレエ音楽「春の祭典」

スイス・ロマンド管弦楽団
(ジュネーヴ、ヴィクトリア・ホール、英デッカ・スタジオ録音)

ストラヴィンスキーとは縁の深いアンセルメだけに・さすがと思わせる安定感のある解釈です。テンポは若干遅めですが、勢いに任せるのではなく、じっくり音楽を聴かせる感じで 、実に落ち着いて聴けます。リズムは斬れがあり、しかも打ち込みがしっかりしているので、曲が前のめりになることがありません。これはバレエ音楽では大切な要素であると思います。暴力的なリズムの激しさを前面に出す感じではなくので 、この曲が持つ刺激性・挑発的なところは乏しいですが、その一方で場面々々の情景を具体的に描写する点では申し分ありません。曲が進むにつれて・特に第2部辺りから音楽が盛リ上がり、終盤は圧倒的に感じられます。スイス・ロマンド管は優秀で、輝かしく・天に突き抜けるような 金管の鋭い響きは印象的です。


〇1953年6月

ラヴェル:ラ・ヴァルス

パリ音楽院管弦楽団
(パリ、メゾン・デ・ラ・ミューチュアル、英デッカ・スタジオ録音)

パリ音楽院管は、響きが透明かつ色彩的です。後年のクリュイタンスと同オケとの有名な録音と比べると、線がちょっと太く感じられる違いはありますが、ラヴェル的な明晰さを感じさせて、これも素晴らしい演奏dと思います。旋律のしなやかさよりも、線の明晰さとリズムの刻みを大事にした辺りが、バレエ指揮者としてのアンセルメの真骨頂と云うところでしょうか。終結部にちょっと大見得をするようにグッとテンポを落とすところも、この終結部のグロテスクな感覚をよく表しています。


〇1957年10月28日

ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲

スイス・ロマンド管弦楽団
(ジュネーヴ、ヴィクトリア・ホール、英デッカ・スタジオ録音)

これは名演。実に響きが美しく心地よいだけでなく、ラテン的な明晰さと香気を感じさせます。アンセルメは決して情緒に流れるところがなく、むしろ冷静に曲に対している印象なのですが、すみずみまで神経が行き届いた演奏であると感嘆させられます。


○1960年5月

オッフェンバック:喜歌劇「天国と地獄」序曲

スイス・ロマンド管弦楽団
(ジュネーヴ、ヴィクトリア・ホール、英デッカ・スタジオ録音)

オケの色彩感・テンポも良くて、パリの小粋な雰囲気が楽しめる演奏です。特に前半の叙情的な旋律のゆったりした自然な歌わせ方が実に魅力的です。後半のカンカンのリズミカルな部分もお祭り騒ぎになることなく・じっくり手綱を締めているところがさすがというべきです。アンセルメの語り口のうまさがよく分ります。


○1963年4月

ラヴェル:ボレロ

スイス・ロマンド管弦楽団
(ジュネーヴ、ヴィクトリア・ホール、英デッカ・スタジオ録音)

アンセルメはバレエ伴奏の経験豊かな指揮者ですから、オケの名人芸をダイナミックに誇示するというのではなく・リズムを明確にとって軽めに淡々と進めるのは、やはりバレエ音楽としてのこの曲を意識したからでしょう。全奏においても音楽が決して重く騒がしくならないのはさずがです。オケの色彩感は十分で、派手さはないけれど・手堅く納得できる演奏です。


○1964年12月

ベルリオーズ:劇的物語「ファウストの劫罰」
〜妖精の踊り・鬼火のメヌエット・ハンガリー行進曲

スイス・ロマンド管弦楽団
(ジュネーヴ、ヴィクトリア・ホール、英デッカ・スタジオ録音)

描写音楽というより・あまり思い入れを入れず・純音楽的で端正なアプローチす。その音楽の面白さが自然に出てくるのです。妖精の踊りはその清冽な美しさが見事ですし、鬼火のメヌエットも幻想的で聴かせる演奏です。


○1967年9月−1

ベルリオーズ:幻想交響曲

スイス・ロマンド管弦楽団
(ジュネーヴ、ヴィクトリア・ホール、英デッカ・スタジオ録音)

この交響曲を描写音楽としてではなく、純音楽的に見たアプローチと言うべきでしょうか。とてもユニークかつ説得力ある演奏なのです。リズムを明確に取った端正な造型は、幻想交響曲のグロテスクなムードを拒否するかのようですが、逆に言えばベルリオーズの音楽の持つ革新性がその骨格から自ずと立ち現れるということなのです。その革新性はもちろん第4楽章〜第5楽章の最も強く現れるものですが、アンセルメの演奏ではそこを意識して古典的印象に抑えた感じです。アンセルメの良さはむしろ表面的にはスッキリした造型に聴こえる第1楽章〜第2楽章のなかに潜む細やかで・そこはかとない美しさにあるようです。


○1967年9月−2

ベルリオーズ:序曲「ローマの謝肉祭」

スイス・ロマンド管弦楽団
(ジュネーヴ、ヴィクトリア・ホール、英デッカ・スタジオ録音)

純音楽的で堅実なアプローチです。リズムが良く斬れており、スイス・ロマンド管の繰り出す響きの色彩が飛び散るようです。


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