◇2004年5月読了分
  
自己組織化と進化の論理 スチュアート・カウフマン
米沢富美子 監訳
日本経済新聞社
 話の2割もわかりませんでした。でも、生命の発生をめぐる考察については面白かったです。生命は、偶然生まれたわけではなく、ある程度の複雑さを持った有機物のスープをかき混ぜると、自己触媒機能により反応が進むという話は目新しかったです。
 神話なんかを紐解くと、カオスという概念が存在していなかったころから秩序と混沌という話があるのが興味深いです。そういえば、日本書紀か古事記かで、“あめのぬぼこ”で泥の海を誰かがぐりぐりかき回して、矛から垂れた雫が日本列島になった、という話がありましたが、混沌から秩序が生まれた話として、示唆に富んでませんか?あとは、泥からゴーレムを生み出すなんてのも。粘塑性体は確かに、秩序でもあり混沌でもあるよなぁ。
  
趣都の誕生
萌える都市アキハバラ
森川嘉一郎
幻冬舎
 いつか読みたいと思っていて、やっとこさ読みました。秋葉原という土地は2度ほどいったことがありますが、やはり都市の様相としては異常ですね。個室で秘められるべきものが、完全に通りを席捲している辺りが、近代都市とは違いますね。しかも、都市計画もへったくれもなく、オタク個人同士の磁力によってのみ個別の構成要素が集積しています。機能の集積という側面から考察すると、ポストモダンではなくバリバリのモダニズムですね。
 さてさて、一応森川氏も気鋭の建築史家らしいので、コルビジェと萌えという概念を知っているとより本書を楽しめます。
 本書の最後に少し触れてありましたが、現在の日本の建築は過去の巨匠たちの模倣にあふれているとの指摘がありました。まぁ、一種の2次創作により現在の都市のストラクチャが決められているというのも、なんだかなぁ。
  
神は沈黙せず 山本弘
角川書店
 遺伝的アルゴリズムっすか。私はこの手法の専門家ではないですが、遺伝的アルゴリズムはさほど万能ではないというのが、勉強した結果です。遺伝的アルゴリズムの肝は、組み合わせ最適化を行うのが困難なもの、たとえば組み合わせが何兆通りもある場合に、最適解を短時間で探索することにあります。さて、この手法を用いると確かに人間では発想が困難な組み合わせを探してくれます。ただ、逆に言えば初期に与えたパラメータ、情報量を超えたものを探すことはできません。つまりは、遺伝的アルゴリズムを走らせた時点で、進化の頂点(限界)は決まってしまうという致命的な欠点があります。とまぁ、遺伝的アルゴリズムをちょっとかじった人間にとっては少し不満の残る内容なわけです。
 それ以外のところでは、世界のトンデモ現象を一気に概説してくれるので面白かったです。UFO事件や超能力関係は、ある事象の異なる側面に過ぎないという考察は私と一緒だわ。
 本書の中では、ネットのカリスマが出現して彼によって世界が動かされていく様子が描かれますが、実際のところネットにそこまでの力は当分つかないのではないかと思います。ネットに接続していない人は、まだまだたくさんしますし。
  
森博嗣の浮遊研究室3 宇宙編 森博嗣
メディアファクトリー
 いつもどおり、まったり進行で。一気に読み流せる文章をコンスタントに書けるのは、やはり森博嗣の作家としての能力か。
 本書の最後の写真館で、地下鉄名古屋大学駅が紹介されてましたが、あの設計はまさにバカの壁です。みんな口をそろえて「ありえねー」と言ってましたw。
  
ささらさや 加納朋子
幻冬舎
 妻帯者でも子持ちでもないので、その気持ちはわかりません。というか、読んでて気恥ずかしさすら覚えました。
  
すべてがFになる 森博嗣
講談社ノベルス/td>
 「四季」が一応の完結を見たので、再読。私は最初期のころから森博嗣の読者で、中学校2,3年生のときにFを手に取っているはずです。今ならはっきりいえますが、そのときはほとんど何もわかってませんでした。今読んでも、これほど衝撃を受けるとは。いやはや、驚きです。
 森博嗣の本の扉には必ず引用がありますが、いきなり青木淳でした。うーん、知らんかった。あとは、去年少しだけプログラムに関わったので専門用語もいろいろ納得いきました。登場人物たちの思考にもかなりついていけるようになりましたし。これで私はようやく、7年前の森読者に追いついたようですw。
 事件の構図の一部となった、完成されたOSそのものがトロイというのは、劇場版パトレイバーと一緒やん、と思ったり思わなかったり。
  
葉桜の季節に君を想うということ 歌野晶午
文藝春秋
 確かに、驚くべきところがある作品ですが、この作品がこのミス1位という事実がミステリの行き詰まりを表しているような気がしてならないです。
  
探偵伯爵と僕 森博嗣
講談社ミステリランド
 久々に、どんでん返しなるものを読みました。なんてことのない話を、ここまでうまくひっくり返してもらえると、読者冥利に尽きるというものです。ついでに、山田章博のイラストもいつもながら秀逸。
 子供が少し、大人び過ぎた事を考えていると指摘している向きもありますが、これくらいのときって意外とこういうこともしっかり考えているんではないかと思います。