夕暮まで


監督 黒木和雄
公開 1980年9月20日/1時間50分/全国東宝系封切
製作 (株)アートセンター
配給 東宝


CAST
桃井かおり(江守杉子)/伊丹十三(佐々・作家)/加賀まり子(祐子)/山口美也子(みえ子)/馬渕晴子(園子)/風間杜夫(岡田)/大橋芳枝(佐々の妻)/柿崎澄子(佐々の娘)/江藤潤(若い警官)/殿山泰司(洋食家の親父)/石橋蓮司(ホテルの見知らぬ男)/原田芳雄(鳥料理の主人)/他
STAFF
原作:吉行淳之介/製作:大塚和、三浦波夫/企画:前田勝弘、横井潤一/脚本:浜地一郎、田辺泰志/プロデューサー:中田新一/撮影監督:鈴木達夫/撮影:田村正毅、小林達比古/音楽:荒木一郎/美術:山下宏、内田欣哉/録音:加藤一郎/照明:伴野功/編集:鈴木晄/記録:石田芳子/助監督:内藤忠司/ヘアーメイク:小堺なな/スタイリスト:矢野悦子/製作宣伝:大野允/他
STORY
小説家佐々はみえ子の誘いで、若い人たちのパーティに出向いた。若い男女でむんむんする会場で、佐々は場違いな思いをしながら酒を飲んでいた。

片隅で踊りにも加わらず、洋酒を飲んでいる美しい2人の女性に、佐々は眼をとめた。みえ子は杉子と祐子を佐々に紹介した。中年男の佐々が杉子に興味を持っているのに気付いた祐子は、佐々に囁いた。「あの子ヴァージンよ。まっ白いウエディングドレスを着て、きれいな結婚式をあげるというのが口癖なの」「面白い子だね。誘ってみようかな」「無理じゃないかしら・・・・・。でも、杉子食いしん坊だから・・・・・」
こうして佐々と杉子はつき合うようになった。

パーティの帰り、佐々は杉子を高級レストランに誘った。杉子の食欲は旺盛だった。高級寿司屋、洋食屋、フランス料理屋、中華料理屋と、土曜日の夜は佐々と杉子の食べ歩きが続いた。食事のあと、佐々は杉子をラブホテルに連れ込むが、杉子は決して佐々に身をまかそうとはしなかった。2人のつきあいが1年経っても、杉子は依然処女のままだった。佐々はこの奇妙な交際をたのしんでいた。佐々馴染みのバーのマダム園子は、中年男の悪趣味だと、佐々を非難した。

杉子はガソリンスタンドで働いている岡田という男友達がいた。岡田といる時は杉子は健康で明るかった。だが、岡田は突然姿を消した。

杉子と佐々の夜の世界がくりかえされた。知り合って1年半が経過していたが、杉子がいまも処女であった。佐々は杉子のかすかな変化に杉子に影の男のいることを察知した。

ある日、ホテルで杉子はその時処女ではなかった。この数日の間に、影の男が杉子をうばったのだろうか。
数日たって、祐子から佐々に電話がかかってきた。杉子がガス自殺をはかったという。祐子は杉子をともなって数日旅行をすると佐々に言った。旅行から帰った祐子が、杉子が佐々に会いたがっている、と電話をしてきた。
佐々は、2人のつきあいもここらで幕を引く時だろうと思った。

いつものホテルのロビーで、佐々と杉子は会い、そして、いつものように鳥料理屋へ行った。杉子の食欲は相変わらず旺盛であった。食後、佐々は杉子を車で送った。さあ、ここで別れよう、と佐々は杉子をうながしたが、杉子は降りようとしなかった。
「降ろしたら奥さんに電話するわ。江守杉子は死にました・・・・・」
佐々は黙って、ドアのロックをはずした。

杉子は動かなかった。
杉子の頬に一筋の涙が光っていた。




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