本 その1
司馬遼太郎 著 新潮文庫
江戸末期、幕府のためにと働き、人々から「人切り部隊」と恐れられながら、
自らの理想と力を信じ生きた新選組副長、土方歳三の一代記もしくは幕府倒壊の一部といった歴史小説である。
私は新選組の事を小学生のとき、少女マンガの「天まであがれ!」(木原敏江・秋田書店)を見て初めて知ったのであるが、
それで彼らの生き様、信念というものに感銘した。
その後高校に入って「新選組血風録」を読み、隊士の個性を知った。
それでいながら、この作品を知らずに去年になって知人より教えてもらったのである。いやぁ、お恥ずかしい(^^;)
この作品は土方歳三が武州多摩の村で「バラガキ(悪たれ小僧)」と呼ばれていた時から始まる。
けんかっ早く、それでいて不利な状況と見ると潔く引き下がる。
これが生来武士の家ならば良しとされなかっただろうが、彼は百姓の生まれでそれは関係なくて、
結果的に彼の戦法及び引き際のタイミング等はこの時期に培われたものなんだろうと思われる。
その後、後に新選組局長となる近藤 勇、沖田総司らと浪士組に入隊し、活躍の場となる京へ上る事になる。
初期の新選組は芹沢 鴨・近藤 勇を両局長としていたが芹沢一派のあまりの乱行に、
新選組のスポンサーである会津藩より粛清依頼が入り実行、組内の行動は局中法度により綱紀粛正され
土方を副長として頑健な組織が組まれるのである。
途中、隊士内の剣の流派による対立や、志を共にしてきたはずの近藤との考え方・目指すものの違いに気付いても、
ただひたすら土方は自分の信念を貫く。
しかしながら、幕府に反発する勢力に対し対抗できるのは彼ら新選組しかいない、という状態が倒幕へ拍車をかけることになる。
大政奉還後、薩長連合軍により、京から江戸、そして北海道函館の五稜郭に最後の砦を構える。
それまでに近藤・沖田の死を知り「いずれは自分もいく」と心を決め、負けるとわかっていながら最後まで戦い抜いて、
そのさなかに命を落とすのである。この作品を読むと、土方歳三という男が実にカッコよく、ロマンチストであったかが読み取れるのである。
先に記した「天まであがれ!」は沖田総司の視点を主に描かれてある。
この作品の著者、木原先生も司馬先生のこの作品に触発されて描かれたそうである。木原先生なりの新選組であるけれども、
歴史的背景になる人間関係などは史実に基づいて描かれているので、たかがマンガと侮る無かれ。
本が苦手な方はこのマンガを読んでから「燃えよ剣」を読むと、よりわかりやすいかもしれない。