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映画 その2

ライトスタッフ(THE RIGHT STUFF)

主演  サム・シェパード、スコット・グレン、エド・ハリス、デニス・クエイド 他
監督・脚本 フィリップ・カウフマン 原作 トム・ウルフ 配給 ワーナーブロス  1983年作品

この映画は、「音の壁」を破った伝説のテストパイロット、チャック・イェーガーと
マーキュリー計画(アポロ計画の前)に選ばれた7人のパイロットらの物語である。

映画の冒頭部、1947年、エドワーズ空軍基地にて「音の壁」マッハ1.0を破るべくテストパイロット達が挑戦し、
いまだ成功するものはいなかった。基地近くのテストパイロット達のたまり場「パンチョの店」に、
ある男が現れ軍関係者が彼に話を持ちかける。男は2つ返事で受け、翌日ベル社のX-1ロケットに乗り込む。
その男こそチャック・イェーガーなのである。この時、彼はなんと前日の落馬による肋骨骨折をしているのであるが、
果敢にも挑戦してしまうのである。すごい人である。で、その後の描写も素晴らしい。

マッハ0.8以上になると機体がぶれだし、制御困難になりつつある。その様子を地上から軍関係者、パンチョの店の女将さん、
そして彼の妻が見守っているのであるが・・・・ドォーーーーンっという爆音が聞こえ、誰もが失敗を確信する。
しかし、無線からイェーガーの「速度計がイかれちまった」という声。見守っていた面々に歓喜の声が上がる。
ここまで観ていて、もう「カッコいい!」の一言である。

その後の展開は、宇宙進出への方へ向かうのであるが、この時代、すべてにおいて、アメリカはソ連に先を越されている。
それを表現するホワイトハウス内で報告する下士官の姿が良い。
ソ連に負けじと、急遽パイロット達の選出(自薦・他薦問わずその後テスト)がなされ7人が選ばれるのである。
(観ていてびっくりしたのは、ジョン・グレン役のエド・ハリスであるが、彼は、若きジョン・グレンに本当にそっくりなのである!)
しかしながら、未完成ともいえるロケットに搭乗する彼らは、まさに生と死の崖っぷちにたつことになるのである。

最初のパイロットになったのはアラン・シェパード。成功させ、無事に帰還。
帰還後、当時大統領だったJ・F・ケネディから勲章を授与されるシーンがあるのだが、
これは当時のニュース映像との合成で、実にうまく出来ている。さすが。他のパイロット達も次々滞宙時間を延ばし成功を重ねるが、
ガス・グリソム搭乗時、帰還後脱出ポッドは海中に沈んでしまう。この時代、正直パイロットよりも、機体が大事で、
なぜ沈んだかが問題視される。要するにグリソム自身が勝手にポッドを開けてしまい沈ませたか、もしくはポッド自体の欠陥か。
ここで、パイロット達の明暗が浮かび上がる。
(去年だったか沈んだポッドが引き上げられ、謎が解明されるとのことだったが、その後の情報はわかっていない。)

イェーガーの方はというと、彼の記録はすでに次々破られていっているのだが、
彼自身は何処吹く風といった感で動じていない。やはりすごい人である。

マーキュリー計画は1961年に始まり1963年5月で終了している。7人のパイロットが選ばれたものの実際に飛行したのは6人。
(ドナルド・スレイトン氏は体調不良により搭乗出来なかった。しかしその後の計画にて飛行している。)彼らはいずれも単独での挑戦。
人一人がやっと入れるような狭いポッドの中で未知の世界へ飛び出す勇気とはいかほどのものだったのか、と感嘆してしまう。

1960年代後半、チャックイェーガーは相変わらず、テストパイロットとして空軍基地にいる。
今回は新しい機体F-104スターファイターへ搭乗する。この日は高度への挑戦。ぐんぐん上昇する機体。彼の眼前に突如、暗い世界が見えてくる。
それは何か?しかし、その世界を確実に目にする事は阻まれた。失速によるものか、機体は錐もみ状態で墜落。そして炎上。
が、黒煙の中から現れる人影。そう、チャック・イェーガーは傷を負いながらも生還したのである。

映画はここまでであるが、ストーリー、映像の美しさ、それに実にマッチした音楽、そして時代考証の正確さ
(これはイェーガー本人にテクニカル・コンサルタントとして映画作りに参加してもらっている!)、すべてにおいて「すごい!」と
言わしめる作品である。(ちなみにアカデミー賞4部門受賞)

余談になるが1997年、エドワーズ空軍基地上空にて、1947年のあの時と同じ時間にドォーーーーンという爆音が響いた。
そう、50年前に「音の壁」を破った彼、70歳過ぎのチャック・イェーガーが操縦していたのであった。(やるなぁ米空軍、粋だね!)

ジョン・グレン役のエド・ハリスであるが、彼は「アポロ13」でヒューストンのチーフ・管制官として登場しているのであるが、
それを観た時、つい「ジョン・グレンはその後管制官をしていたのか?」と思ってしまった私であった(^^;)
チャック・イェーガー役のサム・シェパードであるが、彼は元々舞台俳優であるために、他の映画に出ているのを見たことが無い。
思いっきりこの作品でファンになったのに・・・・しくしくしく(TT)
この映画の上映時期、ちょうど休講があり「ラッキー!時間も合う!」
とその次の講義は自主休講にして(爆)喜びいさんで観にいったのであるが、もう感動しっぱなし!
映画を観終わって、午後の講義(確かドイツ語)に慌てて行ったものの、講義の内容は全く頭に入らなかった。
すべてのシーンが頭の中でリプレイされていたのである。本当に、この映画はオススメです。カッコいい男たちに逢えます!